コンパクト性とその周辺

<<現在建設中>>

コンパクト性は位相空間論において非常に基本的な概念であり、コンパクト空間においては様々な命題が成り立つ。これはコンパクト性の類似概念についても同様である。本稿ではこれらの話題について解説する。


3.節以降は執筆中である。(2020-10-15)

序文

1.節から3.節までにおいて、コンパクト空間についての基本的な事項をまとめている。4.節、5.節、6.節、7.節はそれぞれ独立したトピックであるため、(できる限り)独立して読むことができるように意図されている。A1節以降はAppendixの役割をとり、必要な知識の補完や本筋とは多少離れた事柄についての解説を行っている。

0. 用語についての注意

  • コンパクトという用語について、本稿ではHausdorff性を課さない。
  • 正則・正規という用語について、本稿では $T_1$-性を課す。
  • $T_3$, $T_4$ という用語について、本稿では $T_1$-性を課さない。

1. コンパクト空間

1.1. コンパクト空間の定義

本稿のテーマであるコンパクト空間について、まずはその定義を述べよう。(1.1.2 を参照されたい。)

定義 1.1.1 (開被覆)

位相空間 $X$ の開集合からなる族 $\mathcal{U}=\{U_i\,|\,i\in I\}$ が開被覆であるとは、$\mathcal{U}$ の要素すべての和集合が $X$ に一致することをいう。 すなわち、$X=\bigcup_{i\in I} U_i$ が成りたつことをいう。

定義 1.1.2 (コンパクト空間)

位相空間 $X$ がコンパクトであるとは、以下の性質を満たすことを指していう。

  • $X$ の任意の開被覆 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ の有限部分集合 $\mathcal{V}$ が存在して、$\mathcal{V}$ が $X$ の開被覆となる。

注意 1.1.3 (細分について)

開被覆 $\mathcal{V}$ が 開被覆 $\mathcal{U}$ の細分であるとは、$V \in \mathcal{V}$ に対して、$V\subset U\in \mathcal{U}$ が成り立つような $U$ が存在することをいう。このとき、位相空間 $X$ がコンパクトであることは、任意の開被覆に対して有限細分が存在することと同値である。

1.2. コンパクト空間の基本性質

コンパクト性について 1.1 にてその定義を述べた。次に、コンパクト性と同値な条件について 1.2.3 にて述べる。そののち、コンパクト性についての基本的な性質を挙げていく。

定義 1.2.1 (有限交叉性を持つ集合族)

集合 $X$ の部分集合族 $\mathcal{A}$ が有限交叉性を持つとは、有限個の $\mathcal{A}$ の要素 $A_1,\ldots,A_n$ について、$A_1\cap\ldots\cap A_n$ が空でないことをいう。

例 1.2.2 (補有限集合の族)

無限集合 $X$ を任意にひとつとる(例えば $\mathbb{N}$ など)。このとき、$X-A$ が有限集合であるような $A\subset X$ を $X$ の補有限集合という。$\mathcal{A}$ を $X$ の補有限集合全体の集合とすると、$\mathcal{A}$ は有限交叉性を持つ。

命題 1.2.3 (コンパクト性の同値な定義)

位相空間 $X$ について、以下は同値である。

  1. $X$ はコンパクト空間
  2. $X$ の、閉集合からなる有限交叉性を持つ部分集合族 $\mathcal{F}$ について、$\bigcap_{F\in \mathcal{F}} F$ は空でない

証明 1. $\Rightarrow$ 2. を示す。閉集合からなる有限交叉性を持つ部分集合族 $\mathcal{F}$ について、$\mathcal{U}=\{X-F|F \in \mathcal{F}\}$ とおく。このとき、$\mathcal{U}$ が開被覆ならば、$X$ のコンパクト性により $\mathcal{U}$ の有限個の要素 $X-F_1,\ldots, X-F_n$ について $X=(X-F_1)\cup \ldots \cup (X-F_n)$ が成り立つが、ここから $F_1\cap \ldots \cap F_n=\emptyset $ が導かれ、これは仮定に反する。よって$\mathcal{U}$ は開被覆でないため、$\bigcap_{F\in \mathcal{F}} F=X-(\bigcup_{U \in \mathcal{U}} U)$ は空でない。

2. $\Rightarrow$ 1. についても同様である。開被覆 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{F}=\{X-U|U \in \mathcal{U}\}$ とおく。このとき、$\bigcap_{F\in \mathcal{F}} F=X-(\bigcup_{U \in \mathcal{U}} U)$ は空集合であるため、$\mathcal{F}$ の有限個の要素 $X-U_1,\ldots, X-U_n$ について $(X-U_1)\cap \ldots \cap (X-U_n)=\emptyset$ が成り立つ。ここから $X=U_1\cup \ldots \cup U_n$ が導かれる。

命題 1.2.4 (コンパクト性の閉部分空間への遺伝)

コンパクト空間 $X$ の閉部分空間 $Y$ はコンパクトである。

証明 1.2.3 の特徴付けを用いる。$Y$ の閉集合からなる有限交叉性を持つ集合族を任意に取る。これを $\mathcal{F}$ とおく。このとき、$Y$ の閉集合は $X$ の閉集合であるため、$\mathcal{F}$ は $X$ の閉集合からなる有限交叉性を持つ集合族である。$X$ はコンパクトであるため、$\bigcap_{F\in \mathcal{F}} F$ は空でないことが示される。

よって $Y$ はコンパクトである。

命題 1.2.5 (コンパクト性の像への遺伝)

コンパクト空間 $X$ と連続写像 $f:X\to Y$ について、$Y$ の像 $f(X)$ はコンパクト集合である。

証明 $f(X)$ の開被覆 $\mathcal{V}$ を取る。このときそれぞれの $\mathcal{V}$ の要素 $V$ について、$Y$ の開集合 $U_V$ であって$U_V\cap f(X)= V$ が成り立つようなものを選ぶ。このとき、$U_V$ 全体は $f(X)$ を被覆する。

$U_V$ は $Y$ の開集合であったため、$f^{-1}(U_V)$ は $X$ の開集合である。このとき、$f^{-1}(U_V)$ は $X$ の開被覆となる。$X$ のコンパクト性より、有限個の $U_{V_1},\ldots,U_{V_n}$ について$ f^{-1}(U_{V_1})\cup \ldots \cup f^{-1}(U_{V_n})=X$ が成り立つ。よって $f(X)\subset U_{V_1}\cup \ldots \cup U_{V_n}$ が成り立つ。従って $\{V_1,\ldots, V_n\}$ は $f(X)$ の開被覆となる。

よって $f(X)$ はコンパクトである。

1.3. 閉区間 $[0,1]$ のコンパクト性

閉区間 $[0,1]$ がコンパクト空間であることを示す。1.3 の内容について、これを事実として認めて他の内容を読み進めることは可能である。

定理 1.3.1 ($[0,1]$ のコンパクト性)

実数空間 $\mathbb{R}$ の閉区間 $[0,1]$ はコンパクトである。

証明 $[0,1]$ の開被覆 $\mathcal{U}$ であって有限細分が取れないものが存在したとする。このとき、$[0,\frac{1}{2}]$ または $[\frac{1}{2},1]$ のいずれかについて $\mathcal{U}$ の要素による細分を取ることができない。そのような区間を一つ選ぶ。同様の操作を繰り返すことで、有理数の列 $0\leq q_1 \leq\ldots\leq q_n\leq \ldots $ であって、$[q_n,q_n+\frac{1}{2^n}]$ を被覆する $\mathcal{U}$ の有限細分が取れず、かつ $\ldots\subset [q_n,q_n+\frac{1}{2^n}]\subset \ldots \subset [q_1,q_1+\frac{1}{2}] \subset [0,1]$ が成り立つようなものを取れる。

このとき、$\lim_{n\to \infty} q_n$ を $q$ とおくと、$\bigcap_{n \in \mathbb{N}}[q_n,q_n+\frac{1}{2^n}]=\{q\}$ が成り立つ。

$q \in U \in \mathcal{U}$ なる $U$ が存在するが、このときある $n$ について $[q_n,q_n+\frac{1}{2^n}] \subset U]$ が成り立つため、$q_n$ の取り方に反する。

よって $[0,1]$ のコンパクト性が示された。

1.4. Hausdorff空間内のコンパクト集合は閉

Hausdorff空間の定義については分離公理を参照されたい。1.2 の内容を前提とする。

定理 1.4.1 (Hausdorff空間内のコンパクト集合は閉)

Hausdorff空間 $X$ の部分集合 $K$ がコンパクトならば、$K$ は $X$ の閉集合である。

証明 $x \in X-K$ なる $X$ の点 $x$ について、$K$ の各点 $y$ ごとに、$x$, $y$ の非交な開近傍 $U_y$, $V_y$ を取ることができる。

このとき、$V_y$ 全体は $K$ を被覆するが、コンパクト性より有限個の $K$ の点 $y_1,\ldots,y_n$ により $K\subset V=\bigcup_{1\leq i\leq n}V_{y_i}$ が成り立つようにできる。このとき、$\bigcap_{1\leq i\leq n}U_{y_i}\cap V=\emptyset $ であるため、$x$ は $K$ の閉包には属しない。よって $K=\overline{K}$ より、$K$ は閉集合である。

定理 1.4.2 (コンパクト空間からHausdorff空間への全単射連続写像は同相)

コンパクト空間 $X$ とHausdorff空間 $Y$ について、全単射連続写像 $f:X\to Y$ は同相である。

証明 全単射性より、集合としての逆写像 $f^{-1}$ を取ることができる。このとき $f^{-1}$ が連続であれば $f$ の同相性が従う。$f$ が閉射像ならば $f^{-1}$ が連続となることに注意する($f^{-1}$ の閉集合の逆像が閉集合となるため)。

$X$ の閉集合 $K$ について、1.2.4よりこれはコンパクトである。このとき $f(K)$ は1.2.5よりこれはコンパクトである。1.4.1より $f(X)$ は $Y$ の閉集合であるため、$f$ の閉写像性が示される。

よって $f$ は同相である。

1.5. コンパクトHausdorff $\Rightarrow$ 正規

コンパクトかつHausdorffであるような空間は、さまざまな位相空間論的に面白い性質を満たす。その最も基本的なものとして、正規性の成立が挙げられる。1.2 の内容を前提とする。

命題 1.5.1 (コンパクトHausdorff $\Rightarrow$ 正則)

コンパクト空間 $X$ がHausdorffならば、正則である。

証明 閉集合 $F$ と $x \notin F$ なる点 $x$ を取る。このとき、1.2.4 より $F$ はコンパクト空間である。

$F$ の各点 $y$ について、$x\neq y$ であるため、$y$, $x$ の開近傍 $U_y$, $V_y$ であって $U_y \cap V_y =\emptyset $ を満たすものが存在する。このとき、$\{U_y|y \in F\}$ は $F$ の開被覆であるため、有限個の点 $y_1,\ldots.y_n$ が存在して $\{U_{y_i}|1\leq i\leq n\}$ は $F$ の開被覆となる。このとき $\bigcup_{1\leq i \leq n} U_{y_i}$ と $\bigcap_{1\leq i \leq n} V_{y_i}$ は非交な開集合であって、それぞれ $F$, $x$ の近傍である。

$X$ の $T_1$-性は明らかであるため、$X$ は正則である。

命題 1.5.2 (コンパクトHausdorff $\Rightarrow$ 正規)

コンパクト空間 $X$ がHausdorffならば、正規である。

証明 非交な閉集合 $F$ と $G$ を取る。このとき、1.2.4 より $F$ はコンパクト空間である。

$F$ の各点 $y$ について、$y \notin G$ であるため、$y$, $G$ の開近傍 $U_y$, $V_y$ であって $U_y \cap V_y =\emptyset $ を満たすものが存在する。このとき、$\{U_y|y \in F\}$ は $F$ の開被覆であるため、有限個の点 $y_1,\ldots.y_n$ が存在して $\{U_{y_i}|1\leq i\leq n\}$ は $F$ の開被覆となる。このとき $\bigcup_{1\leq i \leq n} U_{y_i}$ と $\bigcap_{1\leq i \leq n} V_{y_i}$ は非交な開集合であって、それぞれ $F$, $G$ の近傍である。

$X$ の $T_1$-性は明らかであるため、$X$ は正規である。

2. Tychonoffの定理

2.1. 導入

コンパクト空間のクラスは任意の積について閉じる。2.1においてはこの事実を証明する。ところで余談であるが、ZF公理系においてこの定理は選択公理と同値な命題である。

定理 2.1.1 (コンパクト空間の積はコンパクト)

コンパクト空間の族 $\{X_i|i \in \Lambda\}$ について、$X=\prod_{i \in \Lambda} X_i$ はコンパクト空間である。

証明 ネットによる位相空間論フィルターによる位相空間論を参照されよ。

2.2. Alexander subbase theorem

この節においては、Tychonoffの定理を示す準備として、Alexander subbase theoremを証明する。subbaseとは準開基のことである。

定義 2.2.1 (開基)

位相空間 $(X, \mathcal{O})$ とその開集合の族 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ が $X$ の開基(あるいは、$\mathcal{O}$ の開基)であるとは、任意の開集合 $V$ と $x\in V$ について、$x\in U \subset V$ を満たす $U\in \mathcal{U}$ が存在することをいう。

速習コース「位相空間論の基礎事項」7.1より引用)

定義 2.2.2 (準開基)

位相空間 $(X, \mathcal{O})$ とその開集合の族 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ が $X$ の準開基であるとは、任意の開集合 $V$ と $x\in V$ について、有限個の $\mathcal{U}$ の要素 $U_1, \ldots, U_n$ であって $x \in U_1\cap \ldots \cap U_n \subset V$ が成り立つようなものを取れることをいう。

注意 2.2.3 (準開基の同値な定義)

開集合族 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ の要素の有限個の共通集合として得られるような開集合の族を $\mathcal{U}_{\mathrm{fi}}$ と表記したとき、以下が成り立つ:$\mathcal{U}$ が準開基であることは $\mathcal{U}_{\mathrm{fi}}$ が開基となることと同値である。そのためこの方法で準開基の概念が導入されることもある。

公理 2.2.4 (Zornの補題)

空でない半順序集合? $(P,\leq)$ が以下の性質を満たすとする。

  • $Q\subset P$ であって $P$ の順序により全順序集合となる $Q$ について、$Q$ の任意の要素 $q$ について $q\leq p$ となるような $p \in P$ が存在する

このとき、$P$ は極大な要素を持つ。


用語の意味については A1. を参照されたい。

注意 2.2.5 (選択公理との同値性)

ZF公理系において、Zornの補題は選択公理と同値である。この記事においては、議論の単純化のため、ZFに加えて 2.2.4 を公理として課したものを公理系として採用するが、これは本質的にZFC公理系を採用することと変わらないことをここで注意しておく。また詳細についてはZornの補題?選択公理を参照されよ。

定理 2.2.6 (Alexander subbase theorem)

位相空間 $X$ の準開基 $\mathcal{V}$ について、任意の $\mathcal{V}$ の要素による開被覆について、その有限細分であって開被覆であるようなものが取れるとき、$X$ はコンパクト空間である。

証明 $X$ の開集合族 $\mathcal{U}$ であって $X$ の開被覆となり、かつ有限細分であえるような開被覆がとれないもの全体の集合を $P$ とおき、$\mathcal{U}\subset \mathcal{U}'$ であるときに$\mathcal{U}\leq \mathcal{U}'$ が成り立つように $P$ 上の半順序?を定める。$P$ が空でないとして矛盾を導く。

$P$ の全順序部分集合 $Q$ について、$\mathcal{U}_Q=\bigcup_{\mathcal{U} \in Q}\mathcal{U}$ は $X$ の開被覆となっている。このとき、$\mathcal{U}_Q$ の有限個の要素 $U_1,\ldots,U_n$ であって $X=U_1\cup \ldots \cup U_n$ なるものが取れたとする。このとき、$U_i\in \mathcal{U}_i \in Q$ なる $\mathcal{U}_i$ を取ると、$P$ 上の順序において $\mathcal{U}_i$ のいずれよりも大きな $\mathcal{U}_u \in Q$ を取ることができる。このとき任意の $i$ について $U_i \in \mathcal{U}_i \subset \mathcal{U}_u$ である。$\{U_i\}_{1\leq i \leq n}$ は $X$ の開被覆であったが、これは $\mathcal{U}_u$ が $P$ の要素であることに反する。よって $\mathcal{U}_Q$ は $P$ の要素であるため、$Q$ の上界となる。

2.2.4 より、$P$ の極大な要素を取ることができるが、これをひとつ選び $\mathcal{U}_{max}$ と表記する。極大性より、$\mathcal{U}_{max}$ に含まれないどのような開集合 $U$ についても、$\{U\}\cup \mathcal{U}_{max}$ は有限細分であって開被覆となるようなものを取ることができる。

$\mathcal{U}_{max}\cap \mathcal{V}$ を $\mathcal{V}_m$ と表記する。このとき、$\mathcal{V}_m$ の有限細分であって開被覆となるものを取ることができないため、$\mathcal{V}_m$ は $X$ の開被覆ではないことが示される。よって、$x\in X$ であって、$\bigcup_{V \in \mathcal{V}_m}V$ に含まれない点をとることができる。

このとき、$x$ を含む開集合であって $\mathcal{V}$ の要素であるようなものは、$\mathcal{U}_{max}$ の要素ではないことに注意する。なぜならば、そのような開集合 $V \in \mathcal{U}_{max}$ があったならば、これは $\mathcal{V}_m$ の要素であり $x$ を含む開集合であるが、このようなことは $x$ の取り方により起こり得ないためである。

ある $x \in U \in \mathcal{U}_{max}$ について、有限個の $\mathcal{V}$ の要素 $V_1,\ldots, V_t$ であって、$x \in V_1\cap \ldots \cap V_t \subset U$ なるものを取る。このとき $x \in V_i \in \mathcal{V}$ であるため、$V_i$ は $\mathcal{U}_{max}$ の要素ではない。従って、$\{V_i\}\cup \mathcal{U}_{max}$ は有限細分であって開被覆であるような開集合族 $\{V_i\}\cup \{U_{i,j}\}$ を持つ。

このとき $\{U\}\cup \{U_{i,j}\}$ は $\mathcal{U}_{max}$ の有限細分であって、開被覆となる。これは矛盾である。よって $P$ は空であり、これは $X$ のコンパクト性を意味する。よって定理が示された。

2.3. Tychonoffの定理

定理 2.3.1 (2.1.1 再掲)

コンパクト空間の族 $\{X_i|i \in \Lambda\}$ について、$X=\prod_{i \in \Lambda} X_i$ はコンパクト空間である。

証明 $\prod_{i \in \Lambda} X_i$ の開集合として、以下の形で表すことができるもの全体の集合を $\mathcal{V}$ とおく。

  • ある $i \in \Lambda$ について $X_i$ の開集合 $U_i$ を取ったとき、$U_i \times \prod_{i\neq j \in \Lambda} X_j$ と表せる

このとき、$\mathcal{V}$ は $X$ の準開基となる。

Alexander subbase theorem (2.2.6) により、$X$ の $\mathcal{V}$ の要素による開被覆についてその有限細分であって開被覆となるものが取れることを示せばよい。

$\mathcal{U}\subset \mathcal{V}$ であって、有限細分であって開被覆となるものが取れないものを固定する。このとき、$i \in \Lambda $ について、$U_i\times \prod_{i\neq j \in \Lambda}$ の形の $\mathcal{U}$ の要素についてここに現れる $U_i$ 全体の集合を $\mathcal{U}_i$ とおくと、$X_i$ のコンパクト性より、$\{U_i\}$ は $X_i$ の開被覆とならない。よって、$x_i \in X_i$ であって $\bigcup U_i$ に含まれない点を $i \in \Lambda$ ごとに選ぶことができる。*1

このとき、$(x_i)_{i \in \Lambda} \in \prod_{i \in \Lambda} X_i$ は $\mathcal{U}$ の要素に含まれない。よって $\mathcal{U}$ は開被覆でない。

背理法を用いることで、定理は示される。

3. 基本的な例

3.1 $\mathbb{R}^n$ の有界閉部分空間

命題 3.1.1 ($\mathbb{R}^n$ の有界閉部分空間はコンパクト)

$\mathbb{R}^n$ の有界閉部分空間はコンパクトである。

証明 $\mathbb{R}^n$ の有界閉部分空間 $K$ をひとつとる。このとき、ある実数 $a$ により、$K$ は $[-a,a]^n$ に含まれる。$[-a,a]$ は $[0,1]$ と同相であるため、コンパクトである。Tychonoffの定理 (2.3.1) より、$[-a,a]^n$ はコンパクトである。

$K$ は $[-a,a]^n$ の閉集合であるため、1.2.4 より、$K$ はコンパクトである。

命題 3.1.2 ($\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合は有界閉)

$\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合は有界閉である。

証明 $\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合を $K$ とおく。1.4.1より、$K$ は閉集合である。また、$d \in \mathbb{N}$ について $\mathbb{R}^n$ の原点を中心とした半径 $d$ の開球を $U_d$ とおいたとき、$U_d$ 全体は $K$ を被覆する。よって、有限個の $U_d$ によって被覆されなければならない。したがって $K$ は有界である。

3.2 cube

例 3.2.1

集合 $J$ について、$[0,1]^J=\prod_{j \in J}[0,1]$ はコンパクト集合である。

例 3.2.2

集合 $J$ について、$\{0,1\}^J=\prod_{j \in J}\{0,1\}$ はコンパクト集合である。ただし、$\{0,1\}$ には離散位相が入っているものとする。

例 3.2.3 (Alexandroff立方体?)

Sierpinski空間を $\mathbb{S}$ と表記する。このとき、集合 $J$ について、$\mathbb{S}^J=\prod_{j \in J}\mathbb{S}$ はコンパクト集合である。

3.3. ordinal numbers

順序数は、順序位相を与えることで位相空間とみなすことができる。順序数の定義や、基本的な事柄に関しては A3.? を参照されたい。

定義 3.3.1 (順序位相)

半順序集合 $P$ について、$x,y \in P$ に対し $(x,y)$ を $\{z \in P|x<z<y\}$ とおく。また、$(-\infty,x)$ を $\{z \in P|z<x\}$ とおく。また、$(y,\infty)$ を $\{z \in P|y<z\}$ とおく。このとき、$I=\{(x,y)\}_{x,y \in P}\cup \{(-\infty,x)\}_{x \in P}\cup \{(y,\infty)\}_{y \in P}$ によって生成される $P$ 上の位相を $P$ の半順序集合という。すなわち、$I$ の要素の有限交叉として表される $P$ の部分集合全体を開基とする位相のことである。

定義 3.3.2 (順序数について定まる位相)

順序数 $\alpha$ について、順序位相によって $\alpha$ を位相空間とみなすことができる。この空間を $\alpha$ と同じ記号で表記する。

定理 3.3.3 (後続順序数のコンパクト性)

3.4. 未分類の例

4. コンパクト化

4.1. 定義

定義 4.1.1 (コンパクト化)

位相空間 $X$ に対して、コンパクトHausdorff位相空間 $Y$ と連続写像 $c:X\to Y$ の組 $(Y,c)$ が $X$ のコンパクト化であるとは、以下の性質が成り立つことをいう。

  • $X \to f(X)$ は同相
  • $\overline{f(X)}=Y$

ただし、$c$ が明らかな場合は $Y$ のみを表記してこれを $X$ のコンパクト化であるという。

(コンパクト化より引用)

注意 4.1.2 (Hausdorff性について)

本節において、基本的に考える空間はHausdorff空間に限る。

4.2. Tychonoff空間

定義 4.2.1 (Tychonoff空間)

位相空間 $X$ がTychonoff空間であるとは、Hausdorff空間であり、任意の閉集合 $F$ と $x\notin F$ について、連続写像 $f:X\to[0,1]\subset \mathbb{R}$ であって $f(x)=0$ かつ $f(F)=\{1\}$ なるものが存在することをいう。

(Tychonoff空間より引用)

命題 4.2.2 (Tychonoff性は部分空間に遺伝)

Tychonoff空間 $X$ の部分空間 $Y$ はTychonoff空間である。

証明 $Y$ がHausdorffであることは明らかである。

$Y$ の点 $y$ と $Y$ の閉集合 $y \notin F'$ について、$X$ の閉集合 $F$ であって $F'=Y\cap F$ なるものが存在する。このとき、$y \notin F$ であるため、連続写像 $f:X \to [0,1]$ であって、$f(y)=0$ かつ $f(F)=\{1\}$ なるものが存在する。このとき、$f$ の $Y$ への制限は、$f(y)=0$ かつ $f(F')=\{1\}$ なる連続写像である。よって $Y$ はTychonoff空間である。

4.3. 局所コンパクト空間

定義 4.3.1 (局所コンパクト空間)

位相空間 $X$ が局所コンパクトであるとは、Hausdorffであって、かつ任意の点 $x \in X$ について $x$ を含む近傍でコンパクトなものが存在することをいう。

注意 4.3.2 (Hausdorff性について)

コンパクト性においてはHausdorff性を課さないが、局所コンパクト性についてはHausdorff性を課している。

注意 4.3.3 (近傍について)

点 $x$ の近傍とは、$x$ を含む集合 $N$ であって、さらに $x$ を含む開集合 $U \subset N$ が存在することを指していう。このため、近傍は必ずしも開集合であるわけではない。

4.4. 一点コンパクト化

4.5. Stone-Čechコンパクト化

5. 距離化可能性

5.1. 距離化可能空間

定義 5.1.1 (距離空間)

集合 $X$ と実数値関数 $d:X\times X\to \mathbb{R}$ の組 $(X,d)$ が距離空間であるとは、以下の条件を満たすことを指していう。

  • $X$ の点 $x$, $y$ について、$d(x,y)\geq 0$
  • $X$ の点 $x$, $y$ について、$d(x,y)=0$ と $x=y$ は同値
  • $X$ の点 $x$, $y$ について、$d(x,y)=d(y,x)$
  • $X$ の点 $x$, $y$, $z$ について、$d(x,y)+d(y,z)\geq d(x,z)$

距離空間 $(X,d)$ について、距離を明記せず単に $X$ と表記する場合がある。

定義 5.1.2 (距離に伴う位相)

距離空間 $X$ について、$x \in X$ と $i \in \mathbb{N}$ に対して、$U(x,i)$ を点 $x$ を中心とする半径 $\frac{1}{i}$ の開球、すなわち $\{y \in X|d(x,y)<\frac{1}{i}\}$ と定めると、$\{U(x,i)\}_{x \in X,i \in \mathbb{N}}$ を開基?とする $X$ 上の位相が唯一つ存在する。この位相でもって距離空間 $X$ を位相空間とみなすことができる。

断りなく距離空間を位相空間とみなす場合はつねにこの方法で位相を入れているものとする。

定義 5.1.3 (距離化可能空間)

位相空間 $X$ が距離化可能空間であるとは、距離空間を位相空間とみなして構成されたもの(と同相な位相空間)であることをいう。

例 5.1.4 (実数空間)

$\mathbb{R}$ は距離化可能空間である。

命題 5.1.5 (距離化可能ならばHausdorff)

距離化可能空間はHausdorffである。

証明 距離化可能空間 $X$ に対して、$X$ の異なる二点 $x,y$ を取る。このとき、$d(x,y)$ を $d$ とおくと、$x$, $y$ それぞれを中心とした半径 $\frac{d}{3}$ の開球は非交な開近傍である。よって $X$ はHausdorffである。

定義 5.1.6 (有界距離空間)

距離空間 $(X,d)$ が有界であるとは、ある実数 $r$ が存在し、任意の $X$ の点 $x$, $y$ について、$d(x,y)<r$ が成り立つことをいう。

命題 5.1.7 (距離化可能空間は有界距離空間と同相)

距離化可能空間 $X$ について、$X$ 上の有界な距離 $d$ であって、$X$ と同じ位相を定めるものが存在する。

命題 5.1.8 (距離化可能空間の可算積は距離化可能)

距離化可能空間の可算族 $\{X_i\}_{i \in \mathb{N}}$ について、$\prod_{i \in \mathbb{N}}X_i$ は距離化可能である。

5.2. 第二可算性

定義 5.2.1 (第二可算性)

位相空間 $X$ が第二可算であるとは、$X$ の基底? $B$ であって、高々可算な開集合の族であるようなものが存在することをいう。

例 5.2.2 (実数空間)

$\mathbb{R}$ は第二可算である。実際、有理数 $q,q'\in\mathbb{Q}$ について開集合 $(q,q') \subset \mathbb{R}$ 全体は $\mathbb{R}$ の開基となる。

命題 5.2.3 (コンパクトな距離空間は第二可算)

距離空間 $X$ について、$X$ が位相空間としてコンパクトならば、第二可算である。

証明 自然数 $i \in \mathbb{N}$ と $X$ の点 $x$ について、$U(x,i)$ を $x$ を中心とする半径 $\frac{1}{i}$ の開球とする。$i$ を固定したとき、$X$ のコンパクト性より、有限個の開球によって $X$ は覆われる。この有限個の開球全体の集合を $B_i$ とおく。このとき、$B=\bigcup_{i \in\mathbb{N}} B_i$ は可算集合である。

$B$ が $X$ の基底となることを示す。$X$ の開集合 $U$ と $U$ の点 $x$ について、ある自然数 $j$ であって、$U(x,j)\subset U$ なるものが存在する。このような $j$ を固定する。このとき、$B_{2j}$ は $X$ の開被覆であったため、$B_{2j}$ の元 $U(y,2j)$ であって $x$ を含むものが存在する。このとき、$y$ と $x$ の距離は $\frac{1}{2j}$ 未満であり、また $U(y,2j)$ の点は $y$ との距離が高々 $\frac{1}{2j}$ 未満である。よって、$U(y,2j)\subset U(x,j)$ が成り立つ。従って、$B$ は $X$ の基底である。

5.3. Urysohnの距離化定理

定理 5.3.1 (Urysohnの距離化定理)

6. 副有限空間

7. コンパクト空間と基数関数

A1. 半順序集合

A2. コンパクト性の類似概念

コンパクト性は位相空間論において非常に基本的な概念であるため、そのさまざまな類似概念についてもよく調べられてきた。そのような概念のいくつかについてここで紹介しようと思う。

A2.1. ミクロな有限性

定義 A2.1.1 (開被覆の点有限性)

位相空間 $X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ が点有限であるとは、任意の点 $x\in X$ について、$x\in U$ となる $U\in \mathcal{U}$ が高々有限個であることをいう。

(開被覆より引用)

定義 A2.1.2 (開被覆の局所有限性)

位相空間 $X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ が局所有限であるとは、任意の点 $x\in X$ について、ある $x$ の近傍 $V$ が存在し、$V\cap U\neq \emptyset$ となる $U\in \mathcal{U}$ が高々有限個であることをいう。

(開被覆より引用)

定義 A2.1.3 (開被覆の星状有限性)

位相空間 $X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ が星状有限であるとは、任意の $U\in \mathcal{U}$ について、$ U\cap V\neq \emptyset$ となる $V\in\mathcal{U}$ が高々有限個であることをいう。

(開被覆より引用)

定義 A2.1.4 (メタコンパクト性)

位相空間 $X$ がメタコンパクトであるとは、任意の $x$ の開被覆 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ の細分であって点有限なものが存在することをいう。

定義 A2.1.5 (パラコンパクト性)

位相空間 $X$ がパラコンパクトであるとは、任意の $x$ の開被覆 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ の細分であって局所有限なものが存在することをいう。

定義 A2.1.6 (強パラコンパクト性)

位相空間 $X$ が強パラコンパクトであるとは、任意の $x$ の開被覆 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ の細分であって星状有限なものが存在することをいう。

A2.2. 有限性を弱めた概念

定義 A2.2.1 (Lindelöf空間)

位相空間 $X$ がLindelöfであるとは、以下の性質を満たすことを指していう。

  • $X$ の任意の開被覆 $\mathcal{U}$ について、$\mathcal{U}$ の可算部分集合 $\mathcal{V}$ が存在して、$\mathcal{V}$ が $X$ の開被覆となる。

A3. 順序数・基数

A3.1. 定義

A3.2. 基数の演算

X. 非数学的項目

X.1. この記事を読むには

位相空間論の参考書にリストアップされた文献等を参考にされたい。

本稿において必要な位相空間論の知識は速習コース「位相空間論の基礎事項」に整理している。

順序数・基数の概念の詳細についてはxxx?を参照されたい。

X.2. この記事を読んだら

関連項目

参考文献

  • Ryszard Engelking, "General Topology", 1989

外部リンク



*1 これは選択公理による。

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Last-modified: 2020-10-24 (土) 22:34:12 (4d)