ネットによる位相空間論

本稿においては、ネットの収束を用いた位相空間論の基本的議論を説明する。ネットは単純に述べれば点列?を一般化した概念である。位相空間論においてネットを用いるメリットは、位相的性質をネットの収束により直観的に扱うことが出来る点であり、複雑な関数空間の位相を取り扱う関数解析の議論においては頻繁に用いられる。点列は、距離空間に代表される第一可算空間における収束の問題を扱うのに十分有効であるが、関数解析学における弱位相、弱*位相のような第一可算性のない位相における収束の問題を扱う際、必ずしも十分ではない。しかし点列の収束をネットの収束に一般化することで、位相空間の可算性に関わらず点列による収束の議論と全く同様の議論が有効になる。また、ネットの概念を用いればある種の命題の証明がほとんど自明化されることもある。ネット?フィルター?と同値な概念であり、同様にフィルターによる位相空間論も展開されるが、こちらは集合論の議論において用いられることが多い。本稿においてはネットによる閉性、連続性、Hausdorff 性、コンパクト性などの基本的な位相的性質の特徴付けを行う。また点列との対比のため可算性のある位相空間において、それらの点列による特徴付けを、実際に位相空間の可算性を用いて行う。そして最後にネットにより比較的容易な証明が可能であるTychonoff の定理?を示す。

1. ネットの定義

定義1.1 (有向集合)

$(\Lambda,\leq)$ を空でない前順序集合とする。任意の $\lambda_1,\lambda_2\in \Lambda$ に対し、$\lambda_3\in \Lambda$ で$\lambda_1\leq \lambda_3$ かつ $\lambda_2\leq \lambda_3$ を満たすものが存在するとき、$(\Lambda,\leq)$ を有向集合と言う。

例1.2

  • 自然数全体 $\mathbb{N}$ や整数全体 $\mathbb{Z}$ は通常の順序により有向集合である。
  • 位相空間 $X$ の点 $x$ に対し、$x$ の近傍全体は集合の逆包含関係による順序により有向集合である。

定義1.3 (ネット)

$X$ を集合、$\Lambda$ を有向集合とする。$\Lambda$ 上で定義され、$X$ に値を取る写像 $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}: \Lambda\ni\lambda\mapsto x_{\lambda}\in X$ を、$\Lambda$ によって添字付けられた $X$ のネットと言う。

定義1.4 (点列)

自然数全体 $\mathbb{N}$ によって添字付けられたネットのことを点列と言う。

定義1.5 (部分ネット)

$(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ を $\Lambda$ によって添字付けられた $X$ のネットとする。有向集合 $M$ と写像 $\phi: M\rightarrow \Lambda$ が、 $$ \forall \lambda_0\in \Lambda, \exists \mu_0\in M \text{ s.t. } \forall \mu\geq\mu_0,\phi(\mu)\geq \lambda_0 $$ を満たすとき、$X$ のネット $(x_{\phi(\mu)})_{\mu\in M}$ を $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ の部分ネットと言う。

定義1.6 (部分列)

$(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を $X$ の点列とする。$k:\mathbb{N}\rightarrow \mathbb{N}$ が $k(1)<k(2)<\ldots <k(n)<k(n+1)<\ldots$ を満たすとき、$X$ の点列 $(x_{k(n)})_{n\in \mathbb{N}}$ を $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ の部分列と言う。

注意1.7

点列の部分列は部分ネットであるが、点列の部分ネットは部分列であるとは限らない。実際、点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ に対し、$k(1)=k(2)<k(3)=k(4)<\ldots<k(2n-1)=k(2n)<\ldots$ となるように $k: \mathbb{N}\rightarrow\mathbb{N}$ を定義すると、 $(x_{k(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の部分ネットであるが、$(x_{k(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の部分列ではない。

定義1.8 (eventually in, frequently in)

集合 $X$ のネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ と部分集合 $A\subset X$ に対し、

  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ is eventually in $A$. $\Leftrightarrow$ $\exists \lambda_0\in \Lambda$ s.t. $\forall \lambda\geq \lambda_0$, $x_{\lambda}\in A$.
  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ is frquently in $A$. $\Leftrightarrow$ $\forall \lambda\in \Lambda$, $\exists\lambda_0 \geq \lambda$ s.t. $x_{\lambda_0}\in A$.

補題1.9 (基本補題)

$(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ のネット、$\mathcal{B}\subset 2^X$ を集合の逆包含関係による順序によって有向集合であるものとする。そして任意の $B\in \mathcal{B}$ に対し、

  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ is frequently in $B$.

が成り立つとする。このとき $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ の部分ネット $(x_{\phi(\mu)})_{\mu\in M}$ で任意の $B\in \mathcal{B}$ に対し、

  • $(x_{\phi(\mu)})_{\mu\in M}$ is eventually in $B$.

となるものが存在する。

証明

$M=\{(\lambda, B): x_{\lambda}\in B\} \subset \Lambda\times {\mathcal B}$ とおき、$M$ における前順序 $\leq$ を $(\lambda_1,B_1)\leq (\lambda_2,B_2)$ $\Leftrightarrow$ $\lambda_1\leq \lambda_2, B_2\subset B_1$ と定義すると、 $M$ は明らかに有向集合である。そして $\phi(\lambda, B)=\lambda$ として $\phi: M\rightarrow \Lambda$ を定義すれば $(x_{\phi(\mu)})_{\mu\in M}$ は条件を満たす部分ネットである。

定義1.10 (普遍ネット)

$(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ を $X$ のネットとする。任意の $A\subset X$ に対し、

  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ is eventually in $A$.
  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ is eventually in $X\backslash A$.

のうちのいずれかが成り立つとき、 $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の普遍ネットと言う。

定義1.11 (普遍部分ネット)

ネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ の部分ネットで普遍ネットであるものを $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の普遍部分ネットと言う。

定理1.12 (普遍部分ネットの存在)

任意のネットに対し普遍部分ネットが存在する。

証明

$(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ のネットとする。$\mathcal{F}\subset 2^X$ が次の条件を満たすとき、$\mathcal{F}$ を $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターと呼ぶこととする。

  • (1) $\mathcal{F}\neq \emptyset$.
  • (2) 任意の $F_1,F_2\in \mathcal{F}$ に対し、$F_1\cap F_2\in \mathcal{F}$.
  • (3) 任意の $F\in \mathcal{F}$ と $F\subset G\subset X$ なる任意の $G$ に対し、$G\in \mathcal{F}$.
  • (4) 任意の $F\in \mathcal{F}$ に対し、$(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ is frequently in $F$.

$\{X\}$ は$(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターであるから $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターは少なくとも $1$ つは存在する。そして $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルター全体は集合の包含関係による順序によって帰納的順序集合である。実際、$\{\mathcal{F}_j\}_{j\in J}$ を $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターからなる全順序集合とすると、$\bigcup_{j\in J}\mathcal{F_j}$ も$(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターである。よってZornの補題より $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターで、集合の包含関係による順序に関して極大なものが取れる。それを ${\mathcal F}$ とする。補題1.9より任意の $A\subset X$ に対し、$A\in {\mathcal F}$ か $X\backslash A\in {\mathcal F}$ が成り立つことを示せば証明は終わる。${\mathcal F}$ が $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターであることから次のいずれかが成り立つ。

  • (a) $\forall F\in \mathcal{F}$, $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ is frequently in $F\cap A$.
  • (b) $\forall F\in \mathcal{F}$, $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ is frequently in $F\backslash A$.

(a) が成り立つとき、 $$ \mathcal{F}_1=\{E\subset X: \exists F\in \mathcal{F} \text{ s.t } F\cap A\subset E\} $$ とおくと、${\mathcal F}_1$ は ${\mathcal F}$ を含む $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターであり、$A\in {\mathcal F}_1$ である。よって $\mathcal{F}$ の極大性より ${\mathcal F}_1={\mathcal F}$ であるから $A\in \mathcal{F}$ である。(b)が成り立つとき、 $$ {\mathcal F}_2=\{E\subset X: \exists F\in \mathcal{F} \text{ s.t. } F\backslash A\subset E\} $$ とおくと、$\mathcal{F}_2$ は $\mathcal{F}$ を含む $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対するフィルターであり、$X\backslash A\in \mathcal{F}_1$ である。よって $\mathcal{F}$ の極大性より $\mathcal{F}_2=\mathcal{F}$ であるから $X\backslash A\in \mathcal{F}$ である。

2. 位相空間のネットの収束点と堆積点

定義2.1 (ネットの収束点と堆積点)

$X$ を位相空間、$(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ を $X$ のネット、 $x\in X$ とする。$x$ が $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の収束点であるとは、$x$ の任意の近傍 $V$ に対し、

  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ is eventually in $V$.

が成り立つことを言う。 また、$x$ が $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の堆積点であるとは、$x$ の任意の近傍 $V$ に対し、

  • $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ is frequently in $V$.

が成り立つことを言う。$x$ が $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の収束点であることを、$(x_{\lambda})_{\lambda\in \Lambda}$ は $x$ に収束すると言う。また、このことを、$x_{\lambda}\rightarrow x$ や、$\lim_{\lambda\in\Lambda}x_{\lambda}=x$ と表す。点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の収束点は $\lim_{n\in \mathbb{N}}x_n$ より $\lim_{n\rightarrow\infty}x_n$ と表すのが普通である。

命題2.2 (堆積点と部分ネット)

$(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間 $X$ のネットとし、$x\in X$ とする。次は互いに同値である。

  • (1) $x$ は $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の堆積点である。
  • (2) $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の部分ネットで $x$ に収束するものが存在する。

証明

$(2)\Rightarrow(1)$ は自明である。$(1)\Rightarrow(2)$ は $x$ の近傍全体 $\mathcal{B}(x)$が集合の逆包含関係による順序によって有向集合であることと補題1.9による。

補題2.3 (閉包の点の近傍による特徴付け)

$X$ を位相空間、$A\subset X$、$x\in X$ とする。次は互いに同値である。

  • (1) $x\in\overline{A}$.
  • (2) $x$ の任意の近傍 $V$ に対し $A\cap V\neq \emptyset$.

証明

$x\notin \overline{A}$ ならば、$X\backslash \overline{A}$ は $x$ の開近傍であり、$A\cap (X\backslash \overline{A})=\emptyset$ である。よって $(2)\Rightarrow(1)$ が成り立つ。

$x$ のある開近傍 $V$ に対し $A\cap V=\emptyset$ であるならば $A\subset X\backslash V$ であり、$X\backslash V$ は閉集合であるから $\overline{A}\subset X\backslash V$ である。よって $x\notin \overline{A}$ であるから $(1)\Rightarrow(2)$ が成り立つ。

命題2.4 (閉包の点のネットによる特徴付け)

$X$ を位相空間、$A\subset X$、$x\in X$ とする。次は互いに同値である。

  • (1) $x\in\overline{A}$.
  • (2) $x$ に収束する $A$ のネットが存在する。

証明

$(2)\Rightarrow(1)$ は自明である。$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$x$ の近傍全体 $\mathcal{B}(x)$ は集合の逆包含関係による順序によって有向集合である。$x\in\overline{A}$ ならば、補題2.3より任意の $V\in \mathcal{B}(x)$ に対し $x_V\in A\cap V$ が取れる。こうしてできる $A$ のネット $(x_V)_{V\in\mathcal{B}(x)}$ は $x$ に収束する。よって $(1)\Rightarrow(2)$ が成り立つ。

3. 連続性のネットによる特徴付け

定理3

$X,Y$ を位相空間、$x\in X$, $f:X\rightarrow Y$ とする。次は互いに同値である。

  • $(1)$ $f$ は任意の $x\in X$ において連続である。
  • $(2)$ $x$ に収束する $X$ の任意のネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ に対し、$Y$ のネット $(f(x_{\lambda}))_{\lambda\in\Lambda}$ は $f(x)$ に収束する。

証明

$(1)\Rightarrow(2)$ は自明である。$(2)\Rightarrow(1)$ の対偶を示す。もし $(1)$ が成り立たないならば、$f(x)$ の近傍 $V$ で、任意の$U\in \mathcal{B}(x)$ に対し、$U\backslash f^{-1}(V)\neq\emptyset$ となるものが取れる。ただし$\mathcal{B}(x)$ は $x$ の近傍全体である。$\mathcal{B}(x)$ は集合の逆包含関係による順序により有向集合であるから、任意の $U\in \mathcal{B}(x)$ に対し、$x_U\in U\backslash f^{-1}(V)$ を取ることで、$X$ のネット $(x_U)_{U\in \mathcal{B}(x)}$ が定義できる。これは明らかに $x$ に収束する。しかし$f(x_U)\notin V$ $(\forall U\in \mathcal{B}(x))$ より、$(f(x_U))_{U\in \mathcal{B}(x)}$ は $f(x)$ に収束しない。よって $(2)$ は成り立たない。

4. Hausdorffの分離公理とネットの収束点の一意性

定理4

位相空間 $X$ に対し、次は互いに同値である。

  • $(1)$ $X$ はHausdorff の分離公理を満たす。
  • $(2)$ $X$ の任意の収束するネットに対しその収束点は唯一つである。

証明

$(1)\Rightarrow(2)$ は自明である。$(2)\Rightarrow(1)$ の対偶を示す。$X$ がHausdorff の分離公理を満たさないとすると、$x\neq y$ なる $x,y\in X$ で、任意の $U\in \mathcal{B}(x)$、$V\in\mathcal{B}(y)$ に対し、$U\cap V\neq\emptyset$ となるものが存在する。ただし $ \mathcal{B}(x)$、$\mathcal{B}(y)$ はそれぞれ $x,y$ の近傍全体である。$\Lambda=\{U\cap V: U\in \mathcal{B}(x), V\in\mathcal{B}(y)\}$ は空でない集合からなり、集合の逆包含関係による順序により有向集合である。よって任意の$\lambda\in\Lambda$ に対し $z_{\lambda}\in \Lambda$ を取ることによりネット $(z_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が定義でき、これは明らかに $x,y$ いずれにも収束する。よって $(2)$ は成り立たない。

5. コンパクト性のネットによる特徴付け

定理5

位相空間 $X$ に対し、次は互いに同値である。

  • $(1)$ $X$ はコンパクト空間 である。
  • $(2)$ $X$ の任意のネットは堆積点を持つ。
  • $(3)$ $X$ の任意のネットは収束する部分ネットを持つ。
  • $(4)$ $X$ の任意の普遍ネットは収束する。

証明

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとし $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ を $X$ の任意のネットとする。任意の $\lambda\in\Lambda$ に対し、$F_{\lambda}=\{x_{\mu}:\mu\geq\lambda\}$ とおく。このとき $\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\overline{F_{\lambda}}\neq\emptyset$ である。実際、もし$\bigcap_{\lambda\in\Lambda}\overline{F_{\lambda}}=\emptyset$ ならばコンパクト性より有限個の $\lambda_1,\ldots,\lambda_n\in \Lambda$ が取れて、$F_{\lambda_1}\cap\ldots\cap F_{\lambda_n}=\emptyset$ となるが、$\Lambda$ は有向集合なので $\mu\geq \lambda_1,\ldots,\mu\geq\lambda_n$ を満たす $\mu\in\Lambda$ が取れるので矛盾する。そこで $x\in \bigcap_{\lambda\in\Lambda}\overline{F_{\lambda}}$ を取れば、補題2.3より $x$ の任意の近傍 $V$ と任意の $\lambda\in \Lambda$ に対し $V\cap F_{\lambda}\neq\emptyset$ であるから、 $x$ は $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ の堆積点である。

$(2)\Leftrightarrow(3)$ は命題2.2による。

$(2)\Rightarrow(4)$ は普遍ネットの堆積点は収束点であることによる。

$(4)\Rightarrow(3)$ は定理1.12より任意のネットが普遍部分ネットを持つことによる。

$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$ が成り立つとする。もし $X$ がコンパクトではないならば $X$ の開被覆 $\{U_j\}_{j\in J}$ で、そのいかなる有限部分族も $X$ の開被覆ではないものが取れる。よって $J$ の空でない有限部分集合全体に集合の包含関係による順序を入れた有向集合 $\mathcal{F}_J$ を考えると、任意の $F\in \mathcal{F}_J$ に対し $x_F\in X\backslash \bigcup_{j\in F}U_j$ が取れ、$X$ のネット $(x_F)_{F\in \mathcal{F}_J}$ ができる。$(2)$ が成り立つので $(x_F)_{F\in \mathcal{F}_J}$ は堆積点 $x$ を持つ。$x\in U_{j_0}$ なる $j_0\in J$ を取る。$U_{j_0}$ は $x$ の開近傍であり、$x$ は$(x_F)_{F\in \mathcal{F}_J}$ の堆積点であるので、$\{j_0\}\in\mathcal{F}_J$ に対し、 $\{j_0\}\subset F$ なる $F\in \mathcal{F}_J$ で $x_F\in U_{j_0}$ なるものが取れる。よって、$x_F\in U_{j_0}\subset \bigcup_{j\in F}U_j$ となり、$x_F\in X\backslash \bigcup_{j\in F}U_j$ に矛盾する。ゆえに $X$ はコンパクトである。

6. 位相空間の可算性と点列

定義6.1 (基本近傍系)

$X$ を位相空間とする。$x\in X$ に対し $x$ の近傍からなる集合 $\mathcal{B}(x)$ が $x$ の基本近傍系であるとは、$x$ の任意の近傍 $V$ に対し $B\in \mathcal{B}(x)$ で $B\subset V$ なるものが存在することを言う。

定義6.2 (第一可算空間)

位相空間が第一可算空間である(第一可算公理を満たす)とは、任意の $x\in X$ に対し $x$ の基本近傍系として可算なものが取れることを言う。

補題6.3

$X$ を位相空間、$x\in X$ とし、$x$ が可算な基本近傍系を持つとする。このとき $x$ の近傍からなる列 $(B_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で次の条件を満たすものが取れる。

  • $x$ の任意の近傍 $V$ に対し $B_n\subset V$ なる $n\in\mathbb{N}$ が存在する。
  • 任意の$n\in \mathbb{N}$ に対し $B_{n+1}\subset B_n$.

証明

$\{U_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ を $x$ の可算な基本近傍系として、任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し、$B_n:=U_1\cap\ldots \cap U_n$ とおけば、$(B_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は条件を満たす。

命題6.4 (第一可算空間における点列の堆積点と部分列)

$(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を第一可算空間 $X$ の点列、$x\in X$ とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $x$ は $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の堆積点である。
  • $(2)$ $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の部分列で $x$ に収束するものが存在する。

証明

$(2)\Rightarrow(1)$ は自明である。$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとし、$x$ の近傍の列 $(B_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で補題6.3の条件を満たすものを取ると、 $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ の部分列 $(x_{k(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ を、$x_{k(n)}\in B_{n}$ $(\forall n\in\mathbb{N})$ となるように取れる。このとき $(x_{k(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $x$ に収束するので、 $(2)$ が成り立つ。

命題6.5 (第一可算空間における閉包の点の点列による特徴付け)

$X$ を第一可算空間、$A\subset X$、$x\in X$ とする。次は互いに同値である。

  • $(1)$ $x\in \overline{A}$.
  • $(2)$ $x$ に収束する $A$ の点列が存在する。

証明

$(2)\Rightarrow(1)$ は自明である。$x$ の近傍の列 $(B_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で補題6.3の条件を満たすものを取る。$x\in \overline{A}$ ならば、補題2.3より任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し $x_n\in A\cap B_n$ が取れる。こうしてできる $A$ の点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $x$ に収束する。よって $(1)\Rightarrow(2)$ が成り立つ。

命題6.6 (第一可算空間上で定義された写像の連続性の点列による特徴付け)

$X$ を第一可算空間、$Y$ を位相空間、$x\in X$、$f:X\rightarrow Y$ とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $f$ は $x$ において連続である。
  • $(2)$ $x$ に収束する $X$ の任意の点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ に対し、$Y$ の点列 $(f(x_n))_{n\in\mathbb{N}}$ は $f(x)$ に収束する。

証明

$(1)\Rightarrow(2)$ は自明である。 $(B_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を補題6.3における $x$ の近傍の列とする。$(2)\Rightarrow(1)$ の対偶を示す。 もし $(1)$ が成り立たたないならば、$f(x)$ の近傍 $V$ で、任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $B_n\backslash f^{-1}(V)\neq\emptyset$ となるものが取れる。そこで任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $x_n\in B_n\backslash f^{-1}(V)$ を取ることで $X$ の点列 $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を定義する。これは明らかに $x$ に収束する。しかし $f(x_n)\notin V$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ より $(f(x_n))_{n\in\mathbb{N}}$ は $f(x)$ に収束しない。よって $(2)$ は成り立たない。

定義6.7 (点列コンパクト)

位相空間 $X$ が点列コンパクトであるとは、$X$ の任意の点列が収束する部分列を持つことを言う。

命題6.8 (第一可算なコンパクト空間は点列コンパクト)

第一可算なコンパクト空間は点列コンパクトである。

証明

$X$ を第一可算なコンパクト空間とし、$(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ の任意の点列とする。定理5より $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は堆積点 $x$ を持つ。命題6.4より $(x_n)_{n\in \mathbb{N}}$ のある部分列は $x$ に収束する。よって $X$ は点列コンパクトである。

命題6.9 (点列コンパクトなLindelöf 空間はコンパクト)

点列コンパクトなLindelöf 空間?はコンパクト空間である。

証明

$X$ を点列コンパクトなLindelöf 空間?とする。$X$ がコンパクトではないと仮定すると、$X$ の開被覆 $\{U_j\}_{j\in J}$ で、そのいかなる有限部分族も $X$ の開被覆ではないものが取れる。$X$ はLindelöf 空間であるので、$\{U_j\}_{j\in J}$ の可算部分開被覆 $\{U_{j_n}\}_{n\in\mathbb{N}}$ が取れる。任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し、$x_n\in X\backslash \bigcup_{k=1}^{n}U_{j_k}$ を取り、$X$ の点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を定義する。$X$ は点列コンパクトであるので $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は収束する部分列を持つ。よって命題6.4より $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は堆積点 $x$ を持つ。$x\in U_{j_{n_0}}$ なる $n_0\in\mathbb{N}$ を取る。$U_{j_{n_0}}$ は $x$ の近傍であり、$x$ は $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の堆積点であるから、$n\geq n_0$ かつ $x_n\in U_{j_{n_0}}$ なる $n\in \mathbb{N}$ が取れる。よって $x_n\in U_{j_{n_0}}\subset \bigcup_{k=1}^{n}U_{j_k}$ となり、$x_n\in X\backslash \bigcup_{k=1}^{n}U_{j_k}$ に矛盾する。ゆえに $X$ はコンパクトである。

系6.10 (第二可算空間においてはコンパクトと点列コンパクトは同値)

第二可算空間においてはコンパクトと点列コンパクトは同値である。

証明

第二可算空間が第一可算空間かつLindelöf 空間?であることと、命題6.8命題6.9による。

7. 始位相、直積位相、Tychonoff の定理

定義7.1(始位相)

$X, J$ を空でない集合とし、各 $j\in J$ に対し位相空間 $(X_j,\mathcal{O}_j)_{j\in J}$ と写像 $f_j:X\rightarrow X_j$ が与えられているとする。このとき、 $$ \{f_{j_1}^{-1}(U_1)\cap \ldots \cap f_{j_n}^{-1}(U_n):n\in\mathbb{N}, j_1,\cdots,j_n\in J, U_1\in\mathcal{O}_{j_1},\ldots,U_n\in \mathcal{O}_{j_n}\} $$ の要素の合併で表される集合全体 $\mathcal{O}$ は $X$ の位相である。$\mathcal{O}$ は任意の $j\in J$ に対し $f_j:X\rightarrow X_j$ が連続となるような $X$ の位相のうち最弱のものとして特徴付けられる。$\mathcal{O}$ を $(f_j:X\rightarrow X_j)_{j\in J}$ から誘導される始位相と言う。

命題7.2(始位相に関するネットの収束の特徴付け)

$X$ に $(f_j:X\rightarrow X_j)_{j\in J}$ から誘導される始位相を入れる。$X$ のネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ と $x\in X$ に対し次は互いに同値である。

  • $(1)$ $x_{\lambda}\rightarrow x$.
  • $(2)$ 任意の $j\in J$ に対し $f_j(x_{\lambda})\rightarrow f_j(x)$.

証明

始位相の定義より各 $f_j:X\rightarrow X_j$ は連続であるので、定理3より $(1)\Rightarrow(2)$ が成り立つ。

$(2)\Rightarrow(1)$を示す。$(2)$ が成り立つとする。始位相の定義より $x$ の任意の近傍 $V$ に対し有限個の $j_1,\ldots,j_n\in J$ と開集合 $U_1\subset X_{j_1},\ldots,U_n\subset X_{j_n}$ で、 $$ x\in f_{j_1}^{-1}(U_1)\cap\ldots \cap f_{j_n}^{-1}(U_n)\subset V $$ なるものが取れる。各 $k\in \{1,\ldots,n\}$ に対し $U_k$ は $f_{j_k}(x)$ の開近傍であり、$(2)$ が成り立つので、$\lambda_k\in \Lambda$ が存在し、任意の$\lambda\geq\lambda_k$ に対し $f_{j_k}(x_{\lambda})\in U_k$ となる。$\Lambda$ は有向集合なので $\lambda_0\geq\lambda_1,\ldots,\lambda_0\geq \lambda_n$ なる $\lambda_0\in\Lambda$ が取れて、 $$ f_{j_k}(x_{\lambda})\in U_k\quad (\forall \lambda\geq\lambda_0,\forall k\in \{1,\ldots,n\}) $$ であるから、 $$ x_{\lambda}\in f_{j_1}^{-1}(U_1)\cap\ldots \cap f_{j_n}^{-1}(U_n)\subset V\quad (\forall \lambda\geq\lambda_0) $$ である。よって $x_{\lambda}\rightarrow x$ が成り立つ。

定義7.3(直積位相空間)

$J$ を空でない集合とし、各 $j\in J$ に対し位相空間 $X_j$ が与えられているとする。そして直積集合 $X=\prod_{j\in J}X_j$ を考え、各 $j\in J$ に対し $X$ から $X_j$ 上への自然な射影 $\pi_j:X\rightarrow X_j$ が与えられているとする。$(\pi_j:X\rightarrow X_j)_{j\in J}$ が $X$ に誘導する始位相による位相空間 $X$ を、位相空間の族 $(X_j)_{j\in J}$ の直積位相空間と言う。

命題7.4(直積位相空間のネットの収束の特徴付け)

位相空間の族 $(X_j)_{j\in J}$ の直積位相空間 $X=\prod_{j\in J}X_j$ を考え、各 $j\in J$ に対し $X$から $X_j$ 上への自然な射影を $\pi_j:X\rightarrow X_j$ とする。$X$ のネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ と $x\in X$ に対し、次は互いに同値である。

  • $(1)$ $x_{\lambda}\rightarrow x$.
  • $(2)$ 任意の $j\in J$ に対し $\pi_j(x_{\lambda})\rightarrow \pi_j(x)$.

証明

直積位相の定義と命題7.2による。

定理7.5(Tychonoff の定理)

コンパクト空間の直積位相空間はコンパクト空間である。

証明

$(X_j)_{j\in J}$ をコンパクト空間の族とし、$X=\prod_{j\in J}X_j$ をその直積位相空間、各 $j\in J$ に対し $X$から $X_j$ 上への自然な射影を $\pi_j:X\rightarrow X_j$ とする。$X$ がコンパクト空間であることを示すには、定理5より、 $X$ の任意の普遍ネット $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が収束することを示せばよい。各 $j\in J$ に対し $(\pi_j(x_{\lambda}))_{\lambda\in\Lambda}$ は コンパクト空間 $X_j$ の普遍ネットである(容易に確かめられる)からある $y_j\in X_j$ に収束する。そこで $y=(y_j)_{j\in J}\in X$ とおけば、命題7.4より $(x_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ は $y$ に収束する。よって $X$ はコンパクトである。

参考文献

  • Gert.K.Pedersen, "Analysis Now"

関連項目



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Last-modified: 2020-10-29 (木) 00:30:44 (10h)