モチヴィックコホモロジー

  • コメント 現在この記事は環境アップデート待ちにつき未完成です。

モチヴィックコホモロジー(motivic chomology)とは、代数幾何学に登場する種々のコホモロジー理論の中で、最も普遍的なコホモロジーである。ここでは、Voevodskyが構築したモチーフの理論を紹介しよう。

動機

代数的対応(algebraic correspondence)

  • コメント サイクル理論からの輸入品。関税無し。

$R$ を代数、 $k$ を体とする。以下本稿で登場するスキームは特に断らない限り、すべて $k$ 上分離的かつ有限型で滑らかであると仮定しよう。また、前層は特に断らない限り、アーベル群の圏に値を持つとする。スキーム $X$ から $Y$ への代数的対応を定義する。

定義

  • $X$ が連結のとき、被約かつ既約な(滑らかとは限らない)閉部分スキーム $Z \subset X\times_{k} Y$ であって、射影 $Z\longrightarrow X$ が全射な有限射となるとき、$Z$ は $X$ から $Y$ への 基本対応(elementary correspondence)という。基本対応の $R$ 係数の形式的な有限和 $\sum a_{i} Z_{i}$ のことを $X$ から $Y$ への代数的対応という。 $X$ から $Y$ への代数的対応全体のなすアーベル群を ${\rm Cor}_{k}(X,Y)$ とかく。
  • $X$ が連結でないときは、$X=\coprod X_{i}$ と連結成分に分解したとき、 ${\rm Cor}_{k}(X,Y)=\oplus {\rm Cor}_{k}(X_{i},Y)$ とし、この群の元のことを $X$ から $Y$ への代数的対応という。

対象が $k$ 上分離的かつ有限型で滑らかなスキームで、射は代数的対応であるような圏のことを ${\rm Cor}({\rm Sm}/k,R)$ あるいは単に ${\rm Cor}_{k}$ と記すことにしよう。

スキームの射 $f\colon X \longrightarrow Y$ に対して、そのグラフ$\Gamma_{f}$ は $X$ から $Y$ への基本対応である。これにより、いつでも ${\rm Sm}/k$ を ${\rm Cor}_{k}$ の部分圏と見なそう。

なぜ代数的対応を考えるのか?

  • 射 $f\colon X \longrightarrow Y$ はコホモロジー群の引き戻し $f^{*}\colon H^{*}(Y)\longrightarrow H^{*}(X)$ を誘導する。$X$ から $Y$ への直接の射がなくとも、コホモロジー群の間に準同型があるときもある。例えば、代数的対応 $Z\in {\rm Cor}_{k}(X,Y)$ は $H^{*}(Y)$ から $H^{*}(X)$ への準同型を与える。このように ${\rm Cor}_{k}$ はコホモロジーの間の準同型の情報を ${\rm Sm}/k$ より多く拾えるという利点がある。
  • 代数的対応を考えなければならないより積極的な理由も存在する。通常のホモトピー理論において、位相空間の間の二つの射 $f,g\colon X \longrightarrow Y$ がホモトピー同値であることを $F(-,0)=f, F(-,1)=g$ となる連続写像 $$ F\colon X\times I \longrightarrow Y $$ の存在性をもって定義していたことを思い出そう。しかし、これをスキームの射にそのまま援用することはできない。すなわち、スキームの間の二つの射 $f,g\colon X \longrightarrow Y$ がホモトピー同値であることを、$F(-,0)=f, F(-,1)=g$ となる射 $$ F\colon X\times \mathbb{A}^{1} \longrightarrow Y $$ の存在性をもって定義することは(推移性がないため)できない。しかしここで、${\rm Sm}/k$の射だけでなく、より広く ${\rm Cor}_{k}$ の射、すなわち代数的対応を考えることにより、上手くホモトピー同値性を定義することができるのである。

移送構造(Transfers structure)

  • コメント Transferを移送と訳すのは一般的ですか?

${\rm Cor}_{k}$ 上の前層のことを移送構造付き前層(presheaf with transfers)という。そのような前層のなす圏を ${\bf PST}(k,R)$ とかく。 ${\bf PST}(k,R)$ は十分多くの入射的対象を持つアーベル圏である。

  1. $\mathbb{G}_{a}=\mathscr{O}$ は ${\bf PST}(k,\mathbb{Z})$ の対象である。
  2. $\mathbb{G}_{m}=\mathscr{O}^{\times}$ は ${\bf PST}(k,\mathbb{Z})$ の対象である。
  3. 前層 $R_{tr}(X)$ を $U\longmapsto {\rm Hom}_{{\rm Cor}_{k}}(U,X)$ とすると、これはもちろん、移送構造付き前層となる。
  4. スキーム上の代数的サイクルを有理同値で割って得られるChow群は移送構造付き前層である。

$R_{tr}(X)$ は米田埋め込み ${\rm Cor}_{k} \longrightarrow {\bf PST}(k,R)$ によるスキーム $X$ の像であり、したがって、任意の移送構造付き前層 $\mathscr{F}$ に対して、 $$ {\rm Hom}_{{\bf PST}(k,R)}(R_{tr}(X),\mathscr{F})\simeq \mathscr{F}(X) $$ を満たす。さらに $R_{tr}(X)$ は我々が考える多くの位相で層になる。

定義

前層 $\mathscr{F}$ が $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変であるとは、任意のスキーム $X$ に対して、射影 $X\times \mathbb{A}^{1}\longrightarrow X$ が誘導する射 $\mathscr{F}(X)\longrightarrow \mathscr{F}(X\times \mathbb{A}^{1})$ が常に同型となることをいう。

なぜ、$\mathbb{A}^1$ なのか?

位相幾何学のような柔らかい図形を扱う分野と違って、代数幾何学に登場する多様体たちはより硬く、歪んだ多様体を人の手で勝手に真っすぐに矯正したり、平たく伸ばしたりはできない。局所的には非輪状な層たちも、多様体全体で大域切断すると、歪みを反映し、その歪な姿が “コホモロジー” として現れる。しかし、全体でも真っすぐな直線 $\mathbb{A}^1$ は、積をとっても、元々の多様体の曲がり具合に影響を与えない。

  • エタール基本群のアーベル商 $(X,x) \longmapsto \pi^{\rm ab}_{1}(X,x)$ は $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変ではない。

複体 $C_{*}\mathscr{F}$ と単体的アーベル群 $C_{\bullet}\mathscr{F}$

$$ \Delta^{n}={\rm Spec} (k[t_{0},\cdots,t_{n}])/(\sum_{i=0}^{n} t_{i}-1)\simeq \mathbb{A}^{n} $$ とし、$i$ 次面写像 $$\partial_{i}\colon \Delta^{n}\longrightarrow \Delta^{n+1} $$ を面 $t_{i}=0$ への自然な同型として定義し、$i$ 次退化を $$ s_{i}\colon \Delta^{n}\longrightarrow \Delta^{n-1} ; (t_{0},...,t_{n})\longrightarrow (t_{0},...,t_{i-1},t_{i}+t_{i+1},...,t_{n}) $$ と定めると、$(\Delta^{\bullet},\partial_{*},s_{*})$ は余単体的スキームになる。 アーベル群に値を持つような前層 $\mathscr{F}$ とスキーム $X$ に対して、複体 $$ C_{*}\mathscr{F}(X) ~ \colon ~ \cdots \longrightarrow \mathscr{F}(X\times \Delta^{2})\longrightarrow \mathscr{F}(X\times \Delta^{1}) \longrightarrow \mathscr{F}(X) \longrightarrow 0 $$ 及び 単体的アーベル群 $$ C_{\bullet}\mathscr{F} \colon n \longmapsto \mathscr{F}(X\times \Delta^{n}) $$ が考えられる。Dold-Kanの同型定理によれば、単体的アーベル群に値を持つ前層 $C_{\bullet}\mathscr{F}$ から構成される前層の複体 $C_{\bullet}^{DK}\mathscr{F}$ は $C_{*}\mathscr{F}$ と擬同型である。

  • $\mathscr{F}$ が $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変な前層だった場合、$\mathscr{F}(X\times \Delta^{n})$ はすべて $\mathscr{F}(X)$ と同型であり、微分には ${\rm id}$ と $0$ 射が交互に現れる。
  • $h_{n}\mathscr{F}=H_{n}C_{*}\mathscr{F}\colon X \longmapsto H_{n}C_{*}\mathscr{F}(X)$ は $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変な前層であり、特に、任意の $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変な前層 $\mathscr{G}$ に対して、 $$ {\rm Hom}(\mathscr{F},\mathscr{G})\simeq {\rm Hom}(h_{0}\mathscr{F},\mathscr{G}). $$

チェインホモトピー

前層、または前層からなる複体 $\mathscr{F}$ と閉点 $t \in \mathbb{A}^1$ とし、包含 $i_{t}\colon X\longrightarrow X\times \mathbb{A}^1;x\longmapsto (x,t)$ が誘導する準同型 $i_{t}^{*}=\mathscr{F}(i_{t})\colon \mathscr{F}(X\times \mathbb{A}^1)\longrightarrow \mathscr{F}(X)$ について、 $$ \mathscr{F} が \mathbb{A}^1 ホモトピー不変 \Longleftrightarrow i_{0}^{*}=i_{1}^{*} $$ となることが知られている。

  • 前層 $\mathscr{F}$ に対して、複体 $C_{*}\mathscr{F}$ は $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変である。
  • 特に、$h_{n}\mathscr{F}$ は $\mathbb{A}^1$ ホモトピー不変である。

ウェッジ積

点付きスキーム $(X,x)$ に対して、射 $x\colon {\rm Spec} (k) \longrightarrow X$ が誘導する射 $x_{*}\colon R\longrightarrow R_{tr}(X)$ の余核 を $R_{tr}(X,x)$ と書くことにしよう。このとき、$R_{tr}(X)=R\oplus R_{tr}(X,x)$ である。 $(X_{1},x_{1}),\cdots,(X_{n},x_{n})$ を $n$ 個の点付きスキームとすると、 $$ R_{tr}(X_{1}\wedge \cdots \wedge X_{n})={\rm Coker}(\oplus_{i} x_{i} \colon \bigoplus_{i} R_{tr}(X_{1}\times \cdots \hat{X}_{i}\times \cdots \times X_{n})\longrightarrow R_{tr}(X_{1}\times \cdots \times X_{n})) $$

モチヴィックコホモロジーの定義

  • コメント そろそろ本題に入ろう。

整数 $q \geq 0$ に対して、$R$ 係数のモチヴィック複体(motivic complex) $R(q)$ を次のように定義する。 $$ R(q):=C_{*}R_{tr}(\mathbb{G}_{m}^{\wedge q})[-q] $$ ただし、ここでの $\mathbb{G}_{m}$ は点付きスキーム $(\mathbb{A}^{1}-0,1)$ のことである。

定義

モチヴィック複体 $R(q)$ をスキーム $X$ 上のZariski層からなる複体とみたとき、そのコホモロジー群 $$H^{p,q}(X,R)=\mathbb{H}_{Zar}^{p}(X,R(q))$$ を $X$ のモチヴィックコホモロジー群という。

  • コメント Zariski位相でなくとも、このようなコホモロジー群は定義できる。実際、Grothendieck位相 $t$ (=et,Nis,cdh,...)に対して、 $$ H_{t}^{p,q}(X,R)=\mathbb{H}_{t}^{p}(X,R(q)\vert_{X_{t}}) $$ とすればよい。しかし、後で見るようにZariski位相でモチヴィックコホモロジーを取るのとNisnevich位相で取るのは、結局同じことであり、さらにもし $R$ が代数として $\mathbb{Q}$ を含むのであれば、それはエタール位相でのモチヴィックコホモロジーとも一致する。
  • 後ほど再度説明するが、ここで一旦、我々に馴染みあるモチヴィックコホモロジー群の例を挙げておこう。
  1. $H^{2,1}(X,\mathbb{Z})={\rm Pic}(X)\simeq {\rm Cl}(X)\simeq CH^{1}(X)$: 因子類群、ピカール群、$1$ 次Chow群、
  2. $H^{n,n}({\rm Spec}(K),\mathbb{Z})\simeq {\rm K}_{n}^{\rm M}(K)$: $n$ 次Milnor K群、
  3. $H^{1,1}(X,\mathbb{Z})=\Gamma(X,\mathscr{O}_{X}^{\times})$: 単数群。

qfh位相で

  • コメント qfhより強いか弱いか、それが問題だ。

qfh位相はVoevodskyの初期の仕事で導入された位相の一つである。彼はある種の有効なサイクルのなす群に値を持つ前層をどのような位相で層化したら、表現可能か? という問題への答えの一つとして、この位相を導入した。彼の結果は従来 $\mathbb{C}$ 上では研究が進んでいたChow多様体の理論の一般化とも言える。ここでは ${\rm Sm}/k$ ではなく、より広い圏 ${\rm Sch}/k$ 上のqfh位相について考えよう。

定義

  1. ${\rm Sch}/k$ を $k$ 上の分離的かつ有限型なスキームのなす圏とする。${\rm Sch}/k$ での射 $p\colon X \longrightarrow Y$ が位相的全射であるとは、$Y$ のZariski位相が $X$ のZariski位相の $p$ による商となっていることである。さらに $Y$ 上の任意のスキーム $Z$ に対して、$p$ の底変換 $X\times_{Y} Z \longrightarrow Z$ が位相的全射であるとき、$p$ は普遍的に位相的全射であるという。
  2. 射の族 $\{p_{i}\colon X_{i}\longrightarrow X\}$ がh被覆であるとは、$\coprod p_{p}\colon \coprod X_{i} \longrightarrow X$ が普遍的に位相的全射でことをいう。
  3. h被覆 $\{p_{i}\colon X_{i}\longrightarrow X\}$ の各 $p_{i}$ が準有限な射であれば、特にqfh被覆(quasi-finite h-covering)という。

$\mathscr{F}$ をサイト $({\rm Sch}/k)_{qfh}$ 上のアーベル群に値を持つ層とする。

Nisnevich位相で

  • コメント エタールとZariskiのいいとこ取り

cdh位相で

  • コメント ${\rm Sm}/k$ の外でもモチーフを考えたい、そんなVoevodskyの野心が表れた位相。

エタール位相で

  • コメント エタールは数論幾何にて重要。

Zariski位相で

  • コメント ょゎょゎ位相

モチーフの三角圏

  • コメント 導来圏の、その先へ!

いくつかの代数多様体のモチーフ

  • コメント これがあるから嬉しいんだよなぁ……

MilnorのK理論との関連

  • コメント ま、いいでしょこれは。

高次Chow群との関連

  • コメント Blochの考えたモチーフ。

双変型サイクルコホモロジー(bivariant cycle cohomology)

  • コメント 圧倒的美!!

$\mathbb{A}^{1}$ ホモトピー不変性

  • コメント 勢いだけでこのセクションを作ったが、さて何を書いたものやら。

例えば、あなたが代数幾何学をHartshorneの有名な教科書で勉強した場合、実はすでに $\mathbb{A}^{1}$ ホモトピー不変性と出会っていることになる。二章の命題 $6.6$ に同型 $$ {\rm Cl}(X)\simeq {\rm Cl}(X\times \mathbb{A}^{1}) $$ が書かれている。あるいはそうでないにしても、可換環 $A$ 上の多項式環 $A[t]$ の単元全体は $A$ の単元全体と等しいことを代数学の授業で習う。 $$ A^{\times}=A[t]^{\times}. $$ 他の様々な代数的な対象もこの性質を持つ。代数的K理論やsmooth base change性を持つエタールコホモロジー等、同様の性質を満たす対象が沢山ある。MorelとLevineの代数的コボルディズム理論、代数多様体上のある種のサイクルのなすChow群や高次Chow群などもそうである。位相幾何学における多くの重要な対象が、$I=[0,1]$ ホモトピー不変であるように、代数幾何学における多くの重要な対象(もちろんすべてではない)が $\mathbb{A}^{1}$ ホモトピー不変なのである。ここでは、この $\mathbb{A}^{1}$ ホモトピー不変性を持った対象をまとめて扱うためのVoevodskyの手法に軽く触れよう。なお、ここではモデル圏についての多少の知識を援用したい。詳しくはモデル圏を参照。

$\mathbb{A}^{1}$ホモトピー圏とモチーフの三角圏

  • コメント モチーフの三角圏を支配する。

被約冪作用素(reduced power operation)

  • コメント 美しい結果。

Eilenberg-MacLane空間

  • コメント Steenrod代数が無限ループ空間のコホモロジーであることとか。

ノルム剰余の同型定理

  • コメント Voevodskyの不動の功績。

関連項目



トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2020-10-18 (日) 23:30:23 (9d)