位相空間論14:距離空間の位相(2)

この章では、前の章に続いて距離空間に関連した事柄を述べる。とくに、距離空間がコンパクトであるためのいくつかの同値な条件を取り上げる。また、距離空間の可算個の直積空間が距離化可能となることを示し、その応用として位相空間が距離化可能であるための一つの十分条件を与えるUrysohnの距離化定理を証明する。

入門テキスト「位相空間論」

  • 位相空間論14:距離空間の位相(2)

位相空間がある意味で「可算な大きさをもつ」ことを示す性質として、第二可算性(定義 3.6)と可分性(定義 4.13)をすでに取り上げた。このような性質として、もう一つLindelöf性がある。Lindelöf性はコンパクト性の直接の一般化である。

定義 14.1 (Lindelöf空間)

位相空間 $X$ がLindelöf空間であるとは、$X$ の任意の開被覆に対して、その高々可算な部分被覆が存在することをいう。$\square$

コンパクト性の定義(定義 9.2)での「有限な部分被覆」を「高々可算な部分被覆」に弱めたものが上の定義である。したがって、コンパクト空間はLindelöf空間となる。以下の二つの命題は、コンパクト性のときと同様に証明できることなので、証明を省略する。

命題 14.2 (部分集合のLindelöf性の特徴づけ)

$X$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。このとき、次は同値である。

  • (1) $A$ は($X$ からの相対位相について)Lindelöf空間である。
  • (2) $A$ の $X$ における任意の開被覆は、高々可算な部分被覆をもつ。

証明

命題 9.7と同様に証明できる。$\square$

命題 14.3 (Lindelöf空間の閉集合はLindelöf空間)

$X$ をLindelöf空間、$A$ を $X$ の閉集合とする。このとき、$A$ はLindelöf空間である。

証明

命題 14.2を用いれば、命題 9.9と同様に証明できる。$\square$

命題 14.4 (第二可算な空間はLindelöf空間)

第二可算な位相空間はLindelöf空間である。

証明

$X$ を第二可算な位相空間とすると、$X$ は高々可算な開基 $\mathcal{B}$ をもつ。$X$ がLindelöf空間であることを示すため、$X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ を任意に与える。このとき $$ \mathcal{B}'=\{B\in\mathcal{B}\,|\,\text{ ある }U\in\mathcal{U}\text{ に対して }B\subset U\} $$ とおけば、$\mathcal{B}'\subset\mathcal{B}$ であるから $\mathcal{B}'$ は高々可算である。さらに、各 $B\in\mathcal{B}'$ に対して、$U_B\in\mathcal{U}$ を $B\subset U_B$ となるように選べる。このとき、$\mathcal{U}'=\{U_B\,|\,B\in\mathcal{B}'\}$ とおけば $\mathcal{U}'$ は $\mathcal{U}$ の高々可算な部分集合であるが、この $\mathcal{U}'$ が $X$ の被覆となることを示そう。そのため $x\in X$ とする。$\mathcal{U}$ は $X$ の被覆であるから、ある $U\in\mathcal{U}$ が存在して $x\in U$ である。次に、$\mathcal{B}$ は $X$ の開基であって $U$ は $X$ の開集合であるから、ある $B\in\mathcal{B}$ が存在して $x\in B\subset U$ である。すると、$\mathcal{B}'$ の定義により $B\in\mathcal{B}'$ であるから、$U_B$ が定義され、$B\subset U_B$ を満たす。すると $x\in U_B\in\mathcal{U}'$ である。これで、$\mathcal{U}'$ が $X$ の被覆であることが示された。結局、任意に与えられた $X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ が高々可算な部分被覆 $\mathcal{U}'$ をもつことが示されたから、$X$ はLindelöf空間である。$\square$

定理 14.5 (距離空間について第二可算・可分・Lindelöfは同値)

$(X, d)$ を距離空間とするとき、次は同値である。

  • (1) $X$ は第二可算である。
  • (2) $X$ は可分である。
  • (3) $X$ はLindelöf空間である。

証明

命題 4.14命題 4.15により、(1)と(2)は同値である。また、命題 14.4では、(1)$\Rightarrow$(3)が成り立つことを示した。よって、あとは(3)$\Rightarrow$(1)を示せばよい。そこで、距離空間 $(X, d)$ がLindelöf空間であるとする。各 $n\in\mathbb{N}$ に対して、$(X, d)$ の半径 $2^{-n}$ の開球体すべてからなる $X$ の開被覆 $$ \mathcal{U}_n=\{B(x, 2^{-n})\,|\,x\in X\} $$ を考える。$X$ はLindelöf空間なので、各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $\mathcal{U}_n$ は高々可算な部分被覆 $\mathcal{V}_n$ を選べる。このとき、$\mathcal{B}=\bigcup_{n=1}^\infty \mathcal{V}_n$ とおけば $\mathcal{B}$ は $X$ の開集合からなる高々可算な族である。このとき、$\mathcal{B}$ が $X$ の開基であることを示そう。そのため、$X$ の開集合 $U$ と $x\in U$ を任意に与える。すると、ある $n\in\mathbb{N}$ に対して、$B(x, 2^{-n})\subset U$ である。$\mathcal{V}_{n+1}$ は $X$ の開被覆だから、ある $V\in\mathcal{V}_{n+1}$ に対して $x\in V$ である。$V\in\mathcal{V}_{n+1}\subset\mathcal{U}_{n+1}$ であるので、ある $x'\in X$ が存在して $V=B(x', 2^{-(n+1)})$ である。すると、$V\subset B(x, 2^{-n})$ である。実際、$y\in V$ を任意に与えると、$d(x',y)<2^{-(n+1)}$ であるが、一方 $x\in V$ により $d(x', x)<2^{-(n+1)}$ であり、したがって $d(x, y)\leq d(x,x')+d(x',y)<2^{-(n+1)}+2^{-(n+1)}=2^{-n}$ となり、よって $y\in B(x, 2^{-n)}$ である。したがって、$V\subset B(x, 2^{-n})\subset U$ であり、よって $x\in V\subset U$ である。$V\in\mathcal{V}_{n+1}\subset\mathcal{B}$ であるから、これで $\mathcal{B}$ が $X$ の開基であることが示された。$\mathcal{B}$ は高々可算であったから、$X$ が第二可算であることが示された。$\square$

系 14.6 (コンパクトな距離空間は第二可算)

コンパクトな距離空間は第二可算である。

証明

コンパクトな距離空間は明らかにLindelöf空間であるから、定理 14.5により第二可算となる。$\square$

系 14.7 (可分距離空間、およびLindelöf距離空間の部分空間)

可分な距離空間の任意の部分空間は可分である。また、Lindelöf空間である距離空間の任意の部分空間はLindelöf空間となる。

証明

距離空間については、可分性やLindelöf性は定理 14.5により第二可算性と同値である。ところが、命題 6.11により、第二可算性は部分空間に引き継がれるから、上の主張は成り立つ。$\square$

例 14.8 (可分性やLindelöf性は部分空間に必ずしも引き継がれない)

一般の位相空間については、可分な空間の部分空間は必ずしも可分ではないし、Lindelöf空間の部分空間は必ずしもLindelöf空間とはならない。これらのことを示す例を挙げよう。

まず、例 12.20において考えたSorgenfrey直線 $\mathbb{S}$ を二つ直積したもの $\mathbb{S}^2=\mathbb{S}\times\mathbb{S}$ を考える。例 12.20で述べたように、$\mathbb{Q}^2$ は $\mathbb{S}^2$ の可算な稠密部分集合である。したがって、$\mathbb{S}^2$ は可分である。また、例 12.20では、$\mathbb{S}^2$ の部分集合 $$ A=\{(x,y)\in\mathbb{S}\times\mathbb{S}\,|\,x+y=0\} $$ が $\mathbb{S}^2$ の部分空間として離散空間となることを述べた。$A$ は非可算な離散空間であるから、可分ではない。

次に、$Y$ を非可算集合とし、$Y$ に属していない点 $\infty$ を考えて $X=Y\cup\{\infty\}$ とする。$U\subset X$ に対して、$U$ が開集合であるのは $U\subset Y$ であるかまたは $X\setminus U$ が高々可算集合であるときと定義する。すると開集合系の公理が満たされることが確かめられ、$X$ は位相空間となる。このとき、$X$ がLindelöf空間となることが簡単に確かめられる。さらに、$Y$ は $X$ の部分空間と見たときに離散空間である。$Y$ は非可算な離散空間であるから、Lindelöf空間ではない。実際、$\{\{y\}\,|\,y\in Y\}$ は $Y$ の開被覆であって高々可算な部分被覆をもたない。$\square$

続いて、距離空間の全有界性の概念について述べる。

定義 14.9 ($\varepsilon$ 稠密)

$(X, d)$ を距離空間とし、$A\subset X$ とする。$A$ が $(X, d)$ において $\varepsilon$ 稠密($\varepsilon$-dense)であるとは、任意の $x\in X$ に対して $a\in A$ が存在して $d(x, a)<\varepsilon$ となることをいう。

定義から明らかに、$A$ が $(X, d)$ において $\varepsilon$ 稠密であることは $\bigcup_{a\in A} B(a, \varepsilon)=X$ が成立することと同値である。

定義 14.10 (全有界)

距離空間 $(X, d)$ が全有界(totally bounded)であるとは、任意の $\varepsilon>0$ に対して、$X$ の有限部分集合 $F$ が存在して $(X, d)$ において $\varepsilon$ 稠密となること、つまり $\bigcup_{a\in F} B(a,\varepsilon)=X$ となることをいう。$\square$

命題 14.11 (全有界距離空間は有界)

$(X, d)$ を全有界な距離空間とする。このとき、$(X, d)$ は有界である。

証明

全有界性の定義で $\varepsilon=1$ とすることで、$X$ の有限部分集合 $F$ で $X=\bigcup_{a\in F} B(a,1)$ となるものが存在することが分かる。$F$ は有限集合だから、 $$ M=\max\{d(a,b)\,|\,a, b\in F\}\in [0,\infty) $$ が存在する。$x, y\in X$ を任意に与える。$a, b\in F$ を $x\in B(a,1),$ $y\in B(b,1)$ となるように取れば、 $$ d(x, y)\leq d(x, a)+d(a, b)+d(b, y)\leq 1+M+1=M+2 $$ となる。したがって、$\operatorname{diam} X\leq M+2<\infty$ であるから、$X$ は有界である。$\square$

例 14.12 (全有界な距離空間と、そうでない距離空間)

命題 14.11により、有界でない距離空間は、すべて全有界ではない。たとえばEuclid空間 $\mathbb{R}^n$ は全有界ではない。

閉区間 $[a, b]$(ただし、$-\infty<a<b<+\infty$)は全有界である。これを示すために、任意の $\varepsilon>0$ を与えよう。$n\in\mathbb{N}$ を $(b-a)/n<\varepsilon$ となるようにとり、 $$ F=\{a+(b-a)i/n\,|\,i=0,1,\ldots, n\} $$ とおけば、$F$ は $[a, b]$ の有限部分集合で、$[a, b]$ において $\varepsilon$ 稠密となる。

有界な距離空間は必ずしも全有界ではない。たとえば、$X$ を無限集合とし、$X$ 上の距離 $d$ を、$x=y$ のとき $d(x,y)=0$ とし、$x\neq y$ のとき $d(x, y)=1$ とすることで定める(例 1.20参照)。このとき任意の $x, y\in X$ に対して $d(x, y)\leq 1$ なので、$(X, d)$ は有界である。 一方、任意の $x\in X$ に対して $B(x,1)=\{x\}$ となるから、任意の有限集合 $F\subset X$ に対して $\bigcup_{x\in F} B(x,1)=F\neq X$ となる。このことは $(X, d)$ は $\varepsilon=1$ に対して全有界性の定義を満たさないことを意味するので、$(X, d)$ は全有界ではない。$\square$

命題 14.13 (全有界距離空間の部分集合は全有界)

$(X, d)$ を全有界な距離空間とする。このとき、任意の $A\subset X$ に対して $A$ は全有界となる。

証明

$\varepsilon>0$ を任意に与える。$A$ の部分集合 $F$ であって $A$ において $\varepsilon$ 稠密であるものを見つければよい。いま $(X, d)$ は全有界であるから、$X$ の部分集合 $F_0$ であって $(X, d)$ において $\varepsilon/2$ 稠密であるものが存在する。さらに、$F_1$ を $$ F_1=\{x\in F_0\,|\,\text{ある }a\in A{ に対して }d(x, a)<\varepsilon/2\} $$ と定義し、各 $x\in F_1$ に対して $a_x\in A$ を $d(x, a_x)<\varepsilon/2$ であるように取る。このとき $F=\{a_x\,|\,x\in F_1\}$ とおけば、$F$ は $A$ の有限部分集合である。$F$ が $A$ において $\varepsilon$ 稠密であることを示すため、$a\in A$ を任意に与える。$F_0$ は $(X, d)$ において $\varepsilon/2$ 稠密であったから、ある $x\in F_0$ に対して $d(x, a)<\varepsilon/2$ である。すると、$a\in A$ であることから $F_1$ の定義により $x\in F_1$ である。したがって $a_x$ が定義され、$d(a, a_x)\leq d(a, x)+d(x, a_x)<\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon$ である。これで $F$ が $A$ において $\varepsilon$ 稠密であることが分かり、$A$ の全有界性が示された。$\square$

命題 14.14 (全有界部分集合の閉包は全有界)

$(X, d)$ を距離空間とし、$A\subset X$ が全有界であるとする。このとき閉包 $\operatorname{Cl} A$ も全有界である。

証明

$\varepsilon>0$ を任意に与える。$A$ は全有界なので、有限集合 $F\subset A$ であって、$A$ において $\varepsilon/2$ 稠密なものが存在する。このとき、$F$ が $\operatorname{Cl} A$ において $\varepsilon$ 稠密であることを示そう。そこで、$x\in\operatorname{Cl} A$ を任意に与える。すると、$B(x, \varepsilon/2)\cap A\neq\emptyset$ であるので、点 $y\in B(x, \varepsilon/2)\cap A$ を一つ取り固定する。$F$ は $A$ において $\varepsilon/2$ 稠密なので、$z\in F$ が存在して $d(y,z)<\varepsilon/2$ である。すると、$d(x, z)<\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon$ である。$z\in F$ であるから、これで $F$ が $\operatorname{Cl} A$ において $\varepsilon$ 稠密であることが示された。$\square$

完備性と同じように、全有界性も位相的性質ではない。つまり、二つの距離空間が同相であっても、一方が全有界で、他方が全有界でないことが起こり得る。このことは以下の例から分かる。

注意 14.15 (全有界性は位相的性質ではない)

例 13.11と同様に、$X=[0,\infty)$ と $Y=[0, 1)$ を考える。例 13.11で見たように、$X$ と $Y$ は同相である。$X$ は有界ではないから、全有界ではない。一方、例 14.12により $[0,1]$ は全有界であり、$Y$ はその部分集合であるので、命題 14.13により $Y$ は全有界である。$\square$

命題 14.16 (全有界性は一様同相によって保たれる)

$(X, d)$ と $(Y, d')$ を距離空間とし、$(X, d)$ は全有界であるとする。このとき、一様連続写像 $f\colon X\to Y$ であって全射であるものが存在すれば、$(Y, d')$ も全有界である。とくに、$(X, d)$ と $(Y, d')$ が一様同相であれば、$(Y, d')$ も全有界である。

証明

$(X, d)$ を全有界な距離空間、$(Y, d')$ を距離空間とし、$f\colon X\to Y$ を距離空間 $(Y, d')$ への全射な一様連続写像とする。$(Y, d')$ の全有界性を示すため、$\varepsilon>0$ を任意に与える。$f$ の一様連続性により、$\delta>0$ が存在して、$x, x'\in X,\, d(x, x')<\delta$ のとき常に $d'(f(x), f(x'))<\varepsilon$ となる。$(X, d)$ の全有界性により、$X$ の有限部分集合 $F$ が存在して、$F$ は $(X, d)$ において $\delta$ 稠密となる。このとき、$f(F)$ は $Y$ の有限部分集合であるが、$f(F)$ が $(Y, d')$ において $\varepsilon$ 稠密であることを示そう。そこで、$y\in Y$ を任意に与える。いま $f$ は全射であるから、ある $x\in X$ が存在して $f(x)=y$ である。$F$ は $(X,d)$ において $\delta$ 稠密なので、$a\in F$ が存在して、$d(x,a)<\delta$ となる。すると、$d'(y,f(a))=d'(f(x),f(a))<\varepsilon$ である。$f(a)\in f(F)$ であるから、これで $f(F)$ が $(Y, d')$ において $\varepsilon$ 稠密であることが示され、$(Y, d')$ が全有界であることが示された。$\square$

続いて、点列の部分列と点列コンパクト性の概念について述べる。

定義 14.18 (部分列)

$X$ を位相空間とし、$(x_n)_{n=1}^\infty$ を $X$ の点列とする。$X$ の点列 $(x'_n)_{n=1}^\infty$ が $(x_n)_{n=1}^\infty$ の部分列(subsequence)であるとは、$1\leq k_1<k_2<\cdots$ であるような整数列 $(k_n)_{n=1}^\infty$ が存在して、各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $x'_n=x_{k_n}$ となることをいう。$\square$

定義 14.19 (点列コンパクト)

位相空間 $X$ が点列コンパクト(sequentially compact)であるとは、$X$ の任意の点列が収束する部分列をもつことをいう。すなわち、$X$ の任意の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ に対して、$(x_n)_{n=1}^\infty$ の部分列 $(x'_n)_{n=1}^\infty$ と点 $x\in X$ が存在して $x'_n\to x$ となることをいう。$\square$

定理 14.20 (距離空間がコンパクトであるための同値な条件)

$(X, d)$ を距離空間とするとき、以下は同値である。

  • (1) $X$ はコンパクトである。
  • (2) $X$ は点列コンパクトである。
  • (3) $X$ は全有界かつ完備である。

証明

(1)$\Rightarrow$(2)を示す。距離空間 $(X, d)$ がコンパクトであるとして、$X$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ を任意に与える。$(x_n)_{n=1}^\infty$ が収束する部分列をもつことを示そう。各 $n\in\mathbb{N}$ に対して、$X$ の閉集合 $F_n$ を $$ F_n=\operatorname{Cl} \{x_k\,|\,k\geq n\} $$ で定義する。すると、$F_n$ は空でなく $F_{n+1}\subset F_n$ であるから、命題 9.13により $\bigcap_{n=1}^\infty F_n\neq\emptyset$ である。そこで、点 $x\in\bigcap_{n=1}^\infty F_n$ を一つ取り固定する。$x\in F_1$ であるから、$B(x,1)\cap\{x_k\,|\,k\geq 1\}\neq\emptyset$ である。よって、$k_1\in\mathbb{N}$ が存在して $x_{k_1}\in B(x,1)$ となる。次に、$x\in F_{k_1+1}$ であるから、$B(x, 1/2)\cap\{x_k\,|\,k\geq k_1+1\}\neq\emptyset$ である。よって、$k_2>k_1$ が存在して $x_{k_2}\in B(x,1/2)$ となる。さらに、$x\in F_{k_2+1}$ であるから、$B(x, 1/3)\cap\{x_k\,|\,k\geq k_2+1\}\neq\emptyset$ である。よって、$k_3>k_2$ が存在して $x_{k_3}\in B(x,1/3)$ となる。

この操作を繰り返して、整数列 $1\leq k_1<k_2<k_3<\cdots$ を $x_{k_i}\in B(x,1/i)\,(i\in\mathbb{N})$ となるように選べる。すると、$(x_{k_i})_{i=1}^\infty$ は $(x_n)_{n=1}^\infty$ の部分列であって $x$ に収束する。

(2)$\Rightarrow$(3)を示す。距離空間 $(X,d)$ が点列コンパクトであるとしよう。まず $(X,d)$ の全有界性を示すため、$(X, d)$ が全有界でなかったと仮定しよう。すると $\varepsilon>0$ が存在して、いかなる有限集合 $F\subset X$ に対しても $\bigcup_{x\in F} B(x,\varepsilon)\neq X$ である。このときとくに $F=\emptyset$ とすることで $X\neq\emptyset$ が分かるから、$x_1\in X$ を一つ取り固定する。次に $F=\{x_1\}$ として $B(x_1,\varepsilon)\neq X$ が分かるから、$x_2\in X\setminus B(x_2,\varepsilon)$ を一つ取る。一般に、$x_1,\ldots, x_n\in X$ まで取られたとき、$F=\{x_1,\ldots, x_n\}$ として $\bigcup_{i=1}^n B(x_i,\varepsilon)\neq X$ が分かるので、$x_{n+1}\in X\setminus\bigcup_{i=1}^n B(x_i,\varepsilon)$ を一つ取る。 この操作により、点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が得られる。この点列のつくり方から $$ d(x_i, x_j)\geq\varepsilon\quad(i, j\in\mathbb{N},\,i\neq j)\qquad(\star) $$ である。もし、$(x_n)_{n=1}^\infty$ のある部分列 $(x'_n)_{n=1}^\infty$ がある点 $x\in X$ に収束したとすれば、$N\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\geq N$ のとき常に $d(x'_n, x)<\varepsilon/2$ である。したがって、 $$ d(x'_N, x'_{N+1})\leq d(x'_N, x)+d(x, x'_{N+1})<\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon $$ である。しかし、$(x'_n)_{n=1}^\infty$ は $(x_n)_{n=1}^\infty$ の部分列であったから、$i<j$ であるようなある $i, j\in\mathbb{N}$ を用いて $x'_N=x_i,$ $x'_{N+1}=x_j$ と表せる。すると $d(x_i, x_j)<\varepsilon$ となり、これは $(\star)$ に反する。これで $(x_n)_{n=1}^\infty$ が収束する部分列をもたないことが分かったが、これは $(X, d)$ を点列コンパクトとしていたことに反する。この矛盾により $(X, d)$ は全有界であることが示された。

次に、$(X, d)$ の完備性を示す。そのため、$(x_n)_{n=1}^\infty$ を $(X, d)$ のCauchy列としよう。$(X, d)$ は点列コンパクトであるから、$(x_n)_{n=1}^\infty$ の部分列 $(x_{k_n})_{n=1}^\infty$ と $x\in X$ が存在して $(x_{k_n})_{n=1}^\infty$ は $x$ に収束する。ただし、$(k_n)_{n=1}^\infty$ は $1\geq k_1<k_2<\cdots$ となる整数列である。このとき $(x_n)_{n=1}^\infty$ が $x$ に収束していることを示そう。そのため $\varepsilon>0$ とする。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $(X, d)$ のCauchy列であるから、$N\in\mathbb{N}$ が存在して $n, m\geq N$ のとき常に $d(x_n, x_m)<\varepsilon/2$ である。他方 $(x_{k_n})_{n=1}^\infty$ は $x$ に収束するから、$N'\in\mathbb{N}$ が存在して $n\geq N'$ のとき常に $d(x_{k_n}, x)<\varepsilon/2$ となる。 必要なら $N'$ を大きく取り換えて $N'\geq N$ であるとしてよい。すると、$k_{N'}\geq N'\geq N$ であることから、$n\geq N$ のとき $$ d(x_n, x)\leq d(x_n, x_{k_N'})+d(x_{k_N'}, x)<\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon $$ となる。これで、$(x_n)_{n=1}^\infty$ が $x$ に収束することが示され、$(X, d)$ の完備性が示された。

(3)$\Rightarrow$(1)を示す。$(X, d)$ が全有界かつ完備な距離空間であるとする。$X$ がコンパクトであることを背理法によって証明する。もし、$X$ がコンパクトでないとすれば、$X$ の開被覆 $\mathcal{U}$ であって有限な部分被覆をもたないものが存在する。いま $(X, d)$ は全有界なので、各 $n\in\mathbb{N}$ に対して、有限集合 $F_n\subset X$ が存在して $X=\bigcup_{x\in F_n} B(x, 2^{-n})$ となる。

さて、$X=\bigcup_{x\in F_1} B(x, 2^{-1})$ であることに注目する。もし、どの $x\in F_1$ に対しても $B(x, 2^{-1})$ が $\mathcal{U}$ の有限個の要素によって覆われるならば、$F_1$ の有限性により、$X$ そのものが $\mathcal{U}$ の有限個の要素で覆われ、これは $\mathcal{U}$ が有限な部分被覆をもたないとしていたことに反する。したがって、$x_1\in F_1$ が存在して、$B(x_1, 2^{-1})$ は $\mathcal{U}$ の有限個の要素では覆われない。次に $$ F'_2=\{x\in F_2\,|\,B(x, 2^{-2})\cap B(x_1, 2^{-1})\neq\emptyset\} $$ とおく。すると $$ B(x_1, 2^{-1})\subset\bigcup_{x\in F'_2} B(x, 2^{-2}) $$ である。もし、どの $x\in F_2$ に対しても $B(x, 2^{-2})$ が $\mathcal{U}$ の有限個の要素によって覆われるならば、上の式と $F'_2$ の有限性により、$B(x_1, 2^{-1})$ が $\mathcal{U}$ の有限個の要素で覆われることになり、$x_1$ の取り方に反する。よって、ある $x_2\in F_2$ が存在して、$B(x_2, 2^{-2})$ は $\mathcal{U}$ の有限個の要素では覆われない。次に、 $$ F'_3=\{x\in F_3\,|\,B(x, 2^{-3})\cap B(x_2, 2^{-2})\neq\emptyset\} $$ とおく。すると $$ B(x_2, 2^{-2})\subset\bigcup_{x\in F'_3} B(x, 2^{-3}) $$ である。さきほどと同様の議論により、ある $x_3\in F'_3$ が存在して、$B(x_3, 2^{-3})$ は $\mathcal{U}$ の有限個の要素では覆われない。

この操作を繰り返すことにより、点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が得られ、各 $n\in\mathbb{N}$ に対して次の性質を満たす。

  • (i) $B(x_n, 2^{-n})$ は $\mathcal{U}$ の有限個の要素では覆われない。
  • (ii) $B(x_n, 2^{-n})\cap B(x_{n+1}, 2^{-(n+1)})\neq\emptyset$ である。

(ii) により、$d(x_n, x_{n+1})\leq 2^{-n}+2^{-(n+1)}<2^{-n}+2^{-n}=2^{-(n-1)}$ であるから、一般に $n\geq m$ のとき $$ d(x_n, x_m)=\sum_{i=m}^{n-1} d(x_{i+1}, x_i)<\sum_{i=m}^{n-1} 2^{-(i-1)}<2^{-(m-2)} $$ である。$(x_n)_{n=1}^\infty$ がCauchy列であることを示すため、任意に $\varepsilon>0$ を与える。$N\in\mathbb{N}$ を $2^{-(N-2)}<\varepsilon$ となるように取れば、上で示したことより $n, m\geq N$ のとき、 $$ d(x_n, x_m)<\max\{2^{-(m-2)}, 2^{-(n-2)}\}\leq 2^{-(N-2)}<\varepsilon $$ である。これで $(x_n)_{n=1}^\infty$ がCauchy列であることが示された。$(X, d)$ は完備であるとしていたから、$(x_n)_{n=1}^\infty$ はある $x\in X$ に収束する。$\mathcal{U}$ は $X$ の開被覆であったから、ある $U\in\mathcal{U}$ に対して $x\in U$ である。$N\in\mathbb{N}$ を $B(x, 2^{-N})\subset U$ となるように取る。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $x$ に収束するから、ある $N'\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\geq N'$ のとき常に $d(x, x_n)<2^{-(N+1)}$ である。$N'$ を必要なら大きく取り換え、$N'\geq N+1$ としてよい。すると $$ B(x_{N'}, 2^{-N'})\subset B(x, 2^{-N})\quad(\star\star) $$ となる。これを示すため、$y\in B(x_{N'}, 2^{-N'})$ とする。すると $$ d(x, y)\leq d(x, x_{N'})+d(x_{N'}, y)<2^{-(N+1)}+2^{-N'}\leq 2^{-(N+1)}+2^{-(N+1)}=2^{-N} $$ となる。よって、$y\in B(x, 2^{-N})$ である。これで $(\star\star)$ が示された。$(\star\star)$ と $B(x, 2^{-N})\subset U$ により、$B(x_{N'}, 2^{-N'})$ は $\mathcal{U}$ の一個の要素 $U$ で覆われていることになるが、これは (i) に反する。この矛盾により、$X$ がコンパクトであることが証明された。$\square$

系 14.21 (全有界性と完備化がコンパクトであることは同値)

$(X, d)$ を距離空間とし、$((\tilde{X}, \tilde{d}), \iota)$ をその完備化とする。このとき、次は同値である。

  • (1) $(X, d)$ は全有界である。
  • (2) $(\tilde{X}, \tilde{d})$ はコンパクトである。

証明

(1)$\Rightarrow$(2)を示す。$(X, d)$ を全有界とする。$\iota\colon X\to\tilde{X}$ は等長埋め込みであって $\iota(X)$ が $\tilde{X}$ において稠密であることから、命題 14.14により、$(\tilde{X}, \tilde{d})$ も全有界である。$(\tilde{X}, \tilde{d})$ は完備であるから、定理 14.20により $\tilde{X}$ はコンパクトである。

(2)$\Rightarrow$(1)を示す。$(\tilde{X}, \tilde{d})$ がコンパクトであるとすると、定理 14.20により $(\tilde{X}, \tilde{d})$ は全有界であるから、その部分集合 $\iota(X)$ も命題 14.13により全有界である。$\iota\colon X\to\tilde{X}$ は等長埋め込みであるから、$(X, d)$ も全有界である。$\square$

系 14.22 (全有界な距離空間は第二可算)

$(X, d)$ を距離空間とする。$(X, d)$ が全有界ならば、$X$ は第二可算である。

証明

$(X, d)$ の完備化 $((\tilde{X}, \tilde{d}), \iota)$ を考えると、$(\tilde{X}, \tilde{d})$ は系 14.21によりコンパクトである。よって、$\tilde{X}$ はLindelöf空間となるから、定理 14.5により、$\tilde{X}$ は第二可算である。$\iota\colon X\to\tilde{X}$ は等長埋め込みだから、$X$ は $\tilde{X}$ の部分空間 $\iota(X)$ と同相であるが、$\tilde{X}$ の第二可算性と命題 6.11により $\iota(X)$ は第二可算であるから、$X$ は第二可算である。$\square$

命題 14.23 (距離を $1$ との最小値をとって修正すること)

$(X, d)$ を距離空間とする。このとき $d'\colon X\times X\to\mathbb{R}$ を $$ d'(x,y)=\min\{1, d(x,y)\} $$ により定義すれば、$d'$ も $X$ 上の距離となり、$d'$ は $d$ と同じ位相を $X$ に定める。さらに、$(X, d)$ が完備であるならば、$(X, d')$ も完備である。

証明

まず、$d'$ が $X$ 上の距離となることを示そう。定義 1.12の(D1)-(D3) のうち、三角不等式(D3)以外は明らかに満たされているので、三角不等式のみを示す。$x, y, z\in X$ とすると、 $$ \begin{aligned} d'(x,y)+d'(y,z) &=\min\{1, d(x,y)\}+\min\{1, d(y,z)\}\\ &=\min\{1+1, 1+d(y,z), d(x,y)+1, d(x,y)+d(y,z)\}\\ &\geq\min\{1, d(x,y)+d(y,z)\}\\ &\geq\min\{1, d(x,z)\}\\ &=d'(x,z) \end{aligned} $$ となる。よって、$d'$ は三角不等式を満たし、$X$ 上の距離となる。なお、上の式変形の第二の等号では、一般に実数 $a, b, c, d$ に対して $\min\{a,b\}+\min\{c,d\}=\min\{a+c, a+d, b+c, b+d\}$ であることを用いた。

ここで、$d$ と $d'$ の関係について注意しておく。$\varepsilon$ が $0<\varepsilon\leq 1$ を満たすとき、$x, y\in X$ に対して $d(x,y)<\varepsilon$ と $d'(x,y)<\varepsilon$ は同値である。したがって、そのような $\varepsilon$ に対しては、$d$ と $d'$ についての半径 $\varepsilon$ の開球体は等しい。つまり、$0<\varepsilon\leq 1$ のとき任意の $x\in X$ に対して $B_d(x, \varepsilon)=B_{d'}(x, \varepsilon)$ である。

さて、$d'$ が $d$ と同じ位相を $X$ に定めることを示そう。そこで、$U$ を $(X, d)$ の開集合とする。$U$ が $(X, d')$ の開集合でもあることを示すため、$x\in U$ とする。すると、ある $\varepsilon>0$ が存在して $B_d(x, \varepsilon)\subset U$ である。この $\varepsilon$ は小さく取って $0<\varepsilon\leq 1$ を満たすようにできる。すると、上に注意したことから $B_{d'}(x, \varepsilon)=B_d(x, \varepsilon)$ であるので、$B_{d'}(x, \varepsilon)\subset U$ である。これで、$U$ が $(X, d')$ の開集合であることが示された。これで、$(X, d)$ の任意の開集合は $(X, d')$ の開集合となることが分かった。同様にして、$(X, d')$ の任意の開集合が $(X, d)$ の開集合となることも分かる。これで、$d'$ が $d$ と同じ位相を $X$ に定めることが示された。

最後に、$(X, d)$ が完備であるとして、$(X, d')$ が完備であることを示そう。$(x_n)_{n=1}^\infty$ を $(X, d')$ のCauchy列とする。$(x_n)_{n=1}^\infty$ が $(X, d)$ のCauchy列であることを示すため、$\varepsilon>0$ を任意に与える。$\varepsilon'=\min\{1, \varepsilon\}$ とおこう。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $(X, d')$ のCauchy列なので、$N\in\mathbb{N}$ が存在して、$n, m\geq N$ のとき常に $d'(x_n, x_m)<\varepsilon'$ である。いま $0<\varepsilon'\leq 1$ なので、前の注意により、$n, m\geq N$ のとき常に $d(x_n, x_m)<\varepsilon'$ となり、したがって $d(x_n, x_m)<\varepsilon$ となる。これで、$(x_n)_{n=1}^\infty$ が $(X, d)$ のCauchy列であることが示された。したがって、$(x_n)_{n=1}^\infty$ はある $x\in X$ に、$(X, d)$ において収束する。ところが、$d$ と $d'$ は $X$ に同じ位相を定めるのだから、$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $(X, d')$ においても $x$ に収束している(点列の収束は、距離を用いずに位相のみを用いて定義される概念であったことに注意する。定義 2.16参照)。これで、$(X, d')$ は完備となることが示された。$\square$

定理 14.24 (可算個の距離空間の直積は距離化可能で完備性も保たれる)

各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $(X_i, d_i)$ を距離空間とする。このとき、直積空間 $X=\prod_{i=1}^\infty X_i$ は距離化可能である。すなわち、$X$ 上の距離 $d$ であって $d$ の定める位相が直積位相に一致するものが存在する。さらに、各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $(X_i, d_i)$ が完備である場合は、そのような距離 $d$ として完備なものが取れる。

証明

各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $p_i\colon X\to X_i$ を射影とする。 命題 14.23により、$d_i$ を $d'_i(x, y)=\min\{1, d_i(x,y)\}\,(x, y\in X_i)$ で定義される $d'_i$ に置き換えてもよい。この置き換えにより、はじめから任意の $i\in\mathbb{N}$ および $x, y\in X_i$ に対して $d_i(x,y)\leq 1$ が成り立っていると仮定してよい。そこで $d\colon X\times X\to [0,\infty)$ を $$ d(x, y)=\sum_{i=1}^\infty 2^{-i} d_i(p_i(x), p_i(y))\quad(\star) $$ で定義すれば、右辺は確かに収束する。さらに、$d$ は $X$ 上の距離となることがすぐに確かめられる。

$d$ の定める $X$ 上の位相が、$X$ 上の直積位相と一致することを示そう。そのため、$U\subset X$ を $(X, d)$ の開集合とする。$U$ が直積位相についての開集合であることを示すため、$x\in U$ とする。ある $\varepsilon>0$ に対して、$B_d(x, \varepsilon)\subset U$ である。$n\in\mathbb{N}$ を十分大きくとり、$2^{-n}<\varepsilon/2$ であるようにする。このとき、$V=\bigcap_{i=1}^{n} p_i^{-1}(B_{d_i}(p_i(x), \varepsilon/2))$ とおけば $V$ は直積位相に関する $x$ の開近傍である。 $V\subset B_d(x, \varepsilon)$ を示すため、$y\in V$ を任意に与える。すると $$ \begin{aligned} d(x,y)&=\sum_{i=1}^\infty 2^{-i} d(p_i(x), p_i(y))\\ &=\sum_{i=1}^{n} 2^{-i} d(p_i(x), p_i(y))+\sum_{i=n+1}^\infty 2^{-i} d(p_i(x), p_i(y))\\ &\leq \sum_{i=1}^{n} 2^{-i}\cdot \varepsilon/2 +\sum_{i=n+1}^\infty 2^{-i}\cdot 1\\ &<\varepsilon/2+2^{-n}<\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon \end{aligned} $$ となるので、$y\in B_d(x,\varepsilon)$ である。よって、$V\subset B_d(x,\varepsilon)$ であり、したがって $V\subset U$ であることが分かった。$V$ は直積位相に関する $x$ の開近傍であったから、これで $U$ が直積位相について開集合であることが示された。以上で、$(X, d)$ の任意の開集合が直積位相についての開集合となることが分かった。

次に、$U\subset X$ を直積位相についての開集合とする。$U$ が $(X, d)$ についての開集合であることを示すため、$x\in U$ とする。すると、有限個の $i_1,\ldots, i_k\in\mathbb{N}$ と $p_{i_j}(x)$ の $X_{i_j}$ における開近傍 $V_j\,(j=1,\ldots, k)$ が存在して、$\bigcap_{j=1}^k p_{i_j}^{-1}(V_j)\subset U$ である。各 $j\in\{1,\ldots, k\}$ に対して、$\varepsilon_j>0$ を $B_{d_{i_j}}(p_{i_j}(x), \varepsilon_j)\subset V_j$ となるように取る。 $$ \varepsilon=\min\{2^{-i_j}\varepsilon_j\,|\,j=1,\ldots, k\} $$ とおくとき $B_d(x,\varepsilon)\subset U$ を示そう。そのため $y\in B_d(x,\varepsilon)$ とする。このとき、任意の $j\in\{1,\ldots, k\}$ に対して $$ \begin{aligned} d_{i_j}(p_{i_j}(x), p_{i_j}(y))&=2^{i_j}\cdot 2^{-i_j} d_{i_j}(p_{i_j}(x), p_{i_j}(y))\leq 2^{i_j} d(x,y)\\ &<2^{i_j}\varepsilon\leq 2^{i_j}\cdot 2^{-i_j}\varepsilon_j=\varepsilon_j \end{aligned} $$ であり、したがって $p_{i_j}(y)\in B_{d_{i_j}}(p_{i_j}(x), \varepsilon_j)\subset V_j$ である。よって、$y\in \bigcap_{j=1}^k p_{i_j}^{-1}(V_j)\subset U$ である。これで、$B_d(x,\varepsilon)\subset U$ が示され、$U$ が $(X, d)$ の開集合であることが示された。以上で、$X$ の直積位相についての任意の開集合が $(X, d)$ の開集合となることが分かった。こうして、$d$ の定める $X$ 上の位相は直積位相と一致することが分かった。

最後に、各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $(X_i, d_i)$ が完備な場合を考える。この場合も命題 14.23により、$d_i$ の代わりに $d'_i(x,y)=\min\{1, d_i(x,y)\}$ で定義される $d'_i$ を考えれば $d'_i$ は $d_i$ と同じ位相を定め、しかも $(X_i, d'_i)$ は再び完備である。そこで、$d_i$ を $d'_i$ に置き換えることで、すべての $i\in\mathbb{N},$ $x,y\in X_i$ に対して $d_i(x,y)\leq 1$ であるとしてよい。$X$ 上の距離 $d$ をさきほどのように $(\star)$ により定義するとき、$(X, d)$ が完備であることを示そう。そのため、$(x_n)_{n=1}^\infty$ を $(X, d)$ のCauchy列とする。このとき、各 $i\in\mathbb{N}$ に対して、$(p_i(x_n))_{n=1}^\infty$ が $(X_i, d_i)$ のCauchy列であることを示そう。そのため、$\varepsilon>0$ とする。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $(X, d)$ のCauchy列であるから、$N\in\mathbb{N}$ が存在して、$n, m\geq N$ のとき常に $d(x_n, x_m)<2^{-i}\varepsilon$ である。すると、$n, m\geq N$ のとき $$ d_i(p(x_n), p(x_m))=2^i\cdot 2^{-i} d_i(p(x_n), p(x_m))\leq 2^i d(x_n, x_m)<2^i\cdot 2^{-i}\varepsilon=\varepsilon $$ である。これで、$(p_i(x_n))_{n=1}^\infty$ が $(X_i, d_i)$ のCauchy列であることが分かった。$(X_i, d_i)$ は完備だから、$(p_i(x_n))_{n=1}^\infty$ はある点 $y_i\in X_i$ に収束する。そこで、$y=(y_i)_{i=1}^\infty\in X$ とおく。すると、各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $(p_i(x_n))_{n=1}^\infty$ は $p_i(y)=y_i$ に収束しているから、命題 8.21により、$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $y$ に収束する。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $(X, d)$ の任意のCauchy列であったから、これで $(X, d)$ が完備であることが示された。$\square$

注意 14.25 (距離空間の可算個の直積の位相を定める距離)

上の証明で分かるように、各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $(X_i, d_i)$ が距離空間であるとき、直積空間 $\prod_{i=1}^\infty X_i$ の位相を定める具体的な距離 $d$ としては、$p_i\colon X\to X_i$ を射影として $$ d(x, y)=\sum_{i=1}^\infty 2^{-i}\min\{1, d_i(p_i(x), p_i(y))\}\quad(x, y\in X) $$ というものが取れる。そして、すべての $i\in\mathbb{N}$ に対して $(X_i, d_i)$ が完備であれば、$(X, d)$ も完備となる。$\square$

次に、Urysohnの距離化定理を証明するための準備として、いくつかの命題を示しておく。

命題 14.26 (正則Lindelöf空間は正規)

$X$ を正則なLindelöf空間とする。このとき $X$ は正規空間である。

証明

$X$ を正則なLindelöf空間とする。まず $X$ は正則空間だから、とくに $T_1$ 空間である。$F,$ $H$ を $X$ の閉集合で $F\cap H=\emptyset$ を満たすものとする。このとき、$X$ の開集合 $U,$ $V$ で $F\subset U,$ $H\subset V,$ $U\cap V=\emptyset$ であるものを見つければよい。$X$ の正則性と命題 12.4により、各 $x\in F$ に対して、$x$ の開近傍 $U_x$ であって $\operatorname{Cl} U_x\subset X\setminus H$ となるものが選べる。また、同様に、各 $y\in H$ に対して、$y$ の開近傍 $V_y$ であって $\operatorname{Cl} V_y\subset X\setminus F$ となるものが選べる。いま、$\{U_x\,|\,x\in F\}$ は $F$ の $X$ における開被覆であるが、命題 14.3により $F$ はLindelöf空間であるから、命題 14.2により、$\{U_x\,|\,x\in F\}$ は高々可算な部分被覆をもつ。すなわち、$x_i\in F\,(i\in\mathbb{N})$ が存在して、$F\subset\bigcup_{i=1}^\infty U_{x_i}$ となる。同様に、$y_i\in H\,(i\in\mathbb{N})$ が存在して、$H\subset \bigcup_{i=1}^\infty V_{y_i}$ となる。以下では、簡単のために $U_{x_i}$ を $U_i$ と書き、$V_{y_i}$ を $V_i$ と書こう。さて、 $$ U=\bigcup_{i=1}^\infty \left(U_i\setminus \bigcup_{k=1}^i \operatorname{Cl} V_k\right),\quad V=\bigcup_{j=1}^\infty \left(V_j\setminus \bigcup_{k=1}^j \operatorname{Cl} U_k\right) $$ と定義する。すると $U,$ $V$ はそれぞれ $F,$ $H$ を含む $X$ の開集合である。$U\cap V=\emptyset$ を示すため、点 $p\in U\cap V$ が存在したとしよう。すると、$p\in U$ であることから、ある $i\in\mathbb{N}$ に対して $$ p\in U_i\setminus \bigcup_{k=1}^i \operatorname{Cl} V_k\quad(\star) $$ である。また、$p\in V$ であることから、ある $j\in\mathbb{N}$ に対して $$ p\in V_j\setminus \bigcup_{k=1}^j \operatorname{Cl} U_k\quad(\star\star) $$ である。もし $i\geq j$ であれば、$(\star)$ により $p\notin \operatorname{Cl} V_j$ であるから $p\notin V_j$ となり、$(\star\star)$ に反する。また、もし $i\leq j$ であれば、$(\star\star)$ により $p\notin \operatorname{Cl} U_i$ であるから $p\notin U_i$ となり、$(\star)$ に反する。以上で、$i\geq j,$ $i\leq j$ のどちらの場合も矛盾を生じたので、$U\cap V=\emptyset$ が結論される。これで証明が終わった。$\square$

命題 14.27 (直積空間への埋め込み)

$X$ を位相空間、$(Y_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を位相空間の族とし、$Y=\prod_{\lambda\in\Lambda} Y_\lambda$ を直積空間とする。 各 $\lambda\in\Lambda$ に対して連続写像 $f_\lambda\colon X\to Y_\lambda$ が与えられているとき、連続写像 $f\colon X\to Y$ が $$ f(x)=(f_\lambda(x))_{\lambda\in\Lambda}\quad (x\in X) $$ によって定義されるが(注意 8.16)、このとき次の条件(1), (2)が同時に成り立つならば、$f$ は埋め込みである。

  • (1) 任意の異なる $x, x'\in X$ に対して、ある $\lambda\in\Lambda$ が存在して $f_\lambda(x)\neq f_\lambda(x')$ である。
  • (2) $X$ の任意の開集合 $U$ および $x\in U$ に対して、ある $\lambda\in\Lambda$ が存在して $f_\lambda(x)\notin \operatorname{Cl}_{Y_\lambda} f_\lambda(X\setminus U)$ である。

証明

各 $\lambda\in\Lambda$ に対して $p_\lambda\colon Y\to Y_\lambda$ を射影とする。すると、$p_\lambda\circ f=f_\lambda$ が成立する。

まず、$f\colon X\to Y$ が単射であることを示すため、$x, x'\in X,$ $x\neq x'$ とする。条件(1)により、ある $\lambda\in\Lambda$ が存在して、$f_\lambda(x)\neq f_\lambda(x')$ である。このことは $p_\lambda(f(x))\neq p_\lambda(f(x'))$ を意味するから、$f(x)\neq f(x')$ でなければならない。よって、$f$ は単射である。

$f$ の終域を $f(X)$ に取り換えて得られる連続全単射 $\hat{f}\colon X\to f(X)$ を考える。$f$ が埋め込みであることを示すには、この $\hat{f}$ が同相写像であることを示せばよく、そのためには命題 5.27により、$\hat{f}$ が開写像であることを示せばよい。 そこで、$U\subset X$ を開集合とする。このとき、$\hat{f}(U)=f(U)$ が $f(X)$ の開集合であることを示そう。そこで、$y\in f(U)$ を任意に与える。このとき $f(U)$ の開集合 $W$ で $y\in W\subset f(U)$ となるものを見つければよい。まず、ある $x\in U$ が存在して $y=f(x)$ である。このとき、条件(2)により、ある $\lambda\in\Lambda$ が存在して $$ p_\lambda(y)=p_\lambda(f(x))=f_\lambda(x)\notin \operatorname{Cl}_{Y_\lambda} f_\lambda(X\setminus U) $$ である。そこで、$V=Y_\lambda\setminus\operatorname{Cl} f_\lambda(X\setminus U)$ とおけば、$V$ は $Y_\lambda$ の開集合で、$p_\lambda(y)\in V$ である。$W=f(X)\cap p_\lambda^{-1}(V)$ とおけば $W$ は $f(X)$ の開集合であり、$y\in W$ である。さらに、$W\subset f(U)$ であることを示そう。そのため $y'\in W$ を任意に与える。$W\subset f(X)$ なので $y'\in f(X)$ であり、よってある $x'\in X$ に対して $f(x')=y'$ である。また、$W\subset p_\lambda^{-1}(V)$ なので $y'\in p_\lambda^{-1}(V)$ すなわち $p_\lambda(y')\in V$ であるが、いま $p_\lambda(y')=p_\lambda(f(x'))=f_\lambda(x')$ なので、$f_\lambda(x')\in V$ である。ところが、$V=Y_\lambda\setminus\operatorname{Cl} f_\lambda(X\setminus U)$ であったから、$f_\lambda(x')\notin f_\lambda(X\setminus U)$ である。よって、$x'\in X\setminus U$ ではあり得ず、したがって $x'\in U$ であるから、$y'=f(x')\in f(U)$ であることが分かった。これで、$W\subset f(U)$ であることが示された。これで、$f(U)$ が開集合であることが示され、$\hat{f}\colon X\to f(X)$ が開写像であることが分かったので、$f\colon X\to Y$ が埋め込みであることが証明された。$\square$

定理 14.28 (Urysohnの距離化定理)

第二可算な正則空間は距離化可能である。

証明

$X$ を第二可算な正則空間とする。以下では、$X$ からある距離化可能な空間 $Y$ への埋め込み $f\colon X\to Y$ を構成する。これができれば、$X$ は距離化可能な空間 $Y$ の部分空間 $f(X)$ と同相となる。$Y$ の位相を定める距離 $d$ を一つ取れば、$d$ の $f(X)$ への制限により $f(X)$ は距離化可能であるから、それと同相な $X$ も距離化可能と分かって証明が終わる。

最初に $X$ は正規空間となることを示しておこう。$X$ は第二可算であるから、命題 14.4により $X$ はLindelöf空間である。さらに、$X$ は正則空間としていたので、命題 14.26により $X$ は正規空間である。

さて、$X$ は第二可算であるから、$X$ の高々可算な開基 $\mathcal{B}$ が存在する。$\mathcal{B}\times\mathcal{B}$ の次のような部分集合 $\Lambda$ を考える。 $$ \Lambda=\{(B, B')\in\mathcal{B}\times\mathcal{B}\,|\,\operatorname{Cl} B'\subset B\} $$ すると $\Lambda$ は高々可算集合である。$X$ は正規空間であるから、各 $(B, B')\in\Lambda$ に対して、Urysohnの補題(定理 12.15)により、連続関数 $f_{(B, B')}\colon X\to [0,1]$ であって $x\in\operatorname{Cl} B'$ のときは $f_{(B, B')}(x)=1$ であり $x\in X\setminus B$ のときは $f_{(B, B')}(x)=0$ となるようなものが存在する。さて、各 $(B, B')\in\Lambda$ に対して $Y_{(B, B')}=[0,1]$ とおき、直積空間 $$ Y=\prod_{(B, B')\in\Lambda} Y_{(B, B')} $$ を考える。$Y_{(B, B')}=[0,1]$ は距離化可能であり、$\Lambda$ は高々可算集合であるから、$Y$ は定理 14.24により距離化可能な空間である。さらに、連続写像 $f\colon X\to Y$ を $$ f(x)=(f_{(B,B')}(x))_{(B,B')\in\Lambda}\quad(x\in X) $$ により定義できる(注意 8.16)。

このとき $f\colon X\to Y$ が埋め込みであることを、命題 14.27を用いて示そう。まず命題 14.27の条件(1)を示すため、$x, x'\in X,$ $x\neq x'$ とする。$X$ は正則空間、とくに $T_1$ 空間であるから、$x\in U$ かつ $x'\notin U$ となるような開集合 $U$ が存在する。$\mathcal{B}$ は $X$ の開基であるから、ある $B\in\mathcal{B}$ が存在して、$x\in B\subset U$ となる。さらに、$X$ は正則空間であるから、命題 12.4により、$x$ の開近傍 $V$ が存在して $\operatorname{Cl} V\subset B$ となる。$\mathcal{B}$ は $X$ の開基であるから、ある $B'\in\mathcal{B}$ が存在して、$x\in B'\subset V$ となる。すると $\operatorname{Cl} B'\subset\operatorname{Cl} V\subset B$ であるから、$(B, B')\in\Lambda$ である。よって、$f_{(B, B')}\colon X\to [0,1]$ が定義されるが、このとき $x\in B'\subset\operatorname{Cl} B'$ および $x'\in X\setminus U\subset X\setminus B$ であることから $f_{(B',B)}(x)=1,$ $f_{(B',B)}(x')=0$ である。したがって、$f_{(B,B')}(x)\neq f_{(B,B')}(x')$ である。これで、条件(1)は示された。

次に、命題 14.27の条件(2)を示す。そのため、$U$ を $X$ の開集合とし、$x\in U$ とする。さきほどの全く同様の議論により、$B, B'\in\mathcal{B}$ を $x\in B'$ および $\operatorname{Cl} B'\subset B\subset U$ を満たすように取ることができる。すると $(B, B')\in\Lambda$ であるから $f_{(B,B')}$ を考えることができるが、いま $X\setminus U\subset X\setminus B$ であることにより $f_{(B,B')}(X\setminus U)\subset\{0\}$ である。$\{0\}$ は $Y_{(B,B')}=[0,1]$ の閉集合であるから、$\operatorname{Cl} f_{(B,B')}(X\setminus U)\subset\{0\}$ である。一方、$x\in B'\subset\operatorname{Cl} B'$ であるので、$f_{(B,B')}(x)=1$ である。よって、$f_{(B, B')}(x)\notin \operatorname{Cl} f_{(B,B')}(X\setminus U)$ である。これで、条件(2)も示された。

以上で、命題 14.27により $f\colon X\to Y$ は埋め込みであることが分かった。$Y$ は距離化可能であったから、最初に注意したことにより $X$ が距離化可能であることが分かり、証明が終わった。$\square$

注意 14.29 (Hilbert 立方体への埋め込み)

単位閉区間 $[0,1]$ を可算無限個直積したもの $[0,1]^\mathbb{N}$ をHilbert立方体(Hilbert cube)という。つまり、Hilbert立方体とは、各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $Y_i=[0,1]$ としたときの直積空間 $\prod_{i\in\mathbb{N}} Y_i$ のことである。 定理 14.28の証明における $Y=\prod_{(B, B')\in\Lambda} Y_{(B, B')}$ は、単位閉区間を高々可算個直積して得られる空間である。したがって、定理 14.28の証明から、任意の第二可算な正則空間 $X$ は Hilbert立方体に埋め込めるということが分かる。$\square$

Hilbert立方体はコンパクトな空間となる。第16章で示される「コンパクト空間の任意の個数の直積空間はコンパクトである」という強力な結果(Tychonoffの定理)を用いれば、これは直ちに分かることであるが、ここでは可算個のコンパクト距離空間の直積がコンパクトとなることを、定理 14.20を利用して示しておく。もちろん、この事実だけでもHilbert立方体のコンパクト性を示すには十分である。

命題 14.30 (コンパクト距離空間の可算直積)

各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $(X_i, d_i)$ をコンパクト距離空間とする。このとき、直積空間 $X=\prod_{i=1}^\infty X_i$ はコンパクトである。とくに、Hilbert立方体 $[0,1]^\mathbb{N}$ はコンパクトである。

証明

各 $i\in\mathbb{N}$ に対して $p_i\colon X\to X_i$ を射影とする。定理 14.24により、$X$ は距離化可能である。より詳しく、注意 14.25により、$X$ の位相を定める距離 $d$ として、次のものが取れる。 $$ d(x, y)=\sum_{i=1}^\infty 2^{-i}\min\{1, d_i(p_i(x), p_i(y))\}\quad(x, y\in X) $$ いま、$(X_i, d_i)$ はコンパクトであるから定理 14.20により $(X_i, d_i)$ は完備である。したがって、注意 14.25で述べたことから、$(X, d)$ も完備である。さて、定理 14.20により、$X$ がコンパクトであることを示すには、$(X, d)$ が全有界かつ完備であることを示せばよい。したがって、あとは $(X, d)$ が全有界であることを示せばよい。

そこで、$\varepsilon>0$ を任意に与える。$N\in\mathbb{N}$ を十分大きく取り、$2^{-N}<\varepsilon/2$ となるようにする。$i=1,\ldots,N$ に対して、定理 14.20により$(X_i, d_i)$ は全有界であるから、有限集合 $F_i\subset X_i$ が存在して $$ X_i=\bigcup_{a\in F_i} B_{d_i}(a, \varepsilon/2) $$ となる。各 $i>N$ に対して点 $*_i\in X_i$ を(何でもよいので)選んでおき、集合 $F\subset X$ を $$ F=\{x\in X\,|\,i\leq N\text{ のときは }p_i(x)\in F_i,\;i>N\text{ のときは }p_i(x)=*_i\} $$ で定めれば $F$ は有限集合である。このとき $\bigcup_{a\in F} B_d(a, \varepsilon)=X$ となることを示そう。そのため $x\in X$ を任意に与える。 各 $i\leq N$ に対して、$a_i\in F_i$ を $d_i(p_i(x), a_i)<\varepsilon/2$ となるように取れる。そこで、$a\in F$ を $$ p_i(a)= \begin{cases} a_i & i\leq N\text{ のとき}\\ {*}_i & i>N\text{ のとき} \end{cases} $$ により定義しよう。このとき、 $$ \begin{aligned} d(x, a)&=\sum_{i=1}^\infty 2^{-i}\min\{1, d_i(p_i(x), p_i(a))\\ &=\sum_{i=1}^N 2^{-i}\min\{1, d_i(p_i(x), a_i)\}+\sum_{i=N+1}^\infty 2^{-i}\min\{1, d_i(p_i(x), *_i)\}\\ &<\sum_{i=1}^N 2^{-i}\cdot\varepsilon/2+2^{-N}\\ &<\varepsilon/2+\varepsilon/2=\varepsilon \end{aligned} $$ となる。これで $x\in B_d(a, \varepsilon)$ が示され、よって $\bigcup_{a\in A} B_d(a, \varepsilon)=X$ であることが分かった。これで、$(X, d)$ は全有界であることが分かり、証明が終わった。$\square$

位相空間 $X$ が全有界に距離化可能であるとは、$X$ の位相を定めるような $X$ 上の距離 $d$ であって $(X, d)$ が全有界となるようなものが存在することをいう。

系 14.31 (可分な距離化可能空間であることの同値条件)

$X$ を位相空間とするとき、次は同値である。

  • (1) $X$ は第二可算な正則空間である。
  • (2) $X$ は第二可算な距離化可能空間である。
  • (3) $X$ は可分な距離化可能空間である。
  • (4) $X$ はLindelöf空間かつ距離化可能空間である。
  • (5) $X$ はHilbert立方体 $[0,1]^\mathbb{N}$ への埋め込みをもつ。
  • (6) $X$ はあるコンパクトな距離化可能空間への埋め込みをもつ。
  • (7) $X$ は全有界に距離化可能である。

証明

(1)$\Rightarrow$(2)は定理 14.28から分かる。(2)$\Rightarrow$(1)は、距離空間は正規空間であり(命題 12.12)、したがって正則空間となることから分かる。また、(2), (3), (4) の同値性は定理 14.5から分かる。(1)$\Rightarrow$(5)は、すでに注意 14.29で見た通りである。(5)$\Rightarrow$(6) は、命題 14.30定理 14.24から分かる。

(6)$\Rightarrow$(2)を示す。あるコンパクトな距離化可能空間 $Y$ に対して、埋め込み $f\colon X\to Y$ が存在すると仮定する。このとき $Y$ は系 14.6により第二可算であるから、命題 6.11により、その部分空間 $f(X)$ は第二可算である。また、$Y$ の位相を定める距離 $d$ を一つ取り、$d$ を $f(X)$ に制限すればそれは $f(X)$ の位相を定める距離となるから、$f(X)$ は距離化可能である。したがって、$f(X)$ は第二可算かつ距離化可能であるから、それと同相な $X$ も第二可算かつ距離化可能である。

(6)$\Rightarrow$(7)を示す。あるコンパクトな距離化可能空間 $Y$ に対して、埋め込み $f\colon X\to Y$ が存在すると仮定する。$Y$ の位相を定める距離 $d$ を一つ選ぼう。すると、定理 14.20により、$(Y, d)$ は全有界である。したがって、$d$ の $f(X)$ への制限を $d_{f(X)}$ と書くとき、$(f(X), d_{f(X)})$ は命題 14.13により全有界である。ところが、$f$ の終域を $f(X)$ に制限した写像 $\hat{f}\colon X\to f(X)$ は同相写像であるから、$X$ 上の距離 $d_X$ を $d_X(x, x')=d_{f(X)}(f(x), f(x'))\,(x, x'\in X)$ により定義すれば、$d_X$ は $X$ の位相を定める距離となっている。しかも、$\hat{f}$ は $(X, d_X)$ から $(f(X), d_{f(X)})$ への等長写像を与えるから、$(X, d_X)$ も全有界となる。よって、$X$ は全有界に距離化可能である。

(7)$\Rightarrow$(2)は系 14.22から分かる。

以上で、(1)-(7) の同値性が証明された。$\square$

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Last-modified: 2021-01-10 (日) 15:31:04 (11d)