位相空間論4:閉包と内部

位相空間の部分集合に対する重要な操作として、閉包と内部がある。直観的にいえば、閉包とは、部分集合に対してそれに「いくらでも近い」点を付け加えたものである(後の命題 4.5を見るとそれが納得できるであろう)。閉包はもとの集合より大きい最小の閉集合となるが、これに対して内部はもとの集合より小さい最大の開集合となる。

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入門テキスト「位相空間論」

  • 位相空間論4:閉包と内部
  • 位相空間論15:局所コンパクト空間?
  • 位相空間論16:Tychonoffの定理?

定義 4.1 (閉包)

$X$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。$A$ を含む $X$ の閉集合全体の集合を $\mathcal{F}_A$ とするとき、 共通部分 $\bigcap_{F\in \mathcal{F}_A} F$ を $A$ の $X$ における閉包(closure)といい、$\operatorname{Cl} A$ で表す。

$A$ の閉包の記号としては、この他にも $\overline{A}$ が広く用いられている。複数の位相空間を扱うときなどに、$X$ における閉包であることを強調する必要がある場合は $\operatorname{Cl}_X A$ と書く場合もある。 定義から明らかに、$A\subset\operatorname{Cl} A$ である。 $\operatorname{Cl} A$ の要素のことを、$A$ の触点(adherent point)ということがある。 また、各 $A\subset X$ に $\operatorname{Cl} A$ を対応させることで、 $X$ の冪集合 $\mathcal{P}(X)$ から $\mathcal{P}(X)$ への写像 $$ \operatorname{Cl}\colon \mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X) $$ が定義される。これを $X$ の閉包作用素(closure operator)という ($X$ の部分集合全体の集合を $X$ の冪集合といい $\mathcal{P}(X)$ で表すのであった)。$\square$

閉集合の任意個の共通部分は常に閉集合となる(命題 1.3)ので、閉包 $\operatorname{Cl} A$ は閉集合である。 次の命題は、閉包を取り扱うときに常に用いられる。

命題 4.2 (閉包の最小性)

$X$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。$F$ が $A\subset F$ を満たす $X$ の閉集合であるならば $\operatorname{Cl} A\subset F$ である。 したがって、$\operatorname{Cl} A$ は $A$ を含む $X$ の閉集合のうち最小のものである。

証明

$A\subset X$ とし、$X$ の閉集合 $F$ が $A\subset F$ を満たすとする。このとき、定義 4.1の$\mathcal{F}_A$ に対して $F\in\mathcal{F}_A$ であるから、$\operatorname{Cl} A=\bigcap_{F'\in\mathcal{F}_A} F'\subset F$ である。$\operatorname{Cl} A$ は上で注意したように $X$ の閉集合であるから、 いま言えたことは、まさに、$\operatorname{Cl} A$ が $A$ を含む $X$ の閉集合のうち最小のものであることを示している。$\square$

注意 4.3 (閉集合の特徴づけ)

命題 4.2の後半の主張から、すぐに次のことが分かる。位相空間 $X$ の部分集合 $A$ が閉集合であることは、$A=\operatorname{Cl} A$ であることと同値である。$A\subset\operatorname{Cl} A$ はいつでも成り立つので、これは $\operatorname{Cl} A\subset A$ とも同値である。$\square$

命題 4.4 (閉包の単調性)

$X$ を位相空間とするとき、$X$ の部分集合 $A, B$ に対して $A\subset B$ ならば $\operatorname{Cl} A\subset\operatorname{Cl} B$ である。

証明

$A\subset B\subset X$ とする。$B\subset\operatorname{Cl} B$ であるから、$A\subset \operatorname{Cl} B$ である。$\operatorname{Cl} B$ は閉集合 であるから、命題 4.2により、$\operatorname{Cl} A\subset \operatorname{Cl} B$ である。$\square$

ある点が与えられた部分集合の閉包に属しているかどうか判定するには、次の命題を用いることが多い。

命題 4.5 (閉包に属する点の特徴づけ)

$X$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$x\in A$ に対して、次は同値である。

  • (1) $x\in \operatorname{Cl} A$ である。
  • (2) $x$ の任意の近傍 $V$ に対して、$A\cap V\neq\emptyset$ である。
  • (3) $x$ の任意の開近傍 $V$ に対して、$A\cap V\neq\emptyset$ である。
  • (4) $x$ のある基本近傍系 $\mathcal{V}$ が存在して、任意の $V\in\mathcal{V}$ に対して $A\cap V\neq\emptyset$ である。

証明

(1) $\Rightarrow$ (2) を示す。$x\in \operatorname{Cl} A$ とする。(2) がもし成り立たなければ、$x$ のある近傍 $V$ に対して、$V\cap A=\emptyset$ である。近傍の定義から、開集合 $U$ で $x\in U\subset V$ となるものが存在するが、このとき $U\cap A=\emptyset$ であるから、$A\subset X\setminus U$ である。$X\setminus U$ は閉集合だから、命題 4.2により $\operatorname{Cl} A\subset X\setminus U$ であり、よって、$x\in X\setminus U$ である。これは、$x\in U$ であったことに反する。よって、(2) は成り立つ。

(2) $\Rightarrow$ (3) は明らかである。

(3) $\Rightarrow$ (4) は、$x$ の基本近傍系 $\mathcal{V}$ として $x$ の開近傍全体の集合をとれば、直ちに正しいことが分かる。

(4) $\Rightarrow$ (1) を示す。(4) のような $x$ の基本近傍系 $\mathcal{V}$ が存在するにもかかわらず $x\notin \operatorname{Cl} A$ であったとして矛盾を導こう。このとき、$X\setminus \operatorname{Cl} A$ は $x$ の開近傍であるから、ある $V\in\mathcal{V}$ に対して $x\in V\subset X\setminus \operatorname{Cl} A$ である。すると $V\cap \operatorname{Cl} A=\emptyset$ であるから、$V\cap A=\emptyset$ である。これは、基本近傍系 $\mathcal{V}$ の取り方に反する。$\square$

例 4.6 (上限・下限と閉包)

$A$ を実数直線 $\mathbb{R}$ の空でない部分集合とする。このとき、$A$ が上に有界ならば上限 $\sup A\in\mathbb{R}$ が存在するが、このとき、$\sup A\in\operatorname{Cl}_\mathbb{R} A$ となる。このことを、命題 4.5(4)の条件を用いて示そう。

$s=\sup A$ とおく。$\{(s-r, s+r)\,|\,r>0\}$ が $s$ の基本近傍系であることに注意すれば、任意の $r>0$ に対して $A\cap (s-r, s+r)\neq\emptyset$ となること示せばよいことが分かる。そこで $r>0$ を任意に与える。$s-r$ は $A$ の上界ではなく $s$ は $A$ の上界なので、$s-r<a\leq s$ となるような $a\in A$ が存在する。すると、$a\in A\cap (s-r, s+r)$ であるので、$A\cap (s-r, s+r)\neq\emptyset$ である。これで、$s\in\operatorname{Cl}_\mathbb{R} A$ が示された。

まったく同様にして、$A$ が下に有界な空でない $\mathbb{R}$ の部分集合であるとき、$\inf A\in\operatorname{Cl}_\mathbb{R} A$ であることが分かる。

$A$ が($\mathbb{R}$ の)閉集合であるときは、注意 4.3により $A=\operatorname{Cl}_\mathbb{R} A$ である。したがって、$A$ が上に有界な空でない閉集合であるときは $\sup A\in A$ であり、$A$ が下に有界な空でない閉集合であるときは $\inf A\in A$ である。$\square$

距離空間においては、閉包は点列の収束を用いて次のように記述できる。

命題 4.7 (距離空間における閉包)

$X$ を距離空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$x\in X$ に対して、次は同値である。

  • (1) $x\in \operatorname{Cl} A$ である。
  • (2) $x$ に収束するような $A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が存在する。

(1) $\Rightarrow$ (2) を示す。$x\in\operatorname{Cl} A$ とする。命題 4.5により、各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $B(x, 1/n)\cap A\neq\emptyset$ である。そこで、各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $x_n\in B(x, 1/n)\cap A$ を選べば、$A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が得られる。$\{B(x,1/n)\,|\,n\in\mathbb{N}\}$ が $x$ の基本近傍系であることに注目すれば、命題 2.18により、$x_n\to x$ であることが分かる。

(2) $\Rightarrow$ (1) を示す。$(x_n)_{n=1}^\infty$ を、$x$ に収束するような $A$ の点列とする。このとき $x\in \operatorname{Cl} A$ であることを、命題 4.5 (2) の条件を確かめることで示そう。そこで、$V$ を $x$ の近傍とする。$x_n\to x$ なので、ある $N\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\geq N$ のとき常に $x_n\in V$ である。すると、とくに $x_N\in V$ である。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $A$ の点列であったので、$x_N\in V\cap A$ である。よって、$V\cap A\neq\emptyset$ である。これが $x$ の任意の近傍 $V$ に対して成り立つので、$x\in\operatorname{Cl} A$ である。$\square$

次は、距離空間において閉集合が「点列の収束について閉じた集合」と同じものになることを示している。このことは、閉集合という用語を正当化するものと言えるだろう。

命題 4.8 (距離空間における閉集合の特徴づけ)

$X$ を距離空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とするとき、次は同値である。

  • (1) $A$ は $X$ の閉集合である。
  • (2) $A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ に対して、$(x_n)_{n=1}^\infty$ が $X$ の点 $x$ に収束するならば、$x\in A$ である。

証明

(1) $\Rightarrow$ (2) を示す。$A$ を $X$ の閉集合とすると、注意 4.3により、$A=\operatorname{Cl} A$ である。$A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が $X$ の点 $x$ に収束するとする。このとき、命題 4.7により $x\in \operatorname{Cl} A$ であるから、$x\in A$ である。

(2) $\Rightarrow$ (1) を示す。(2) を仮定しよう。このとき $A=\operatorname{Cl} A$ を示せばよいが、$A\subset\operatorname{Cl} A$ はいつでも成り立つので、$\operatorname{Cl} A\subset A$ をいえば十分である(注意 4.3を参照)。そこで、$x\in\operatorname{Cl} A$ とする。このとき、命題 4.7により、$A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ で $x$ に収束するものが存在する。(2) により、このとき $x\in A$ である。これで $\operatorname{Cl} A\subset A$ が示された。$\square$

例 4.9 (閉包の具体例)

(1) $X$ を離散空間とする。このときは、任意の $A\subset X$ に対して、$A$ そのものが $X$ の閉集合なので $A=\operatorname{Cl} A$ である。

(2) $X$ を密着空間とする。このときは、閉集合が $\emptyset$ と $X$ の二つしかない。よって、$A\subset X$ が空でなければ $\operatorname{Cl} A=X$ である。また、$\operatorname{Cl} \emptyset=\emptyset$ である。

(3) 無限集合 $X$ を補有限位相(例 1.8)によって位相空間と見なす。このときは、$X$ の閉集合は $X$ の有限部分集合すべてと、$X$ そのものである。よって、$A\subset X$ が有限集合のときは、$\operatorname{Cl} A=A$ である。一方、$A$ が無限集合のときは、$\operatorname{Cl} A=X$ である。

(4) $X=\mathbb{R}$ とする。$A$ を開区間 $(-1, 1)$ とするとき、$\operatorname{Cl} A=[-1, 1]$ であることを示そう。そのためには、(i) $x>1$ のとき $x\notin\operatorname{Cl} A$ (ii) $x<-1$ のとき $x\notin\operatorname{Cl} A$ (iii) $1\in\operatorname{Cl} A$ (iv) $-1\in\operatorname{Cl} A$ の四つを示せばよい。ここでは、(i) と (iii) のみ示そう((ii) は (i) と、(iv) は (iii) と、それぞれ同様である)。(i) を見るため、$x>1$ とする。このとき開区間 $U=(1,+\infty)$ を考えると、$U$ は $x$ の開近傍で $U\cap A=\emptyset$ であるから、命題 4.5により $x\notin \operatorname{Cl} A$ である。(iii) を見るためには、点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ を $x_n=1-1/n$ で定義するとき $x_n\to 1$ となることに注目する。$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $A$ の点列だから、命題 4.7により $1\in\operatorname{Cl} A$ である。この例にも見られるように、$\mathbb{R}$(あるいは一般に $\mathbb{R}^n$)における閉包は、直観的には集合に「境界の点」を付け加えたものであるということができ、視覚的に分かりやすい。

(5) $X=\mathbb{R}^n$ に対して、各座標が有理数であるような点全体のなす部分集合 $\mathbb{Q}^n$ を考える。このとき、$\operatorname{Cl} \mathbb{Q}^n=\mathbb{R}^n$ となることを示そう。$\operatorname{Cl} \mathbb{Q}^n\subset\mathbb{R}^n$ は明らかなので、$\mathbb{R}^n\subset\operatorname{Cl} \mathbb{Q}^n$ であることを示せばよい。そこで、$d$ でEuclid距離を表すことにし、$x=(x_1,\ldots, x_n)\in\mathbb{R}^n$ とする。$x$ の基本近傍系として、$\mathcal{V}=\{B_d(x,r)\,|\,r>0\}$ を考え、これについて命題 4.5(4)の条件を用いることで $x\in\operatorname{Cl} \mathbb{Q}^n$ を示そう。任意に $V\in\mathcal{V}$ を与える。ある $r>0$ に対して、$V=B_d(x,r)$ である。各 $i=1,\ldots, n$ に対して、有理数 $y_i\in\mathbb{Q}$ を $x_i$ に十分近くとり、$|x_i-y_i|<r/\sqrt{n}$ となるようにする。すると、$y=(y_1,\ldots, y_n)$ に対して $y\in\mathbb{Q}^n$ であり、簡単な計算により $d(x,y)<r$ を得る。よって、$y\in B_d(x,r)\cap\mathbb{Q}^n=V\cap\mathbb{Q}^n$ となる。よって、$V\cap\mathbb{Q}^n\neq\emptyset$ であるから、命題 4.5(4)により $x\in\operatorname{Cl}\mathbb{Q}^n$ である。$\square$

上の例の(5)のように、閉包が空間全体となるような部分集合は特に重要であるため、それを表す用語がある。

定義 4.10 (稠密)

$X$ を位相空間とする。$X$ の部分集合 $A$ が($X$ において)稠密(dense)であるとは、$\operatorname{Cl} A=X$ が成り立つことをいう。$\square$

例 4.11 (稠密な部分集合の例)

例 4.9(5)により、$\mathbb{R}^n$ において $\mathbb{Q}^n$ は稠密である。とくに、$\mathbb{R}$ において $\mathbb{Q}$ は稠密である。$\square$

定義 4.12 (可分)

位相空間 $X$ が可分(separable)であるとは、$X$ の高々可算な部分集合 $A$ であって $X$ において稠密なものが存在することをいう。$\square$

$\mathbb{Q}^n$ は高々可算集合であるから、例 4.11 により $\mathbb{R}^n$ は可分な位相空間であるが、より一般に次の結果がある。

命題 4.13 (第二可算ならば可分)

位相空間 $X$ が第二可算であるとする。このとき、$X$ は可分である。

証明

位相空間 $X$ が第二可算であるとすると、$X$ の高々可算な開基 $\mathcal{B}$ が存在する。各 $B\in\mathcal{B}\setminus \{\emptyset\}$ に対して、点 $x_B\in B$ を選び、$A=\{x_B\,|\,B\in\mathcal{B}\setminus \{\emptyset\}\}$ とおく。$A$ は高々可算集合であるから、あとは $A$ が $X$ において稠密であること、つまり $X=\operatorname{Cl} A$ を示せばよい。そのためには、$X\subset \operatorname{Cl} A$ が言えればよい。そこで、$x\in X$ とする。$x\in\operatorname{Cl} A$ を、命題 4.5(3)の条件を使って示すため、$x$ の開近傍 $V$ を任意に与える。すると、$x\in B\subset V$ となる $B\in\mathcal{B}$ が存在する。このとき、$x\in B$ により $B\neq\emptyset$ だから、$x_B\in B$ が定義される。$x_B\in V\cap A$ なので、$V\cap A\neq\emptyset$ である。これで命題 4.5(3)の条件により $x\in\operatorname{Cl} A$ が示された。よって $X\subset \operatorname{Cl} A$ となり、$A$ が $X$ において稠密であることが示された。$\square$

次の結果により、距離空間については第二可算性と可分性は同値な性質となる。

命題 4.14 (距離空間が可分ならば第二可算)

距離空間 $(X, d)$ が可分であるとする。このとき、$(X, d)$ は第二可算である。

証明

距離空間 $(X, d)$ が可分であるとすると、高々可算な集合 $A\subset X$ であって $X$ において稠密なものが存在する。このとき、 $$ \mathcal{B}=\{B(a,1/n)\,|\,a\in A,\,n\in\mathbb{N}\} $$ とおけば $\mathcal{B}$ が $X$ の開基となることを示そう。$\mathcal{B}$ は高々可算であるから、これが言えれば $X$ の第二可算性が示されて証明は終わる。さて、そこで $U$ を $X$ の開集合とし、$x\in U$ とする。$x\in B\subset U$ となる $B\in\mathcal{B}$ を見つければよい。まず、$r>0$ を $B(x,r)\subset U$ となるように取る。$n\in\mathbb{N}$ を、$1/n<r$ であるように取ると、$x\in X=\operatorname{Cl} A$ により $B(x,1/2n)\cap A\neq\emptyset$ である。そこで、$a\in B(x,1/2n)\cap A$ を一つ取る。すると、$d(a,x)<1/2n$ であるから、$x\in B(a,1/2n)$ である。また、$B(a,1/2n)\subset B(x,1/n)$ である。実際、$y\in B(a,1/2r)$ とすれば、$d(y,x)\leq d(y,a)+d(a,x)<1/2n+1/2n=1/n$ であるから、$y\in B(x,1/n)$ となる。以上から $$ x\in B(a,1/2n)\subset B(x,1/n)\subset B(x,r)\subset U $$ である。$B(a,1/2n)\in\mathcal{B}$ であるから、これで $\mathcal{B}$ が $X$ の開基となることが示された。$\square$

例 4.15 (可分だが第二可算でない例、第一可算だが距離化可能でない例)

$X$ を集合とし、これを補有限位相(例 1.8)により位相空間とみなす。このとき、$X$ は可分であることを示そう。 $X$ が高々可算の場合は、$X$ 自身が高々可算な稠密集合となるからよい。そこで、$X$ が非可算であるとする。このときは、 可算無限部分集合 $A\subset X$ を取ることができる。$A$ が $X$ において稠密である。実際、$X$ の閉集合は $X$ の有限部分集合あるいは $X$ 自身だから、このとき $A$ を含む $X$ の閉集合は $X$ 自身しかあり得ない。よって、$A$ を含む最小の閉集合であるところの $\operatorname{Cl} A$ は $X$ でなければならない。 これで $A$ は $X$ の稠密な部分集合であることが分かり、$X$ は可分であることが分かった。

一方、$X$ が非可算であるとき、$X$ は第一可算とならないことを例 2.14で示している。このことと命題 3.7より、$X$ は第二可算でもない。したがって、非可算集合に補有限位相を入れたものは、可分であるが第二可算ではない位相空間の例となっている。

可分だが第二可算ではない位相空間のもう一つの例として、Sorgenfrey直線 $\mathbb{S}$(例 3.12)がある。実際、$\mathbb{S}$ の高々可算な稠密な部分集合として $\mathbb{Q}$ が取れる(確かめよ)。一方、$\mathbb{S}$ が第二可算でないことは例 3.12で示した。$\mathbb{S}$ が可分だが第二可算でないという事実と命題 4.15により、$\mathbb{S}$ は距離化可能ではないことが分かる。かくして、$\mathbb{S}$ は第一可算であるが距離化可能ではない位相空間であると分かった。 $\square$

閉包作用素を指定することで位相空間を定めることができる。そのときに用いられる性質が次のものである。

命題 4.16 (閉包作用素の性質)

位相空間 $X$ の閉包作用素 $\operatorname{Cl}\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ は次の性質を満たす。

  • (CO1) $\operatorname{Cl} \emptyset=\emptyset$
  • (CO2) $A\subset\operatorname{Cl} A$
  • (CO3) $\operatorname{Cl}(A\cup B)=\operatorname{Cl} A\cup\operatorname{Cl} B$
  • (CO4) $\operatorname{Cl} \operatorname{Cl} A=\operatorname{Cl} A$

証明

(CO1)は、$\emptyset$ が閉集合であることから分かる。(CO2)は、閉包の定義から明らかである。

(CO3)を示すため、$A, B\subset X$ とする。命題 4.4により $\operatorname{Cl} A\subset \operatorname{Cl}(A\cup B)$ および $\operatorname{Cl} B\subset \operatorname{Cl}(A\cup B)$ が成り立つので、$\operatorname{Cl} A\cup\operatorname{Cl} B\subset \operatorname{Cl}(A\cup B)$ である。一方、(CO2)により $A\cup B\subset\operatorname{Cl} A\cup\operatorname{Cl} B$ である。命題 1.3の(C2)により $\operatorname{Cl} A\cup\operatorname{Cl} B$ は閉集合だから、命題 4.2により $\operatorname{Cl} (A\cup B)\subset \operatorname{Cl} A\cup \operatorname{Cl} B$ である。

(CO4)を示すため、$A\subset X$ とする。$\operatorname{Cl} A\subset\operatorname{Cl} A$ という明らかな包含関係に注目する。ここでの右辺 $\operatorname{Cl} A$ は閉集合なので、命題 4.2により$\operatorname{Cl} \operatorname{Cl} A\subset \operatorname{Cl} A$ である。逆向きの包含 $\operatorname{Cl} A\subset \operatorname{Cl} \operatorname{Cl} A$ は(CO2)から直ちに分かる。$\square$

命題 4.17 (閉包作用素から位相空間を定める)

集合 $X$ に対して写像 $\operatorname{Cl}\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ が与えられ、命題 4.16の条件(CO1)-(CO4)を満たしているとする。このとき、$X$ 上の位相 $\mathcal{O}$ であって、$\operatorname{Cl}$ が位相空間 $(X, \mathcal{O})$ の閉包作用素となるようなものがただ一つ存在する。

証明

写像 $\operatorname{Cl}\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ が(CO1)-(CO4)を満たすとする。 まず、そのような位相 $\mathcal{O}$ が存在することを示そう。そのため、はじめに $\mathcal{F}$ を以下で定義する。 $$ \mathcal{F}=\{A\subset X\,|\,A=\operatorname{Cl} A \} $$ $\mathcal{F}$ が命題 1.3の(C1)-(C3)を満たすことを確認しよう。

まず、(C1)を示す。(CO1)により $\emptyset\in\mathcal{F}$ である。また、(CO2)により $X\subset\operatorname{Cl} X\subset X$ となるので、$X\in\mathcal{F}$ である。(C2)を示すため、$F_1, F_2\in\mathcal{F}$ とする。(CO3)により、$\operatorname{Cl}(F_1\cup F_2)=\operatorname{Cl} F_1\cup\operatorname{Cl} F_2=F_1\cup F_2$ であるから、$F_1\cup F_2\in\mathcal{F}$ である。(C3)を示す前に、次が成り立つことに注意しておく。 $$ A\subset B\subset X \Longrightarrow \operatorname{Cl} A\subset\operatorname{Cl} B\qquad(\star) $$ これを見るため、$A\subset B\subset X$ とする。 このとき $A\cup B=B$ なので、(CO3)により$\operatorname{Cl}A\cup\operatorname{Cl} B=\operatorname{Cl}(A\cup B)=\operatorname{Cl} B$ であり、したがって $\operatorname{Cl} A\subset\operatorname{Cl} B$ である。

さて、(C3)を示すため、$\{F_\lambda\,|\,\lambda\in \Lambda\}\subset\mathcal{F}$ とする。$\lambda\in \Lambda$ を任意に固定すると、$\bigcap_{\mu\in \lambda} F_\mu\subset F_\lambda$ であるから、これに上で示したことを適用して、$\operatorname{Cl}\, \bigcap_{\mu\in I} F_\mu\subset \operatorname{Cl} F_\lambda=F_\lambda$ を得る。これがすべての $\lambda\in \Lambda$ について成り立つので、$\operatorname{Cl} \bigcap_{\mu\in I} F_\mu\subset \bigcap_{\lambda\in \Lambda} F_\lambda$ である。逆向きの包含は (CO2) から成り立つので、$\operatorname{Cl} \bigcap_{\lambda\in \Lambda} F_\lambda=\bigcap_{\lambda\in \Lambda} F_\lambda$ であり、よって $\bigcap_{\lambda\in \Lambda} F_\lambda\in\mathcal{F}$ である。

以上により、$\mathcal{F}$ は(C1)-(C3)を満たす。よって、$\mathcal{F}$の要素の補集合全体の集合 $$ \mathcal{O}=\{X\setminus F\,|\,F\in\mathcal{F}\} $$ は(O1)-(O3)を満たし、$(X, \mathcal{O})$ は位相空間となって $\mathcal{F}$ は $(X, \mathcal{O})$ の閉集合全体の集合になることが分かる。

次に、$\mathrm{Cl}$ が位相空間 $(X, \mathcal{O})$ における閉包作用素に一致することを示そう。混乱を防ぐため、位相空間 $(X, \mathcal{O})$ における閉包作用素は $\mathrm{Cl}_{\mathcal{O}}$ で表す。示すべきことは、任意の $A\subset X$ に対して $\operatorname{Cl}A=\mathrm{Cl}_{\mathcal{O}} A$ となることである。そこで、$A\subset X$ を任意に与える。(CO2)により、$A\subset \operatorname{Cl} A$ であるが、いま(CO4)により$\operatorname{Cl}\operatorname{Cl}A=\operatorname{Cl}A$ なので、$\operatorname{Cl}A\in\mathcal{F}$ つまり $\operatorname{Cl}A$ は $(X, \mathcal{O})$ の閉集合である。よって、命題 4.2により、$\mathrm{Cl}_{\mathcal{O}} A\subset\operatorname{Cl}A$ である。逆向きの包含を示すため、任意の $x\in\operatorname{Cl}A$ を与える。$x$ の $(X, \mathcal{O})$ における開近傍 $V$ を任意に与えると、$X\setminus V=\operatorname{Cl}(X\setminus V)$ である。もし、$V\cap A=\emptyset$ であれば、$A\subset X\setminus V$ であるから、さきほど示した性質 $(\star)$ により、$x\in \operatorname{Cl}A\subset\operatorname{Cl}(X\setminus V)=X\setminus V$ となり、$x\in V$ であることに反する。よって、$V\cap A\neq\emptyset$ であるから、命題 4.5(3)により、$x\in\mathrm{Cl}_{\mathcal{O}} A$ である。以上で、$\operatorname{Cl}A=\mathrm{Cl}_{\mathcal{O}} A$ が示された。

最後に、条件を満たす位相の一意性を示そう。そこで、$X$ 上の位相 $\mathcal{O}_1$, $\mathcal{O}_2$ に対して、$\mathrm{Cl}$ が $(X, \mathcal{O}_1)$ の閉包作用素であると同時に $(X, \mathcal{O}_2)$ の閉包作用素でもあるとする。$\mathcal{O}_1\subset\mathcal{O}_2$ を示すため、$U\in\mathcal{O}_1$ とする。$X\setminus U$ は $(X, \mathcal{O}_1)$ の閉集合であり、$\mathrm{Cl}$ は $(X, \mathcal{O}_1)$ の閉包作用素なので、$X\setminus U=\operatorname{Cl}(X\setminus U)$ である。$\mathrm{Cl}$ は $(X, \mathcal{O}_2)$ の閉包作用素でもあるので、この式は注意 4.3により $X\setminus U$ が $(X, \mathcal{O}_2)$ の閉集合であることを意味し、したがって $U\in\mathcal{O}_2$ である。以上から、$\mathcal{O}_1\subset\mathcal{O}_2$ である。全く同様に、$\mathcal{O}_2\subset\mathcal{O}_1$ も成り立つから、$\mathcal{O}_1=\mathcal{O}_2$ である。$\square$

次に、閉包と双対的な操作として、部分集合の内部の概念を導入する。

定義 4.18 (内部)

$X$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。$A$ に含まれる $X$ の開集合全体の集合を $\mathcal{U}_A$ とするとき、和集合 $\bigcup_{U\in \mathcal{U}_A} U$ を $A$ の $X$ における内部(interior)といい、$\operatorname{Int} A$ で表す。$\square$

$A$ の内部の記号としては、この他にも $A^\circ$ を用いる文献もある。複数の位相空間を扱うときなどに、$X$ における内部であることを強調する必要がある場合は $\operatorname{Int}_X A$ と書く場合もある。定義から明らかに、$\operatorname{Int} A\subset A$ である。 $\operatorname{Int} A$ の要素のことを、$A$ の内点(interior point)という。 また、各 $A\subset X$ に $\operatorname{Int} A$ を対応させることで、 $X$ の冪集合 $\mathcal{P}(X)$ から $\mathcal{P}(X)$ への写像 $$ \operatorname{Int}\colon \mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X) $$ が定義される。これを $X$ の内部作用素(interior operator)という。$\square$

開集合の任意個の和集合は常に開集合であるから、内部 $\operatorname{Int} A$ は開集合である。

命題 4.19 (内部の最大性)

$X$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。$U$ が $U\subset A$ を満たす $X$ の開集合であるならば $U\subset \operatorname{Int} A$ である。 したがって、$\operatorname{Int} A$ は $A$ に含まれる $X$ の開集合のうち最大のものである。

証明

$A\subset X$ とし、$X$ の開集合 $U$ が $U\subset A$ を満たすとする。このとき、定義 4.18の $\mathcal{U}_A$ に対して $U\in\mathcal{U}_A$ であるから、$U\subset \bigcup_{U'\in\mathcal{U}_A} U'=\operatorname{Int} A$ である。$\operatorname{Int} A$ は上で注意したように $X$ の開集合であるから、 いま言えたことは、まさに、$\operatorname{Int} A$ が $A$ に含まれる $X$ の開集合のうち最大のものであることを示している。$\square$

注意 4.20 (開集合の特徴づけ)

命題 4.19の後半の主張から、すぐに次のことが分かる。位相空間 $X$ の部分集合 $A$ が開集合であることは、$A=\operatorname{Int} A$ であることと同値である。$\square$

次の関係を用いると、内部に関する様々な主張は、閉包に関する主張から導かれることが分かる。

命題 4.21 (内部と閉包との関係)

$X$ を位相空間とするとき、任意の $A\subset X$ に対して $\operatorname{Int} A=X\setminus \operatorname{Cl}(X\setminus A)$ である。

証明 二つの包含関係 $\operatorname{Int} A\subset X\setminus \operatorname{Cl}(X\setminus A)$ および $X\setminus \operatorname{Cl}(X\setminus A)\subset \operatorname{Int} A$ を示そう。

まず、$\operatorname{Int} A\subset A$ であるから、$X\setminus A\subset X\setminus \operatorname{Int} A$ である。よって、命題 4.2により、$\operatorname{Cl}(X\setminus A)\subset X\setminus \operatorname{Int} A$ である。したがって、$\operatorname{Int} A\subset X\setminus \operatorname{Cl}(X\setminus A)$ である。 一方、$X\setminus A\subset\operatorname{Cl}(X\setminus A)$ であるから、$X\setminus \operatorname{Cl}(X\setminus A)\subset A$ である。よって、命題 4.19により、$X\setminus \operatorname{Cl}(X\setminus A)\subset \operatorname{Int} A$ である。$\square$

命題 4.22 (内部の単調性)

$X$ を位相空間とするとき、$X$ の部分集合 $A, B$ に対して $A\subset B$ ならば $\operatorname{Int} A\subset\operatorname{Int} B$ である。

証明

閉包の単調性(命題 4.4)と命題 4.21を組み合わせれば分かる。$\square$

命題 4.23 (内部に属する点の特徴づけ)

$X$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$x\in A$ に対して、次は同値である。

  • (1) $x\in \operatorname{Int} A$ である。
  • (2) $x$ のある近傍 $V$ に対して、$V\subset A$ である。
  • (3) $A$ は $x$ の近傍である。

証明

(1) $\Rightarrow$ (2) は、$x$ の近傍 $V$ として $\operatorname{Int} A$ を取れることから分かる。

(2) $\Rightarrow$ (3) を示す。$x$ のある近傍 $V$ に対して $V\subset A$ であるとする。このとき、$X$ の開集合 $U$ で $x\in U\subset V$ となるものが存在する。すると $U\subset A$ であるから、$A$ は $x$ の近傍である。

(3) $\Rightarrow$ (1) を示す。$A$ が $x$ の近傍であるとすると、ある開集合 $U$ に対して、$x\in U\subset A$ である。よって、命題 4.19により、$U\subset \operatorname{Int} A$ である。$\square$

命題 4.24 (内部作用素の性質)

位相空間 $X$ の閉包作用素 $\operatorname{Int}\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ は次の性質を満たす。

  • (IO1) $\operatorname{Int} X=X$
  • (IO2) $\operatorname{Int} A\subset A$
  • (IO3) $\operatorname{Int}(A\cap B)=\operatorname{Int} A\cap\operatorname{Int} B$
  • (IO4) $\operatorname{Int} \operatorname{Int} A=\operatorname{Int} A$

証明

閉包作用素の性質(命題 4.16)と命題 4.21を組み合わせれば分かる。$\square$

命題 4.25 (内部作用素から位相空間を定める)

集合 $X$ に対して写像 $\operatorname{Int}\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ が与えられ、命題 4.24の条件(IO1)-(IO4)を満たしているとする。このとき、$X$ 上の位相 $\mathcal{O}$ であって、$\operatorname{Int}$ が位相空間 $(X, \mathcal{O})$ の内部作用素となるようなものがただ一つ存在する。

証明 $\operatorname{Cl}\colon\mathcal{P}(X)\to\mathcal{P}(X)$ を $\operatorname{Cl} A=X\setminus \operatorname{Int}(X\setminus A)$ により定義すれば、$\operatorname{Cl}$ は (CO1)-(CO4) を満たすから、$X$ 上の位相 $\mathcal{O}$ であって $\operatorname{Cl}$ が位相空間 $(X, \mathcal{O})$ の閉包作用素となるものがただ一つ存在する。$\operatorname{Cl}$ が $(X, \mathcal{O})$ の閉包作用素であることと $\operatorname{Int}$ が $(X, \mathcal{O})$ の内部作用素であることは命題 4.21により同値であるから、示すべき主張が得られる。$\square$

最後に、閉包と内部を用いてすぐに定義される境界の概念にふれよう。

定義 4.26 (境界)

位相空間 $X$ の部分集合 $A$ に対して、差集合 $\operatorname{Cl} A\setminus \operatorname{Int} A$ を $A$ の $X$ における境界(frontier)といい、$\operatorname{Fr} A$ と表す。$\square$

境界 $\operatorname{Fr} A$ は文献によって様々な記号で表され、他には $\partial A$, $\operatorname{Bd} A$ などもよく用いられる。$X$ における境界であることを強調する必要がある場合は $\operatorname{Fr}_X A$ と書く場合もある。 定義と命題 4.21により、 $$ \operatorname{Fr} A=\operatorname{Cl} A\cap(X\setminus \operatorname{Int} A)=\operatorname{Cl} A\cap\operatorname{Cl}(X\setminus A) $$ である。よって、$\operatorname{Fr} A$ は常に $X$ の閉集合である。さらに、上の式と命題 4.5から、次が直ちに導かれる(証明は省略する)。

命題 4.27 (境界に属する点の特徴づけ)

$X$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$x\in A$ に対して、次は同値である。

  • (1) $x\in \operatorname{Fr} A$ である。
  • (2) $x$ の任意の近傍 $V$ に対して、$A\cap V\neq\emptyset$ かつ $(X\setminus A)\cap V\neq\emptyset$ である。
  • (3) $x$ の任意の開近傍 $V$ に対して、$A\cap V\neq\emptyset$ かつ $(X\setminus A)\cap V\neq\emptyset$ である。
  • (4) $x$ のある基本近傍系 $\mathcal{V}$ が存在して、任意の $V\in\mathcal{V}$ に対して $A\cap V\neq\emptyset$ かつ $(X\setminus A)\cap V\neq\emptyset$ である。$\square$

例 4.28 (内部と境界の例)

(1) $X=\mathbb{R}^2$ とし、$A$ を平面 $\mathbb{R}^2$ の原点 $0=(0,0)$ を中心する半径 $1$ の閉円板とする。すなわち、 $$ A=\overline{B}_{d_{\mathbb{R}^2}}(0,1)=\{x\in\mathbb{R}^2\,|\,{d_{\mathbb{R}^2}}(x,0)\leq 1\}=\{x\in\mathbb{R}^2\,|\,\|x\|\leq 1\}=\{(x_1, x_2)\in\mathbb{R}^2\,|\,x_1^2+x_2^2\leq 1\} $$ とする。ここで、${d_{\mathbb{R}^2}}$ は $\mathbb{R}^2$ 上のEuclid距離、$\|\phantom{x}\|$ はEuclidノルムとする。命題 1.16により、$A$ は $\mathbb{R}^2$ の閉集合である。 よって、$\operatorname{Cl} A=A$ である。次に、$\operatorname{Int} A$ を求めよう。 いま少なくとも $\operatorname{Int} A\subset A$ だから、$A$ の各点 $x$ に対して、$x$ が $\operatorname{Int} A$ に属しているかどうかを判定するという方針をとる。まず、${d_{\mathbb{R}^2}}(x, 0)<1$ の場合を考える。このときは、開円板 $U=B_{d_{\mathbb{R}^2}}(0,1)$ が $x$ の開近傍となり、$U\subset A$ であるから、命題 4.23により $x\in\operatorname{Int} A$ である。次に、${d_{\mathbb{R}^2}}(x, 0)=1$ の場合を考える。このときは $x\notin \operatorname{Int} A$ であることを示そう。そのためには、命題 4.23により、$x$ のいかなる近傍 $V$ に対しても、$V$ が $A$ に含まれないことを示せばよい。そこで、$x$ の近傍 $V$ を任意に与えると、ある $r>0$ が存在して、$B(x,r)\subset V$ である。$y=(1+r/2)x$ とおけば、${d_{\mathbb{R}^2}}(y,x)=\|y-x\|=(r/2)\|x\|=(r/2)\cdot 1=r/2<r$ により $y\in B(x,r)\subset V$ である。一方、${d_{\mathbb{R}^2}}(y,0)=\|y\|=(1+r/2)\|x\|=(1+r/2)\cdot 1=1+r/2>1$ であるから、$y\notin A$ である。以上により、$y\in V\setminus A$ であるので、$V$ は $A$ に含まれない。したがって、$x\notin\operatorname{Int} A$ である。こうして、 $$ \operatorname{Int} A=B_{d_{\mathbb{R}^2}}(0,1)=\{x\in\mathbb{R}^2\,|\,{d_{\mathbb{R}^2}}(x,0)<1\}=\{x\in\mathbb{R}^2\,|\,\|x\|<1\}=\{(x_1, x_2)\in\mathbb{R}^2\,|\,x_1^2+x_2^2<1\} $$ となることが分かった。$\operatorname{Cl} A=A$ であったから、$A$ の境界 $\operatorname{Fr} A=\operatorname{Cl} A\setminus\operatorname{Int} A=A\setminus\operatorname{Int} A$ は単位円周となる。すなわち、 $$ \operatorname{Fr} A=\{x\in\mathbb{R}^2\,|\,{d_{\mathbb{R}^2}}(x,0)=1\}=\{x\in\mathbb{R}^2\,|\,\|x\|=1\}=\{(x_1, x_2)\in\mathbb{R}^2\,|\,x_1^2+x_2^2=1\} $$ である。

(2) $X=\mathbb{R}^3$ とし、 $$ B=\{(x_1, x_2, x_3)\in\mathbb{R}^3\,|\,x_1^2+x_2^2\leq 1,\,x_3=0\} $$ とする。$B$ は $\mathbb{R}^3$ 内の平面 $P=\{(x_1, x_2, x_3)\in\mathbb{R}^3\,|\,x_3=0\}$ に含まれる閉円板である。$B$ は $\mathbb{R}^3$ の閉集合である。このことを示すには、例えば、$B=P\cap \overline{B}_{d_{\mathbb{R}^3}}(0,1)$ であることに注目すればよい。ここで、${d_{\mathbb{R}^3}}$ は $\mathbb{R}^3$ のEuclid距離を表す。$\overline{B}_d(0,1)$ は閉球体だから $\mathbb{R}^3$ の閉集合で(命題 1.16)、$P$ は $\mathbb{R}^3$ の閉集合であることは、たとえば $\mathbb{R}^3\setminus P$ が開集合であることから分かる(詳細は読者にゆだねる)。したがって、それらの共通部分である $B$ は $\mathbb{R}^3$ の閉集合である。よって、$B=\operatorname{Cl} B$ である。

次に、$\operatorname{Int} B=\emptyset$ であることを示そう。$\operatorname{Int} B\subset B$ はいつでも成り立つから、それを言うには、$B$ のいかなる点も $\operatorname{Int} B$ に属していないことを言えばよい。そこで、任意に $x=(x_1, x_2, x_3)\in B$ を与える。$B$ の定義から、$x_3=0$ であり、よって $x=(x_1, x_2, 0)$ である。$x$ の近傍 $V$ を任意に与える。すると、$r>0$ が存在して、$B_{d_{\mathbb{R}^3}}(x,r)\subset V$ である。このとき、$x'=(x_1, x_2, r/2)$ とおけば、$d_{\mathbb{R}^3}(x, x')=r/2<r$ なので、$x'\in B_{d_{\mathbb{R}^3}}(x,r)\subset V$ であるが、一方で $x'$ の第 3 座標 $r/2$ は $0$ でないから、$x'\notin B$ である。よって、$V$ は $B$ に含まれない。これが $x$ の任意の近傍 $V$ について成り立つから、命題 4.23により $x\notin\operatorname{Int} B$ である。これで、$\operatorname{Int} B=\emptyset$ が示された。

以上より、$B$ の境界 $\operatorname{Fr} B$ は $\operatorname{Fr} B=\operatorname{Cl} B\setminus\operatorname{Int} B=B\setminus\emptyset=B$ である。

(1) の$A$ と (2) の $B$ は一見どちらも同じような閉円板であるが、内部 $\operatorname{Int} A$ と $\operatorname{Int} B$ には大きな違いが生じていることに注意する。これは、内部を考えるときに全空間を $\mathbb{R}^2$ と考えるか $\mathbb{R}^3$ と考えるかの違いに由来している。$\square$

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Last-modified: 2020-11-12 (木) 22:35:53 (21d)