位相空間論6:相対位相

この章から始まる3つの章では、与えられた位相空間から新しい位相空間をつくる方法について取り上げる。まず、この章では、相対位相について述べる。これは、位相空間の部分集合に位相を定める標準的な方法であり、位相空間の最も基本的な構成法である。合わせて、相対位相の写像バージョンである埋め込みについても述べる。

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入門テキスト「位相空間論」

  • 位相空間論6:相対位相
  • 位相空間論15:局所コンパクト空間?
  • 位相空間論16:Tychonoffの定理?

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$X$ の位相を基にして $A$ に位相に定める良い方法を考えたい。いま、$A$ と $X$ の間には、包含写像 $$ i\colon A\to X $$ が $i(a)=a\,(a\in A)$ により定義される。$A$ に定める位相は、少なくともこの包含写像 $i$ が連続であるように決めるべきであろう。例えば、極端な場合として、$A$ に離散位相(考え得る最も細かい位相)を入れれば、$i\colon A\to X$ は連続である(例 5.5)。しかし、離散位相では $X$ の位相と $A$ の位相に関連性がないから不都合である。そこで、$i$ が連続となるという制約のもとで、$A$ の位相を可能な限り粗くすることを試みる。いま、$i$ が連続であるという条件は、定義に従って書き下せば

$X$ の任意の開集合 $U$ に対して、$i^{-1}(U)=U\cap A$ が $A$ の開集合である

となる。したがって、$i$ が連続になることは、集合族 $$ \mathcal{O}_A=\{U\cap A\,|\,U\in\mathcal{O}\} $$ の要素がすべて開集合であることと同値である。そこで、$\mathcal{O}_A$ を開集合の全体として、$A$ に位相を定めることができないかを考えてみる。それができれば、$A$ は $i$ を連続とする必要最小限度の開集合だけをもつことになるだろう。言い換えれば、$A$ は $i$ を連続とする最も粗い位相をもつことになるだろう。問題は、$\mathcal{O}_A$ が開集合系の公理 (O1)-(O3) を満たすかどうかであるが、それは以下の命題で見るように実際に成り立つ。

命題 6.1 (集合族 $\mathcal{O}_A$ は開集合系の公理を満たす)

位相空間 $(X, \mathcal{O})$ と部分集合 $A\subset X$ に対して、上で定義された $A$ の部分集合族 $\mathcal{O}_A$ は $A$ 上の位相を定める。すなわち、$\mathcal{O}_A$ は開集合系の公理 (O1)-(O3) を満たす。

証明

(O1) を示すには、$\emptyset,\, A\in\mathcal{O}_A$ を示せばよい。まず、$\emptyset\in\mathcal{O}$ であり $\emptyset=\emptyset\cap A$ であるから、$\emptyset\in\mathcal{O}_A$ である。また、$X\in\mathcal{O}$ であり $A=X\cap A$ であるから、$A\in\mathcal{O}_A$ である。

(O2) を示す。そのため、$V_1,\,V_2\in\mathcal{O}_A$ とする。$\mathcal{O}_A$ の定義により、各 $i=1, 2$ に対して、$U_i\in\mathcal{O}$ であって $V_i=U_i\cap A$ となるものが存在する。すると、$V_1\cap V_2=(U_1\cap A)\cap (U_2\cap A)=(U_1\cap U_2)\cap A$ であるが、$U_1\cap U_2\in\mathcal{O}$ であるから、$V_1\cap V_2\in\mathcal{O}_A$ である。

最後に (O3) を示す。そのため、$\{V_\lambda\,|\,\lambda\in \Lambda\}\subset\mathcal{O}_A$ とする。$\mathcal{O}_A$ の定義により、各 $\lambda\in \Lambda$ に対して、$U_\lambda\in \mathcal{O}$ を $U_\lambda\cap A=V_\lambda$ となるように選べる。すると、$\bigcup_{\lambda\in \Lambda} V_\lambda=\bigcup_{\lambda\in \Lambda} (U_\lambda\cap A)=(\bigcup_{\lambda\in \Lambda} U_\lambda)\cap A$ であるが、$\bigcup_{\lambda\in \Lambda} U_\lambda\in\mathcal{O}$ であるから、$\bigcup_{\lambda\in \Lambda} V_\lambda\in\mathcal{O}_A$ である。$\square$

定義 6.2 (相対位相)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$A$ の部分集合族 $$ \mathcal{O}_A=\{U\cap A\,|\,U\in\mathcal{O}\} $$ は命題 6.1により開集合系の公理 (O1)-(O3) を満たすから、$(A, \mathcal{O}_A)$ は位相空間となる。このとき、$\mathcal{O}_A$ を $A$ の $X$ からの相対位相(relative topology)といい、$(A, \mathcal{O}_A)$ を $(X, \mathcal{O})$ の部分空間(subspace)という。

以下では、位相空間 $X$ の部分集合 $A$ に対して、特に断りのない限り、$A$ を $X$ からの相対位相によって位相空間とみなす。いままでの議論から、次が成り立つ。

命題 6.3 (相対位相と包含写像)

$(X, \mathcal{O})$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。$A$ の $X$ からの相対位相 $\mathcal{O}_A$ は、包含写像 $i\colon A\to X$ を連続とする $A$ 上の位相の中で、最も粗い位相である。つまり、次の二つが成り立つ。

  • $i\colon A\to X$ は、$(A, \mathcal{O}_A)$ から $(X, \mathcal{O})$ への連続写像となる。
  • $i$ が $(A, \mathcal{O}')$ から $(X, \mathcal{O})$ への連続写像となるような $A$ 上の任意の位相 $\mathcal{O}'$ に対して、$\mathcal{O}_A\subset\mathcal{O}'$ である。$\square$

命題 6.4 (連続写像の制限)

$X,$ $Y$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とする。$f\colon X\to Y$ が連続写像であるとき、制限 $f|_A\colon A\to Y$ も(相対位相に関して)連続である。

証明

命題 6.3により、包含写像 $i\colon A\to X$ は連続写像であり、$f|_A=f\circ i$ であるから、$f|_A$ は連続写像の合成となり、よって連続である。$\square$

位相空間 $X$ において $B\subset A\subset X$ であるとき、$B$ は $X$ の部分空間とも $A$ の部分空間とも考えることができるが、そのどちらで考えても位相は同じになる。すなわち、

命題 6.5 (部分空間の推移性)

$X$ を位相空間とし、$B\subset A\subset X$ とする。$B$ の $A$ からの相対位相 $\mathcal{O}_{A,B}$ と $B$ の $X$ からの相対位相 $\mathcal{O}_{X,B}$ は一致する。

証明

まず、$\mathcal{O}_{A,B}\subset\mathcal{O}_{X,B}$ を示す。$W\in\mathcal{O}_{A,B}$ とする。$A$ のある開集合 $V$ に対して、$W=V\cap B$ となる。さらに、$X$ のある開集合 $U$ に対して、$V=U\cap A$ となる。すると、$W=V\cap B=(U\cap A)\cap B=U\cap B$ であるから、$W\in\mathcal{O}_{X,B}$ である。次に、$\mathcal{O}_{X,B}\subset\mathcal{O}_{A,B}$ を示す。$W\in\mathcal{O}_{X,B}$ とする。$X$ のある開集合 $U$ に対して、$W=U\cap B$ である。このとき、$V=U\cap A$ とおけば、$V$ は $A$ の開集合であって、$V\cap B=(U\cap A)\cap B=U\cap B=W$ である。よって、$W\in\mathcal{O}_{A,B}$ である。$\square$

上の命題 6.5は、特に断りなく暗黙のうちに使われることが多いので注意する。

命題 6.6 (相対位相に関する閉集合)

$X$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。部分空間 $A$ の閉集合全体の集合は $$ \mathcal{F}_A=\{F\cap A\,|\,F\text{ は }X\text{ の閉集合}\} $$ となる。

証明

$H$ を部分空間 $A$ の閉集合とすると、$A\setminus H$ は $A$ の開集合であるから、$X$ の開集合 $U$ が存在して、$A\setminus H=U\cap A$ となる。このとき、$F=X\setminus U$ とおけば、$F$ は $X$ の閉集合であって、$H=A\setminus (A\setminus H)=A\setminus (U\cap A)=A\setminus U=A\cap (X\setminus U)=A\cap F$ である。よって $H\in\mathcal{F}_A$ となる。

逆に、$H\in\mathcal{F}_A$ とすると、$X$ の閉集合 $F$ で $H=F\cap A$ となるものが存在する。$U=X\setminus F$ とおくと、$U$ は $X$ の開集合であって、$U\cap A$ は $A$ の開集合である。ところが、$H=F\cap A=(X\setminus U)\cap A=A\setminus U=A\setminus (U\cap A)$ であるから、$H$ は $A$ の閉集合である。$\square$

上の命題から、$X$ の部分空間 $A$ とは、$X$ の閉集合 $F$ を用いて $F\cap A$ の形で書ける集合を閉集合とする位相空間であるということもできる。部分空間における開集合・閉集合を扱うときには、次の二つの命題が基本的である。

命題 6.7 (開集合の開集合・閉集合の閉集合)

開集合の開集合は開集合であり、閉集合の閉集合は閉集合である。すなわち、$U$ が位相空間 $X$ の開集合であり、$V$ が部分空間 $U$ の開集合であるならば、$V$ は $X$ の開集合となる。また、$F$ が位相空間 $X$ の閉集合であり、$H$ が部分空間 $F$ の閉集合であるならば、$H$ は $X$ の閉集合である。

証明

$U$ を位相空間 $X$ の開集合、$V$ を部分空間 $U$ の開集合とする。このとき、$X$ の開集合 $V'$ が存在して、$V=V'\cap U$ となる。$V'$ も $U$ も $X$ の開集合なので、$V'\cap U$ は $X$ の開集合であり、よって $V$ は $X$ の開集合となる。閉集合についての主張も、命題 6.6を用いれば同様に示される。$\square$

命題 6.8 (部分空間と開集合・閉集合)

$X$ を位相空間とし、$B\subset A\subset X$ とする。$B$ が $X$ の開集合であれば、$B$ は $A$ の開集合である。また、$B$ が $X$ の閉集合であれば、$B$ は $A$ の閉集合である。

証明

$B$ が $X$ の開集合とすると、$B\subset A$ により $B=B\cap A$ であるから、$B$ は $A$ の開集合である。閉集合についての主張も、命題 6.6を用いれば同様に示される。$\square$

さて、$(X, d)$ を距離空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。このとき、$A$ に位相を定める自然な方法が二通りある。 一つ目は次のようなものである。距離空間 $(X, d)$ は位相空間 $(X, \mathcal{O}_d)$ を定める(命題 1.17)ので、その相対位相を考えることで、$A$ に位相 $(\mathcal{O}_d)_A$ が定まる。また、二つ目は次のようなものである。距離 $d$ の制限 $d_A=d|_{A\times A}$ は $A$ 上の距離となるから(注意 1.13)、距離空間 $(A, d_A)$ が得られ、これから $A$ に位相 $\mathcal{O}_{d_A}$ が定まる。ところが、実際にはこの二通りの位相は実際には一致するので、区別する必要がない。つまり、次が成り立つ。

命題 6.9 (距離空間の部分集合上の位相)

$(X, d)$ を距離空間とし、$A$ を $X$ の部分集合とする。$(X, d)$ が定める位相空間 $(X, \mathcal{O}_d)$ の部分空間 $(A, (\mathcal{O}_d)_A)$ と、 $d$ を制限することで得られる距離空間 $(A, d_A)$ が定める位相空間 $(A, \mathcal{O}_{d_A})$ に対して、 $$ (\mathcal{O}_d)_A=\mathcal{O}_{d_A} $$ である。

証明

まず、$(\mathcal{O}_d)_A\subset \mathcal{O}_{d_A}$ を示す。そのため、$V\in(\mathcal{O}_d)_A$ とする。すると、$U\in\mathcal{O}_d$ であって $V=U\cap A$ となるものが存在する。$x\in V$ を任意に与える。すると $x\in U$ だから、ある $r>0$ が存在して、$B_d(x,r)\subset U$ である。距離の制限の定義 $d_A=d|_{A\times A}$ により、$B_{d_A}(x,r)=B_d(x,r)\cap A$ となるから、$B_{d_A}(x,r)\subset U\cap A=V$ である。これで、$V\in\mathcal{O}_{d_A}$ が示された。

次に、$\mathcal{O}_{d_A}\subset (\mathcal{O}_d)_A$ を示す。そのため、$V\in\mathcal{O}_{d_A}$ とする。各 $x\in V$ に対して、$r_x>0$ を $B_{d_A}(x, r_x)\subset V$ つまり $B_d(x, r_x)\cap A\subset V$ となるように選べる。$U=\bigcup_{x\in V} B_d(x, r_x)$ とおくと $U\in\mathcal{O}_d$ である。さらに、$U\cap A=(\bigcup_{x\in V} B_d(x, r_x))\cap A=\bigcup_{x\in V} (B_d(x, r_x)\cap A)\subset V$ である。一方、$U$ の定義より $V\subset U$ であり、また $V\in\mathcal{O}_{d_A}$ から $V\subset A$ なので $V\subset U\cap A$ である。以上により、$V=U\cap A$ であるから、$V\in(\mathcal{O}_d)_A$ である。$\square$

注意 6.10 (命題 6.9 の証明についての注意)

命題 6.9の証明の後半部分、つまり $\mathcal{O}_{d_A}\subset (\mathcal{O}_d)_A$ の証明は、以下のような方法もある。まず、$(A, \mathcal{O}_{d_A})$ は $d_A$ に関する開球体の全体 $$ \mathcal{B}=\{B_{d_A}(x,r)\,|\,x\in A,\,r<0\} $$ を開基にもつことを思い出そう(例 3.4)。このとき、$B_{d_A}(x,r)=B_d(x,r)\cap A$ により、$\mathcal{B}\subset (\mathcal{O}_{d})_A$ であることがすぐに分かる。ところが、いま $\mathcal{O}_{d_A}$ は $\mathcal{B}$ を開基として生成される位相(注意 3.11)であるから、$\mathcal{O}_{d_A}$ は $\mathcal{B}$ を含む最小の位相である。この最小性により、$\mathcal{O}_{d_A}\subset (\mathcal{O}_{d})_A$ である。$\square$

第一可算性(定義 2.12)や第二可算性(定義 3.6)は部分空間に引き継がれる。つまり、次が成り立つ。

命題 6.11 (第一・第二可算な空間の部分空間は第一・第二可算)

第一可算(あるいは第二可算)な位相空間の部分空間は第一可算(あるいは第二可算)である。

証明

まず、第一可算の場合を示す。$X$ を第一可算な位相空間とし、$A\subset X$ とする。$x\in A$ を任意に与える。$x$ が $A$ において高々可算な基本近傍系をもつことを示せばよい。$X$ は第一可算だから、$x$ は $X$ における高々可算な基本近傍系 $\mathcal{U}=\{U_n\,|\,n\in\mathbb{N}\}$ をもつ。各 $n\in\mathbb{N}$ に対して、$x\in U'_n\subset U_n$ となるような $X$ の開集合 $U'_n$ を選べば $\{U'_n\,|\,n\in\mathbb{N}\}$ も $x$ の $X$ における基本近傍系である。したがって、はじめから各 $n\in\mathbb{N}$ に対して $U_n$ は開集合であると仮定してよい。このとき、$\mathcal{V}=\{U\cap A\,|\,U\in\mathcal{U}\}$ とおくと、$\mathcal{V}$ は $x$ の $A$ における開近傍からなる高々可算な族であるが、この $\mathcal{V}$ が $x$ の $A$ における基本近傍系であることを示そう。そのため、$x$ の $A$ における開近傍 $V$ を任意に与える。すると、$X$ の開集合 $\tilde{V}$ が存在して $V=\tilde{V}\cap A$ である。このとき $\tilde{V}$ は $x$ の $X$ における開近傍なので、ある $n\in\mathbb{N}$ が存在して $U_n\subset \tilde{V}$ となる。したがって、$U_n\cap A\subset\tilde{V}\cap A=V$ である。$U_n\cap A\in\mathcal{V}$ であるから、これで $\mathcal{V}$ が $x$ の $A$ における基本近傍系であることが示された。$\mathcal{V}$ は高々可算であるから、 $A$ が第一可算であることが証明された。

次に、第二可算の場合を示す。$X$ を第二可算な位相空間とし、$A\subset X$ とする。$A$ が高々可算な開基をもつことを示せばよい。$X$ は第二可算であるから、$X$ の高々可算な開基 $\mathcal{B}$ が存在する。すると、$\mathcal{B}'=\{B\cap A\,|\,B\in\mathcal{B}\}$ は $A$ の開集合からなる高々可算な族であるが、$\mathcal{B}'$ が $A$ の開基となることを示そう。そのため、$A$ の開集合 $V$ と $x\in V$ を任意に与える。すると、$X$ の開集合 $\tilde{V}$ であって $V=\tilde{V}\cap A$ となるものが存在する。すると $x\in\tilde{V}$ であり $\mathcal{B}$ は $X$ の開基であるから、$B\in\mathcal{B}$ であって $x\in B\subset \tilde{V}$ となるものが存在する。このとき $x\in B\cap A\subset \tilde{V}\cap A=V$ であり、$B\cap A$ は $\mathcal{B}'$ の要素であるから、$\mathcal{B}'$ が $A$ の開基であることが示された。$\mathcal{B}'$ は高々可算であるから、$A$ が第二可算であることが証明された。$\square$

次の命題は、場合分けによって定義された写像の連続性を示すのに有用である。

命題 6.12 (連続写像の貼り合わせ)

$X,$ $Y$ を位相空間、$f\colon X\to Y$ を写像とする。

  • (1) $\{U_\lambda\,|\,\lambda\in \Lambda\}$ を $X$ の開集合からなる族で、$X=\bigcup_{\lambda\in \Lambda} U_\lambda$ を満たすものとする。このとき、各 $\lambda\in \Lambda$ に対して $f|_{U_\lambda}\colon U_\lambda\to Y$ が連続ならば、$f\colon X\to Y$ は連続である。
  • (2) $\{F_1,\ldots, F_n\}$ を $X$ の閉集合からなる有限な族で、$X=\bigcup_{i=1}^n F_i$ を満たすものとする。このとき、各 $i=1,\ldots, n$ に対して $f|_{F_i}\colon F_i\to Y$ が連続ならば、$f\colon X\to Y$ は連続である。

証明

(1) $V$ を $Y$ の開集合とする。仮定から、任意の $\lambda\in \Lambda$ に対して $(f|_{U_\lambda})^{-1}(V)=f^{-1}(V)\cap U_\lambda$ は $U_\lambda$ の開集合である。命題 6.7により、$f^{-1}(V)\cap U_\lambda$ は $X$ の開集合となる。よって、和集合 $\bigcup_{\lambda\in \Lambda}(f^{-1}(V)\cap U_\lambda)$ は $X$ の開集合である。ところが、$f^{-1}(V)=f^{-1}(V)\cap X=f^{-1}(V)\cap(\bigcup_{\lambda\in \Lambda} U_\lambda)=\bigcup_{\lambda\in \Lambda}(f^{-1}(V)\cap U_\lambda)$ であるから、$f^{-1}(V)$ は $X$ の開集合となる。よって、$f$ は連続である。

(2) 命題 5.4を用いて示す。$H$ を $Y$ の閉集合とする。仮定から、任意の $i=1,\ldots,n$ に対して $(f|_{F_i})^{-1}(H)=f^{-1}(H)\cap F_i$ は $F_i$ の閉集合である。命題 6.7により、$f^{-1}(H)\cap F_i$ は $X$ の閉集合となる。よって、有限和 $\bigcup_{i=1}^n (f^{-i}(H)\cap F_i)$ は $X$ の閉集合である。ところが、$f^{-1}(H)=f^{-1}(H)\cap X=f^{-1}(H)\cap(\bigcup_{i=1}^n F_i)=\bigcup_{i=1}^n(f^{-1}(H)\cap F_i)$ であるから、$f^{-1}(H)$ は $X$ の閉集合となる。よって、命題 5.4により、$f$は連続である。$\square$

例 6.13 (道の合成)

一般に位相空間 $X$ に対して、連続写像 $f\colon [0, 1]\to X$ を $X$ における(path)といい、$f(0),$ $f(1)$ をそれぞれ道 $f$ の始点終点と呼ぶ。いま、二つの道 $f, g\colon [0,1]\to X$ に対して、$f$ の終点と $g$ の始点が一致している、つまり、$f(1)=g(0)$ であるとしよう。このとき、$f$ と $g$ を「つなぐ」ことで、一つの道 $h\colon [0,1]\to X$ を次のように定義することができる。 $$ h(t)= \begin{cases} f(2t) & 0\leq t\leq 1/2\text{ のとき}\\ g(2t-1) & 1/2\leq t\leq 1\text{ のとき} \end{cases} $$ $t=1/2$ のとき $f(2t)=f(1)=g(0)=g(2t-1)$ であるからこの定義に問題はない。$h$ の連続性は次のように示される。$h|_{[0,1/2]}$ および $h|_{[1/2,1]}$ はそれぞれ連続写像の合成の形で与えられるから連続である。そして、$[0,1]=[0,1/2]\cup [1/2,1]$ であって $[0,1/2]$ および $[1/2,1]$ は $[0,1]$ の閉集合であるから、命題 6.12(2)により $h$ は連続である。 $\square$

相対位相と点列の収束との関係について、少し注意しておこう。$X$ を位相空間、$A$ を $X$ の部分集合とするとき、$A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が点 $x\in A$ に収束することには、二通りの定義が考えられる。

  • (1) $(x_n)_{n=1}^\infty$ を $X$ の点列と考え、$X$ の位相に関して $(x_n)_{n=1}^\infty$ が $x$ に収束する。すなわち、$x$ の $X$ における任意の開近傍 $U$ に対して、ある $N\in\mathbb{N}$ が存在して $n\geq N$ のとき常に $x_n\in U$ となる。
  • (2) $(x_n)_{n=1}^\infty$ を $A$ の点列と考え、$A$ の $X$ からの相対位相に関して $(x_n)_{n=1}^\infty$ が $x$ に収束する。すなわち、$x$ の $A$ における任意の開近傍 $V$ に対して、ある $N\in\mathbb{N}$ が存在して $n\geq N$ のとき常に $x_n\in V$ となる。

この二通りの可能な定義は、次で命題で見るように実際には同値となるので、区別しなくてよい。

命題 6.14 (部分集合内の点列の収束の定義の同値性)

$A$ を位相空間 $X$ の部分集合、$(x_n)_{n=1}^\infty$ を $A$ の点列とし、$x\in A$ とする。このとき、上に挙げた「$(x_n)_{n=1}^\infty$ が $x$ に収束する」ことの二通りの定義 (1), (2) は同値である。

証明

(1)$\Rightarrow$(2) を示す。$A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が (1) の意味で $x\in A$ に収束したとする。このとき、(2) の意味でも収束していることを示すため、$V$ を $A$ における $x$ の開近傍とする。相対位相の定義から、ある開集合 $U$ が存在して、$V=U\cap A$ である。このとき、$U$ は $x$ の $X$ における開近傍となっている。いま $(x_n)_{n=1}^\infty$ は (1) の意味で $x\in A$ に収束しているから、$N\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\geq N$ のとき常に $x_n\in U$ である。ところが、$(x_n)_{n=1}^\infty$ は $A$ の点列であるから、このとき、$n\geq N$ のとき常に $x_n\in U\cap A=V$ であることが分かる。これで、$(x_n)_{n=1}^\infty$ は (2) の意味でも $x$ に収束していることが示された。

(2)$\Rightarrow$(1) を示す。$A$ の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が (2) の意味で $x\in A$ に収束したとする。このとき、(1) の意味でも収束していることを示すため、$U$ を $X$ における $x$ の開近傍とする。相対位相の定義から、$V=U\cap A$ とおけば $V$ は $A$ の開集合で、$x$ の $A$ における開近傍となっている。いま $(x_n)_{n=1}^\infty$ は (2) の意味で $x\in A$ に収束しているから、$N\in\mathbb{N}$ が存在して、$n\geq N$ のとき常に $x_n\in V$ である。$V\subset U$ であるから、このとき、$n\geq N$ のとき常に $x_n\in U$ も成り立つ。これで、$(x_n)_{n=1}^\infty$ は (1) の意味でも $x$ に収束していることが示された。$\square$

部分空間における閉包は、元の位相空間における閉包によって記述できる。

命題 6.15 (部分空間における閉包)

$X$ を位相空間とし、$B\subset A\subset X$ とする。このとき、$B$ について、部分空間 $A$ における閉包 $\operatorname{Cl}_A B$ と、$X$ における閉包 $\operatorname{Cl}_X B$ を考えることができるが、これらの間に次の関係がある。 $$ \operatorname{Cl}_A B=A\cap \operatorname{Cl}_X B $$

証明

$\operatorname{Cl}_X B$ は $X$ の閉集合であるから、命題 6.6により、$A\cap \operatorname{Cl}_X B$ は $A$ の閉集合である。一方、$B\subset A$ かつ $B\subset\operatorname{Cl}_X B$ であるから、$B\subset A\cap\operatorname{Cl}_X B$ である。したがって、部分空間 $A$ において命題 4.2を用いることで、$\operatorname{Cl}_A B\subset A\cap\operatorname{Cl}_X B$ を得る。逆の包含 $A\cap\operatorname{Cl}_X B\subset\operatorname{Cl}_A B$ を示すため、$x\in A\cap\operatorname{Cl}_X B$ とする。$x\in\operatorname{Cl}_A B$ を、命題 4.5を用いて示そう。そのため $x$ の $A$ における開近傍 $V$ を任意に与える。すると、$X$ における開集合 $U$ で $V=U\cap A$ となるものが存在する。このとき、$U$ は $x$ の開近傍であり、$x\in\operatorname{Cl}_X B$ であるから、命題 4.5により $U\cap B\neq\emptyset$ である。$B\subset A$ なので $U\cap B=U\cap B\cap A=(U\cap A)\cap B=V\cap B$ であり、したがって、$V\cap B\neq\emptyset$ である。これが $x$ の $A$ における任意の開近傍 $V$ について成り立つので、$x\in\operatorname{Cl}_A B$ である。これで、$A\cap\operatorname{Cl}_X B\subset\operatorname{Cl}_A B$ が示された。$\square$

例 6.16 (部分空間における開集合・閉集合)

$\mathbb{R}$ の部分空間 $X=[-1, 1)$ を考える。このとき $X$ の部分集合として $$ A=[-1,0),\quad B=[0,1) $$ を考えよう。$A$ は $\mathbb{R}$ の開集合ではないが、$\mathbb{R}$ の開集合 $(-\infty, 0)$ を用いて $A=(-\infty, 0)\cap X$ と表されることから、$A$ は $X$ の開集合である。また、$B$ は $\mathbb{R}$ の閉集合ではないが、$\mathbb{R}$ の閉集合 $[0,+\infty)$ を用いて $B=[0,\infty)\cap X$ と表されるので、$B$ は $X$ の閉集合である。

また、 $$ C=\{-1+1/n\,|\,n\in\mathbb{N}\}\cup\{1-1/n\,|\,n\in\mathbb{N}\} $$ という $X$ の部分集合を考えよう。$C$ の $\mathbb{R}$ における閉包は(命題 4.5を用いて分かるように) $\operatorname{Cl}_{\mathbb{R}} C=C\cup\{-1, 1\}$ であるから、$C$ の $X$ における閉包は、命題 6.15により $\operatorname{Cl}_X C=X\cap \operatorname{Cl}_{\mathbb{R}} C=X\cap (C\cup\{-1, 1\})=C\cup\{-1\}$ である。$\square$

$A$ が位相空間 $X$ の部分空間であるとし、$f\colon Y\to X$ を位相空間 $Y$ からの連続写像とする。このとき、$f(Y)\subset A$ であれば、$f$ の終域を $A$ に制限することによって、写像 $f^A\colon Y\to A$ が得られる(この $f^A$ のことも $f$ で表す場合が多いが、厳密にはこれらは区別されるべきものであり、ここではあえて別の記号を用いる)。このとき、$f^A\colon Y\to A$ は、再び連続であると言えるだろうか。もし、これが成り立たなければ、写像の連続性を論じるときに終域をどの集合にとるかに注意を払う必要があることになるが、幸運にもそういうことはない。

命題 6.17 (部分空間の普遍性)

$X,$ $Y$ を位相空間とし、$A$ を $X$ の部分空間とする。連続写像 $f\colon Y\to X$ が $f(Y)\subset A$ を満たすとする。$f$ の終域を $A$ に制限して得られる写像を $f^A\colon Y\to A$ とすると、$f^A\colon Y\to A$ は連続である。

証明

$i\colon A\to X$ を包含写像とすると、$i\circ f^A=f$ であることに注意する。 $f^A$ の連続性を示すため、$V$ を $A$ の開集合とする。すると、$X$ の開集合 $U$ で $U\cap A=V$ となるものが存在する。これは言い換えると $i^{-1}(U)=V$ である。よって、$f_A^{-1}(V)=f_A^{-1}(i^{-1}(U))=(i\circ f^A)^{-1}(U)=f^{-1}(U)$ である。$f$ は連続なので、$f^{-1}(U)$ は $Y$ の開集合である。よって、$f_A^{-1}(V)$ は $Y$ の開集合となる。これで、$f^A$ の連続性が示された。$\square$

上では、$f\colon Y\to X$ と $f^A\colon Y\to A$ を別の記号で書いて区別した。もちろんこれは本来必要な区別であるが、記号をむやみに煩雑にしないために、実際にはこの二つを同じ記号で表すこともある。そのような場合は、たとえば「連続写像 $f\colon Y\to X$ について $f(Y)\subset A$ が成り立つので、$f$ は $A$ への連続写像 $f\colon Y\to A$ と見なせる」などのように書く。

位相空間 $X,$ $Y$ について、実際には $X\subset Y$ ではないが $X$ を $Y$ の部分空間と同一視したいという状況がしばしばある。そのような状況で用いられる概念が以下で定義する埋め込みである。

定義 6.18 (埋め込み)

$X,$ $Y$ を位相空間、$f\colon X\to Y$ を連続写像とする。$f$ が埋め込み(embedding)であるとは、$f$ が単射であって、$f$ の終域を像 $f(X)$ に制限して得られる連続全単射 $\hat{f}\colon X\to f(X)$ が同相写像となることをいう。

上の定義で「連続全単射 $\hat{f}$」と述べたが、ここでの $\hat{f}$ の連続性は命題 6.16から保証されていることである。なお、可微分多様体の理論などでは、「埋め込み」という語をより狭い意味で用いる。このことから、区別のためにここで定義した埋め込みを位相的埋め込み(topological embedding)と呼ぶこともある。

明らかな場合として、$X$ が $Y$ の部分空間である場合、包含写像 $i\colon X\to Y$ は埋め込みとなる。以下では、図形的意味の分かりやすい $\mathbb{R}^2$ への埋め込みの例を挙げる。

例 6.20 (埋め込みの例)

(1) $X=[0,1],$ $Y=\mathbb{R}^2$ とする。$f\colon X\to Y$ を $f(x)=(2x,3x)$ で定義すると、$f$ は埋め込みであることを示そう。まず、$f$ が連続な単射であることは明らかである。$f$ の終域を制限して得られる全単射 $\hat{f}\colon X\to f(X)$ が同相写像であることを示せばよいが、まず $\hat{f}$ は命題 6.16により連続である。あとは、$\hat{f}^{-1}\colon f(X)\to X$ が連続であることが言えればよい。そのため $g\colon\mathbb{R}^2\to \mathbb{R}$ を $g(x,y)=x/2$ で定義しよう。$g$ は連続であるから、$g$ の制限 $g|_{f(X)}\colon f(X)\to\mathbb{R}$ は連続である(命題 6.4)。すぐに確かめられる通り、$\hat{f}^{-1}\colon f(X)\to X$ は、この $g|_{f(X)}$ の終域を $X$ に制限したものだから、命題 6.16により連続である。これで $f\colon X\to Y$ は埋め込みであることが示された。

いまの議論は少し持って回った感じだが、$\hat{f}^{-1}\colon f(X)\to X$ が連続であることを言うために、より広い定義域と終域をもった、連続であることが明らかな写像 $g\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}$ を持ってきたという訳である。$\hat{f}^{-1}$ が $\hat{f}^{-1}(x,y)=x/2$ という式で与えられていることが $\hat{f}^{-1}$ の連続性のいわば根本的な理由であり、定義域や終域の取り換えは形式を整えるためのものともいえる。以後、この種の議論は表に出さず、例えば「$\hat{f}^{-1}$ は定義式から連続である」のように書くことにしよう。なお、この例が埋め込みであることの証明は、この後で大幅に簡略化される(例 11.15)。

(2) $X=Y=\mathbb{R}^2$ とする。$\mathbb{R}^2$ のEuclidノルムを $\|\phantom{x}\|$ で表し、連続写像 $f\colon X\to Y$ を $$ f(x)=\frac{1}{1+\|x\|}x $$ で定義する。$\mathring{D}^2=\{y\in\mathbb{R}^2\,|\,\|y\|<1\}$ とおけば、$f(X)\subset\mathring{D}^2$ となること が直ちに分かる。$g\colon \mathring{D}^2\to X$ を $$ g(y)=\frac{1}{1-\|y\|}y $$ で定義すると $g$ も連続である。さらに、任意の $x\in X$ に対して $g(f(x))=x$ となり、任意の $y\in \mathrind{D}^2$ に対して $f(g(y))=y$ となることが確かめられる。よって、$f(X)=\mathring{D}^2$ であって、$f$ の終域を $\mathring{D}^2$ に制限して得られる連続写像 $\hat{f}\colon X\to f(X)=\mathring{D}^2$ は全単射で、$g$ は $\hat{f}$ の連続な逆写像を与えている。したがって、$f\colon X\to Y$ は埋め込みである。

(3) $X=\mathbb{R}$, $Y=\mathbb{R}^2$ とする。$f\colon X\to Y$ を $$ f(x)=\left(\frac{2x}{x^2+1}, \frac{x^2-1}{x^2+1}\right) $$ で定義すると、$f$ は埋め込みであることを示そう。この写像の図形的意味は以下の通りである。平面 $\mathbb{R}^2$ 内で単位円周 $S^1=\{(x, y)\in\mathbb{R}^2\,|\,x^2+y^2=1\}$ とその点 $p_0=(0,1)$ を考える。$x\in\mathbb{R}$ に対して点 $(x,0)\in\mathbb{R}^2$ を考え、$(x,0)$ と $p_0$ を通る直線を $\ell$ とすると、$\ell$ と $S^1$ との $p_0$ 以外の交点が $f(x)$ である(確かめよ)。

$f$ が連続となることは、定義式から直ちに分かる。また、$f(X)=S^1\setminus\{p_0\}$ である。実際、上の定義(あるいは、図形的意味)から任意の $x\in\mathbb{R}=X$ に対して $f(x)\in S^1\setminus\{p_0\}$ であるので、$f(X)\subset S^1\setminus\{p_0\}$ である。他方、$g\colon S^1\setminus\{p_0\}\to\mathbb{R}$ を $$ g(x,y)=\frac{x}{1-y} $$ で定めれば、任意の $(x,y)\in S^1\setminus\{p_0\}$ に対して $f(g(x,y))=(x,y)$ が成り立つ。よって、$S^1\setminus\{p_0\}\subset f(X)$ も成り立ち、$f(X)=S^1\setminus\{p_0\}$ が示された。すぐに検証できるように任意の $x\in\mathbb{R}$ に対して $g(f(x))=x$ であるから、$f$ は単射であって(実際、$x, x'\in \mathbb{R}$ に対して $f(x)=f(x')$ ならば $x=g(f(x))=g(f(x'))=x'$ となるので)、その終域を像に制限して得られる全単射 $\hat{f}\colon \mathbb{R}\to S^1\setminus\{p_0\}$ に対して $\hat{f}^{-1}=g\colon S^1\setminus\{p_0\}\to\mathbb{R}$ である。$g$ は定義式から連続であるので、$\hat{f}^{-1}$ は連続である。

ここで、$\hat{f}^{-1}\colon S^1\setminus\{p_0\}\to\mathbb{R}$ が連続であることを図形的に奇異に感じる人もいるかもしれない。実際、この写像は $p_0$ の近くの点を $\mathbb{R}$ の「左の彼方」と「右の彼方」にある遠く隔たった点に写している。しかし、$\hat{f}^{-1}$ の定義域からはそもそも $p_0$ が除かれているので、$\hat{f}^{-1}$ の連続性を言うために $p_0$ における連続性は問題にならないのである。$\square$

例 6.20 (埋め込みでない例)

連続な単射であるが埋め込みになっていない例を挙げよう。$X=[0,1),$ $Y=\mathbb{R}^2$ とする。$f\colon X\to Y$ を、$f(x)=(\cos 2\pi x, \sin 2\pi x)$ で定義すると、$f$ は連続な単射であって、像 $f(X)$ は単位円周 $S^1=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\,|\,x^2+y^2=1\}$ となる。そこで、$f$ の終域を $f(X)=S^1$ に制限することで、連続な全単射 $\hat{f}\colon [0,1)\to S^1$ が得られる。このとき、逆 $\hat{f}^{-1}\colon S^1\to [0,1)$ は点 $a=(1,0)$ において連続でない。これは直観的に見やすいことであるが、ここでは命題 5.19を用いて示そう。$S^1$ の点列 $(p_n)_{n=1}^\infty$ を、 $$ p_n=(\cos(2\pi(1-1/n)), \sin(2\pi(1-1/n)) $$ で定める。すると、$2\pi(1-1/n)\to 2\pi$ であることと $\cos,$ $\sin$ の連続性、命題 5.19、および命題 2.21により、$(p_n)_{n=1}^\infty$ は $(\cos 2\pi, \sin 2\pi)=(1,0)=a$ に収束することが分かる。しかし、$\hat{f}^{-1}(p_n)=1-1/n$ であるから、点列 $(\hat{f}^{-1}(p_n))_{n=1}^\infty$ は $\hat{f}^{-1}(a)=0$ には収束しない。したがって、命題 5.19によって、$\hat{f}^{-1}\colon S^1\to [0,1)$ は$a$ において連続でなく、したがって $\hat{f}^{-1}$ は連続でないことが示された。よって、$f\colon X\to Y$ は埋め込みではない連続な単射である。

なお、$\hat{f}\colon [0,1)\to S^1$ は連続な全単射だが同相写像ではない例となっていることに注意する(注意 5.23参照)。$\square$

命題 6.21 (埋め込みの特徴づけ)

$X,$ $Y$ を位相空間、$f\colon X\to Y$ を連続な単射とするとき、次は同値である。

  • (1) $f$ は埋め込みである。
  • (2) $X$ の任意の開集合 $U$ に対して、$f(U)$ は $f(X)$ の開集合である。
  • (3) $X$ の任意の閉集合 $F$ に対して、$f(F)$ は $f(X)$ の閉集合である。
  • (4) 任意の位相空間 $Z$ と写像 $g\colon Z\to X$ に対して、$f\circ g\colon Z\to Y$ が連続ならば $g$ も連続である。

証明

$\hat{f}\colon X\to f(X)$ を、$f$ の終域を $f(X)$ に制限して得られる連続全単射とする。このとき、定義により、$f$ が埋め込みであることは $\hat{f}$ が同相写像であることと同値である。(2), (3) の条件はそれぞれ、$\hat{f}$ が開写像、閉写像であることを述べている。よって、命題 5.27により、(1)-(3) の同値性が分かる。

(1) $\Rightarrow$ (4) を示す。$f$ を埋め込みとすると、$\hat{f}\colon X\to f(X)$ は同相写像である。$Z$ を位相空間、$g\colon Z\to X$ を写像とし、$f\circ g\colon Z\to Y$ が連続になるとする。$f\circ g(Z)=f(g(Z))\subset f(X)$ だから、$f\circ g$ の終域を $f(X)$ に制限することで連続写像 $h\colon Z\to f(X)$ を得る。すると、連続写像の合成として $\hat{f}^{-1}\circ h\colon Z\to X$ は連続だが、この $\hat{f}^{-1}\circ h$ は定義から $g$ と一致する。よって、$g$ は連続である。

最後に、(4) $\Rightarrow$ (1) を示す。(4) が成り立つとしよう。このとき $\hat{f}\colon X\to f(X)$ が同相写像であることを示せばよく、それには $\hat{f}^{-1}\colon f(X)\to X$ が連続だと言えればよい。そこで、$Z=f(X),$ $g=\hat{f}^{-1}$ に対して (4) を適用する。いま、$f\circ\hat{f}^{-1}\colon f(X)\to Y$ は包含写像に一致するから連続である。よって、$\hat{f}^{-1}\colon f(X)\to X$ は連続である。$\square$

命題 6.22 (写像の合成と埋め込み)

$X,$ $Y,$ $Z$ を位相空間とし、$f\colon X\to Y$, $g\colon Y\to Z$ を連続写像とする。このとき、次が成り立つ。

  • (1) $f,$ $g$ が埋め込みならば、$g\circ f$ も埋め込みである。
  • (2) $g\circ f$ が埋め込みならば、$f$ も埋め込みである。

証明

(1) を示す。$f,$ $g$ を埋め込みとする。$f,$ $g$ は連続な単射であるから、$g\circ f\colon X\to Z$ も連続な単射である。命題 6.21の条件(4)を用いて、$g\circ f$ が埋め込みであることを示そう。そこで、$W$ を任意の位相空間とし、写像 $h\colon W\to X$ に対して $g\circ f\circ h\colon W\to Z$ が連続であると仮定する。$g$ は埋め込みだから、命題 6.21(1) $\Rightarrow$ (4)により $f\circ h\colon W\to Y$ は連続である。さらに、$f$ は埋め込みだから、再び命題 6.21(1) $\Rightarrow$ (4)により $h\colon W\to X$ は連続である。したがって、命題 6.21(4) $\Rightarrow$ (1)により $g\circ f\colon X\to Z$ は埋め込みである。

(2) を示す。$g\circ f$ を埋め込みとする。このとき $g\circ f$ は単射であるが、このことから $f\colon X\to Y$ は単射と分かる。実際、$x, x'\in X$ に対して $f(x)=f(x')$ であるとすると、$g\circ f(x)=g\circ f(x')$ であるから、$g\circ f$ の単射性から $x=x'$ となる。したがって、$f$ は連続な単射である。命題 6.21の条件(4)を用いて、$f$ が埋め込みであることを示そう。そこで、$W$ を任意の位相空間とし、写像 $h\colon W\to X$ に対して $f\circ h\colon W\to Y$ が連続であるとする。すると、$g\circ f\circ h\colon W\to Z$ も連続である。$g\circ f$ は埋め込みだから、命題 6.21(1) $\Rightarrow$ (4)により$h\colon W\to Z$ は連続である。したがって、命題 6.21(4) $\Rightarrow$ (1)により $f\colon X\to Y$ は埋め込みである。$\square$

命題 6.23 (開写像・閉写像と埋め込み)

$f\colon X\to Y$ を連続な単射とする。$f\colon X\to Y$ が開写像あるいは閉写像であるならば、$f$ は埋め込みである。

証明

$f\colon X\to Y$ が連続な単射であって、$f$ が開写像であるとする。命題 6.21(2)の条件を用いて、$f$ が埋め込みであることを示そう。$U$ を $X$ の開集合とする。$f$ は開写像なので、$f(U)$ は $Y$ の開集合である。$f(U)=f(U)\cap f(X)$ なので、$f(U)$ は $f(X)$ の開集合でもある。よって、命題 6.21(2) $\Rightarrow$ (1)により、$f$ は埋め込みである。同様に、$f$ が閉写像のときも命題 6.21(3)の条件から $f$ が埋め込みであることが示される。$\square$

定義 6.24 (開埋め込み・閉埋め込み)

連続な単射 $f\colon X\to Y$ が開写像あるいは閉写像であるとき、$f\colon X\to Y$ を開埋め込み(open embedding)あるいは閉埋め込み(closed embedding)という。これらは命題 6.23により埋め込みである。$\square$

命題 6.25 (開埋め込み・閉埋め込みであるための条件)

$X,$ $Y$ を位相空間、$f\colon X\to Y$ を埋め込みとする。$f$ が開埋め込み(あるいは閉埋め込み)であるためには、$f(X)$ が $Y$ の開集合(あるいは閉集合)であることが必要十分である。

証明

どちらも同様なので、開埋め込みの場合のみ示す。まず、必要性を示す。$f\colon X\to Y$ を開埋め込みとすると、$f$ は開写像であり $X$ 自身は $X$ の開集合だから、$f(X)$ は $Y$ の開集合である。次に十分性を示すため、$f\colon X\to Y$ が埋め込みであって $f(X)$ が $Y$ の開集合であるとする。$U$ を $X$ の開集合とすると、命題 6.21により $f(U)$ は $f(X)$ の開集合であるが、$f(U)$ は $Y$ の開集合であるから、命題 6.7により、$f(U)$ は $Y$ の開集合となる。 よって、$f\colon X\to Y$ は開写像であるから、$f\colon X\to Y$ は開埋め込みである。$\square$

上の命題を用いて確かめられるように、例 6.19 (1) は閉埋め込みの例であり、例 6.19 (2) は開埋め込みの例となっている。例 6.19 (3) は開埋め込みでも閉埋め込みでもない埋め込みの例を与えている。ここで、開写像と閉写像という概念は終域をどこにとるかに依存することに注意しておこう。埋め込み $f\colon X\to Y$ は、例 6.19 (3) のように一般には開写像でも閉写像でもないのであるが、終域を制限した $\hat{f}\colon X\to f(X)$ は、命題 5.27により、開写像かつ閉写像となる。$\square$

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関連項目



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Last-modified: 2020-12-02 (水) 21:21:46 (1d)