微分形式

ここでは滑らかな微分多様体上の微分形式について基本事項といくらかの応用までを解説する。 微分形式の起源は積分のインテグラルの記号を取り去った部分であるが、現在では微分幾何のあらゆる分野に計算技術として登場するため、微分形式を考えるモチベーションを簡潔に述べることはできない。

<<工事中 12/3 外微分、内部積 更新>>

反対称テンソル積と外積代数の復習

ここでは微分形式を定義するために必要な外積代数の最小限の復習を行う。 基本的な概念は適宜反対称テンソル積空間を参照されたい。 $$$$  $V$ を $\mathbb{R}$ 上の $n$ 次元ベクトル空間、$V^\ast$ を双対空間、$\Lambda^p(V^\ast)$ を $V^\ast$ の $p$ 階反対称テンソル積空間とし、$\Lambda(V^\ast)=\oplus_{p=0}^n\Lambda^p(V^\ast)$ とする。 $\Lambda(V^\ast)$ に外積 $\wedge$ を定義する方法が2通りあり、ここではA方式とB方式とする。 $\omega\in\Lambda^p(V^\ast),\ \eta\in\Lambda^q(V^\ast)$ に対して、$\omega\wedge\eta\in\Lambda^{p+q}(V^\ast)$ を $$$$ A方式 $$(\omega\wedge\eta)(X_1,\cdots,X_{p+q}):=\frac{1}{p!q!}\sum_{\sigma\in \mathfrak{S}_{p+q}}{\rm sgn}(\sigma)\omega(X_{\sigma(1)},\cdots,X_{\sigma(p)})\eta(X_{\sigma(p+1)},\cdots,X_{\sigma(p+q)})\ \ \ \ \ \ \cdots(\ast A)$$ B方式 $$(\omega\wedge\eta)(X_1,\cdots,X_{p+q}):=\frac{1}{(p+q)!}\sum_{\sigma\in \mathfrak{S}_{p+q}}{\rm sgn}(\sigma)\omega(X_{\sigma(1)},\cdots,X_{\sigma(p)})\eta(X_{\sigma(p+1)},\cdots,X_{\sigma(p+q)})\ \ \ \ \ \ \cdots(\ast B)$$ と定義する。 ただし、$X_i\in V, 1\le i\le p+q$ である。 例えば、$\alpha,\beta\in\Lambda^1(V^\ast)$ に対しては、A方式では $\alpha\wedge\beta=\alpha\otimes\beta-\beta\otimes\alpha$ であり、B方式では $\alpha\wedge\beta=\frac{1}{2}(\alpha\otimes\beta-\beta\otimes\alpha)$ である。 このとき外積には結合法則が成り立ち、$\Lambda(V^\ast)$ は環になる。 これは外積代数と呼ばれる。 また交換法則 $\omega\wedge\eta=(-1)^{pq}\eta\wedge\omega$ が成り立つ。 $$$$  この記事を通して、$p$ 個の添え字を持つ量 $\omega_{i_1\cdots i_p}$ に対して、反対称化子を$\omega_{[i_1\cdots i_p]}=\frac{1}{p!}\sum_{\sigma\in\mathfrak{S}_p}{\rm sgn}(\sigma)\omega_{i_{\sigma(1)}\cdots i_{\sigma(p)}}$ とする。$\omega_{i_1\cdots i_p}$ が添え字の入れ替えに対して完全反対称であるとき、$\omega_{[i_1\cdots i_p]}=\omega_{i_1\cdots i_p}$ が成り立つ。 添え字の入れ替えに対して完全反対称な量 $A^{i_1\cdots i_p}$ と任意の量 $B_{i_1\cdots i_p}$ に対して、 $$\sum_{i_1\cdots i_p}A^{i_1\cdots i_p}B_{i_1\cdots i_p}=\sum_{i_1\cdots i_p}A^{i_1\cdots i_p}B_{[i_1\cdots i_p]}$$ が成り立つことが簡単に確かめられる。 $$$$  $V^\ast$ の基底を $\{\theta^i\}_{1\le i\le n}$ とすると、$\Lambda^p(V^\ast)$ の基底は $\theta^{i_1}\wedge\cdots\wedge\theta^{i_p},\ (1\le i_1<\cdots<i_p\le n)$ 達であることが証明できる。 従って、$\dim_\mathbb{R}\Lambda^p(V^\ast)={}_nC_p$ であり、$\dim_\mathbb{R}\Lambda(V^\ast)=\sum_{p=0}^n{}_nC_p=2^n$ である。 任意の $\omega\in\Lambda^p(V^\ast)$ は $$\omega=\frac{1}{p!}\sum_{i_1,\cdots,i_p}\omega_{i_1\cdots i_p}\theta^{i_1}\wedge\cdots\wedge\theta^{i_p},\ (\omega_{[i_1\cdots i_p]}=\omega_{i_1\cdots i_p})\\ =\sum_{i_1<\cdots<i_p}\omega_{i_1\cdots i_p}\theta^{i_1}\wedge\cdots\wedge\theta^{i_p}$$ と表され、これらは頻繁に用いられる標準的な成分表示である。 $$$$  $\alpha^i\in V^\ast,\ v_i\in V\ (1\le i\le k)$ に対して、外積の定義より、 $$A方式\ \ \ \alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k(v_1,\cdots,v_k)=\det(\alpha^i(v_j))\\ B方式\ \ \ \alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k(v_1,\cdots,v_k)=\frac{1}{k!}\det(\alpha^i(v_j))$$ となる。 従って、$V$ の基底を $\{e_i\},\ (1\le i\le n)$ とし、双対基底を $\{\theta^i\},\ (1\le i\le n)$ とするとき、 $$A方式\ \ \ \theta^{i_1}\wedge\cdots\wedge\theta^{i_k}(e_{j_1},\cdots,e_{j_k})=k!\delta^{i_1}_{\ [j_1}\cdots\delta^{i_k}_{\ j_k]}\\ B方式\ \ \ \theta^{i_1}\wedge\cdots\wedge\theta^{i_k}(e_{j_1},\cdots,e_{j_k})=\delta^{i_1}_{\ [j_1}\cdots\delta^{i_k}_{\ j_k]}$$ となる。 $$$$

定義

滑らかな微分多様体 $M$ の各点 $x\in M$ に対して,$T^\ast_x(M)$ の $p$ 階反対称テンソル積空間 $\bigwedge^p T^\ast_x(M)$ の元を対応させることで $\bigwedge^p T^\ast_x(M)$ に値を持つ関数が定義され,これを $p$-形式または $p$ 次微分形式と呼ぶ。 $p$ 次微分形式が $(0,p)$-テンソル場として滑らかなとき,$C^\infty$ 級 $p$-形式といい、$C^\infty(M)$-加群をなす。 これを $\Omega^p(M)$ と書く。 また $\Omega(M)=\oplus_{p=0}^n\Omega^p(M)$ とする。 $$$$

外積

$\Omega(M)$ にはA方式、B方式で外積が定義される。 定義の仕方は上と形式的には全く同様である。 ただし、$(\ast A),(\ast B)$ における $X_i$ 達はベクトル場とする。 この外積(あるいは外積代数と交代形式との同型の作り方)をどちらの方式で定義するかによって以下の微分形式に対する色々な演算の公式の係数が変わってくる。 この方式を統一して計算しないと色々な結果が合わなくなってしまうため、しばしばデリケートかつ面倒な問題である。 $$$$

外微分

外微分の定義の定義は、外積をA方式、B方式どちらで定めるかに依存する(成分表示は依存しない)。 $\mathbb{R}$-線形写像 $d\colon\Omega^p(M)\ni\omega\mapsto d\omega\in\Omega^{p+1}(M)$ をA方式では $$d\omega(X_1,\cdots,X_{p+1}):=\sum_i(-1)^{i-1}X_i(\omega(X_1,\cdots,\check{X_i},\cdots,X_{p+1})))\\+\sum_{i<j}(-1)^{i+j}\omega([X_i,X_j],X_1,\cdots,\check{X_i},\cdots,\check{X_j},\cdots,X_{p+1}))$$ B方式では、 $$d\omega(X_1,\cdots,X_{p+1}):=\frac{1}{p+1}\sum_i(-1)^{i-1}X_i(\omega(X_1,\cdots,\check{X_i},\cdots,X_{p+1})))\\+\frac{1}{p+1}\sum_{i<j}(-1)^{i+j}\omega([X_i,X_j],X_1,\cdots,\check{X_i},\cdots,\check{X_j},\cdots,X_{p+1}))$$ で定義する。 この定義により定まる $d\omega$ が $(p+1)$-形式になっていることをみるには、$d\omega$ が 交代かつ $C^\infty(M)$-多重線形であること、すなわち、 $$d\omega(X_1,\cdots,X_i,\cdots,X_j,\cdots,X_{p+1})=-d\omega(X_1,\cdots,X_j,\cdots,X_i,\cdots,X_{p+1})\\ d\omega(fX_1,\cdots,X_{p+1})=fd\omega(X_1,\cdots,X_{p+1}),\ f\in C^\infty(M)$$ を満たすことを確かめればよい(簡単に確かめられる)。 ここで定義式の二つ目の $\sum_{i<j}$ の項がなければ $C^\infty(M)$-線形とならないことに注意すべきである。 さらに $\Omega(M)=\oplus\Omega^p(M)$ 全体へは各 $p$ に関して $\mathbb{R}$-線形に拡張する。 $$$$  外微分のチャートによる局所表示は次のようになる。 $\omega=\frac{1}{p!}\sum\omega_{i_1\cdots i_p}dx^{i_1}\wedge\cdots\wedge dx^{i_p}$ に対して、 $$d\omega=\frac{1}{p!}\sum_{i_1,\cdots,i_p}\left(\sum_{i_0}\partial_{i_0}\omega_{i_1\cdots i_p}dx^{i_0}\right)\wedge dx^{i_1}\wedge\cdots\wedge dx^{i_p} =\frac{1}{p!}\sum_{i_0,\cdots,i_p}\partial_{[i_0}\omega_{i_1\cdots i_p]}dx^{i_0}\wedge\cdots\wedge dx^{i_p}\\ =\frac{1}{(p+1)!}\sum_{i_0,\cdots,i_p}\left(\sum_{k=0}^p(-1)^k\partial_{i_k}\omega_{i_0\cdots \check{i_k}\cdots i_p}\right)dx^{i_0}\wedge\cdots\wedge dx^{i_p}$$ となる。 実際、A方式のとき、 $$\frac{1}{(p+1)!}\sum_{i_0,\cdots,i_p}\left(\sum_{k=0}^p(-1)^k\partial_{i_k}\omega_{i_0\cdots \check{i_k}\cdots i_p}\right)dx^{i_0}\wedge\cdots\wedge dx^{i_p}(\partial_{j_0},\cdots,\partial_{j_p})=\sum_{k=0}^p(-1)^k\partial_{j_k}\omega_{j_0\cdots \check{j_k}\cdots j_p}$$ であり、最初に与えた外微分の定義式で、$[\partial_{j_n},\partial_{j_m}]=0$ に気を付けて、$d\omega(\partial_{j_0},\cdots,\partial_{j_p})$ を計算すれば一致していることが分かる。 B方式でも同様であり、局所的な表示はA,Bの方式の選択によらない。 $$$$  $\omega\in\Omega^p(M),\ \eta\in\Omega^q(M)$ に対して、外微分のLeibniz則 $$d(\omega\wedge\eta)=d\omega\wedge\eta+(-1)^p\omega\wedge d\eta$$ が成り立つ。 これは元の定義から示すこともできるし、局所表示を使えば容易にわかる。

外微分の計算例

チャート表示と座標に依存しない公式による計算例を与える。$$$$ (1) $f\in C^\infty(M)$ に対して、$df=\sum_{i=1}^n\frac{\partial f}{\partial x^i}dx^i$ $$$$ (2) $\omega=xyz dx\wedge dy+ydx$ に対して、$d\omega=xydx\wedge dy\wedge dz-dx\wedge dy$ $$$$ (3) $\eta\in\Omega^1(M)$ と単位ベクトル場 $\xi$ が $d\eta(\xi,\cdot)=0,\ \eta(\xi)=1$ を満たしているとする(この状況は例えば接触多様体?では常に発生する)。 さらに、$\{\xi,e_1,e_2\}$ をフレームとし、$[e_1,e_2]=\xi$ を満たすとする。また $\{\eta,\theta^1,\theta^2\}$ をコフレームとする。 このとき、$d\eta$ を求めてみよう。 A方式では、$d\eta(e_1,e_2)=e_1(\eta(e_2))-e_2(\eta(e_1))-\eta([e_1,e_2])=-1$ であるから、$d\eta=\theta^2\wedge\theta^1$ である。 B方式でも結果は同じである。 $$$$

内部積

$p$-形式にベクトル場を一つ食べさせておいて、残りの $p-1$ 個に関する交代形式と見なせば、$(p-1)$-形式が得られる。 すなわち、ベクトル場 $X$ に対して、内部積(作用素)(interior product) $\iota_X:\Omega^p(M)\rightarrow\Omega^{p-1}(M)$ を $$ A方式 \ \ \ (\iota_X\omega)(X_1,\cdots,X_{p-1})\colon=\omega(X,X_1,\cdots,X_{p-1})\\ B方式 \ \ \ (\iota_X\omega)(X_1,\cdots,X_{p-1})\colon=p\omega(X,X_1,\cdots,X_{p-1}) $$ と定義する。

リー微分

内積とノルム

体積形式

余微分

Pfaff系とフロベニウス可積分性

de Rhamコホモロジー

Hodge双対

Hodge分解

物理での応用例

関連項目



トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2020-12-03 (木) 20:12:58 (17h)