測度と積分2:測度空間上の積分

この章では、可測空間上の測度の定義と、測度による積分の定義について述べる。測度とは、図形に対する面積や体積、事象に対する確率などの概念を一般化したもので、可測集合族上で定義された非負値集合関数である。積分はまず、有限個の可測集合の指示関数に非負実数の重みを付けた関数である非負値可測単関数に対して自然に定義する。そして任意の非負値可測関数が非負値可測単関数の各点単調増加列の極限で表されることに応じて非負値可測関数の積分を非負値可測単関数の積分の極限により定義する。さらに実数値可測関数は非負値可測関数の差に分解できることに応じて実数値可測関数の積分は非負値可測関数の積分の差として定義する。

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入門テキスト「測度と積分」

  • 測度と積分2:測度空間上の積分

6. 測度の定義と基本的性質

定義6.1(部分集合の列の呼び方)

$X$ を集合、$(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を $X$ の部分集合の列とする。

  • 任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $E_n\subset E_{n+1}$ が成り立つとき $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を単調増加列と言う。
  • 任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $E_n\supset E_{n+1}$ が成り立つとき $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を単調減少列と言う。
  • 互いに異なる任意の $n,m\in \mathbb{N}$ に対し $E_n\cap E_m=\emptyset$ が成り立つとき $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を非交叉列と言う。

定義6.2(測度)

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間とする。$\mu:\mathfrak{M}\rightarrow[0,\infty]$ が $(X,\mathfrak{M})$ 上の測度であるとは次が成り立つことを言う。

  • $(1)$ $\mu(\emptyset)=0$.
  • $(2)$ ($\sigma$-加法性) $\mathfrak{M}$ の任意の非交叉列 $(E_n)_{n\in \mathbb{N}} $に対し $\mu\left(\bigcup_{n\in \mathbb{N}}E_n\right)=\sum_{n\in \mathbb{N}}\mu(E_n)$.

可測空間 $(X,\mathfrak{M})$ に測度 $\mu:\mathfrak{M}\rightarrow [0,\infty]$ が備わったもの $(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間と言う。

命題6.3(測度の基本性質)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。次が成り立つ。

  • $(1)$ (有限加法性) 互いに交わらない任意の有限個の $E_1,\ldots,E_n\in \mathfrak{M}$ に対し $\mu(\bigcup_{j=1}^{n}E_j)=\sum_{j=1}^{n}\mu(E_j)$.
  • $(2)$ (単調性) $E\subset F$ なる任意の $E,F\in\mathfrak{M}$ に対し $\mu(E)\leq \mu(F)$.
  • $(3)$ (劣 $\sigma$-加法性) $\mathfrak{M}$ の任意の列 $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ に対し $\mu(\bigcup_{n\in \mathbb{N}}E_n)\leq \sum_{n\in \mathbb{N}}\mu(E_n)$.
  • $(4)$ (劣有限加法性) 任意の有限個の $E_1,\ldots,E_n\in \mathfrak{M}$ に対し $\mu(\bigcup_{j=1}^{n}E_j)\leq\sum_{j=1}^{n}\mu(E_j)$.
  • $(5)$ (単調収束性) $\mathfrak{M}$ の任意の単調増加列 $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$に対し $\mu(\bigcup_{n\in \mathbb{N}}E_n)=\sup_{n\in \mathbb{N}}\mu(E_n)$.
  • $(6)$ (単調収束性) $\mathfrak{M}$ の任意の単調減少列 $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で $\mu(E_1)<\infty$ なるものに対し $\mu(\bigcap_{n\in \mathbb{N}}E_n)=\inf_{n\in \mathbb{N}}\mu(E_n)$.

証明

  • $(1)$ $E_k=\emptyset$ $(\forall k\geq n+1)$ とおけばよい。
  • $(2)$ $F$が $E,F\backslash E\in \mathfrak{M}$ の合併で表せることによる。
  • $(3)$ $F_1:=E_1$、$F_n:=E_n\backslash(E_1\cup\ldots\cup E_{n-1})$ $(\forall n\geq 2)$ とおけば $(F_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $\mathfrak{M}$ の非交叉列であり $\bigcup_{n\in \mathbb{N}}E_n=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}F_n$ である。よって $\sigma$-加法性と単調性より従う。
  • $(4)$ $E_k=\emptyset$ $(\forall k\geq n+1)$ とおき $\sigma$-劣加法性を用いればよい。
  • $(5)$ $\mu(E_n)=\infty$ なる $n\in \mathbb{N}$ が存在する場合は単調性より成り立つ。$\mu(E_n)<\infty$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ の場合、$E_0:=\emptyset$、$F_n:=E_n\backslash E_{n-1}$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ とおけば $(F_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $\mathfrak{M}$ の非交叉列であり $\bigcup_{n\in \mathbb{N}}E_n=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}F_n$ である。また有限加法性と $\mu(E_n)<\infty$ より $\mu(F_n)=\mu(E_n)-\mu(E_{n-1})$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ である。よって、 $$\mu\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}E_n\right)=\mu\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}F_n\right)=\sum_{n\in \mathbb{N}}\mu(F_n) =\sum_{n=1}^{\infty}(\mu(E_n)-\mu(E_{n-1}))=\lim_{n\rightarrow\infty}\mu(E_n) =\sup_{n\in \mathbb{N}}\mu(E_n).$$
  • $(6)$ $(E_1\backslash E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $\mathfrak{M}$ の単調増加列であり、$\mu(E_1)<\infty$ であるから、有限加法性と $(5)$ より、

$$\mu(E_1)- \mu\left(\bigcap_{n\in\mathbb{N}}E_n\right)= \mu\left(E_1\backslash \bigcap_{n\in \mathbb{N}}E_n\right) =\mu\left(\bigcup_{n\in \mathbb{N}}(E_1\backslash E_n)\right) =\lim_{n\rightarrow\infty}\mu(E_1\backslash E_n) =\mu(E_1)-\lim_{n\rightarrow\infty}\mu(E_n). $$

定義6.4(測度の制限)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$A\in \mathfrak{M}$、$A\neq\emptyset$ とする。このとき $\mathfrak{M}$ が誘導する $A$ 上の相対 $\sigma$-加法族は、

$$\mathfrak{M}_A=\{A\cap E: E\in \mathfrak{M}\}=\{E\in\mathfrak{M}:E\subset A\}\subset \mathfrak{M}$$

であるから、

$$\mu_A:\mathfrak{M}_A\ni E\mapsto \mu(E)\in [0,\infty] $$

として可測空間 $(A,\mathfrak{M}_A)$ 上の測度 $\mu_A$ が定義できる。以後、特に断らない限り、測度空間 $(X,\mathfrak{M},\mu)$ の空でない可測集合 $A\in \mathfrak{M}$ に対し、可測空間 $(A,\mathfrak{M}_A)$ には測度 $\mu_A$ が与えられているとする。また $\mu_A$ は混乱の恐れがない場合は単に $\mu$ と表す。

7. 非負値可測単関数の積分の定義

定義7.1(可測分割)

可測空間 $(X,\mathfrak{M})$ の有限可測分割とは、$\mathfrak{M}$ の互いに交わらない有限個の要素の組 $(E_1,\ldots,E_n)$ で、$X=E_1\cup\ldots \cup E_n$ となるもののことを言う。また可測空間 $(X,\mathfrak{M})$ の可算可測分割とは、$\mathfrak{M}$ の非交叉列 $(E_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、$X=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}E_n$ となるもののことを言う。

定義7.2(非負値可測単関数の積分)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。非負値可測単関数 $f:X\rightarrow[0,\infty)$ に対し、命題5.4より $(X,\mathfrak{M})$ の有限可測分割 $(E_1,\ldots,E_n)$ と $a_1,\ldots,a_n\in [0,\infty)$ で、 $$f=\sum_{j=1}^{n}a_j\chi_{E_j}$$ を満たすものが取れる。そこで $f$ の $\mu$ による積分を、 $$\int_{X}f(x)d\mu(x)=\sum_{j=1}^{n}a_j\mu(E_j)$$ と定義する。これはwell-definedである。実際、$(X,\mathfrak{M})$ の有限可測分割 $(F_1,\ldots,F_m)$ と $b_1,\ldots,b_m\in [0,\infty)$ で、 $$f=\sum_{k=1}^{m}b_k\chi_{F_k}$$ とも表せるとすると、$E_j\cap F_k\neq\emptyset$ なる任意の $j,k$ に対し $a_j=f(x)=b_k$ ($x\in E_j\cap F_k$) であるから、任意の $j,k$ に対し$a_j\mu(E_j\cap F_k)=b_k\mu(E_j\cap F_k)$ である。よって測度の有限加法性より、 $$\sum_{j=1}^{n}a_j\mu(E_j)=\sum_{j=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}a_j\mu(E_j\cap F_k) =\sum_{j=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}b_k\mu(E_j\cap F_k)=\sum_{k=1}^{m}b_k\mu(F_k) $$ である。

命題7.3(非負値可測単関数の積分の基本性質)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。

  • $(1)$ (非負斉次性) 任意の非負値可測単関数 $f$ と $a\in[0,\infty)$ に対し、 $$\int_{X}af(x)d\mu(x)=a\int_{X}f(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。
  • $(2)$ (加法性) 任意の非負値可測単関数 $f,g$ に対し、 $$\int_{X}f(x)+g(x)d\mu(x)=\int_{X}f(x)d\mu(x)+\int_{X}g(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。
  • $(3)$ (単調性) $f(x)\leq g(x)$ $(\forall x\in X)$ なる任意の非負値可測単関数 $f,g$ に対し、 $$\int_{X}f(x)d\mu(x)\leq \int_{X}g(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。

証明

  • $(1)$ 自明である。
  • $(2)$ $(X,\mathfrak{M})$ の有限可測分割 $(E_1,\ldots,E_n), (F_1,\ldots,F_m)$と$a_1,\ldots,a_n,b_1,\ldots,b_m\in [0,\infty)$ で、 $$ f=\sum_{j=1}^{n}a_j\chi_{E_j},\quad g=\sum_{k=1}^{m}b_k\chi_{F_k}\quad\quad(*)$$ なるものを取る。このとき $(E_j\cap F_k)_{j,k}$ は $(X,\mathfrak{M})$ の有限可測分割であり、 $$ f+g=\sum_{j,k}(a_j+b_k)\chi_{E_j\cap F_k}$$ であるから、測度の有限加法性より、 $$ \int_{X}f(x)+g(x)d\mu(x)=\sum_{j,k}(a_j+b_k)\mu(E_j\cap F_k) =\sum_{j}a_j\mu(E_j)+\sum_{k}b_k\mu(F_k) =\int_{X}f(x)d\mu(x)+\int_{X}g(x)d\mu(x) $$ である。
  • $(3)$ $(X,\mathfrak{M})$ の有限可測分割 $(E_1,\ldots,E_n), (F_1,\ldots,F_m)$と$a_1,\ldots,a_n,b_1,\ldots,b_m\in [0,\infty)$ で $(*)$ を満たすものを取る。$E_j\cap F_k\neq \emptyset$ なる $j,k$ に対し $a_j=f(x)\leq g(x)=b_k$ $(\forall x\in E_j\cap F_k)$ であるから、任意の $j,k$ に対し $a_j\mu(E_j\cap F_k)\leq b_k\mu(E_j\cap F_k)$ である。よって測度の有限加法性より、 $$ \int_{X}f(x)d\mu(x)=\sum_{j}a_j\mu(E_j)=\sum_{j,k}a_j\mu(E_j\cap F_k) \leq \sum_{j,k}b_k\mu(E_j\cap F_k)=\sum_{k}b_k\mu(E_j\cap F_k)=\sum_{k}b_k\mu(F_k)=\int_{X}g(x)d\mu(x)$$ である。

8. 非負値可測関数の積分の定義、単調収束定理

定義8.1(非負値可測関数の積分)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。非負値可測関数 $f:X\rightarrow[0,\infty]$ の $\mu$ による積分を、

$$ \int_{X}f(x)d\mu(x):=\sup\left\{\int_{X}s(x)d\mu(x):s\text{ は非負値可測単関数で任意の}x\in X\text{ に対し }s(x)\leq f(x)\right\}$$ と定義する。非負値可測単関数の積分の単調性 (命題7.3の(3)) より、この定義は非負値可測単関数の積分の定義と矛盾しない。

補題8.2

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を非負値可測単関数の各点単調増加列、$g$ を非負値可測単関数とし、$g(x)\leq \sup_{n\in\mathbb{N}}f_n(x)$ $(\forall x\in X)$ が成り立つとする。このとき、 $$\int_{X}g(x)d\mu(x)\leq \sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)\quad\quad(*)$$ が成り立つ。

証明

$A=(g>0)\in \mathfrak{M}$ とおく。$A=\emptyset$ ならば自明なので $A\neq\emptyset$ とする。 $$\alpha:=\text{min}(g(A))\in(0,\infty),\quad \beta:=\text{max}(g(A))\in (0,\infty)$$ とおき($g$が可測単関数であるので$g(A)$は有限集合であることに注意)、 $$A_{k,n}:=A\cap \left(g-\frac{1}{k}<f_n\right)\quad(\forall n,k\in \mathbb{N})$$ とおく。このとき各 $k\in \mathbb{N}$ に対し $(A_{k,n})_{n\in\mathbb{N}}$ は単調増加列であり $A=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}A_{k,n}$ であるから、測度の単調収束性 (命題6.3の(5)) より、 $$\mu(A)=\sup_{n\in\mathbb{N}}\mu(A_{k,n})\quad\quad(**)$$ である。$\mu(A)=\infty$ の場合、$\alpha-\frac{1}{k}>0$ なる $k\in\mathbb{N}$ を取ると、 $$ \left(\alpha-\frac{1}{k}\right)\chi_{A_{k,n}}(x) \leq \left(g(x)-\frac{1}{k}\right)\chi_{A_{k,n}}(x) \leq f_n(x)\quad(\forall x\in X, \forall n\in \mathbb{N}) $$ であるから、命題7.3の $(3)$ より、 $$\left(\alpha-\frac{1}{k}\right)\mu(A_{k,n})\leq \int_{X}f_n(x)d\mu(x)\quad(\forall n\in\mathbb{N})$$ である。よって $(**)$ より $\int_{X}f(x)d\mu(x)=\infty$ であるから $(*)$ が成り立つ。$\mu(A)<\infty$ の場合、測度の単調収束性 (命題6.3の(6)) より、 $$\lim_{n\rightarrow\infty}\mu(A\backslash A_{k,n})=0\quad(\forall k\in\mathbb{N})\quad\quad(***)$$ が成り立つ。任意の $n,k\in\mathbb{N}$、任意の $x\in X$ に対し、 $$\begin{aligned} g(x)&=g(x)\chi_A(x)=g(x)\chi_{A_{k,n}}(x)+g(x)\chi_{A\backslash A_{k,n}}(x)\\ &\leq \left(f_n(x)+\frac{1}{k}\right)\chi_{A_{k,n}}(x)+g(x)\chi_{A\backslash A_{k,n}}(x)\\ &\leq f_n(x)+\frac{1}{k}\chi_A(x)+\beta\chi_{A\backslash A_{k,n}}(x)\end{aligned}$$ であるから、命題7.3の $(2),(3)$ より、 $$ \int_{X}g(x)d\mu(x)\leq \sup_{m\in\mathbb{N}}\int_{X}f_m(x)d\mu(x)+\frac{1}{k}\mu(A)+\beta\mu(A\backslash A_{k,n})\quad(\forall k,n\in\mathbb{N})$$ である。任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ を取る。$\frac{1}{k}\mu(A)<\frac{\epsilon}{2}$ なる $k\in \mathbb{N}$ に対し $(***)$ より $\beta\mu(A\backslash A_{k,n})<\frac{\epsilon}{2}$ なる $n\in \mathbb{N}$ が取れるので、 $$ \int_{X}g(x)d\mu(x)\leq \sup_{m\in\mathbb{N}}\int_{X}f_m(x)d\mu(x)+\epsilon $$ となる。よって$\epsilon\in(0,\infty)$ の任意性より $(*)$ が成り立つ。

命題8.3(非負値可測関数の積分の基本性質)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。

  • $(1)$ (単調性) $f(x)\leq g(x)$ $(\forall x\in X)$ なる任意の非負値可測関数 $f,g$ に対し、 $$\int_{X} f(x)d\mu(x)\leq \int_{X}g(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。
  • $(2)$ (非負値可測単関数による単調近似) 非負値可測単関数の各点単調増加列 $(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$ に対し、 $$ \int_{X}\sup_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)d\mu(x)=\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。($\sup_{n\in\mathbb{N}}f_n$の可測性については命題4.8を参照。)
  • $(3)$ (非負斉次性) 任意の非負値可測単関数 $f$ と $a\in[0,\infty)$ に対し、 $$\int_{X}af(x)d\mu(x)=a\int_{X}f(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。
  • $(4)$ (加法性) 任意の非負値可測単関数 $f,g$ に対し、 $$\int_{X}f(x)+g(x)d\mu(x)=\int_{X}f(x)d\mu(x)+\int_{X}g(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。

証明

$(1)$ は非負値可測関数の積分の定義より自明である。
$(2)$ を示す。 $$ \sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)\leq \int_{X}\sup_{n\in\mathbb{N}}f_n(x)d\mu(x) $$ は非負値可測関数の積分の定義により成り立つ。また $s(x)\leq \sup_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)$ $(\forall x\in X)$ なる任意の非負値可測単関数 $s$ に対し、補題8.2より、 $$ \int_{X}s(x)d\mu(x)\leq \sup_{n\in\mathbb{N}} \int_{X}f_n(x)d\mu(x) $$ であるから、非負値可測関数の積分の定義より、 $$ \int_{X}\sup_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)d\mu(x)\leq \sup_{n\in\mathbb{N}} \int_{X}f_n(x)d\mu(x) $$ である。
$(3),(4)$ を示す。定理5.5より非負値可測単関数の各点単調増加列 $(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$と $(g_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で、$f(x)=\sup_{n\ni \mathbb{N}}f_n(x)$, $g(x)=\sup_{n\in \mathbb{N}}g_n(x)$ $(\forall x\in X)$ を満たすものが取れる。よって $(2)$ と命題7.3の $(1),(2)$ より、 $$\begin{aligned} \int_{X}af(x)d\mu(x)=\sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}af_n(x)d\mu(x) =a\sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)=a\int_{X}f(x)d\mu(x), \end{aligned}$$

$$\begin{aligned} &\int_{X}f(x)+g(x)d\mu(x)=\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)+g_n(x)d\mu(x) =\sup_{n\in\mathbb{N}}\left(\int_{X}f_n(x)d\mu(x)+\int_{X}g_n(x)d\mu(x)\right)\\ &=\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)+\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}g_n(x)d\mu(x) =\int_{X}f(x)d\mu(x)+\int_{X}g(x)d\mu(x) \end{aligned} $$ である。

定理8.4(単調収束定理)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。非負値可測関数の各点単調増加列 $(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$ に対し、 $$ \int_{X}\sup_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)d\mu(x)=\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)$$ が成り立つ。($\sup_{n\in\mathbb{N}}f_n$の可測性については命題4.8を参照。)

証明

$f(x):=\sup_{n\in\mathbb{N}}f_n(x)\in [0,\infty]$ $(\forall x\in X)$ とおく。積分の単調性より、 $$ \sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x)\leq \int_{X}f(x)d\mu(x)\quad\quad(*) $$ である。逆の不等式を示す。各 $n\in\mathbb{N}$ に対し定理5.5より非負値可測単関数の各点単調増加列 $(f_{n,m})_{m\in\mathbb{N}}$ で $f_n(x)=\sup_{m\in\mathbb{N}}f_{n,m}(x)$ なるものが取れる。これに対し、 $$ g_m(x):=\text{max}(f_{1,m}(x),\ldots,f_{m,m}(x))\quad(\forall m\in \mathbb{N},\forall x\in X) $$ とおくと、$(g_m)_{m\in\mathbb{N}}$ は非負値可測単関数の各点単調増加列であり*1、 $$ g_m(x)\leq f_m(x)\quad(\forall m\in\mathbb{N},\forall x\in X)\quad\quad(**) $$ である。そして、 $$ f_n(x)=\sup_{m\in\mathbb{N}}f_{n,m}(x)=\sup_{m\geq n}f_{n,m}(x) \leq\sup_{m\in \mathbb{N}}g_m(x)\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall x\in X) $$ であるから、 $$ f(x)=\sup_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)=\sup_{n\in \mathbb{N}}g_n(x)\quad(\forall x\in X) $$ である。よって命題8.3の $(2)$ より、 $$ \int_{X}f(x)d\mu(x)=\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{X}g_n(x)d\mu(x) $$ であるから、$(**)$ と積分の単調性より、 $$ \int_{X}f(x)d\mu(x)\leq \sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x) $$ である。これで $(*)$ の逆の不等式が示せた。

注意8.5

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。任意の非負値可測関数 $f:X\rightarrow[0,\infty]$ に対し、 $$ \int_{X}\infty f(x)d\mu(x)=\infty\int_{X}f(x)d\mu(x) $$ が成り立つ。実際、単調収束定理と積分の非負斉次性より、 $$ \int_{X}\infty f(x)d\mu(x)=\int_{X}\sup_{n\in \mathbb{N}}nf(x)d\mu(x) =\sup_{n\in \mathbb{N}}n\int_{X}f(x)d\mu(x)=\infty\int_{X}f(x)d\mu(x) $$ である。

系8.6(非負値可測関数列の和の項別積分)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を非負値可測関数の列とする。このとき、 $$ \int_{X}\sum_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)d\mu(x)=\sum_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x) $$ が成り立つ。

証明

$F_n(x):=\sum_{k=1}^{n}f_k(x)$ $(\forall n\in\mathbb{N},\forall x\in X)$ として非負値可測関数の各点単調増加列 $(F_n)_{n\in \mathbb{N}}$ を定義すると、単調収束定理と積分の加法性より、 $$ \int_{X}\sum_{n\in \mathbb{N}}f_n(x)d\mu(x)= \int_{X}\sup_{n\in \mathbb{N}}F_n(x)d\mu(x) =\sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}F_n(x)d\mu(x) =\sup_{n\in \mathbb{N}}\sum_{k=1}^{n}\int_{X}f_k(x)d\mu(x) =\sum_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)d\mu(x) $$ である。

9. 測度 $\mu$ に関してほとんど全ての点で $\cdots$( $\mu$-a.e.で $\cdots$)

定義9.1(零集合)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。$N\in \mathfrak{M}$ で $\mu(N)=0$ であるものを $\mu$-零集合と言う。

定義9.2(測度 $\mu$ に関してほとんど全ての点で $\cdots$( $\mu$-a.e.で $\cdots$))

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とし、各点 $x\in X$ に対し命題 $P(x)$ が与えられているとする。$\mu$ に関してほとんど全ての $x\in X$で $P(x)$ が成り立つ(略して $\mu$-a.e. $x\in X$ で $P(x)$ が成り立つ)とは、$\mu$-零集合 $N\in \mathfrak{M}$ が存在し任意の $x\in X\backslash N$ に対し $P(x)$ が成り立つことを言う。

命題9.3

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$N$ を $\mu$-零集合とする。このとき任意の非負値可測関数 $f:X\rightarrow[0,\infty]$ に対し、

$$ \int_{X}f(x)\chi_N(x)d\mu(x)=0 $$

が成り立つ。

証明

$f$ が非負値可測単関数であれば自明である。一般の非負値可測関数 $f$ に対し定理5.5より非負値可測単関数の各点単調増加列 $(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$ で $f=\sup_{n\in \mathbb{N}}f_n$ なるものが取れる。よって単調収束定理より、 $$ \int_{X}f(x)\chi_N(x)d\mu(x)=\sup_{n\in \mathbb{N}}\int_{X}f_n(x)\chi_N(x)d\mu(x)=0 $$ である。

命題9.4(非負値可測関数の積分と零集合)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。非負値可測関数 $f:X\rightarrow [0,\infty]$ に対し次が成り立つ。

  • $(1)$  $$\int_{X}f(x)d\mu(x)=0\quad\Leftrightarrow\quad f(x)=0\quad(\mu\text{-a.e.} x\in X) $$
  • $(2)$  $$\int_{X}f(x)d\mu(x)<\infty\quad\Rightarrow\quad f(x)<\infty\quad(\mu\text{-a.e.} x\in X) $$

証明

  • $(1)$ $\Leftarrow$ は命題9.3による。$\Rightarrow$ を示す。$\int_{X}f(x)d\mu(x)=0$ とする。 $$ (0<f)=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\left(\frac{1}{n}<f\right) $$ であり、積分の単調性より、任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ \frac{1}{n}\mu\left(\frac{1}{n}<f\right)=\int_{X}\frac{1}{n}\chi_{(\frac{1}{n}<f)}(x)d\mu(x)\leq \int_{X}f(x)d\mu(x)=0 $$ である。よって $\mu(\frac{1}{n}<f)=0$ であるから、測度の $\sigma$-劣加法性より、 $$ \mu(0<f)=\mu\left(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\left(\frac{1}{n}<f\right) \right)\leq\sum_{n\in \mathbb{N}}\mu\left(\frac{1}{n}<f\right)=0. $$
  • $(2)$ $\mu(f=\infty)=0$ を示せばよい。 $$ (f=\infty)=\bigcap_{n\in \mathbb{N}}(n\leq f ) $$ であり、$( (n\leq f) )_{n\in\mathbb{N}}$ は $\mathfrak{M}$ の単調減少列である。そして積分の単調性より任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ n\mu(n\leq f)=\int_{X}n\chi_{(n\leq f)}(x)d\mu(x)\leq \int_{X}f(x)d\mu(x)<\infty $$ である。よって測度の単調収束性 (命題6.3の$(6)$) より、 $$ \mu(f=\infty)=\lim_{n\rightarrow\infty}\mu(n\leq f)=0. $$

10. 実数値、複素数値可測関数の積分の定義、積分の線型性

定義10.1(実数値可測関数の可積分性と積分)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。実数値可測関数 $f:X\rightarrow \mathbb{R}$ が $\mu$ に関して可積分(略して $\mu$-可積分)であるとは、 $$ \int_{X}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)<\infty $$ が成り立つことを言う。$\lvert f\rvert=f_++f_-$ (定義4.7を参照)であるから、非負値可測関数の積分の加法性より、これは、 $$ \int_{X}f_{\pm}(x)d\mu(x)<\infty $$ が成り立つことと同値である。実数値可測関数 $f:X\rightarrow \mathbb{R}$ が $\mu$ に関して可積分であるとき $f=f_+-f_-$ の $\mu$ による積分を、 $$ \int_{X}f(x)d\mu(x):=\int_{X}f_+(x)d\mu(x)-\int_{X}f_-(x)d\mu(x)\in \mathbb{R} $$ と定義する。$f$ が非負値ならば $f=f_+$, $f_-=0$ であるから、この定義は非負値可測関数の積分の定義と矛盾しない。$(X,\mathfrak{M})$ 上の実数値可測関数全体に各点ごとの演算を入れた $\mathbb{R}$ 上の線型空間 $\mathcal{L}_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M})$ に対し、

$$ \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu) :=\left\{f\in \mathcal{L}_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M}): f\text{ は }\mu\text{ に関して可積分 }\right\} $$ とおく。

命題10.2(実数値関数の積分の線型性)

測度空間 $(X,\mathfrak{M},\mu)$ に対し、$\mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ は各点ごとの演算で $\mathbb{R}$ 上の線型空間である。そして積分 $$ \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)\ni f\mapsto \int_{X}f(x)d\mu(x)\in \mathbb{R} $$ は線型汎関数である。

証明

  • $(1)$ 任意の $f,g\in \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ に対し $f+g\in \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ であることと、 $$ \int_{X}f(x)+g(x)d\mu(x)=\int_{X}f(x)d\mu(x)+\int_{X}g(x)d\mu(x)\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示す。非負値可測関数の積分の単調性と加法性より、 $$ \int_{X}\lvert f(x)+g(x)\rvert d\mu(x) \leq \int_{X} \lvert f(x)\rvert+\lvert g(x)\rvert d\mu(x) =\int_{X}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)+\int_{X}\lvert g(x)\rvert d\mu(x)<\infty $$ であるから $f+g\in \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ である。また、 $$ f=f_+-f_-,\quad g=g_+-g_-,\quad f+g=(f+g)_+-(f+g)_- $$ より、 $$ (f+g)_++f_-+g_-=(f+g)_-+f_++g_+ $$ であるから、非負値可測関数の積分の加法性より $(*)$ を得る。
  • $(2)$ 任意の $f\in \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ と任意の $\alpha\in \mathbb{R}$ に対し、$\alpha f\in \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ であることと、 $$ \int_{X}\alpha f(x)d\mu(x)=\alpha\int_{X}f(x)d\mu(x)\quad\quad(**) $$ が成り立つことを示す。非負値可測関数の積分の非負斉次性より、 $$ \int_{X}\lvert \alpha f(x)\rvert d\mu(x)=\lvert \alpha\rvert\int_{X}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)<\infty $$ であるから $\alpha f\in \mathcal{L}^1_{\mathbb{R}}(X,\mathfrak{M},\mu)$ である。$\alpha\geq0$ ならば、 $$ (\alpha f)_{\pm}=\text{max}(\pm \alpha f,0)=\alpha\text{max}(\pm f,0)=\alpha f_{\pm} $$ であり、$\alpha<0$ ならば、 $$ (\alpha f)_{\pm}=\text{max}(\pm \alpha f,0) =\text{max}(\mp (-\alpha) f,0)=(-\alpha) \text{max}(\mp f,0)=(-\alpha) f_{\mp} $$ である。よって非負値可測関数の積分の非負斉次性より $(**)$ を得る。

定義10.3(複素数値可測関数の可積分性と積分)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間とする。複素数値可測関数 $f:X\rightarrow\mathbb{C}$ が $\mu$ に関して可積分(略して $\mu$-可積分)であるとは、 $$ \int_{X} \lvert f(x)\rvert d\mu(x)<\infty $$ が成り立つことを言う。 $$ \lvert\text{Re}(f(x))\rvert,\lvert \text{Im}(f(x))\rvert\leq \lvert f(x)\rvert\leq \lvert\text{Re}(f(x))\rvert+\lvert \text{Im}(f(x))\rvert $$ であるから、これは実数値可測関数 $\text{Re}(f):X\ni x\mapsto \text{Re}(f(x))\in \mathbb{R}$、$\text{Im}(f):X\ni x\mapsto \text{Im}(f(x)) \in\mathbb{R}$ がそれぞれ $\mu$ に関して可積分であることと同値である。複素数値可測関数 $f:X\rightarrow\mathbb{C}$ が $\mu$ に関して可積分であるとき、$f$ の $\mu$ による積分を、 $$ \int_{X} f(x)d\mu(x):=\int_{X}\text{Re}(f(x))d\mu(x)+i\int_{X}\text{Im}(f(x))d\mu(x)\in\mathbb{C} $$ と定義する。$(X,\mathfrak{M})$ 上の複素数値可測関数全体に各点ごとの演算を入れた $\mathbb{C}$ 上の線型空間 $\mathcal{L}(X,\mathfrak{M})$ に対し、

$$ \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu) :=\left\{f\in \mathcal{L}(X,\mathfrak{M}): f\text{ は }\mu\text{ に関して可積分 }\right\} $$ とおく。

命題10.4(複素数値関数の積分の線型性と絶対不等式)

測度空間 $(X,\mathfrak{M},\mu)$ に対し、$\mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ は各点ごとの演算で $\mathbb{C}$ 上の線型空間である。そして積分 $$ \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)\ni f\mapsto \int_{X}f(x)d\mu(x)\in \mathbb{C} $$ は線型汎関数である。また任意の $f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ に対し、 $$ \left\lvert\int_{X}f(x)d\mu(x)\right\rvert\leq \int_{X}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

$\mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ が $\mathbb{C}$ 上の線型空間であることと積分が線型汎関数であることは命題10.2より明らかである。任意の $f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ に対し $(*)$ が成り立つことを示す。 $$ \alpha\int_{X}f(x)d\mu(x)=\left\lvert \int_{X}f(x)d\mu(x)\right\rvert,\quad\lvert \alpha\rvert=1 $$ なる $\alpha\in \mathbb{C}$ を取れば、積分の線型性と単調性より、 $$ \left\lvert\int_{X}f(x)d\mu(x)\right\rvert =\text{Re}\int_{X}\alpha f(x)d\mu(x) =\int_{X}\text{Re}(\alpha f(x))d\mu(x) \leq \int_{X} \lvert f(x)\rvert d\mu(x) $$ である。

命題10.5(a.e.で $0$ であるための条件)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$f:X\rightarrow\mathbb{C}$ を可測関数とする。次は互いに同値である。

  • $(1)$ $\mu$-a.e. $x\in X$ で $f(x)=0$.
  • $(2)$ $\int_{X}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)=0$.
  • $(3)$ 任意の $E\in \mathfrak{M}$ に対し $\int_{X}f(x)\chi_E(x)d\mu(x)=0$.

証明

$(1)\Leftrightarrow(2)\Rightarrow(3)$ は命題9.4の $(1)$ による。$(3)\Rightarrow(2)$ を示す。虚部と実部に分ければよいので $f$ は実数値であると仮定して示せば十分であるが、 $$ \int_{X}f_+(x)d\mu(x)=\int_{X}f(x)\chi_{(f>0)}(x)d\mu(x)=0, $$ $$ \int_{X}f_-(x)d\mu(x)=\int_{X}-f(x)\chi_{(f<0)}(x)d\mu(x)=0 $$ であるから、 $$ \int_{X}\lvert f(x)\rvert d\mu(x)=\int_{X}f_+(x)d\mu(x)+\int_{X}f_-(x)d\mu(x)=0 $$ である。

次に読む

関連項目



*1 各$g_m$が可測であることは命題4.8により、単関数であることは命題5.4による。

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Last-modified: 2020-10-25 (日) 14:44:33 (3d)