測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質

この章では、Lebesgue測度の定義と基本的性質について述べ、最終的に積分を運用していく上で重要な変数変換公式について述べる。Lebesgue測度としてはBorel集合族上のものを考える。Lebesgue測度の定義の仕方はいくつかあるが、結局、直方体に対して通常の体積を与えるBorel測度がLebesgue測度であると言える(命題36.6)。ここでは台がコンパクトな連続関数のRiemann積分をRadon汎関数とみなし、Riesz-Markov-角谷の表現定理により対応するRadon測度をLebesgue測度と定義する。こうすることの利点としては最初からLebesgue測度を位相正則測度として取り扱え、一連の命題が位相正則性を用いて容易に示せると言うことが挙げられる。

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入門テキスト「測度と積分」


36. Lebesgue測度の定義

定義36.1($\mathbb{R}$ 上のLebesgue測度の定義)

任意の $f\in C_{c,\mathbb{R}}(\mathbb{R})$ に対し $\Lambda f\in \mathbb{R}$ を、$\text{supp}(f)\subset I$ なる任意の有界閉区間 $I$ を取り、$I\ni x\mapsto f(x)\in \mathbb{R}$ のRiemann積分によって、 $$ \Lambda f:=\int_{I}f(x)dx $$ と定義する。(Riemann積分の定義より $\Lambda f$ は $\text{supp}(f)\subset I$ なる有界閉区間 $I$ の取り方によらないことに注意。 )このとき $\Lambda: C_{c,\mathbb{R}}(\mathbb{R})\rightarrow\mathbb{R}$ はRadon汎関数であるから、Riesz-Markov-角谷の表現定理(定理30.4)よりRadon測度 $m:\mathcal{B}_{\mathbb{R}}\rightarrow[0,\infty]$ で、 $$ \Lambda f=\int_{\mathbb{R}}f(x)dm(x)\quad(\forall f\in C_{c,\mathbb{R}}(\mathbb{R})) $$ なるものが定まる。$m$ を $\mathbb{R}$ 上のLebesgue測度と言う。

注意36.2($\mathbb{R}$ 上のLebesgue測度は区間に対して通常の意味での長さを与える)

$a<b$ なる任意の $a,b\in \mathbb{R}$ と任意の $n\in \mathbb{N}$ に対しUrysohnの補題(定理27.6)により、 $[a,b]\prec f\prec(a-\frac{1}{2n},\text{ }b+\frac{1}{2n})$, $[a-\frac{1}{2n},\text{ }b+\frac{1}{2n}]\prec g\prec(a-\frac{1}{n},\text{ }b+\frac{1}{n})$(定義29.1を参照)なる $f,g\in C_{c,+}(\mathbb{R})$ を取れば、 $$ \begin{aligned} m([a,b])&\leq\int_{\mathbb{R}}f(x)dm(x)=\Lambda f\leq \left( b+\frac{1}{2n}\right)-\left( a-\frac{1}{2n}\right)\leq \Lambda g\\ &=\int_{\mathbb{R}}g(x)dm(x)\leq m\left(\left( a-\frac{1}{n},\text{ }b+\frac{1}{n}\right)\right) \end{aligned} $$ であるから、 $$ m([a,b])\leq (b-a)+\frac{1}{n}\leq m\left(\left( a-\frac{1}{n},\text{ }b+\frac{1}{n}\right)\right)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ である。よって $[a,b]=\bigcap_{n\in \mathbb{N}}(a-\frac{1}{n},\text{ }b+\frac{1}{n})$ であることと測度の単調収束性(命題6.3の $(6)$)より、 $$ m([a,b])=\lim_{n\rightarrow\infty}m\left(\left( a-\frac{1}{n},\text{ }b+\frac{1}{n}\right)\right) =b-a+\lim_{n\rightarrow\infty}\frac{1}{n}=b-a $$ である。これよりLebesgue測度 $m:\mathcal{B}_{\mathbb{R}}\rightarrow[0,\infty]$ は $\mathbb{R}$ の任意の区間に対して通常の意味での長さを与える。

定義36.3($\mathbb{R}^N$ 上のLebesgue測度)

$\mathbb{R}$ 上のLebesgue測度 $m:\mathcal{B}_{\mathbb{R}}\rightarrow[0,\infty]$ の $N$ 個の直積測度(定義14.2) $$ m_N:=\otimes^Nm:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow[0,\infty] $$ (命題2.8より $\bigotimes^N\mathcal{B}_{\mathbb{R}}=\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ であることに注意)を $\mathbb{R}^N$ 上のLebesgue測度と言う。

注意36.4($\mathbb{R}^N$ 上のLebesgue測度は有界直方体に対して通常の意味での体積を与えるRadon測度)

直積測度の定義と注意36.2より、$\mathbb{R}^N$ 上のLebesgue測度 $m_N:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow [0,\infty]$ は任意の直方体(有界区間の直積)に対して通常の意味での体積(各区間の長さの積)を与える。任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し $K$ はある直方体に含まれるので $m_N(K)<\infty$ であり、$\mathbb{R}^N$ は第二可算であるから、定理31.5より $m_N$ はRadon測度である。

補題36.5($\mathbb{R}^N$ の任意の開集合は左半開立方体の非交叉列の合併)

$\mathbb{R}^N$ の任意の開集合は左半開立方体(同じ長さの有界左半開区間 $N$ 個の直積)の非交叉列の合併である。

証明

$$ \mathcal{Q}_n:=\left\{\prod_{j=1}^{N}\left(\frac{\ell_j-1}{2^n},\frac{\ell_j}{2^n}\right]:\ell_1,\ldots,\ell_N\in \mathbb{Z}\right\}\quad(\forall n\in \mathbb{N}) $$ とおく。明らかに任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $\mathcal{Q}_n$ の互いに異なる要素は互いに交わらず、$\mathbb{R}^N=\bigcup_{I\in \mathcal{Q}_n}I$ である。また $n<m$ なる任意の $n,m\in\mathbb{N}$ と $I_n\cap I_m\neq\emptyset$ なる任意の $I_n\in \mathcal{Q}_n$、$I_m\in \mathcal{Q}_m$ に対し $I_m\subset I_n$ である。 任意の開集合 $U\subset \mathbb{R}^N$ を取る。$U$に含まれる $\mathcal{Q}_1$ の要素全ての合併を $U_1$ とする。$U\backslash U_1$ に含まれる $\mathcal{Q}_2$ の要素全ての合併を $U_2$ とする。そして任意の$n\in\mathbb{N}$ に対し $U\backslash \bigcup_{k=1}^{n}U_k$ に含まれる $\mathcal{Q}_{n+1}$ の要素全ての合併を $U_{n+1}$ とする。$U=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}U_n$ が成り立つことを示せばよい。任意の $x\in U$ を取る。$U$ は開集合であるから十分大きい $n\in\mathbb{N}$ を取れば $x\in I_n\subset U$ なる $I_n\in\mathcal{Q}_n$ が取れる。もし$I_n\cap \bigcup_{k=1}^{n-1}U_k\neq\emptyset$ ならばある $k\in \{1,\ldots,n-1\}$ に対し $I_n\subset U_k$ である。また $I_n\cap \bigcup_{k=1}^{n-1}U_k=\emptyset$ ならば $I_n\subset U_n$ である。よって $x\in \bigcup_{n\in\mathbb{N}}U_n$ であるから $U=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}U_n$ が成り立つ。

命題36.6(Lebesgue測度の特徴付け)

$\mathbb{R}^N$ 上のBorel測度が $\mathbb{R}^N$ 上のLebesgue測度であるための必要十分条件は、任意の直方体( $N$ 個の有界区間の直積)に対し通常の意味での体積(各区間の長さの積)を与えることである。

証明

必要条件であることは注意36.4で述べている。Borel測度 $\mu:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow [0,\infty]$ が任意の直方体に対して通常の意味での体積を与えるとする。任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し $K$ はある直方体に含まれるので $\mu(K)<\infty$ であり、$\mathbb{R}^N$ は第二可算であるから定理31.5より $\mu$ はRadon測度である。補題36.5より任意の開集合 $U\subset \mathbb{R}^N$ に対し $\mu(U)=m_N(U)$ である。よって $\mu, m_N$ の外部正則性より任意の $B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ に対し $\mu(B)=m_N(B)$ である。

命題36.7(連続関数に対するRiemann積分とLebesgue測度による積分の一致)

$I\subset \mathbb{R}^N$ を閉直方体、$f:I\rightarrow\mathbb{C}$ を連続関数、$m_N:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow[0,\infty]$ をLebesgue測度とする。このとき、 $$ \int_{I}f(x)dm_N(x)=\int_{I}f(x)dx $$ (右辺はRiemann積分)が成り立つ。

証明

$I$ の分割 $\Delta\in \mathcal{D}(I)$、代表点 $\xi_{\Delta}=(\xi_J)_{J\in K(\Delta)}$ によるRiemann和 $s(f,\Delta,\xi_{\Delta})$ は、 $$ s(f,\Delta,\xi_{\Delta})=\sum_{J\in K(\Delta)}f(\xi_J)m_N(J) =\sum_{J\in K(\Delta)}\int_{J}f(\xi_j)dm_N(x) $$ であり、 $$ \int_{I}f(x)dm_N(x)=\sum_{J\in K(\Delta)}\int_{J}f(x)dm_N(x) $$ であるから、 $$ \left\lvert\int_{I}f(x)dm_N(x)-s(f,\Delta,\xi_{\Delta})\right\rvert \leq \sum_{J\in K(\Delta)}\int_{J}\lvert f(x)-f(\xi_J)\rvert dm_N(x) $$ である。そして $f$は一様連続である(距離空間の位相の基本的性質定理7.3)から、 $$ \int_{I}f(x)dm_N(x)=\lim_{d(\Delta)\rightarrow0}s(f,\Delta,\xi_{\Delta}) =\int_{I}f(x)dx $$ である。

定義36.8(Lebesgue測度とLebesgue測度による積分の表記)

Lebesgue測度 $m_N:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow [0,\infty]$ について、 $$ \lvert B\rvert:=m_N(B)\quad(\forall B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}) $$ と表す. また$m_N$ による積分を、 $$ \int_{B}f(x)dx:=\int_{B}f(x)dm_N(x) $$ と表し、Lebesgue測度に関する $L^p$ 空間を、 $$ L^p(\mathbb{R}^N):=L^p(\mathbb{R}^N,\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N},m_N)\quad(\forall p\in[1,\infty]) $$ と表す。$N=1$ の場合、任意の $a,b\in\mathbb{R}$ に対し、 $$ \int_{a}^{b}f(x)dx:=\left\{\begin{array}{ll}\int_{[a,b]}f(x)dx&(a\leq b)\\-\int_{[b,a]}f(x)dx&(b<a)\end{array}\right. $$ と定義する。

37. Lebesgue測度の平行移動不変性、線形変換に対するLebesgue測度の拡大率と行列式

命題37.1(Lebesgue測度の平行移動不変性)

任意の $B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ と $y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \lvert B+y\rvert=\lvert B\rvert $$ が成り立つ。ただし $B+y=\{x+y:x\in B\}$ である。

証明

$$ \mu(B):=\lvert B+y\rvert\quad(\forall B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}) $$ としてBorel測度 $\mu:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow [0,\infty]$ を定義すると、$\mu$ は命題36.6の条件を満たす。よって $\mu$ はLebesgue測度である。

定義37.2(基本行列)

$\mathbb{R}$ 上の $N$ 次行列環 $\mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$ の単位行列を$1_N$とする。$i\neq j$ なる任意の $i,j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し $A(i,j)$ を $1_N$ の $i$ 行と $j$ 行を入れ替えたものとする。任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ と $b\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ に対し $B(j;b)$ を $1_N$ の $j$ 行を $b$ 倍したものとする。$i\neq j$ なる任意の $i,j\in \{1,\ldots,N\}$ と任意の $c\in \mathbb{R}$ に対し $C(i,j;c)$ を $1_N$ の $i$ 行に $1_N$ の $j$ 行の $c$ 倍を足したものとする。 $$ A(i,j)^{-1}=A(i,j),\quad B(j;b)^{-1}=B(j;b^{-1}),\quad C(i,j;c)^{-1}=C(i,j;-c) $$ である。$A(i,j)$、$B(j;b)$、$C(i,j;c)$ のタイプの行列を基本行列と言う。 行列 $M$ に対し $A(i,j)M$(resp. $MA(i,j)$)は $M$ の $i$ 行と $j$ 行(resp. $i$ 列と $j$ 列)を入れ替えたものであり、 $B(j;b)M$(resp. $MB(j;b)$)は $M$ の $j$ 行(resp. $j$ 列)を $b$ 倍したもの、 $C(i,j:c)M$(resp. $MC(i,j;c)$)は $M$ の $i$ 行に $M$ の $j$ 行の $c$ 倍( resp. $j$ 列に $i$ 列の $c$ 倍)を足したものである。よって行列 $M$ に左右から基本行列を有限個掛ければ対角成分以外 $0$ で対角成分が $1$ と $0$ のみのものが得られる。$M$ が正則行列ならば $M$ は有限個の基本行列の積である。

命題37.3(線形変換に対するLebesgue測度の拡大率は行列式の絶対値)

$A\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$ を正則行列とする。任意の $B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ に対し、 $$ \lvert A(B)\rvert=\lvert {\rm det}(A)\rvert \lvert B\rvert $$ が成り立つ。

証明

$A$ は有限個の基本行列の積で表されることと ${\rm det}:\mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})\rightarrow \mathbb{R}$ は乗法を保存することから $A$ は基本行列であるとして示せば十分である。 $$ \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\ni B\mapsto \lvert A(B)\rvert \in [0,\infty],\quad \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\ni B\mapsto \lvert {\rm det}(A)\rvert \lvert B\rvert\in [0,\infty] $$ は定理31.5よりRadon測度であるから外部正則性より任意の開集合 $U\subset \mathbb{R}^N$ に対し $\lvert A(U)\rvert=\lvert {\rm det}(A)\rvert \lvert U\rvert$ が成り立つことを示せば十分であり、さらに補題36.5より $\mathbb{R}^N$ の開集合は互いに交わらない有界な左半開立方体の可算合併であるから任意の有界な左半開立方体 $$ I:=\prod_{j=1}^{N}(\alpha_j,\beta_j] $$ を取り、 $$ \lvert A(I)\rvert=\lvert {\rm det}(A)\rvert \lvert I\rvert\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せば十分である。 $A$ が $A(i,j)$ か $B(j;b)$ の場合は自明である。$A=C(i,j;c)$ とする。このとき、 $$ A(I)=\left\{(x_1,\ldots,x_N): \alpha_k<x_k\leq \beta_k\text{ }(k\neq i), \text{ }\alpha_i+cx_j<x_i\leq \beta_i+cx_j\right\} $$ であるからTonelliの定理(定理14.4)より、 $$ \lvert A(I)\rvert=\prod_{k\neq i,j}(\beta_k-\alpha_k)\int_{\alpha_j}^{\beta_j}\int_{\alpha_i+cx_j}^{\beta_i+cx_j}1dx_idx_j =\left(\prod_{k\neq i,j}(\beta_k-\alpha_k)\right)(\beta_j-\alpha_j)(\beta_i-\alpha_i)=\lvert I\rvert $$ である。$\lvert {\rm det}(A)\rvert=1$ なので $(*)$ が成り立つ。

38. Hardy-Littlewoodの極大関数と不等式

定義38.1(Hardy-Littlewoodの極大関数)

任意の複素数値Borel測度 $\nu:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow\mathbb{C}$ に対し $M\nu:\mathbb{R}^N\rightarrow [0,\infty]$ を、 $$ M\nu(x):=\sup_{r\in (0,\infty)}\frac{\lvert \nu\rvert(B(x,r))}{\lvert B(x,r)\rvert}\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する。これを $\nu$ に対する(Hardy-Littlewoodの)極大関数と言う。任意の $f\in\mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ に対し複素数値Borel測度 $$ \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\ni B\mapsto \int_{B}f(x)dx\in \mathbb{C} $$ の極大関数を $Mf:\mathbb{R}^N\rightarrow [0,\infty]$ と表す。 命題19.3より、 $$ Mf(x)=\sup_{r\in (0,\infty)}\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}\lvert f(y)\rvert dy\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ である。

補題38.2(極大関数はBorel関数)

任意の複素数値Borel測度 $\nu:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow\mathbb{C}$ と任意の $\alpha\in (0,\infty)$ に対し $(\alpha<M\nu)$ は $\mathbb{R}^N$ の開集合である。 特に $M\nu:\mathbb{R}^N\rightarrow[0,\infty]$ はBorel関数である。

証明

任意の $x\in (\alpha<M\nu)$ を取る。$\alpha<\sup_{r\in (0,\infty)}\frac{\lvert\nu\rvert(B(x,r))}{\lvert B(x,r)\rvert}$ であるから、 $$ \alpha<\frac{\lvert\nu\rvert(B(x,r))}{\lvert B(x,r)\rvert}=\frac{\lvert \nu\rvert(B(x,r))}{r^N\lvert B(0,1)\rvert} $$ なる $r\in (0,\infty)$ が取れる。(命題37.1命題37.3より $\lvert B(x,r)\rvert=\lvert B(0,r)\rvert=r^N\lvert B(0,1)\rvert$ である。) 十分小さい$\delta\in (0,\infty)$を取れば、 $$ \alpha<\frac{\lvert\nu\rvert(B(x,r))}{(r+\delta)^N\lvert B(0,1)\rvert} $$ となる。任意の $y\in B(x,\delta)$ に対し $B(x,r)\subset B(y,r+\delta)$ であるから、 $$ \lvert\nu\rvert(B(y,r+\delta))\geq \lvert\nu\rvert(B(x,r))>\alpha(r+\delta)^N\lvert B(0,1)\rvert =\alpha\lvert B(y,r+\delta)\rvert $$ である。よって、 $$ \alpha<\frac{\lvert\nu\rvert(B(y,r+\delta))}{\lvert B(y,r+\delta)\rvert}\leq M\nu(y) $$ であるから $B(x,\delta)\subset (\alpha<M\nu)$ である。ゆえに $(\alpha<M\nu)$は開集合である。

補題38.3

距離空間 $(X,d)$ の任意の有限個の開球 $B(x_j,r_j)$ $(j=1,\ldots,N)$ に対し、 $\{x_1,\ldots,x_N\}$ の部分集合 $S$ で、 $$ B(x_j,r_j)\cap B(x_k,r_k)=\emptyset\quad(j\neq k, j,k\in S),\quad\quad(*) $$ $$ \bigcup_{j=1}^{N}B(x_j,r_j)\subset \bigcup_{j\in S}B(x_j,3r_j)\quad\quad(**) $$ なるものが存在する。

証明

$r_1\geq r_2\geq \ldots\geq r_N$ であるとしてよい。$k(1):=1$ とおく。 $B(x_k,r_k)\cap B(x_1,r_1)=\emptyset$ なる $k\in\{2,\ldots,N\}$ で最小のものを $k(2)$ とする。 $B(x_k,r_k)\cap \bigcup_{j=1}^{2}B(x_{k(j)},r_{k(j)})=\emptyset$ なる $k\in\{k(2)+1,\ldots,N\}$ で最小のものを $k(3)$ とおく。以下同様にして $1=k(1)<k(2)<\ldots<k(n)$ を取り尽くしたものとする。$S:=\{k(1),k(2),\cdots,k(n)\}$とおく。 定義の仕方から $S$ は $(*)$ を満たす。$S$ が $(**)$ を満たすことを示す。任意の $k\in \{1,\ldots,N\}\backslash S$ を取り、 $$ B(x_k,r_k)\subset \bigcup_{j\in S}B(x_j,3r_j)\quad\quad(***) $$ が成り立つことを示せばよい。$k(m)<k<k(m+1)$ なる $m\in \{1,\ldots,n\}$ を取る。 $B(x_k,r_k)\cap \bigcup_{j=1}^{m}B(x_{k(j)},r_{k(j)})\neq\emptyset$ であるから $B(x_k,r_k)\cap B(x_{k(l)},r_{k(l)})\neq\emptyset$ なる $l\in\{1,\ldots,m\}$ が取れる。任意の $x\in B(x_k,r_k)$、任意の $y\in B(x_k,r_k)\cap B(x_{k(l)},r_{k(l)})$ を取る。$k(l)<k$ より $r_k\leq r_{k(l)}$ であるから、 $$ d(x,x_{k(l)})\leq d(x,x_k)+d(x_k,y)+d(y,x_{k(l)})<r_k+r_k+r_{k(l)}\leq 3r_{k(l)} $$ である。よって $(***)$ が成り立つ。

命題38.4(Hardy-Littlewoodの不等式)

任意の複素数値Borel測度 $\nu:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\rightarrow [0,\infty]$ と任意の $\alpha\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \lvert(\alpha<M\nu)\rvert\leq \frac{3^N}{\alpha}\lVert \nu\rVert $$ が成り立つ。

証明

Lebesgue測度はRadon測度であるから内部正則性より任意のコンパクト集合 $K\subset (\alpha<M\nu)$ を取り、 $$ \lvert K\rvert\leq \frac{3^N}{\alpha}\lVert \nu\rVert $$ が成り立つことを示せば十分である。任意の $x\in K$ に対し $\alpha<M\nu(x)=\sup_{r\in (0,\infty)}\frac{\lvert\nu\rvert(B(x,r))}{\lvert B(x,r)\rvert}$ であるから $r_x\in (0,\infty)$ で、 $$ \alpha<\frac{\lvert \nu\rvert(B(x,r_x))}{\lvert B(x,r_x)\rvert} $$ なるものが取れる。$K$ はコンパクトであるから有限個の $x_1,\ldots, x_n\in K$ が取れて、 $$ K\subset \bigcup_{j=1}^{n}B(x_j,r_{x_j}) $$ となり、補題38.3より $S\subset \{1,\ldots,n\}$ で、 $$ B(x_j,r_{x_j})\cap B(x_k,r_{x_k})=\emptyset\quad(j\neq k,j,k\in S), $$ $$ \bigcup_{j=1}^{n}B(x_j,r_{x_j})\subset \bigcup_{j\in S}B(x_j,3r_{x_j}) $$ なるものが取れる。命題37.1命題37.3より $\lvert B(x_j,3r_{x_j})\rvert=3^N\lvert B(x_j,r_{x_j})\rvert$ であるから、 $$ \begin{aligned} \lvert K\rvert&\leq \sum_{j\in S}\lvert B(x_j,3r_{x_j})\rvert =\sum_{j\in S}3^N\lvert B(x_j,r_{x_j})\rvert \leq \frac{3^N}{\alpha}\sum_{j\in S}\lvert\nu\rvert(B(x_j,r_{x_j}))\\ &\leq \frac{3^N}{\alpha}\lvert\nu\rvert\left(\sum_{j\in S}B(x_j,r_{x_j})\right) \leq \frac{3^N}{\alpha}\lVert \nu\rVert \end{aligned} $$ である。

39. Lebesgueの微分定理

定義39.1(Lebesgue点)

$f\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ に対し $x\in \mathbb{R}^N$ が $f$ のLebesgue点であるとは、 $$ \lim_{r\rightarrow+0}\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}\lvert f(y)-f(x)\rvert dy=0 $$ が成り立つことを言う。

$f$ が $x\in \mathbb{R}^N$ において連続であるとき $x$ は明らかに $f$ のLebesgue点である。

補題39.2(Lebesgue測度に関してほとんど全ての点がLebesgue点)

任意の $f\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ に対しLebesgue測度に関してほとんど全ての $x\in \mathbb{R}^N$ が $f$ のLebesgue点である。

証明

任意の$x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ T_rf(x):=\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}\lvert f(y)-f(x)\rvert dy\quad(\forall r\in (0,\infty)), $$ $$ Tf(x):=\inf_{\delta\in (0,\infty)}\sup_{r\in (0,\delta)}T_rf(x) $$ とおく。$x\in \mathbb{R}^N$ がLebesgue点であることと $Tf(x)=0$ であることは同値である。よって $(0<Tf)$ がLebesgue測度 $0$ のBorel集合に含まれることを示せばよい。$(0<Tf)=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}(\frac{1}{n}<Tf)$ であるからそのためには任意の $\alpha\in (0,\infty)$ を取り $(\alpha<Tf)$ がLebesgue測度 $0$ のBorel集合に含まれることを示せばよい。命題32.1より $C_c(\mathbb{R}^N)$ の列 $(g_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f-g_n\rVert_1=0$ なるものが取れる。$h_n:=f-g_n$ $(\forall n\in\mathbb{N})$ とおく。任意の $n\in\mathbb{N}$ を取る。 $f=g_n+h_n$ であるから、 $$ T_rf(x)\leq T_rg_n(x)+T_rh_n(x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N,\forall r\in (0,\infty)), $$ したがって、 $$ Tf(x)\leq Tg_n(x)+Th_n(x)=Th_n(x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ である。($g_n$ は連続なので $Tg_n=0$である。)また任意の $x\in\mathbb{R}^N$ と $r\in (0,\infty)$ に対し $T_rh_n(x)\leq Mh_n(x)+\lvert h_n(x)\rvert$ であるから、 $$ Th_n(x)\leq Mh_n(x)+\lvert h_n(x)\rvert\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N). $$ よって、 $$ Tf(x)\leq Mh_n(x)+\lvert h_n(x)\rvert\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ である。ゆえに、 $$ (\alpha<Tf)\subset (\frac{\alpha}{2}<Mh_n )\cup(\frac{\alpha}{2}<\lvert h_n\rvert ):=B_n\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ である。ここでHardy-Littlewoodの不等式(命題38.4)より、 $$ \lvert B_n\rvert\leq \left\lvert(\frac{\alpha}{2}<Mh_n )\right\rvert+\left\lvert( \frac{\alpha}{2}<\lvert h_n\rvert )\right\rvert \leq \frac{2(3^N+1)}{\alpha}\lVert h_n\rVert_1 $$ である。そこで $B:=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}B_n\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ とおけば $(\alpha<Tf)\subset B$ であり、$\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert h_n\rVert_1=0$ より、 $$ \lvert B\rvert\leq \inf_{n\in\mathbb{N}}\frac{2(3^N+1)}{\alpha}\lVert h_n\rVert_1=0 $$ である。よって $(\alpha<Tf)$ はLebesgue測度が $0$ のBorel集合 $B$ に含まれる。

定理39.3(Lebesgueの微分定理)

任意の $f\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ に対しLebesgue測度に関してほとんど全ての $x\in\mathbb{R}^N$ で、 $$ \lim_{r\rightarrow+0}\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}f(y)dy=f(x) $$ が成り立つ。

証明

補題39.2よりLebesgue測度に関してほとんど全ての $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \left\lvert\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}f(y)dy-f(x)\right\rvert \leq \frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}\lvert f(y)-f(x)\rvert dy\rightarrow0\quad(r\rightarrow+0) $$ である。

40. Lebesgue測度に関する変数変換公式

補題40.1

$U\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:U\rightarrow \mathbb{R}^N$ を $\mathbb{R}^N$ の開集合 $\Phi(U)$ の上への $C^1$ 級同相写像とする。このとき任意の $a\in U$ に対し、 $$ \lim_{r\rightarrow+0}\frac{\lvert\Phi(B(a,r))\rvert}{\lvert B(a,r)\rvert}=\lvert {\rm det}(\Phi'(a))\rvert $$ が成り立つ。

証明

$\Phi$ の代わりに $\Phi'(a)^{-1}\Phi$ を考えることで最初から $\Phi'(a)=1$(単位行列)として示せば十分である。任意の $\epsilon\in(0,1)$ に対し十分小さい $r\in (0,\infty)$ を取れば、 $$ \lvert\Phi(x)-\Phi(a)-(x-a)\rvert\leq \epsilon\lvert x-a\rvert\quad(\forall x\in \overline{B(a,r)})\quad\quad(*) $$ となる。ただし、 $$ \overline{B(a,r)}=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x-a\rvert\leq r\}\subset U, $$ $$ B(\Phi(a),r)=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-\Phi(a)\rvert<r\}\subset \Phi(U) $$ とする。$(*)$ より、 $$ \lvert\Phi(x)-\Phi(a)\rvert\leq (1+\epsilon)\lvert x-a\rvert<(1+\epsilon)r \quad(\forall x\in B(a,r)) $$ であるから、 $$ \Phi(B(a,r))\subset B(\Phi(a), (1+\epsilon)r) $$ である。また $(*)$ より、 $$ (1-\epsilon)r= (1-\epsilon)\lvert x-a\rvert\leq \lvert\Phi(x)-\Phi(a)\rvert\quad(\forall x\in \partial B(a,r)) $$ であるから、 $$ \Phi(\partial B(a,r))\cap B(\Phi(a),(1-\epsilon)r)=\emptyset, $$ したがって、 $$ B(\Phi(a),(1-\epsilon)r)\subset \Phi(B(a,r))\cup \Phi(U\backslash \overline{B(a,r)}) $$ である。左辺は連結で右辺は互いに交わらない開集合であるから、 $$ B(\Phi(a),(1-\epsilon)r)\subset \Phi(B(a,r)) $$ を得る。よって、 $$ B(\Phi(a),(1-\epsilon)r)\subset \Phi(B(a,r))\subset B(\Phi(a), (1+\epsilon)r) $$ が成り立つ。ここで命題37.1命題37.3より、 $$ \lvert B(\Phi(a),(1\pm\epsilon)r)\rvert =(1\pm \epsilon)^N\lvert B(a,r)\rvert $$ であるから、 $$ (1-\epsilon)^N\leq \frac{\lvert \Phi(B(a,r))\rvert}{\lvert B(a,r)\rvert}\leq (1+\epsilon)^N $$ である。ゆえに $\lim_{r\rightarrow+0}\frac{\lvert \Phi(B(a,r))\rvert}{\lvert B(a,r)\rvert}=1$ が成り立つ。

補題40.2

$U\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:U\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $C^1$ 級とする。Lebesgue測度が $0$ の $\sigma$-コンパクト集合 $E\subset U$ に対し $\Phi(E)$ は $\sigma$-コンパクトなLebesgue測度 $0$ の集合である。

証明

$\Phi(E)$ が $\sigma$-コンパクトであることは $\Phi$ の連続性による。 任意の $n,m\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ E_{n,m}:=\left\{x\in E: \lvert y-x\rvert<\frac{1}{m}\text{ なる任意の }y\in U\text{ に対し }\lvert\Phi(y)-\Phi(x)\rvert\leq n\lvert y-x\rvert\right\} $$ とおく。任意の $x\in E$ に対し $\lVert\Phi'(x)\rVert+1\leq n$ なる $n\in\mathbb{N}$ が取れ、十分大きい $m\in\mathbb{N}$ を取れば $\lvert y-x\rvert<\frac{1}{m}$ なる任意の $y\in U$ に対し、 $$ \lvert\Phi(y)-\Phi(x)-\Phi'(x)(y-x)\rvert\leq \lvert y-x\rvert $$ となるから、 $$ \lvert\Phi(y)-\Phi(x)\rvert\leq (\lVert\Phi'(x)\rVert+1)\lvert y-x\rvert\leq n\lvert y-x\rvert $$ である。よって、 $$ E=\bigcup_{n,m\in\mathbb{N}}E_{n,m} $$ が成り立つ。また任意の $n,m\in\mathbb{N}$ に対し $E_{n,m}=\overline{E_{n,m}}\cap E$ である*1から $E_{n,m}$ は $\sigma$-コンパクトである。 $\Phi(E)=\bigcup_{n,m\in\mathbb{N}}\Phi(E_{n,m})$ であるから 任意の $n,m\in\mathbb{N}$ に対し $\sigma$-コンパクト集合 $\Phi(E_{n,m})$ のLebesgue測度が $0$ であることを示せばよい。$\lvert E_{n,m}\rvert=0$ であるからLebesgue測度の外部正則性より任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $E_{n,m}$ を含む開集合 $U$ で $\lvert U\rvert<\epsilon$ なるものが取れる。補題36.5より $U$ は左半開立方体の非交叉列 $(I_j)_{j\in \mathbb{N}}$ により $U=\bigcup_{j\in \mathbb{N}}I_j$ と表される。各 $I_j$ の一辺の長さを $r_j$ とする。必要ならば細分して、 $$ r_j<\frac{1}{Nm}\quad(\forall j\in \mathbb{N}) $$ としてよい。このとき任意の $j\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ \lvert\Phi(y)-\Phi(x)\rvert\leq n\lvert y-x\rvert<nNr_j\quad(\forall x,y\in I_j\cap E_{n,m}) $$ であるから $\Phi(I_j\cap E_{n,m})$ は一辺の長さが $nNr_j$ 以下のある左半開立方体 $J_j$ に含まれる。 $$ \Phi(E_{n,m})=\bigcup_{j\in \mathbb{N}}\Phi(I_j\cap E_{n,m})\subset \bigcup_{j\in \mathbb{N}}J_j $$ であり、 $$ \lvert\Phi(E_{n,m})\rvert\leq \sum_{j\in \mathbb{N}}\lvert J_j\rvert \leq\sum_{j\in\mathbb{N}}(nNr_j)^N =(nN)^N\sum_{j\in \mathbb{N}}\lvert I_j\rvert =(nN)^N\lvert U\rvert<(nN)^N\epsilon $$ である。よって $\epsilon$ の任意性より $\lvert\Phi(E_{n,m})\rvert=0$ を得る。

補題40.3

$U\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:U\rightarrow \mathbb{R}^N$ を $\mathbb{R}^N$ の開集合 $\Phi(U)$ の上への $C^1$ 級同相写像とする。このとき任意の非負値Borel関数 $f:\Phi(U)\rightarrow [0,\infty]$ に対し、 $$ \int_{\Phi(U)}f(x)dx=\int_{U}f(\Phi(x))\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx $$ が成り立つ。

証明

非負値Borel関数の非負値Borel単関数の各点単調増加列による近似(定理5.5)より任意のBorel集合 $B\in \mathcal{B}_{U}$ に対し、 $$ \lvert \Phi(B)\rvert=\int_{B}\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx $$ が成り立つことを示せば十分である。任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し開集合 $U_n:=\{x\in U:\lvert \Phi(x)\rvert<n\}$ を定義し、有限Borel測度 $$ \mu_n:\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}\ni B\mapsto \lvert\Phi(B\cap U_n)\rvert\in [0,\infty) $$ を定義する。定理31.5より $\mu_n$ はRadon測度である。 $\mu_n$ は $\mathbb{R}^N$ のLebesgue測度に関して絶対連続である。実際、$\lvert B\rvert=0$ なる任意の $B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ と $K\subset B$ なる任意のコンパクト集合 $K$ に対し $K\cap U_n$ は $\sigma$-コンパクト($U_n$ は $\mathbb{R}^N$ の開集合ゆえ $\sigma$ -コンパクトであることに注意)で $\lvert K\cap U_n\rvert=0$ であるから補題40.2より $\mu_n(K)=\lvert\Phi(K\cap U_n)\rvert=0$ である。よって $\mu_n$ の内部正則性より $\mu_n(B)=0$ であるから $\mu_n$ はLebesgue測度に関して絶対連続である。そこで $\mu_n$ のLebesgue測度に関するRadon-Nikodym微分(定義18.8)を $h_n\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ とおく。このとき、 $$ \lvert\Phi(B\cap U_n)\rvert=\int_{B\cap U_n}h_n(x)dx\quad(\forall B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N})\quad\quad(*) $$ であるから、Lebesgueの微分定理(定理39.3)よりLebesgue測度に関してa.e. $x\in U_n$ で、 $$ \lim_{r\rightarrow+0}\frac{\lvert\Phi(B(x,r))\rvert}{\lvert B(x,r)\rvert}= \lim_{r\rightarrow+0}\frac{1}{\lvert B(x,r)\rvert}\int_{B(x,r)}h_n(y)dy=h_n(x) $$ である。一方補題40.1より任意の $x\in U_n$ に対し、 $$ \lim_{r\rightarrow+0}\frac{\lvert\Phi(B(x,r))\rvert}{\lvert B(x,r)\rvert}=\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert $$ であるからLebesgue測度に関してa.e. $x\in U_n$ で $h_n(x)=\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert$ が成り立つ。ゆえに $(*)$ より、 $$ \lvert\Phi(B\cap U_n)\rvert= \int_{B\cap U_n}\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx\quad(\forall B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}) $$ が成り立つ。$(U_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は単調増加列であり $U=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}U_n$ であるから単調収束定理より任意の $B\in \mathcal{B}_{U}$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert\Phi(B)\rvert&=\sup_{n\in\mathbb{N}}\lvert\Phi(B\cap U_n)\rvert=\sup_{n\in\mathbb{N}}\int_{B\cap U_n}\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx=\int_{B}\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx \end{aligned} $$ が成り立つ。

定理40.4(変数変換公式)

$B\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$ とし、$\Phi:B\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $B$ を含む開集合上で定義された $C^1$ 級写像を $B$ 上に制限したものとする。そして次が成り立つとする。

  • $(1)$ $\Phi(B)\in \mathcal{B}_{\mathbb{R}^N}$.
  • $(2)$ $\Phi$ は $B^{\circ}$ 上で単射であり任意の $x\in B^{\circ}$ に対し ${\rm det}(\Phi'(x))\neq0$.
  • $(3)$ $B\backslash B^{\circ}$ はLebesgue測度が $0$ の $\sigma$-コンパクト集合に含まれる。

このとき任意の非負値Borel関数 $f:\Phi(B)\rightarrow [0,\infty]$に対し、 $$ \int_{\Phi(B)}f(x)dx=\int_{B}f(x)\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx $$ が成り立つ。

証明

$(2)$と逆関数定理より、$\Phi(B^{\circ})$ は $\mathbb{R}^N$ の開集合で $B^{\circ}\ni x\mapsto \Phi(x)\in \Phi(B^{\circ})$ は $C^1$ 級同相写像である。また $\Phi(B)\backslash \Phi(B^{\circ})\subset \Phi(B\backslash B^{\circ})$ であるから $(1),(3)$ と補題40.2より $\lvert \Phi(B)\backslash \Phi(B^{\circ})\rvert=0$ である。ゆえに補題40.3より、 $$ \int_{\Phi(B)}f(x)dx=\int_{\Phi(B^{\circ})}f(x)dx =\int_{B^{\circ}}f(\Phi(x))\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx =\int_{B}f(\Phi(x))\lvert {\rm det}(\Phi'(x))\rvert dx $$ である。

関連項目



*1 任意の $x\in \overline{E_{n,m}}\cap E$ と $x$ に収束する $E_{n,m}$ の列 $(x_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を取る。また $\lvert y-x\rvert<\frac{1}{m}$ なる任意の $y\in U$ を取る。十分大きい $i\in\mathbb{N}$ に対し $\lvert y-x_i\rvert<\frac{1}{m}$ となり $x_i\in E_{n,m}$ より $\lvert \Phi(y)-\Phi(x_i)\rvert\leq n\lvert y-x_i\rvert$ であるから $\Phi$ の連続性より $\lvert\Phi(y)-\Phi(x)\rvert\leq n\lvert y-x\rvert$ である。よって $x\in E_{n,m}$ である。

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Last-modified: 2020-10-20 (火) 23:36:58 (6d)