測度と積分9:Bochner積分

この章では関数解析学の技術的なところでしばしば現れる、Banach空間値関数の積分であるBochner積分について述べる。

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入門テキスト「測度と積分」


この章では $\mathbb{F}$ により $\mathbb{R}$ か $\mathbb{C}$ を表すこととする。

41. Bochner可測関数とBochner可測単関数の定義

定義41.1(Bochner可測関数)

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。$ f:X\rightarrow B$ がBochner可測関数であるとは、

  • (像の可分性) $f(X)$は可分.
  • (弱可測性) 任意の$\varphi\in B^*$ に対し $\varphi\circ f: X\rightarrow \mathbb{F}$は可測関数。

が成り立つことを言う。

注意41.2(像の可分性に関する注意)

距離空間の位相の基本的性質命題3より距離空間が可分であることと第二可算であることは同値である。 よってノルム空間 $B$ の可分な部分集合 $A$ に対し $A$ の任意の部分集合は可分である。また $A$ が可分であるとき $A$ の稠密な可算部分集合 $A_0$ と $\mathbb{F}$ の稠密な可算部分集合 $\mathcal{Q}$ を取れば、$A$ の線形包 $\text{span}(A)$ において可算集合 $$ \bigcup_{n\in\mathbb{N}}\left\{\sum_{j=1}^{n}r_ja_j: r_1,\ldots,r_n\in \mathcal{Q}, a_1,\ldots,a_n\in A_0\right\} $$ は稠密であるから、$\text{span}(A)$ は可分である。

定義41.3(Bochner可測単関数)

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。$f:X\rightarrow B$ がBochner可測単関数であるとは、

  • (像の有限性) $f(X)$は有限集合。
  • (弱可測性) 任意の $\varphi\in B^*$ に対し $\varphi\circ f: X\rightarrow \mathbb{F}$ は可測関数。

が成り立つことを言う。

次の事実は極めて基本的であるので以後、特に断ることなく用いる。

命題41.4(Bochner可測関数について基本的に成り立つこと)

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間、$B$を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。

  • $(1)$ $f,g:X\rightarrow B$ をBochner可測関数、$h:X\rightarrow \mathbb{F}$ を可測関数とすると、 $$ f+g:X\ni x\mapsto f(x)+g(x)\in B,\quad hf:X\ni x\mapsto h(x)f(x)\in B $$ はBochner可測関数である。
  • $(2)$ $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を $X\rightarrow B$ のBochner可測関数の列とし、任意の $x\in X$ に対し $f(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(x)\in B$ が存在するとする。 このとき $f:X\rightarrow B$ はBochner可測関数である。
  • $(3)$ Bochner可測関数 $f:X\rightarrow B$ に対し $\lVert f(\cdot)\rVert:X\ni x\mapsto \lVert f(x)\rVert \in [0,\infty)$ は可測関数である。
  • $(4)$ $f:X\rightarrow B$ がBochner可測単関数であるための必要十分条件は有限個の $b_1,\cdots,b_n\in B$ と $E_1,\cdots,E_n\in \mathfrak{M}$ に対し、 $$ f(x)=\sum_{j=1}^{n}\chi_{E_j}(x)b_j\quad(\forall x\in X) $$ と表されることである。

証明

  • $(1)$ 弱可測性は自明である。 $$ (f+g)(X)\subset f(X)+g(X),\quad (hf)(X)\subset \mathbb{F} f(X) $$ の右辺は可分であるので左辺も可分である。(注意41.2を参照。)
  • $(2)$ 弱可測性は自明である。 $$ f(X)\subset \overline{\bigcup_{n\in\mathbb{N}}f_n(X)} $$ であり右辺は可分であるので左辺も可分である。
  • $(3)$ $f(X)$ は可分であるから稠密な可算部分集合 $\{b_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ が取れる。これに対しHahn-Banachの拡張定理(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定理11.5)より $\{\varphi_n\}_{n\in\mathbb{N}}\subset B^*$ で、 $$ \lVert \varphi_n\rVert\leq1,\quad \varphi_n(b_n)=\lVert b_n\rVert\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ なるものが取れる。任意の $x\in X$、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $\lVert f(x)-b_{n_0}\rVert<\frac{\epsilon}{2}$ なる $n_0\in\mathbb{N}$ が取れて、 $$ \begin{aligned} \lVert f(x)\rVert&\geq \lvert\varphi_{n_0}(f(x))\rvert \geq \lvert \varphi_{n_0}(b_{n_0})\rvert-\lvert \varphi_{n_0}(b_{n_0})-\varphi_{n_0}(f(x))\rvert\geq \lVert b_{n_0}\rVert-\lVert b_{n_0}-f(x)\rVert\\ &\geq \lVert f(x)\rVert-2\lVert b_{n_0}-f(x)\rVert>\lVert f(x)\rVert-\epsilon \end{aligned} $$ となる. よって任意の $x\in X$ に対し $\lVert f(x)\rVert=\sup_{n\in\mathbb{N}}\lvert\varphi_n(f(x))\rvert$ が成り立つので、任意の $\alpha\in \mathbb{R}$ に対し、 $$ (\alpha<\lVert f(\cdot)\rVert)=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}(\alpha<\lvert\varphi_n\circ f\rvert)\in \mathfrak{M} $$ である。ゆえに $\lVert f(\cdot)\rVert:X\rightarrow [0,\infty)$ は可測関数である。
  • $(4)$ 十分条件であることは自明である。必要条件であることを示す。$f$ がBochner可測単関数であるとする。$f(X)=\{b_1,\ldots,b_n\}$ なる互いに異なる $b_1,\ldots, b_n\in B$ を取ると $(3)$ より、 $$ E_j:=(f=b_j)=(\lVert f(\cdot)-b_j\rVert=0)\in \mathfrak{M}\quad(j=1,\ldots,n) $$ であり、$f(x)=\sum_{j=1}^{n}\chi_{E_j}(x)b_j$ $(\forall x\in X)$ である。

42. Bochner可測関数のBochner可測単関数列による近似

定理42.7において $\sigma$-有限測度空間における任意のBochner可測関数がBochner可測単関数により近似できることを示す。そのためにいくつか補題を用意する。

定義42.1(準可測単関数性(執筆者による造語であり一般的用語ではない))

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。 $f:X\rightarrow B$ が $E\in \mathfrak{M}$ 上で準可測単関数的であるとは、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $E$ の有限可測分割 $E_1,\ldots,E_n\in \mathfrak{M}$が存在し、 $$ \forall j\in \{1,\ldots,n\},\quad \forall x,y\in E_j,\quad \lVert f(x)-f(y)\rVert<\epsilon $$ が成り立つことを言う。

補題42.2(準可測単関数性が意味すること)

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間、$f:X\rightarrow B$ が $E\in \mathfrak{M}$ 上で準可測単関数的であるとする。このとき任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対しBochner可測単関数 $s:X\rightarrow B$ で、 $$ \lVert f(x)-s(x)\rVert<\epsilon,\quad\lVert s(x)\rVert\leq \lVert f(x)\rVert\quad(\forall x\in E), $$ $$ s(x)=0\quad(\forall x\in X\backslash E) $$ を満たすものが存在する。

証明

定義42.1より $E$ の有限可測分割 $E_1,\ldots,E_n\in \mathfrak{M}$ で、 $$ \forall j\in \{1,\ldots,n\},\quad \forall x,y\in E_j,\quad \lVert f(x)-f(y)\rVert<\frac{\epsilon}{2} $$ を満たすものが取れる。任意の $x_j\in E_j$ $(j=1,\ldots,n)$ を取り、 $$ b_j:=\left\{\begin{array}{cl}0&(\lVert f(x_j)\rVert<\frac{\epsilon}{2})\\ (1-\frac{\epsilon}{2\lVert f(x_j)\rVert})f(x_j)& (\lVert f(x_j)\rVert\geq\frac{\epsilon}{2})\end{array}\right.\quad(j=1,\ldots,N) $$ とおく。そしてBochner可測単関数 $s:=\sum_{j=1}^{n}\chi_{E_j}b_j$ を定義する。明らかに $s(x)=0$ $(\forall x\in X\backslash E)$ である。任意の $x\in E$ を取り $x\in E_j$ なる $j\in \{1,\ldots,n\}$ を取る。$\lVert f(x_j)\rVert<\frac{\epsilon}{2}$ならば、 $$ \lVert s(x)\rVert=0\leq \lVert f(x)\rVert,\quad \lVert f(x)-s(x)\rVert=\lVert f(x)\rVert\leq\lVert f(x)-f(x_j)\rVert+\lVert f(x_j)\rVert<\epsilon $$ であり、$\lVert f(x_j)\rVert\geq\frac{\epsilon}{2}$ ならば、 $$ \lVert f(x)-s(x)\rVert\leq\lVert f(x)-f(x_j)\rVert+\frac{\epsilon}{2}<\epsilon, $$ $$ \lVert f(x)\rVert-\lVert s(x)\rVert=\lVert f(x)\rVert - \left( 1-\frac{\epsilon}{2 \lVert f(x_j) \rVert} \right) \lVert f(x_j)\rVert=\lVert f(x)\rVert-\lVert f(x_j)\rVert+\frac{\epsilon}{2} \geq-\lVert f(x)-f(x_j)\rVert+\frac{\epsilon}{2}>0 $$ である。よって $s$ は条件を満たす。

補題42.3

$(X,\mathfrak{M})$ を可測空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。 $X\rightarrow B$ の関数の列 $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が $E\in \mathfrak{M}$ 上で準可測単関数的であり、$E$ 上で関数 $f:X\rightarrow B$ に一様収束するとする。このとき $f$ は $E$ 上で準可測単関数的である。

証明

$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $E$ 上で $f$ に一様収束するので任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $n_0\in\mathbb{N}$ が存在し、 $$ \lVert f_{n_0}(x)-f(x)\rVert<\frac{\epsilon}{3}\quad(\forall x\in E) $$ となる。$f_{n_0}$ は $E$ 上準可測単関数的なので $E$ の有限可測分割 $E_1,\ldots,E_m$ で、 $$ \forall j\in \{1,\ldots,m\},\quad\forall x,y\in E_j,\quad\lVert f_{n_0}(y)-f_{n_0}(x)\rVert<\frac{\epsilon}{3} $$ なるものが取れる。よって任意の $j\in \{1,\ldots,m\}$、任意の $x,y\in E_j$ に対し、 $$ \lVert f(y)-f(x)\rVert\leq\lVert f(y)-f_{n_0}(y)\rVert+\lVert f_{n_0}(y)-f_{n_0}(x)\rVert+\lVert f_{n_0}(x)-f(x)\rVert<\epsilon $$ であるから $f$ は $E$ 上準可測単関数的である。

定義42.3(性質 $P(\mu)$(執筆者による造語であり一般的用語ではない))

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。$f:X\rightarrow B$ が性質 $P(\mu)$ を持つとは、$\mu$-有限な任意の $E\in \mathfrak{M}$*1 と任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $F\subset E$、$\mu(E\backslash F)<\epsilon$ なる $F\in \mathfrak{M}$ で $f$ が $F$ 上で準可測単関数的であるようなものが存在することを言う。

補題42.4(性質 $P(\mu)$ について成り立つこと)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間、$f:X\rightarrow B$ をBochner可測関数とする。

  • $(1)$ 任意のBochner可測単関数 $s:X\rightarrow B$ は性質 $P(\mu)$ を持つ。
  • $(2)$ 性質 $P(\mu)$ を持つ $X\rightarrow B$ のBochner可測関数の列 $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が $f:X\rightarrow B$ に各点収束するならば $f$ も性質 $P(\mu)$ を持つ。

証明

$(1)$ は自明である。$(2)$ を示す。$\mu$-有限な任意の $E\in \mathfrak{M}$ と任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り固定する。任意の $n,m\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ E_{n,m}:=\left\{x\in E: \lVert f_k(x)-f(x)\rVert<\frac{1}{m}\text{ }(\forall k\geq n)\right\}\in\mathfrak{M} $$ ($E_{n,m}$ が可測であることについては命題41.4の $(3)$ を参照)とおく。 このとき任意の $m\in\mathbb{N}$ に対し $(E_{n,m})_{n\in\mathbb{N}}$ は単調増加列であり $E=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}E_{n,m}$ である。よって測度の単調収束性(命題6.3の$(5)$)より十分大きい $n(m)\in\mathbb{N}$ を取れば、 $$ \mu(E\backslash E_{n(m),m})<\frac{\epsilon}{2^{m+1}} $$ となる。 $$ F_0:=\bigcap_{m\in\mathbb{N}}E_{n(m),m}\in \mathfrak{M} $$ とおけば、 $$ \mu(E\backslash F_0)=\mu\left(\bigcup_{m\in\mathbb{N}}E\backslash E_{n(m),m}\right) \leq \sum_{m\in\mathbb{N}}\mu(E\backslash E_{n(m),m})<\sum_{m\in\mathbb{N}}\frac{\epsilon}{2^{m+1}}=\frac{\epsilon}{2} $$ であり $F_0$ 上で $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $f$ に一様収束する。 各 $n\in\mathbb{N}$について $f_n$ は性質 $P(\mu)$ を持つので $F_n\subset E$、 $\mu(E\backslash F_n)<\frac{\epsilon}{2^{n+1}}$ なる $F_n\in \mathfrak{M}$で $f_n$ が $F_n$ 上で準可測単関数的であるものが取れる。 $$ F:=\bigcap_{n=0}^{\infty}F_n\in \mathfrak{M} $$ とおけば、 $$ \mu(E\backslash F)=\mu\left(\bigcup_{n=0}^{\infty}E\backslash F_n\right) \leq\sum_{n=0}^{\infty}\mu(E\backslash F_n)<\sum_{n=0}^{\infty}\frac{\epsilon}{2^{n+1}}=\epsilon $$ であり、各 $f_n$ は $F$ 上で準可測単関数的で $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $F$ 上で $f$ に一様収束する。よって補題42.3より $f$ は $F$ 上で準可測単関数的であるので $f$ は性質 $P(\mu)$ を持つ。

補題42.5(任意のBochner可測関数は性質 $P(\mu)$ を持つ)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。任意のBochner可測関数 $f:X\rightarrow B$ は性質 $P(\mu)$ を持つ。

証明

$f(X)$ は可分なので稠密な可算部分集合 $\{b_n\}_{n\in\mathbb{N}}\subset f(X)$ が取れ、任意の $m\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ X = \bigcup_{n\in\mathbb{N}}\left(\lVert f(\cdot)-b_n\rVert<\frac{1}{m}\right) $$ となる 。ここで任意の $m,n\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ F_{n,m} = \left(\lVert f(\cdot)-b_n\rVert<\frac{1}{m}\right) $$ とおくと、命題41.4より $F_{n,m} \in \mathfrak{M}$であるので、各$m \in \mathbb{N}$に対して、 $$ E_{1,m} := F_{1,m},~ E_{n,m} := F_{n,m} \setminus \bigcup_{j=1}^{n-1} F_{n,m} ~~(n \geq 2) $$ とおくことで、 $$ X=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}E_{m,n},\quad E_{m,n}\subset \left(\lVert f(\cdot)-b_n\rVert<\frac{1}{m}\right)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ をみたす$\mathfrak{M}$ の非交叉列 $(E_{m,n})_{n\in\mathbb{N}}$が取れる。このとき、 $$ s_{m}(x):=\sum_{n\in\mathbb{N}}\chi_{E_{m,n}}(x)b_n\quad(\forall x\in X) $$ として $s_m:X\rightarrow B$ を定義すると $s_m$ はBochner可測単関数の各点収束極限であるから、補題42.4より $s_m$ は性質 $P(\mu)$ を持つ。そして、 $$ \lVert f(x)-s_m(x)\rVert<\frac{1}{m}\quad(\forall x\in X) $$ であるから $(s_m)_{m\in\mathbb{N}}$ は $f$ に収束する。よって補題42.4より $f$ は性質 $P(\mu)$ を持つ。

補題42.6

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$f:X\rightarrow B$ をBochner可測関数とする。このとき $\mu$-有限な任意の $E\in \mathfrak{M}$ に対し、$\mathfrak{M}$ の非交叉列 $(F_n)_{n\in\mathbb{N}}$で、各 $n\in\mathbb{N}$ に対し $f$ が $F_n$ 上で準可測単関数的であり、 $$ F_n\subset E\quad(\forall n\in\mathbb{N}),\quad \mu\left(E\backslash \bigcup_{n\in\mathbb{N}}F_n\right)=0\quad\quad(*) $$ を満たすものが取れる。

証明

補題42.5より $f$ は性質 $P(\mu)$ を持つので $F_1\subset E$、$\mu(E\backslash F_1)<1$ なる $F_1\in \mathfrak{M}$ で $F_1$ 上で $f$ が準可測単関数的であるようなものが取れる。そして $F_2\subset E\backslash F_1$、$\mu(E\backslash (F_1\cup F_2))=\mu((E\backslash F_1)\backslash F_2)<\frac{1}{2}$ なる $F_2\in \mathfrak{M}$ で $F_2$ 上で $f$ が準可測単関数的であるようなものが取れる。同様のことを繰り返し $\mathfrak{M}$ の列 $(F_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で各 $n\in\mathbb{N}$ に対し $f$ が $F_n$ 上準可測単関数的であり、 $$ F_{n+1}\subset E\backslash \bigcup_{j=1}^{n}F_j,\quad \mu\left(E\backslash \bigcup_{j=1}^{n}F_j\right)<\frac{1}{n}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ なるものが取れる。このとき $(F_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は非交叉列であり$(*)$ を満たす。

定理42.7(Bochner可測関数のBochner可測単関数による近似)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を $\sigma$-有限測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間、$f:X\rightarrow B$ をBochner可測関数とする。このときBochner可測単関数の列 $(s_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で次の条件を満たすものが存在する。

  • $(1)$ 任意の$n\in\mathbb{N}$、任意の $x\in X$ に対し $\lVert s_n(x)\rVert\leq \lVert f(x)\rVert$.
  • $(2)$ $\mu$ に関してa.e. $x\in X$ で $\lim_{n\rightarrow\infty}s_n(x)=f(x)$.

証明

$\sigma$-有限性と補題42.6より $\mathfrak{M}$ の非交叉列 $(E_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で各 $n\in\mathbb{N}$ について $f$ が $E_n$ 上準可測単関数的であり $N:=X\backslash \bigcup_{n\in\mathbb{N}}E_n$ が $\mu$-零集合であるようなものが取れる。また補題42.2より各 $n\in\mathbb{N}$ に対しBochner可測単関数の列 $(s_{n,m})_{m\in\mathbb{N}}$ で、 $$ \lVert f(x)-s_{n,m}(x)\rVert<\frac{1}{m},\quad \lVert s_{n,m}(x)\rVert\leq\lVert f(x)\rVert\quad(\forall x\in E_n),\quad s_{n,m}(x)=0\quad(\forall x\in X\backslash E_n) $$ を満たすものが取れる。そこで、 $$ s_m:=\sum_{n=1}^{m}s_{n,m}\quad(\forall m\in\mathbb{N}) $$ としてBochner可測単関数の列 $(s_m)_{m\in\mathbb{N}}$ を定義する。このとき各 $s_m$ は $N$ 上で $0$ であり、任意の$x\in X\backslash N=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}E_n$ に対し $x\in E_{n_0}$ なる $n_0\in\mathbb{N}$ を取れば、$(E_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の非交叉性より、 $$ \lVert s_m(x)\rVert=0\quad(m<n_0),\quad \lVert s_m(x)\rVert=\lVert s_{n_0,m}(x)\rVert\leq\lVert f(x)\rVert\quad(\forall m\geq n_0), $$ $$ \lVert f(x)-s_m(x)\rVert=\lVert f(x)-s_{n_0,m}(x)\rVert<\frac{1}{m}\quad(\forall m\geq n_0) $$ となる。よって $(s_m)_{m\in\mathbb{N}}$ は $(1),(2)$ を満たす。

43. Banach空間値 $L^p$ 空間

定義43.1(a.e.で等しいBochner可測関数を同一視したもの全体)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。$(X,\mathfrak{M})$ 上の $B$ 値Bochner可測関数全体 $\mathcal{L}(X,\mathfrak{M}; B)$ における二項関係 $\sim$ を次のように定義する。 $$ f\sim g\quad\Leftrightarrow\quad f(x)=g(x)\quad(\mu\text{-a.e. }x\in X) . $$ このとき $\sim$ は同値関係である。そこでこの同値関係による商集合を、 $$ L(X,\mathfrak{M},\mu;B):=\mathcal{L}(X,\mathfrak{M};B)/\sim $$ と表し、商写像を、 $$ \mathcal{L}(X,\mathfrak{M};B)\ni f\mapsto [f]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B) $$ と表す。$\mathcal{L}(X,\mathfrak{M};B)$ は各点ごとの和、スカラー倍で閉じている。これに対し任意の $[f],[g]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ と任意の $\alpha\in \mathbb{F}$ に対し、 $$ [f]+[g]:=[f+g],\quad \alpha[f]:=[\alpha f] $$ として $L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ における和、スカラー倍を定義する。これはwell-definedである。そしてこの和とスカラー倍で $L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ は $\mathbb{F}$ 上の線形空間をなす。

定義43.2(Banach空間値 $L^p$空間($p\in[1,\infty)$))

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間、$p\in [1,\infty)$ とする。任意の $f\in \mathcal{L}(X,\mathfrak{M};B)$ に対し、 $$ \lVert f\rVert_{\mu,p}:=\left(\int_{X}\lVert f(x)\rVert^pd\mu(x)\right)^{\frac{1}{p}}\in [0,\infty] $$ とおく。これを $f$ の $\mu$ に関する $L^p$ノルムと言う。 $[f],[g]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ が $[f]=[g]$(つまり $\mu$-a.e. $x\in X$ で $f(x)=g(x)$) ならば、$\lVert f\rVert_{\mu,p}=\lVert g\rVert_{\mu,p}$ であるから、任意の $[f]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に対し $[f]$ の $L^p$ ノルムを、 $$ \lVert [f]\rVert_{\mu,p}:=\lVert f\rVert_{\mu,p} $$ と定義する。そして、 $$ \mathcal{L}^p(X,\mathfrak{M},\mu;B):=\{f\in \mathcal{L}(X,\mathfrak{M};B):\lVert f\rVert_{\mu,p}<\infty\}, $$ $$ L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B):=\{[f]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B):\lVert [f]\rVert_{\mu,p}<\infty\} $$ とおく。Minkowskiの不等式より $\mathcal{L}^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ と $L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ は $\mathbb{F}$ 上の線形空間であり、$\mathcal{L}^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ 上の $L^p$ ノルムはセミノルム、$L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ 上の $L^p$ ノルムはノルムである。$L^p$ ノルムによる $\mathbb{F}$ 上のノルム空間 $L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ を $(X,\mathfrak{M},\mu)$ 上のBanach空間 $B$ 値 $L^p$ 空間と言う。次の定理43.4で見るようにBanach空間値 $L^p$ 空間はBanach空間である。

定義43.3(Banach空間値 $L^\infty$ 空間)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。任意の $f\in \mathcal{L}(X,\mathfrak{M})$ に対し、 $$ \lVert f\rVert_{\mu,\infty}:=\inf\{\alpha\in[0,\infty):\mu( (\alpha<\lVert f(\cdot)\rVert) )=0\}\quad\quad(*) $$ とおく。(ただし右辺の集合が空集合ならば右辺は $\infty$ とする。)これを $f$ の $\mu$ に関する $L^\infty$ノルムと言う。 $[f],[g]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ が $[f]=[g]$(つまり $\mu$-a.e. $x\in X$ で $f(x)=g(x)$) ならば、$\lVert f\rVert_{\mu,\infty}=\lVert g\rVert_{\mu,p}$ であるから、任意の $[f]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に対し $[f]$ の $L^\infty$ ノルムを、 $$ \lVert [f]\rVert_{\mu,\infty}:=\lVert f\rVert_{\mu,\infty} $$ と定義する。 そして、 $$ \mathcal{L}^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B):=\{f\in \mathcal{L}(X,\mathfrak{M};B):\lVert f\rVert_{\mu,\infty}<\infty\}, $$ $$ L^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B):=\{[f]\in L(X,\mathfrak{M},\mu;B):\lVert [f]\rVert_{\mu,\infty}<\infty\} $$ とおく。 任意の $f\in \mathcal{L}(X,\mathfrak{M})$ に対し、 $$ \left(\lVert f\rVert_{\mu,\infty}<\lvert f\rvert\right)=\bigcup_{n\in \mathbb{N}}\left(\lVert f\rVert_{\mu,\infty}+\frac{1}{n}<\lvert f\rvert\right) $$ であり、$(*)$ より $\mu( (\lVert f\rVert_{\mu,\infty}+\frac{1}{n}<\lvert f\rvert) )=0$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ であるから測度の $\sigma$-劣加法性より、 $$ \mu( (\lVert f\rVert_{\mu,\infty}<\lvert f\rvert) )=0\quad\quad(**) $$ である。これより $\mathcal{L}^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ と $L^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ は $\mathbb{F}$ 上の線形空間であり、$\mathcal{L}^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ 上の $L^\infty$ ノルムはセミノルム、$L^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ 上の $L^\infty$ ノルムはノルムである。$L^\infty$ ノルムによる $\mathbb{F}$ 上のノルム空間 $L^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ を $(X,\mathfrak{M},\mu)$ 上のBanach空間 $B$ 値 $L^\infty$ 空間と言う。次の定理43.4で見るようにBanach空間値 $L^\infty$ 空間はBanach空間である。

定理43.4(Banach空間値 $L^p$ 空間($p\in[1,\infty]$)はBanach空間)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。このとき任意の $p\in [1,\infty]$ に対し $B$ 値 $L^p$ 空間 $L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ は $\mathbb{F}$ 上のBanach空間である。

証明

$([f_n])_{n\in \mathbb{N}}$ を $L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ のCauchy列とし、これが収束することを示す。

  • $(1)$ $p\in[1,\infty)$ の場合。$([f_n])_{n\in \mathbb{N}}$ はCauchy列であるので部分列 $([f_{k(n)}])_{n\in \mathbb{N}}$ で、 $$ \lVert f_{k(n+1)}-f_{k(n)}\rVert_{\mu,p}<\frac{1}{2^n}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ なるものが取れる。これに対し、 $$ g_N(x):=\sum_{n=1}^{N}\lVert f_{k(n+1)}(x)-f_{k(n)}(x)\rVert\quad(\forall x\in X,\forall N\in \mathbb{N}) $$ とおくと、Minkowskiの不等式より、 $$ \lVert g_N\rVert_{\mu,p}\leq\sum_{n=1}^{N}\lVert f_{k(n+1)}-f_{k(n)}\rVert_{\mu,p}\leq1\quad(\forall N\in \mathbb{N}) $$ である。よって、 $$ g(x):=\sup_{N\in \mathbb{N}}g_N(x)=\sum_{n=1}^{\infty}\lVert f_{k(n+1)}(x)-f_{k(n)}(x)\rVert\quad(\forall x\in X) $$ とおくと、単調収束定理より、 $$ \int_{X}g(x)^pd\mu(x)=\sup_{N\in \mathbb{N}}\int_{X}g_N(x)^pd\mu(x) =\sup_{N\in\mathbb{N}}\lVert g_N\rVert_{\mu,p}^p\leq 1<\infty $$ であるから、命題9.4より、$\mu$-零集合 $N$ が存在し、 $$ \sum_{n=1}^{\infty}\lVert f_{k(n+1)}(x)-f_{k(n)}(x)\rVert<\infty\quad(\forall x\in X\backslash N) $$ が成り立つ。これより任意の $x\in X\backslash N$ に対し、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}f_{k(n)}(x)=f_{k(1)}(x)+\sum_{n=1}^{\infty}(f_{k(n+1)}(x)-f_{k(n)}(x))\in B $$ が存在する。そこで、 $$ f(x):=\lim_{n\rightarrow\infty}f_{k(n)}(x)\chi_{X\backslash N}(x)\quad(\forall x\in X) $$ としてBochner可測関数 $f:X\rightarrow B$ を定義する。今、任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し $n_0\in \mathbb{N}$ で、 $$ \lVert f_n-f_m\rVert_{\mu,p}\leq\epsilon\quad(\forall n,m\geq n_0) $$ なるものを取る。任意の $m\geq n_0$ に対し、 $$ \lVert f(x)-f_m(x)\rVert^p=\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f_{k(n)}(x)-f_m(x)\rVert^p\quad(\forall x\in X\backslash N) $$ であるから、$N$ が $\mu$-零集合であることとFatouの補題より、 $$ \begin{aligned} \lVert f-f_m\rVert_{\mu,p}^p&\leq \sup_{n\in \mathbb{N}}\inf_{j\geq n}\int_{X}\lVert f_{k(j)}(x)-f_m(x)\rVert^pd\mu(x)\leq \inf_{n\in \mathbb{N}}\sup_{j\geq n}\int_{X}\lVert f_{k(j)}(x)-f_m(x)\rVert^pd\mu(x)\\ &\leq \sup_{n\geq n_0}\int_{X}\lVert f_{k(n)}(x)-f_m(x)\rVert^pd\mu(x) =\sup_{n\geq n_0}\lVert f_{k(n)}-f_m\rVert_{\mu,p}^p\leq\epsilon^p \end{aligned} $$ である。よって $f=(f-f_m)+f_m\in \mathcal{L}^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ であり、 $$ \lVert f-f_m\rVert_{\mu,p}\leq\epsilon\quad(\forall m\geq n_0) $$ であるから、$([f_n])_{n\in \mathbb{N}}$ は $[f]\in L^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に収束する。
  • $(2)$ $p=\infty$ の場合。

$$ N:=\bigcup_{n,m\in\mathbb{N}}(\lVert f_n-f_m\rVert_{\mu,\infty}<\lvert f_n-f_m\rvert) $$ は $\mu$-零集合の可算合併なので $\mu$-零集合である。 $$ \lVert f_n(x)-f_m(x)\rVert\leq \lVert f_n-f_m\rVert_{\mu,\infty}\quad(\forall x\in X\backslash N,\forall n,m\in\mathbb{N}) $$ より $(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $X\backslash N$ 上で一様Cauchy条件を満たすので一様収束する。*2そこで、 $$ f(x):=\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(x)\chi_{X\backslash N}(x)\quad(\forall x\in X) $$ としてBochner可測関数 $f:X\rightarrow B$ を定義する。 $(f_n)_{n\in \mathbb{N}}$ は $X\backslash N$ 上で $f$ に一様収束するので、任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し $n_0\in \mathbb{N}$ が存在し、 $$ X\backslash N\subset (\lVert f(\cdot)-f_n(\cdot)\rVert\leq \epsilon)\quad(\forall n\geq n_0) $$ が成り立つ。よって、 $$ \mu( (\epsilon< \lVert f(\cdot)-f_n(\cdot)\rVert) )\leq \mu(N)=0\quad(\forall n\geq n_0) $$ であるから、$f=(f-f_n)+f_n\in \mathcal{L}^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ であり、 $$ \lVert f-f_n\rVert_{\mu,\infty}\leq\epsilon\quad(\forall n\geq n_0) $$ である。よって $([f_n])_{n\in \mathbb{N}}$ は $[f]\in L^\infty(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に収束する。

定義43.5(Hilbert空間値 $L^2$ 空間)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を測度空間, $\mathcal{H}$ を $\mathbb{F}$ 上のHilbert空間とする. 任意の$[f],[g]\in L^2(X,\mathfrak{M},\mu;\mathcal{H})$ に対しHölderの不等式より、 $$ \int_{X}\lvert(f(x)\mid g(x))\rvert d\mu(x)\leq\int_{X}\lVert f(x)\rVert\lVert g(x)\rVert d\mu(x)\leq\lVert [f]\rVert_2\lVert [g]\rVert_2 $$ *3であるから、 $$ ([f]\mid [g])_{\mu,2}:=\int_{X}(f(x)\mid g(x))d\mu(x)\in \mathbb{F}\quad(\forall [f],[g]\in L^2(X,\mathfrak{M},\mu;\mathcal{H}) ) $$ が定義できる。このとき$(\cdot\mid\cdot)_{\mu,2}$ は $L^2(X,\mathfrak{M},\mu;\mathcal{H})$ 上の内積であり、この内積が誘導するノルムは $L^2$ ノルムなので $L^2(X,\mathfrak{M},\mu;\mathcal{H})$ はこの内積によりHilbert空間をなす。 この内積$(\cdot\mid \cdot)_{\mu,2}$ を $L^2(X,\mathfrak{M},\mu;\mathcal{H})$ 上の $L^2$ 内積と言う。

命題43.6(Banach空間値 $L^p$ 関数のBochner可測単関数による近似)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を $\sigma$-有限測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間、$p\in [1,\infty)$ とする。任意の $f\in \mathcal{L}^p(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に対しBochner可測単関数の列 $(s_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で次の条件を満たすものが取れる。

  • $(1)$ 任意の$n\in\mathbb{N}$、任意の $x\in X$ に対し $\lVert s_n(x)\rVert\leq \lVert f(x)\rVert$.
  • $(2)$ $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f-s_n\rVert_{\mu,p}=0$.

証明

定理42.7よりBochner可測単関数の列 $(s_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で $(1)$ と、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f(x)-s_n(x)\rVert=0\quad(\mu\text{- a.e. } x\in X ) $$ を満たすものが取れる。 $$ \lVert f(x)-s_n(x)\rVert^p\leq 2^p\lVert f(x)\rVert^p\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall x\in X) $$ であるからLebesgue優収束定理より $(s_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $(2)$ を満たす。

44. Bochner積分の定義

定義44.1(Bochner積分)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を $\sigma$-有限測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とする。任意の $f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に対し $I(f)\in B^{**}$ を、 $$ I(f)(\varphi):=\int_{X}\varphi(f(x))d\mu(x)\quad(\forall \varphi\in B^*) $$ と定義する。このとき $\lVert I(f)\rVert\leq\lVert f\rVert_{\mu,1}$ である。命題43.6よりBochner可測単関数の列 $(s_n)_{n\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f-s_n\rVert_{\mu,1}=0$ なるものが取れ、 $$ \lVert I(f)-I(s_n)\rVert=\lVert I(f-s_n)\rVert\leq\lVert f-s_n\rVert_{\mu,1}\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) $$ となる。今、$B$ の $B^{**}$ への自然な埋め込み $$ \iota:B\rightarrow B^{**},\quad \iota(b)(\varphi)=\varphi(b)\quad(\forall b\in B,\forall \varphi\in B^*) $$ を考える。このとき明らかに $I(s_n)\in \iota(B)$ $(\forall n\in\mathbb{N})$ である。そして $\iota$ はノルムを保存する(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理の12を参照)ので、$\iota(B)\subset B^{**}$ は閉部分空間であるから、 $$ I(f)=\lim_{n\rightarrow\infty}I(s_n)\in \iota(B) $$ である。よって、任意の $f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に対し、$I(f)=\iota(b_f)$ なる $b_f \in B$ が一意的に存在する。この $b_f \in B$ を $$ \int_{X}f(x)d\mu(x)\in B $$ と表し、$f \in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ の $\mu$ に関するBochner積分と呼ぶ。このとき、 $$ \varphi\left(\int_{X}f(x)d\mu(x)\right)=\iota(b_f)(\varphi) = I(f)(\varphi) = \int_{X}\varphi(f(x))d\mu(x)\quad(\forall \varphi\in B^*) $$ が成り立つ。$I$ と $\iota$ の線形性より $f \in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ に $f$ の $\mu$ に関するBochner積分を対応させる写像は線形汎関数である。なお、Banach空間 $\mathbb{C}$ に値を取る関数に対しては、Bochner積分とLebesgue積分は一致する。実際、$\mathbb{C}$ は可分であるからBochner可測性と通常の可測性は同値であり、 $\mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;\mathbb{C}) = \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ となる。そして、 $f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ に対して $f$ の $\mu$ に関するBochner積分を $b_f$ で表すと、恒等写像 $\mathrm{id} \in \mathbb{C}^*$ に対し、 $$ \int_{X} f(x) d\mu(x) = I(f)(\mathrm{id}) = \iota(b_f)(\mathrm{id}) = b_f $$ である。

命題44.2(Bochner積分の基本的性質)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を $\sigma$-有限測度空間、$B,C$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間、$f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ とする。このとき、

  • $(1)$  $$ \left\lVert \int_{X}f(x)d\mu(x)\right\rVert\leq \int_{X}\lVert f(x)\rVert d\mu(x)=\lVert f\rVert_{\mu,1} $$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の有界線形作用素 $T:B\rightarrow C$ に対し $T\circ f:X\ni x\mapsto T(f(x))\in C$ は $\mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;C)$ に属し、 $$ T\left(\int_{X}f(x)d\mu(x)\right)=\int_{X}T(f(x))d\mu(x)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。
  • $(3)$ $$ \int_{X}f(x)d\mu(x)\in \overline{\text{span}(f(X))} $$ ($\text{span}(f(X))$ は $f(X)$ の線形包)が成り立つ。

証明

  • $(1)$ 定義44.1を参照。
  • $(2)$ $T$ は有界線型作用素であるから $T(f(X))$ は可分である。また任意の $\varphi\in C^*$ に対し $\varphi\circ T\in B^*$ であるから $\varphi\circ(T\circ f)=(\varphi\circ T)\circ f:X\rightarrow \mathbb{F}$ は可測関数である。よって $T\circ f:X\rightarrow C$ はBochner可測である。そして $\lVert T(f(x))\rVert\leq\lVert T\rVert\lVert f(x)\rVert$ $(\forall x\in X)$ であるから $T\circ f\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;C)$ であり、任意の $\varphi\in C^*$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\varphi\left(T\left(\int_{X}f(x)d\mu(x)\right)\right) =(\varphi\circ T)\left(\int_{X}f(x)d\mu(x)\right) =\int_{X}(\varphi\circ T)(f(x))d\mu(x)\\ &=\int_{X}\varphi(T(f(x)))d\mu(x) =\varphi\left(\int_{X}T(f(x))d\mu(x)\right) \end{aligned} $$ であるから $(*)$ が成り立つ。
  • $(3)$ もし $(**)$ が成り立たないならばHahn-Banachの分離定理(位相線形空間3:Hahn-Banachの定理とKrein-Milmanの端点定理定理13.3)より $\varphi\in B^*$ で、 $$ \varphi\left(\int_{X}f(x)d\mu(x)\right)\neq0,\quad \varphi(b)=0\quad(\forall b\in \overline{\text{span}(f(X))}) $$ を満たすものが存在する。これは、 $$ \int_{X}\varphi(f(x) )d\mu(x)\neq0,\quad \varphi(f(x) )=0\quad(\forall x\in X) $$ を意味するので矛盾する。

命題44.3(Bochner積分に関するLebesgue優収束定理)

$(X,\mathfrak{M},\mu)$ を $\sigma$-有限測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とし、$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を $X\rightarrow B$ のBochner可測関数の列とする。次が成り立つとする。

  • $(1)$ 任意の$x\in X$ に対し $f(x):=\lim_{n\rightarrow\infty}f_n(x)\in B$ が存在する。
  • $(2)$ 非負値の $h\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu)$ で $\lVert f_n(x)\rVert\leq h(x)$ $(\forall n\in\mathbb{N},\forall x\in X)$ なるものが存在する。

このとき$f,f_n\in \mathcal{L}^1(X,\mathfrak{M},\mu;B)$ $(\forall n\in\mathbb{N})$ であり、 $$ \int_{X}f(x)d\mu(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{X}f_n(x)d\mu(x) $$ が成り立つ。

証明

$$ \lVert f(x)-f_n(x)\rVert\leq 2h(x)\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall x\in X),\quad \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f(x)-f_n(x)\rVert=0 $$ であるからLebesgue優収束定理より $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f-f_n\rVert_{\mu,1}=0$ である。このこととBochner積分の線形性および命題44.2の $(1)$ による。

命題44.4(Bochner積分に関するFubiniの定理)

$(X_j,\mathfrak{M}_j,\mu)_j$ $(j=1,2)$ をそれぞれ $\sigma$-有限測度空間、$B$ を $\mathbb{F}$ 上のBanach空間とし、$f\in \mathcal{L}^1(X_1\times X_2,\mathfrak{M}_1\otimes\mathfrak{M}_2,\mu_1\otimes\mu_2;B)$ とする。 $j\neq k$、$j,k\in\{1,2\}$ として、 $$ N_j:=\left\{x_j\in X_j:\int_{X_k}\lVert f(x_1,x_2)\rVert d\mu_k(x_k)=\infty\right\} $$ とおき、$F_j:X_j\rightarrow B$ を、 $$ F_j(x_j):=\left\{\begin{array}{cl} \int_{X_k}f(x_1,x_2)d\mu_k(x_k)&(x_j\in X_j\backslash N_j)\\0&(x_j\in N_j)\end{array}\right. $$ として定義する。このとき $N_k$ は $\mu_k$-零集合であり、$F_j\in \mathcal{L}^1(X_j,\mathfrak{M}_j,\mu_j;B)$ である。そして、 $$ \int_{X_j}F_j(x_j)d\mu_j(x_j)=\int_{X_1\times X_2}f(x_1,x_2)d(\mu_1\otimes\mu_2)(x_1,x_2) $$ が成り立つ。

証明

$N_j$ が可測であることは補題14.3により、$\mu_j(N_j)=0$ であることは命題9.4による。命題44.2の $(3)$ より、 $$ F_j(X_j)\subset \overline{\text{span}(f(X_1\times X_2))} $$ であり、右辺は可分であるから $F_j(X_j)$ も可分である(注意41.2)。 後は任意の $\varphi\in B^*$ を取り $\varphi\circ f:X_1\times X_2\rightarrow\mathbb{F}$ に対してFubiniの定理(定理14.5)を適用すればよい。



*1 ただし、$E\in \mathfrak{M}$ が $\mu$-有限とは $\mu(E)<\infty$ であることを言う。
*2 距離空間の位相の基本的性質の8を参照。
*3 $(f(x)\mid g(x) )=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^{3}i^k\lVert i^kf(x)+g(x)\rVert^2$ より $X\ni x\mapsto (f(x)\mid g(x) )\in \mathbb{F}$ は可測関数である。

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Last-modified: 2020-10-27 (火) 14:28:23 (1d)