超関数、Fourier変換、Sobolev空間

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本稿においては、実解析の基礎となる超関数、Fourier変換、Sobolev空間について述べる。予備知識としては、微積分、測度論、位相線形空間論の基本的な知識を仮定する。これらの知識については例えば、Euclid空間における微積分1入門テキスト「測度と積分」入門テキスト「位相線形空間」ベクトル解析などを参照されたい。
$\mathbb{N}=\{1,2,3,\ldots\}$、$\mathbb{Z}_+:=\{0,1,2,\ldots\}$ とする。
超関数とFourier変換、Sobolev空間は本項の分割版です。

1. 多重指数、Leibnizルール

定義1.1(多重指数、多重二項定理)

$N\in \mathbb{N}$ に対し $\mathbb{Z}_+^N$の元を $N$ 次の多重指数と呼ぶことがある。多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lvert\alpha\rvert:=\alpha_1+\ldots+\alpha_N\in \mathbb{Z}_+ $$ を $\alpha$ の長さと言う。
多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と $x=(x_1,\ldots,x_N)\in \mathbb{C}^N$ に対し、 $$ x^{\alpha}:=x_1^{\alpha_1}\ldots x_N^{\alpha_N}\in\mathbb{C} $$ と定義する。また $\mathbb{C}^N$ 値関数 $f=(f_1,\ldots, f_N): X\ni p\mapsto (f_1(p),\ldots,f_N(p))\in \mathbb{C}^N$ と多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $f^{\alpha}:X\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ f^{\alpha}(x):=f_1^{\alpha_1}(x)\ldots f_N^{\alpha_N}(x)\quad(\forall x\in X) $$ と定義する。
開集合 $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ 上で定義された $C^n$ 級関数 $f:\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ と長さが $n$ 以下の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}f:=\partial_1^{\alpha_1}\ldots\partial_N^{\alpha_N}f $$ と定義する*1
多重指数 $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し多重指数 $\alpha+\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ を、 $$ \alpha+\beta:=(\alpha_1+\beta_1,\ldots,\alpha_N+\beta_N) $$ と定義し、$\beta\leq \alpha$ なる多重指数 $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し多重指数 $\alpha-\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ を、 $$ \alpha-\beta:=(\alpha_1-\beta_1,\ldots,\alpha_N-\beta_N) $$ と定義する。
多重指数 $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ で $\beta\leq\alpha$ なるものに対し、 $$ \begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}:=\begin{pmatrix}\alpha_1\\\beta_1\end{pmatrix}\ldots\begin{pmatrix}\alpha_N\\\beta_N\end{pmatrix} $$ を多重二項係数と言う。ただし、 $$ \begin{pmatrix}\alpha_k\\\beta_k\end{pmatrix}=\frac{\alpha_k!}{\beta_k!(\alpha_k-\beta_k)!}\quad(k=1,\ldots,N) $$ である。

注意1.2(多重二項定理)

任意の$x,y\in \mathbb{C}^N$ と任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ (x+y)^\alpha=(x_1+y_1)^{\alpha_1}\ldots(x_N+y_N)^{\alpha_N}= \sum_{\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}x^{\beta}y^{\alpha-\beta} $$ である。

命題1.3(Leibnizルール)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$f,g:\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を $C^n$ 級関数とする。このとき長さが $n$ の任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(fg)=\sum_{\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\partial^{\beta}f\partial^{\alpha-\beta}g\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

  • $(1)$ $N=1$の場合。$(*)$ は、 $$ (fg)^{(n)}=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n-k)}\quad\quad(**) $$ である。これを $n$ に関する帰納法で示す。$n=1$ ならば明らかに成り立つ。 $(**)$ がある $n\in\mathbb{N}$ に対して成り立つとして $n+1$ の場合も成り立つことを示す。 $$ \begin{aligned} (fg)^{(n+1)}&=\left(\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n-k)}\right)' =\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}f^{(k+1)}g^{(n-k)}+ \sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n+1-k)}\\ &=\sum_{k=1}^{n+1}\begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n+1-k)}+\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n+1-k)}\\ &=\sum_{k=1}^{n}\left(\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}\right)f^{(k)}g^{(n+1-k)}+f^{(n+1)}g^{(0)}+f^{(0)}g^{(n+1)} \end{aligned} $$ である。ここで $1\leq k\leq n$ なる $n,k\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ \begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} (fg)^{(n+1)}&=\sum_{k=1}^{n}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n+1-k)}+f^{(n+1)}g^{(0)}+f^{(0)}g^{(n+1)}\\ &=\sum_{k=0}^{n+1}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}f^{(k)}g^{(n+1-k)} \end{aligned} $$ である。よって $(**)$ は $n+1$ の場合も成り立つ。
  • $(2)$ 一般の場合。$(1)$ を繰り返し用いれば、 $$ \begin{aligned} \partial^{\alpha}(fg)&=\partial_1^{\alpha_1}\ldots\partial_N^{\alpha_N}(fg) =\sum_{\beta_N\leq\alpha_N}\begin{pmatrix}\alpha_N\\\beta_N\end{pmatrix}\partial_{1}^{\alpha_1}\ldots\partial_{N-1}^{\alpha_{N-1}}\left(\left(\partial_N^{\beta_N}f\right)\left(\partial_N^{\alpha_N-\beta_N}g\right)\right)\\ &=\sum_{\substack{\beta_N\leq\alpha_N,\\\beta_{N-1}\leq\alpha_{N-1}}}\begin{pmatrix}\alpha_{N-1}\\\beta_{N-1}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\alpha_N\\\beta_N\end{pmatrix} \partial_{1}^{\alpha_1}\ldots\partial_{N-2}^{\alpha_{N-2}}\left(\left(\partial_{N-1}^{\beta_{N-1}}\partial_N^{\beta_N}f\right)\left(\partial_{N-1}^{\alpha_{N-1}-\beta_{N-1}}\partial_N^{\alpha_N-\beta_N}g\right)\right)\\ &=\ldots=\sum_{\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\partial^{\beta}f\partial^{\alpha-\beta}g \end{aligned} $$ となる。

2. 距離空間の部分集合の間の距離に関する基本事項

定義2.1(距離空間の部分集合の間の距離)

$(X,d)$ を距離空間とする。任意の $E,F\subset X$ に対し $E$ と $F$ の距離を、 $$ d(E,F):=\inf\{d(x,y):x\in E,y\in F\} $$ と定義する。ただし $E, F$ のうちいずれかが空ならば $d(E,F)=\infty$ とする。また任意の $x\in X$ と任意の $E\subset X$ に対し、 $$ d(x,E):=d(\{x\},E) $$ と定義する。

命題2.2(距離空間の部分集合の間の距離に関する基本事項)

$(X,d)$ を距離空間とする。次が成り立つ。

  • $(1)$ 任意の $x\in X$ と任意の $E\subset X$ に対し $d(x,E)=0$ であることと $x\in \overline{E}$ であることは同値である。
  • $(2)$ 任意の $E\subset X$ と任意の $r\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \{x\in X:d(x,E)<r\},\quad \{x\in X:d(x,E)>r\} $$ はそれぞれ $X$ の開集合である。
  • $(3)$ 任意の $E,F\subset X$ に対し $d(E,F)=d(\overline{E},F)$ である。
  • $(4)$ $K\subset X$ を空でないコンパクト集合、$V\subset X$ を開集合とし、$K\subset V$ とすると $d(K,X\backslash V)>0$ である。

証明

  • $(1)$  $$ d(x,E)=0\quad\Leftrightarrow\quad B(x,\epsilon)\cap E\neq\emptyset\quad(\forall \epsilon\in(0,\infty))\quad\Leftrightarrow\quad x\in\overline{E}. $$
  • $(2)$ 任意の $x\in \{x\in X:d(x,E)<r\}$ を取る。$d(y,x)<r-d(x,E)$ なる任意の $y\in X$ に対し、 $$ d(y,z)\leq d(y,x)+d(x,z)\quad(\forall z\in E) $$ であるから、 $$ d(y,E)\leq d(y,x)+d(x,E)<r-d(x,E)+d(x,E)=r $$ である。よって $B(x,r-d(x,E))\subset\{x\in X:d(x,E)<r\}$ であるから $\{x\in X:d(x,E)<r\}$ は開集合である。
    任意の $x\in \{x\in X:d(x,E)>r\}$を取る。$d(y,x)<d(x,E)-r$ なる任意の $y\in X$ に対し、 $$ d(y,z)\geq d(x,z)-d(y,x)\quad(\forall z\in E) $$ であるから、 $$ d(y,E)\geq d(x,E)-d(y,x)>d(x,E)-(d(x,E)-r)=r $$ である。よって $B(x,d(x,E)-r)\subset\{x\in X:d(x,E)>r\}$ であるから $\{x\in X:d(x,E)>r\}$ は開集合である。
  • $(3)$ 任意の $x\in \overline{E}$ と任意の $y\in F$ を取り、$x$ に収束する $E$ の列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を取ると、 $$ d(x,y)=\lim_{n\rightarrow\infty}d(x_n,y)\geq d(E,F) $$ である。よって $d(\overline{E},F)\geq d(E,F)$ である。逆の不等式は自明である。
  • $(4)$ $(2)$ より、 $$ U_n:=\left\{x\in X:d(x,X\backslash V)>\frac{1}{n}\right\}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ はそれぞれ開集合であり、$U_n\subset U_{n+1}$ $(\forall n\in\mathbb{N})$ である。また $K\subset V$ であり $X\backslash V$ は閉集合であるから $(1)$ より、 $$ K\subset \{x\in X:d(x,X\backslash V)>0\}=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}U_n $$ である。よって $K$ のコンパクト性より $K\subset U_{m}$ なる $m\in\mathbb{N}$ が取れ、 $$ d(x,y)>\frac{1}{m}\quad(\forall x\in K,\forall y\in X\backslash V) $$ であるので、 $$ d(K,X\backslash V)\geq \frac{1}{m}>0 $$ である。

3. Fréchet空間 $\mathcal{E}(\Omega)$ とFréchet空間 $D_K(\Omega)$

命題3.1

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ \Omega_n:=\left\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert<n,\text{ }d(x,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)>\frac{1}{n}\right\} $$ とおく。このとき $(\Omega_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $\Omega$ の開集合の単調増加列であり、 $$ \Omega=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\Omega_n $$ が成り立つ。また任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ \overline{\Omega_n}\subset\left\{x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n, \text{ } d(x,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq\frac{1}{n}\right\}\subset \Omega_{n+1} $$ が成り立ち $\overline{\Omega_n}$ はコンパクトである。

証明

命題2.2の $(1),(2)$ による。

定義3.2(コンパクト一様収束)

$X$ を位相空間、$Y$を距離空間とする。$X\rightarrow Y$ の写像からなるネット*2 $(f_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が写像 $f:X\rightarrow Y$ にコンパクト一様収束するとは、任意のコンパクト集合 $K\subset X$ に対し $(f_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が $K$ 上で $f$ に一様収束することを言う。

定義3.3($\mathcal{E}(\Omega)$ )

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。命題3.2における $\Omega$ の開集合の単調増加列 $(\Omega_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を考える。$\Omega$ 上の $C^\infty$ 級複素数値関数全体に各点ごとの演算を入れた $\mathbb{C}$ 上の線形空間 $C^\infty(\Omega)$ に対し $C^\infty(\Omega)$ 上のセミノルムの列$(p_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を、 $$ p_n:C^\infty(\Omega)\ni f\mapsto \underset{\lvert\alpha\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{x\in \overline{\Omega_n}}\lvert\partial^{\alpha}f(x)\rvert\in [0,\infty)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ として定義する。$\Omega=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\Omega_n$ であることから $\{p_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ は $C^\infty(\Omega)$ 上のセミノルムの分離族である。そこで $C^\infty(\Omega)$ に $\{p_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ から誘導されるセミノルム位相を入れたセミノルム空間を $\mathcal{E}(\Omega)$ とする(セミノルム空間については(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相)の8を参照)。次の命題3.4より $\mathcal{E}(\Omega)$ はFréchet空間(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理)であり、 $\mathcal{E}(\Omega)$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f\in \mathcal{E}(\Omega)$ に収束することは、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\partial^{\alpha}f$ にコンパクト一様収束することと同値である。

命題3.4($\mathcal{E}(\Omega)$ はFréchet空間)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。定義3.3におけるセミノルム空間 $\mathcal{E}(\Omega)$ について次が成り立つ。

  • $(1)$ $\mathcal{E}(\Omega)$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f\in \mathcal{E}(\Omega)$ に収束することは、任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\partial^{\alpha}f$ にコンパクト一様収束(定義3.2)することと同値である。

証明

  • $(1)$ 任意の$\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\partial^{\alpha}f$ にコンパクト一様収束するとする。任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し $\overline{\Omega_n}$ はコンパクトであるから、 $$ p_n(f_i-f)=\underset{\lvert\alpha\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{x\in \overline{\Omega_n}}\lvert\partial^{\alpha}f_i(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。よってセミノルム位相による収束の特徴付け(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題8.6の$(1)$)よりセミノルム空間 $\mathcal{E}(\Omega)$ の位相で $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f$ に収束する。
    逆にセミノルム空間 $\mathcal{E}(\Omega)$ の位相で $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f$ に収束するとする。命題3.1より任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意のコンパクト集合 $K\subset \Omega$ に対し $K\subset \Omega_n$ かつ $\lvert\alpha\rvert\leq n$ を満たす $n\in\mathbb{N}$ が取れる。セミノルム位相による収束の特徴付け(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題8.6の$(1)$)より $\lim_{i\rightarrow\infty}p_n(f_i-f)=0$ であるから、 $$ \sup_{x\in K}\lvert\partial^{\alpha}f_i(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert \leq \underset{\lvert\beta\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{x\in \overline{\Omega_n}}\lvert\partial^{\beta}f_i(x)-\partial^{\beta}f(x)\rvert=p_n(f_i-f)\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。よって任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\partial^{\alpha}f$ にコンパクト一様収束する。
  • $(2)$ $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を $\mathcal{E}(\Omega)$ のCauchy列(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定義15.1)とする。このとき任意のコンパクト集合 $K\subset \Omega$ と任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $K\subset \Omega_n$ かつ $\lvert\alpha\rvert\leq n$ を満たす $n\in \mathbb{N}$ を取れば、 $$ \sup_{x\in K}\lvert\partial^{\alpha}f_i(x)-\partial^{\alpha}f_j(x)\rvert\leq p_n(f_i-f_j)\quad(\forall i,j\in \mathbb{N}) $$ であるから $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $K$ 上で一様Cauchy条件を満たすので $K$ 上で一様収束する。連続関数列の一様収束極限は連続関数である(距離空間の位相の基本的性質8を参照)ことと $K\subset \Omega$ の任意性から任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し連続関数 $f_{\alpha}\in C(\Omega)$ で、$(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f_{\alpha}$ にコンパクト一様収束するようなものが定まる。$f:=f_0\in C(\Omega)$とおく。今、$f\in C^\infty(\Omega)=\mathcal{E}(\Omega)$ であることと任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f=f_{\alpha}$ が成り立つことを示す。 そこである $n\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ f\in C^n(\Omega),\quad \partial^{\alpha}f=f_{\alpha}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq n) $$ が成り立つと仮定する。$\lvert\alpha\rvert=n$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ を取り、 $$ \beta:=\alpha+e_j=\alpha+(0,\ldots,0,\overset{j\text{ 番目}}{1},0,\ldots,0)\in \mathbb{Z}_+^N $$ とおく。任意の $x\in \Omega$ と $\overline{B(x,\delta)}=\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert\leq \delta\}\subset \Omega$ なる任意の $\delta\in (0,\infty)$ を取る。このとき $0<\lvert h\rvert\leq\delta$ を満たす任意の $h\in \mathbb{R}$ に対し微積分学の基本定理より、 $$ \frac{\partial^{\alpha}f_i(x+he_j)-\partial^{\alpha}f_i(x)}{h} =\int_{0}^{1}\partial^{\beta}f_i(x+\theta he_j)d\theta\quad(\forall i\in \mathbb{N})\quad\quad(*) $$ である。コンパクト集合 $\overline{B(x,\delta)}$ 上で $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\partial^{\alpha}f$ に、 $(\partial^{\beta}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f_{\beta}$ に一様収束するので、$(*)$ は $i\rightarrow\infty$ とすれば、 $$ \frac{\partial^{\alpha}f(x+he_j)-\partial^{\alpha}f(x)}{h} =\int_{0}^{1}f_{\beta}(x+\theta he_j)d\theta\quad(\forall i\in \mathbb{N})\quad\quad(**) $$ となる。よって、優収束定理より $\lvert\alpha\rvert=n$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f\in C^1(\Omega)$ であり、 $$ \partial_j\partial^{\alpha}f=f_{\alpha+e_j}\quad(\forall j\in \{1,\ldots,N\}) $$ が成り立つので、 $$ f\in C^{n+1}(\Omega),\quad \partial^{\beta}f=f_{\beta}\quad(\forall \beta\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\beta\rvert=n+1) $$ が成り立つ。よって帰納法より $f\in C^\infty(\Omega)=\mathcal{E}(\Omega)$ であり、任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f=f_{\alpha}$ である。任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f_{\alpha}=\partial^{\alpha}f$ にコンパクト一様収束するので、$(1)$ より $\mathcal{E}(\Omega)$ の位相で $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f$ に収束する。ゆえに $\mathcal{E}(\Omega)$ はFréchet空間である。

注意3.5

Fréchet空間の位相は位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理の15より距離位相であるので第一可算である。よって $\mathcal{E}(\Omega)$ 上で定義され、位相空間に値を取る写像の連続性を示すには、連続性の点列による特徴付け(ネットによる位相空間論命題6.6)より、その写像が $\mathcal{E}(\Omega)$ の収束列を収束列に写すことを示せばよい。

命題3.6(Fréchet空間 $\mathcal{E}(\Omega)$ 上の基本的な連続線形写像)

$\Omega,\Omega'\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、Fréchet空間 $\mathcal{E}(\Omega)$, $\mathcal{E}(\Omega')$を考える。次が成り立つ。

  • $(1)$ 任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \mathcal{E}(\Omega)\ni f\mapsto \partial^{\alpha}f\in \mathcal{E}(\Omega) $$ は連続線形写像である。
  • $(2)$ 任意の $g\in \mathcal{E}(\Omega)$ に対し、 $$ \mathcal{E}(\Omega)\ni f\mapsto fg\in \mathcal{E}(\Omega) $$ は連続線形写像である。
  • $(3)$ $\Phi:\Omega\rightarrow\Omega'$ を $C^\infty$ 級同相写像とすると、 $$ \mathcal{E}(\Omega')\ni f\mapsto f\circ\Phi\in \mathcal{E}(\Omega) $$ は連続線形写像である。

証明

  • $(1)$ 命題3.4の$ (1)$ より自明である。
  • $(2)$ Leibnizルール(命題1.3)と命題3.4の $(1)$ による。
  • $(3)$ 任意の $f\in \mathcal{E}(\Omega')$ と任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対しチェインルールより $c_{\beta}\in C^\infty(\Omega)$ $(\beta\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\beta\rvert\leq \lvert\alpha\rvert)$ で、 $$ \partial^{\alpha}(f\circ\Phi)=\sum_{\lvert\beta\rvert\leq\lvert\alpha\rvert}c_{\beta}(\partial^{\beta}f)\circ\Phi $$ なるものが取れる。このことと命題3.4の $(1)$ による。

定義3.7(Fréchet空間 $D_K(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。任意のコンパクト集合 $K\subset \Omega$ に対し、 $$ D_K(\Omega):=\{f\in \mathcal{E}(\Omega):\text{supp}(f)\subset K\} $$ とおく。このとき $D_K(\Omega)$ はFréchet空間 $\mathcal{E}(\Omega)$ の閉部分空間である*3から、$D_K(\Omega)$ は $\mathcal{E}(\Omega)$ の相対位相でFréchet空間である(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理注意19.1を参照)。また $D_K(\Omega)$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f\in D_K(\Omega)$ に $D_K(\Omega)$ の位相で収束することは、$K$ がコンパクトであることと命題3.4より、任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\partial^{\alpha} f$ に一様収束することと同値である。

4. 超関数空間 $D'(\Omega)$

定義4.1(超関数空間 $D'(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。超関数論の文脈では $\Omega$ 上で定義された台がコンパクトな $C^\infty$ 級関数全体 $C_c^\infty(\Omega)$ を、 $$ D(\Omega):=C_c^\infty(\Omega)=\bigcup_{K\subset \Omega:\text{コンパクト}}D_K(\Omega) $$ と表し、これを $\Omega$ 上のテスト関数空間と言い、$D(\Omega)$ の元を $\Omega$ 上のテスト関数と言う。$D(\Omega)$ 上の線形汎関数 $$ u:D(\Omega)\rightarrow \mathbb{C} $$ で任意のコンパクト集合 $K\subset\Omega$ に対し、 $$ D_K(\Omega)\ni \varphi\mapsto u(\varphi)\in \mathbb{C} $$ がFréchet空間 $D_K(\Omega)$(定義3.7)上の連続線形汎関数であるようなものを $\Omega$ 上の超関数と言う。$\Omega$ 上の超関数全体を $D'(\Omega)$ と表す。$D'(\Omega)$ は各テスト関数ごとの演算で $\mathbb{C}$ 上の線形空間をなす。任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し $D'(\Omega)$ 上の線形汎関数 $$ \iota(\varphi):D'(\Omega)\ni u\mapsto u(\varphi)\in \mathbb{C} $$ を定義する。そして $D'(\Omega)$ 上の線形汎関数の分離族 $\{\iota(\varphi)\}_{\varphi\in D(\Omega)}$ が誘導する汎弱位相(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相9を参照)を $D'(\Omega)$ に入れ、$D'(\Omega)$ を位相線形空間とみなす。この位相線形空間 $D'(\Omega)$ を $\Omega$ 上の超関数空間と言う。

注意4.2(超関数の収束)

$D'(\Omega)$ のネット $(u_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が $u\in D'(\Omega)$ に収束することは、任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し $(u_{\lambda}(\varphi))_{\lambda\in \Lambda}$ が $u(\varphi)$ に収束することと同値である(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題9.3を参照)。

命題4.3(超関数列の各点収束極限は超関数)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を $D'(\Omega)$ の列とし、任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し $(u_i(\varphi))_{i\in \mathbb{N}}$ が収束するとする。このとき、 $$ u(\varphi):=\lim_{i\rightarrow\infty}u_i(\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\Omega)) $$ として定義される線形汎関数 $u:D(\Omega)\rightarrow\mathbb{C}$ は $D'(\Omega)$ に属する。

証明

任意のコンパクト集合 $K\subset \Omega$を取る。各 $i\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ D_K(\Omega)\ni \varphi\mapsto u_i(\varphi)\in \mathbb{C} $$ はFréchet空間 $D_K(\Omega)$ 上の連続線形汎関数であるから、一様有界性定理(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理系17.4)よりその各点収束極限である $$ D_K(\Omega)\ni \varphi\mapsto u(\varphi)\in\mathbb{C} $$ もFréchet空間 $D_K(\Omega)$ 上の連続線形汎関数である。よって $u\in D'(\Omega)$ である。

注意4.4(テスト関数空間の包含関係)

$\Omega_1,\Omega_2\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$\Omega_1\subset\Omega_2$ とする。$K\subset \Omega_1$ に対し $K$ が $\Omega_1$ においてコンパクトであることと $\Omega_2$ においてコンパクトであることは同値であるから、任意の $\varphi\in D(\Omega_1)$ に対し $\varphi$ を $\Omega_2$ 上に $0$拡張したもの $\widetilde{\varphi}:\Omega_2\rightarrow\mathbb{C}$ は $D(\Omega_2)$ に属し、$\text{supp}(\varphi)=\text{supp}(\widetilde{\varphi})$ である。また $\varphi\in D(\Omega_2)$ で $\text{supp}(\varphi)\subset \Omega_1$ なるものに対し $\varphi$ を $\Omega_1$ 上に制限したもの $\varphi|_{\Omega_1}:\Omega_1\rightarrow\mathbb{C}$ は $D(\Omega_1)$ に属し、$\text{supp}(\varphi|_{\Omega_1})=\text{supp}(\varphi)$ である。そこで以後、$\varphi\in D(\Omega_1)$ と $\widetilde{\varphi}\in D(\Omega_2)$ を同一視して $D(\Omega_1)\subset D(\Omega_2)$ とみなす。

定義4.5(超関数の制限)

$\Omega_1,\Omega_2\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$\Omega_1\subset\Omega_2$ とする。任意の $u\in D'(\Omega_2)$ に対し $u|_{\Omega_1}\in D'(\Omega_1)$ を、 $$ u|_{\Omega_1}:D(\Omega_1)\ni \varphi\mapsto u(\varphi)\in \mathbb{C} $$ と定義する。

5. 変分学の基本補題、$L^1_{\rm loc}(\Omega)\subset D'(\Omega)$

定義5.1($L^p_{\rm loc}(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。$\Omega$ 上の複素数値Borel関数全体において、 $$ f\sim g\quad \Leftrightarrow\quad f,g\text{ はLebesgue測度に関してa.e.で等しい} $$ なる同値関係 $\sim$ による $f$ の同値類を $[f]$ と表し、同値類全体を $L(\Omega)$ と表す。任意の $[f],[g]\in L(\Omega)$, 任意の $\alpha\in \mathbb{C}$ に対し、 $$ [f]+[g]=[f+g],\quad \alpha[f]=[\alpha f],\quad [f][g]=[fg],\quad \overline{[f]}=[\overline{f}] $$ とおく。前の二つを加法、スカラー倍として $L(\Omega)$ は $\mathbb{C}$ 上の線形空間である。 $\Omega$ の空でない開集合のLebesgue測度は正であるから、$\Omega$ 上の複素数値連続関数全体 $C(\Omega)$ に対し、 $$ C(\Omega)\ni f\mapsto [f]\in L(\Omega) $$ は単射である*4。これより $f\in C(\Omega)$ に対しては、 $f$ と $[f]$ を同一視して、 $$ C(\Omega)\subset L(\Omega) $$ とみなす.
任意の $p\in [1,\infty]$ に対し $L(\Omega)$ の線形部分空間 $$ L^p_{\rm loc}(\Omega):=\{[f]\in L(\Omega):\text{任意のコンパクト集合} K\subset \Omega\text{ に対し }[f\chi_K]\in L^p(\Omega)\} $$ を定義する。これを $\Omega$ 上の $p$ 乗局所可積分関数空間と言う。コンパクト集合のLebesgue測度は有限であることとHölderの不等式より、 $$ C(\Omega),\quad L^p_{\rm loc}(\Omega)\subset L^1_{\rm loc}(\Omega)\quad(\forall p\in[1,\infty]) $$ である。

補題5.2

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。このとき任意の $[f]\in L^1(\Omega)$ に対し、 $$ \lVert f\rVert_1=\sup\left\{\left\lvert\int_{\Omega}f(x)\varphi(x)dx\right\rvert:\varphi\in D(\Omega),\text{ }\sup_{x\in \Omega}\lvert\varphi(x)\rvert\leq1\right\}\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

$(*)$ の右辺を $s$とおく。$s\leq \lVert f\rVert_1$ は自明である。逆の不等式を示す。任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取り固定する。ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系16.12の$(3)$ より、 $$ \lVert f-g\rVert_1<\frac{\epsilon}{3}\quad\quad(**) $$ を満たす $g\in D(\Omega)$ が取れる。そして各 $n\in\mathbb{N}$ に対し $(\frac{1}{n}\leq \lvert g\rvert)\subset (0<\lvert g\rvert)$ であり、$(\frac{1}{n}\leq \lvert g\rvert)$ はコンパクト集合で $(0<\lvert g\rvert)$ は開集合であるから、Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より、 $$ 0\leq\omega_n(x)\leq1\quad(\forall x\in \Omega),\quad \omega_n|_{(\frac{1}{n}\leq \lvert g\rvert)}=1,\quad \text{supp}(\omega_n)\subset (0<\lvert g\rvert)\quad\quad(***) $$ を満たす $\omega_n\in D(\Omega)$ が取れる。各 $n\in\mathbb{N}$ に対し $\varphi_n:\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ \varphi_n(x):=\left\{\begin{array}{cl}\frac{\lvert g(x)\rvert}{g(x)}\omega_n(x)&(x\in (0<\lvert g\rvert))\\ 0&(x\notin (0<\lvert g\rvert))\end{array}\right.\quad\quad(****) $$ と定義する。$(***)$ より $\text{supp}(\omega_n)\subset (0<\lvert g\rvert)$ であるから、 $$ \Omega=(0<\lvert g\rvert)\cup(\Omega\backslash \text{supp}(\omega_n)) $$ であり、$\varphi_n$ は $(0<\lvert g\rvert)$ 上で $C^\infty$ 級で $\Omega\backslash \text{supp}(\omega_n)$ 上で $0$ であるので $\varphi_n\in D(\Omega)$ である。また $\lvert\varphi_n(x)\rvert\leq1$ $(\forall x\in \Omega)$ である。そして $(***)$, $(****)$ より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}g(x)\varphi_n(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}\lvert g(x)\rvert\omega_n(x) =\lvert g(x)\rvert\quad(\forall x\in \Omega) $$ であるから、Lebesgue優収束定理より、 $$ \lVert g\rVert_1=\int_{\Omega}\lvert g(x)\rvert dx=\lim_{n\rightarrow\infty}\left\lvert\int_{\Omega}g(x)\varphi_n(x)dx\right\rvert $$ である。よって、 $$ \lVert g\rVert_1-\frac{\epsilon}{3}<\left\lvert\int_{\Omega}g(x)\varphi_n(x)dx\right\rvert $$ を満たす $n\in\mathbb{N}$ が取れる。これを $(**)$ と合わせて、 $$ \begin{aligned} \lVert f\rVert_1&\leq \lVert f-g\rVert_1+\lVert g\rVert_1<\frac{2}{3}\epsilon+\left\lvert\int_{\Omega}g(x)\varphi_n(x)dx\right\rvert\\ &\leq\frac{2}{3}\epsilon+\left\lvert\int_{\Omega}(g(x)-f(x))\varphi_n(x)dx\right\rvert+\left\lvert\int_{\Omega}f(x)\varphi_n(x)dx\right\rvert\\ &\leq\frac{2}{3}\epsilon+\lVert f-g\rVert_1+s<\epsilon+s \end{aligned} $$ を得る。$\epsilon\in(0,\infty)$ は任意であるから $\lVert f\rVert_1\leq s$ が成り立つ。

命題5.3(変分学の基本補題)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$[f]\in L^1_{\rm loc}(\Omega)$ とする。もし、 $$ \int_{\Omega}f(x)\varphi(x)dx=0\quad(\forall \varphi\in D(\Omega))\quad\quad(*) $$ が成り立つならば $[f]=0$ である。

証明

命題3.1における $(\Omega_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を考える。任意の $n\in\mathbb{N}$ について $\overline{\Omega_n}$ はコンパクトであるから、 $$ [f|_{\Omega_n}]\in L^1(\Omega_n)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ である。そして任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し $(*)$ と注意4.4より、 $$ \int_{\Omega_n}f(x)\varphi(x)dx=0\quad(\forall \varphi\in D(\Omega_n)) $$ であるから、補題5.2より、 $$ \lVert f|_{\Omega_n}\rVert_1=\sup\left\{\left\lvert\int_{\Omega_n}f(x)\varphi(x)dx\right\rvert:\varphi\in D(\Omega_n)\right\}=0 $$ である。$(\Omega_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は単調増加列であり $\Omega=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\Omega_n$ であるから単調収束定理より、 $$ \int_{\Omega}\lvert f(x)\rvert dx=\sup_{n\in\mathbb{N}}\lVert f|_{\Omega_n}\rVert_1=0 $$ である。よって $[f]=0$ である。

定義5.4($L^1_{\rm loc}(\Omega)\subset D'(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$[f]\in L^1_{\rm loc}(\Omega)$ とし、線形汎関数 $$ u_{[f]}:D(\Omega)\ni \varphi\mapsto \int_{\Omega}f(x)\varphi(x)dx\in \mathbb{C} $$ を定義する。任意のコンパクト集合 $K\subset \Omega$ に対し、 $$ \lvert u_{[f]}(\varphi)\rvert\leq \lVert f|_K\rVert_1\lVert \varphi\rVert\quad(\forall \varphi\in D_K(\Omega)) $$ であるから、 $$ D_K(\Omega)\ni \varphi\mapsto u_{[f]}(\varphi)\in \mathbb{C} $$ はFréchet空間 $D_K(\Omega)$ 上の連続線形汎関数である。よって $u_{[f]}\in D'(\Omega)$ である。そして線形写像 $$ L^1_{\rm loc}(\Omega)\ni [f]\mapsto u_{[f]}\in D'(\Omega) $$ は、変分学の基本補題(命題5.3)より単射である。そこで以後、局所可積分関数 $[f]\in L^1_{\rm loc}(\Omega)$ と超関数 $u_{[f]}\in D'(\Omega)$ を同一視し、 $L^1_{\rm loc}(\Omega)\subset D'(\Omega)$ とみなす。

命題5.5($L^p$ 収束するならば弱収束)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$p\in [1,\infty]$ とする。このとき、 $$ L^p(\Omega)\ni [f]\mapsto [f]\in D'(\Omega) $$ は $L^p$ ノルムと $D'(\Omega)$ の位相(定義4.1)に関して連続である。

証明

$L^p(\Omega)$ の列 $([f_i])_{i\in \mathbb{N}}$ が $[f]\in L^p(\Omega)$ に $L^p$ ノルムで収束するとする。$q$ を $p$ の共役指数とすると $D(\Omega)\subset L^q(\Omega)$ であるから、任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対しHölderの不等式より、 $$ \lvert[f_i](\varphi)-[f](\varphi)\rvert=\left\lvert\int_{\Omega}\lvert f_i(x)-f(x)\rvert\lvert\varphi(x)\rvert dx\right\rvert\leq \lVert [f_i]-[f]\rVert_p\lVert \varphi\rVert_q\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。よって $D'(\Omega)$ の位相で $([f_i])_{i\in\mathbb{N}}$ は $[f]$ に収束するから、連続性の点列による特徴付け(ネットによる位相空間論命題6.6)より $(*)$ は連続である。

6. 弱微分

命題6.1

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、連続関数 $f\in C(\Omega)$ が第 $j$ 座標に関する連続な偏導関数 $\partial_jf\in C(\Omega)$ を持つとする。このとき、 $$ \partial_jf(\varphi)=-f(\partial_j\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\Omega)) $$ が成り立つ。

証明

任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し $g:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ g(x):=\left\{\begin{array}{cl}f(x)\varphi(x)&(x\in\Omega)\\0&(x\in \mathbb{R}^N\backslash \Omega)\end{array}\right. $$ と定義する。 $$ \mathbb{R}^N=\Omega\cup (\mathbb{R}^N\backslash \text{supp}(\varphi)) $$ であり、$g$ は $\mathbb{R}^N\backslash \text{supp}(\varphi)$ 上で $0$ であるから $g$ は第 $j$ 座標に関して偏導関数を持ち、$g,\partial_jg\in C(\mathbb{R}^N)$ である。また $\text{supp}(g)\subset \text{supp}(\varphi)$ より $\text{supp}(g)$ は有界なのでFubiniの定理と微積分学の基本定理より、 $$ \int_{\Omega}\partial_j(f\varphi)(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}\partial_jg(x)dx=0 $$ である。よって、 $$ \begin{aligned} \partial_jf(\varphi)&=\int_{\Omega}\partial_jf(x)\varphi(x)dx=\int_{\Omega}\partial_j(f\varphi)(x)dx-\int_{\Omega}f(x)\partial_j\varphi(x)dx\\ &=-\int_{\Omega}f(x)\partial_j\varphi(x)dx=-f(\partial_j\varphi) \end{aligned} $$ である。

定義6.2(弱微分)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$u\in D'(\Omega)$ とする。命題3.6の $(1)$ より任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し、 $$ D(\Omega)\ni \varphi\mapsto -u(\partial_j\varphi)\in \mathbb{C} $$ は $D'(\Omega)$ に属する。そこでこれを $\partial_ju\in D'(\Omega)$ と表し、 $u$ の第 $j$ 座標に関する弱微分と言う。命題6.1より $f\in C(\Omega)$ で $\partial_jf\in C(\Omega)$ なるものに対し、$\partial_jf$ は $f$ の第 $j$ 座標に関する弱微分と一致する。
任意の $u\in D'(\Omega)$ と任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}u:=\partial_1^{\alpha_1}\ldots\partial_N^{\alpha_N}u\in D'(\Omega) $$ と定義する。このとき、 $$ \partial^{\alpha}u(\varphi)=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(\partial^{\alpha}\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\Omega)) $$ である。

命題6.3(弱微分の連続性)

任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し線形写像 $$ D'(\Omega)\ni u\mapsto \partial^{\alpha}u\in D'(\Omega)\quad\quad(*) $$ は連続である。

証明

$D'(\Omega)$ のネット $(u_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が $u\in D'(\Omega)$ に収束するとする。このとき任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}u_{\lambda}(\varphi)=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u_{\lambda}(\partial^{\alpha}\varphi) \rightarrow (-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(\partial^{\alpha}\varphi)=\partial^{\alpha}u(\varphi) $$ であるから $(\partial^{\alpha}u_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ は $\partial^{\alpha}u$ に収束する(注意4.2)。 よってネットによる連続性の特徴付け(ネットによる位相空間論定理3)より $(*)$ は連続である。

7. $\mathcal{E}(\Omega)$ と $D'(\Omega)$ の積

定義7.1($\mathcal{E}(\Omega)$ と $D'(\Omega)$ の積)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。命題3.6の $(2)$ より任意の $u\in D'(\Omega)$ と $f\in \mathcal{E}(\Omega)$ に対し、 $$ D(\Omega)\ni \varphi\mapsto u(f\varphi)\in \mathbb{C} $$ は $D'(\Omega)$ に属する。そこでこれを $fu\in D'(\Omega)$ と表し、$f$ と $u$ の積と言う。任意の $f\in \mathcal{E}(\Omega)$ と $[g]\in L^1_{\rm loc}(\Omega)$ に対し、 $$ [g](f\varphi)=\int_{\Omega}g(x)f(x)\varphi(x)dx=[fg](\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\Omega)) $$ であるから、$f$ と $[g]$ の積は $[fg]$ である。

命題7.2($\mathcal{E}(\Omega)$ と $D'(\Omega)$ の積に関するLeibnizルール)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$f\in \mathcal{E}(\Omega)$, $u\in D'(\Omega)$ とする。任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(fu)=\sum_{\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\partial^{\beta}f\partial^{\alpha-\beta}u $$ が成り立つ。

証明

任意の$j\in \{1,\ldots,N\}$ と任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し、 $$ f\partial_j\varphi=\partial_j(f\varphi)-\partial_jf\varphi $$ であるから、 $$ \begin{aligned} \partial_j(fu)(\varphi)&=-fu(\partial_j\varphi)=-u(f\partial_j\varphi)=-u(\partial_j(f\varphi))+u(\partial_jf\varphi)\\ &=\partial_ju(f\varphi)+\partial_jfu(\varphi)= f\partial_ju(\varphi)+\partial_jfu(\varphi) \end{aligned} $$ である。よって、 $$ \partial_j(fu)=\partial_jfu+f\partial_ju $$ である。後は通常のLeibnizルール(命題1.3)と全く同様にして証明できる。

命題7.3($\mathcal{E}(\Omega)$ との積の連続性)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$f\in \mathcal{E}(\Omega)$ とする。 このとき線形写像 $$ D'(\Omega)\ni u\mapsto fu\in D'(\Omega)\quad\quad(*) $$ は連続である。

証明

$D'(\Omega)$ のネット $(u_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が $u\in D'(\Omega)$ に収束するとする。このとき任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し、 $$ fu_{\lambda}(\varphi)=u_{\lambda}(f\varphi) \rightarrow u(f\varphi)=fu(\varphi) $$ である(注意4.2)からネットによる連続性の特徴付け(ネットによる位相空間論定理3)より $(*)$ は連続である。

8. 超関数の変数変換

定義8.1(超関数の変数変換)

$\Omega_1,\Omega_2\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:\Omega_1\rightarrow \Omega_2$ を $C^\infty$ 級同相写像とする。このとき同相写像であることから $\Phi:\Omega_1\rightarrow\Omega_2$ と $\Phi^{-1}:\Omega_2\rightarrow \Omega_1$ はそれぞれBorel集合をBorel集合に写す。また変数変換公式(測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質補題40.3)よりLebesgue測度 $0$ のBorel集合をLebesgue測度 $0$ のBorel集合に写す。よって $f,g:\Omega_2\rightarrow \mathbb{C}$ がLebesgue測度に関してa.e.で等しいBorel関数ならば $f\circ\Phi,g\circ\Phi:\Omega_1\rightarrow\mathbb{C}$ もLebesgue測度に関してa.e.で等しいBorel関数である。 これより任意の $[f]\in L(\Omega_2)$ に対し $[f]\circ\Phi:=[f\circ\Phi]\in L(\Omega_1)$(定義5.1を参照)が定義できる。
$[f]\in L^1_{\rm loc}(\Omega_2)$ とする。任意のコンパクト集合 $K\subset \Omega_1$ に対し $\Phi(K)\subset \Omega_2$ はコンパクト集合であり、$C^\infty$ 級関数 $$ \lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert:\Omega_2\ni x\mapsto \lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'(x)\rvert\in (0,\infty) $$ はコンパクト集合 $\Phi(K)$ 上で有界であるから変数変換公式より、 $$ \int_{K}\lvert f\circ\Phi(x)\rvert dx=\int_{\Phi(K)}\lvert f(x)\rvert \lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'(x)\rvert dx<\infty $$ である。よって $[f]\circ\Phi=[f\circ\Phi]\in L^1_{\rm loc}(\Omega_1)$ である。任意の $\varphi\in D(\Omega_1)$ に対し $\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\in D(\Omega_2)$ であるから変数変換公式より $[f]\circ\Phi\in L^1_{\rm loc}(\Omega_1)$ は $\Omega_1$ 上の超関数として、 $$ \begin{aligned} ([f]\circ\Phi)(\varphi)&=\int_{\Omega_1}(f\circ\Phi)(x)\varphi(x)dx=\int_{\Omega_2}f(x)(\varphi\circ\Phi^{-1})(x)\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'(x)\rvert dx\\ &=[f]\left(\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\right)\quad(\forall \varphi\in D(\Omega_1))\quad\quad(*) \end{aligned} $$ を満たす。そこで今、$(*)$ と整合するように $\Omega'$ 上の超関数 $u\in D'(\Omega_2)$ に対し線形汎関数 $$ u\circ\Phi:D(\Omega_1)\rightarrow \mathbb{C} $$ を、 $$ (u\circ\Phi)(\varphi):=u\left(\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\right)\quad(\forall \varphi\in D(\Omega_1)) $$ として定義する。命題3.6の$(2),(3)$より $u\circ\Phi$ は $\Omega_1$ 上の超関数である。$u\circ\Phi\in D'(\Omega_1)$ を $u$ の $\Phi$ による変数変換と言う。

注意8.2(超関数の変数変換の変数変換)

$\Omega_1,\Omega_2,\Omega_3 \subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:\Omega_1\rightarrow \Omega_2$、$\Psi:\Omega_2\rightarrow \Omega_3$ をそれぞれ $C^\infty$ 級同相写像とする。このとき任意の $u\in D'(\Omega_3)$ に対し、 $$ (u\circ\Psi)\circ\Phi=u\circ(\Psi\circ\Phi) $$ が成り立つ。実際、チェインルールより、 $$ \lvert{\rm det}(\Phi^{-1}\circ\Psi^{-1})'(x)\rvert=\lvert{\rm det}{\Phi^{-1}}'(\Psi^{-1}(x))\rvert\lvert{\rm det}{\Psi^{-1}}'(x)\rvert\quad(\forall x\in \Omega_3) $$ であるから、任意の $\varphi\in D(\Omega_1)$ に対し、

$$ \begin{aligned} (u\circ(\Psi\circ\Phi))(\varphi)&=u((\varphi\circ\Phi^{-1})\circ\Psi^{-1}\lvert{\rm det}(\Phi^{-1}\circ\Psi^{-1})'\rvert)\\ &=u((\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert)\circ\Psi^{-1}\lvert {\rm det}{\Psi^{-1}}'\rvert)\\ &=(u\circ\Psi)(\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert)\\ &=((u\circ\Psi)\circ\Phi)(\varphi) \end{aligned} $$ である。

命題8.3(超関数の変数変換に関するチェインルール)

$\Omega,\Omega'\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi=(\Phi_1,\ldots,\Phi_N):\Omega\rightarrow\Omega'$ を $C^\infty$ 級同相写像とする。任意の $u\in D'(\Omega)$ に対し、 $$ \partial_j(u\circ\Phi)=\sum_{i=1}^{N}\partial_j\Phi_i\left((\partial_iu)\circ\Phi\right)\quad(j=1,\ldots,N)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ と任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し、 $$ \partial_j(u\circ\Phi)(\varphi)=-(u\circ\Phi)(\partial_j\varphi)=-u( (\partial_j\varphi\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert)\quad\quad(**) $$ である。チェインルールより、 $$ \partial_j\varphi=\partial_j( (\varphi\circ\Phi^{-1})\circ\Phi) =\sum_{i=1}^{N}(\partial_i(\varphi\circ\Phi^{-1})\circ\Phi)\partial_j\Phi_i $$ であるので、 $$ \partial_j\varphi\circ\Phi^{-1}=\sum_{i=1}^{N}\partial_i(\varphi\circ\Phi^{-1})(\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1} $$ である。よって $(**)$ より、 $$ \begin{aligned} \partial_j(u\circ\Phi)(\varphi)&=-u( (\partial_j\varphi\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert) =-\sum_{i=1}^{N}u(\partial_i(\varphi\circ\Phi^{-1})( (\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert)\\ &=\sum_{i=1}^{N}\partial_iu( (\varphi\circ\Phi^{-1})( (\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert)\\ &+\sum_{i=1}^{N}u( (\varphi\circ\Phi^{-1})\partial_i( ( (\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert))\\ &=\sum_{i=1}^{N}\partial_j\Phi_i( (\partial_iu)\circ\Phi)(\varphi)+\sum_{i=1}^{N}u( (\varphi\circ\Phi^{-1})\partial_i( ( (\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert))\quad\quad(***) \end{aligned} $$ である。よって $(*)$ を示すにはこの右辺の第二項が $0$ であることを示せばよい。すなわち、 $$ \sum_{i=1}^{N}u\left( (\varphi\circ\Phi^{-1})\partial_i\left( ( (\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\right)\right)=0\quad\quad(****) $$ が成り立つことを示せばよい。任意の $f\in D(\Omega')$ に対し $(***)$ において $u\in D'(\Omega')$ を $f\in D(\Omega')\subset D'(\Omega')$ に置き換えれば、 $$ \partial_j(f\circ\Phi)(\varphi)=\sum_{i=1}^{N}\partial_j\Phi_i( (\partial_if)\circ\Phi)(\varphi)+\sum_{i=1}^{N}f( (\varphi\circ\Phi^{-1})\partial_i( ( (\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert) )\quad\quad(*****) $$ となる。 一方、$f\circ\Phi\in D(\Omega)\subset D'(\Omega)$ の弱微分と通常の意味での偏微分は一致する(命題6.1を参照)のでチェインルールより、 $$ \partial_j(f\circ\Phi)(\varphi)=\sum_{i=1}^{N}\partial_j\Phi_i\left((\partial_if)\circ\Phi\right)(\varphi) $$ である。よって $(*****)$ より、 $$ \sum_{i=1}^{N}f\left((\varphi\circ\Phi^{-1})\partial_i\left(((\partial_j\Phi_i)\circ\Phi^{-1})\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\right)\right)=0 $$ である。これが任意の $f\in D(\Omega')$ に対して成り立つので変分学の基本補題(命題5.3)より $(****)$ が成り立つ。

定義8.4($\mathbb{R}^N$ 上の超関数の平行移動、スケール変換)

$u\in D'(\mathbb{R}^N)$ とする。任意の $y\in \mathbb{R}^N$ に対し $C^\infty$ 級同相写像 $$ \mathbb{R}^N\ni x\mapsto x-y\in \mathbb{R}^N $$ を考え、これによる $u$ の変数変換を $T_yu\in D'(\mathbb{R}^N)$ と表す。また任意の $r\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ に対し $C^\infty$ 級同相写像 $$ \mathbb{R}^N\ni x\mapsto rx\in \mathbb{R}^N $$ を考え、これによる $u$ の変数変換を $u_r\in D'(\mathbb{R}^N)$ と表す。命題8.3より任意の多重指数 $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}T_yu=T_y\partial^{\alpha}u,\quad \partial^{\alpha}u_r=r^{\lvert \alpha\rvert}(\partial^{\alpha}u)_r $$ である。

命題8.5(超関数の変数変換の連続性)

$\Omega,\Omega'\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:\Omega\rightarrow \Omega'$ を $C^\infty$ 級同相写像とする。このとき線形写像 $$ D'(\Omega')\ni u\mapsto u\circ\Phi\in D'(\Omega)\quad\quad(*) $$ は連続である。

証明

$D'(\Omega)$ のネット $(u_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}$ が $u\in D'(\Omega)$ に収束するとする。このとき任意の $\varphi\in D(\Omega)$ に対し、 $$ (u_{\lambda}\circ\Phi)(\varphi)=u_{\lambda}\left(\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\right) \rightarrow u\left(\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert\right) =(u\circ\Phi)(\varphi) $$ である(注意4.2を参照)からネットによる連続性の特徴付け(ネットによる位相空間論定理3)より $(*)$ は連続である。

9. 超関数の台

命題9.1

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$を開集合, $u\in D'(\Omega)$ とする。このとき、 $$ \{U\subset \Omega:U\text{ は開集合で任意の } \varphi\in D(U) \text{ に対し } u(\varphi)=0\}\quad\quad(*) $$ (注意4.4を参照)は集合の包含関係による順序に関して最大元を持つ。

証明

$(*)$ の要素全ての合併を $U_0$ とおき、$U_0$が $(*)$ に属することを示せばよい。任意の $\varphi\in D(U_0)$ を取る。$\text{supp}(\varphi)$ のコンパクト性より $(*)$ の有限個の要素 $U_1,\ldots,U_n$ が取れて、 $$ \text{supp}(\varphi)\subset \bigcup_{i=1}^{n}U_i $$ となる。そして $1$ の分割(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系15.6)より $h_i\in D(U_i)$ $(i=1,\ldots,n)$ で、 $$ \sum_{i=1}^{n}h_i(x)=1\quad(\forall x\in \text{supp}(\varphi)) $$ なるものが取れる。よって、 $$ \varphi=\sum_{i=1}^{n}\varphi h_i,\quad \varphi h_i\in D(U_i)\quad(i=1,\ldots,n) $$ であるから、 $$ u(\varphi)=\sum_{i=1}^{n}u(\varphi_i)=0 $$ である。ゆえに$U_0$は $(*)$ に属する。

定義9.2(超関数の台)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$u\in D'(\Omega)$ とする。命題9.1の $(*)$ の最大元を $\Omega\backslash \text{supp}(u)$ とおく。このとき $\Omega$ の閉集合 $\text{supp}(u)$ を $u$ の台と言う、

命題9.3(超関数の台の基本性質)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $u\in D'(\Omega)$ と任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\text{supp}(\partial^{\alpha}u)\subset \text{supp}(u)$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $u\in D'(\Omega)$ と任意の $f\in \mathcal{E}(\Omega)$ に対し $\text{supp}(fu)\subset \text{supp}(f)\cap \text{supp}(u)$ が成り立つ。
  • $(3)$ $\Omega'\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Phi:\Omega\rightarrow\Omega'$ を $C^\infty$ 級同相写像とすると、任意の $u\in D'(\Omega')$ に対し $\text{supp}(u\circ\Phi)=\Phi^{-1}(\text{supp}(u))$ が成り立つ。
  • $(4)$ 任意の $[f]\in L^1_{\rm loc}(\Omega)$ とその任意の代表元 $f:\Omega\rightarrow\mathbb{C}$ に対し超関数 $[f]\in D'(\Omega)$ の台 $\text{supp}([f])$ は関数 $f$ の台 $\text{supp}(f)$(つまり $\{x\in\Omega:f(x)\neq0\}$ の $\Omega$ における閉包)に含まれる。
  • $(5)$ 任意の $f\in C(\Omega)\subset L^1_{\rm loc}(\Omega)$ に対し $f$ の超関数としての台と関数としての台は一致する。

証明

  • $(1)$ 任意の $\varphi\in D(\Omega\backslash \text{supp}(u))$ に対し $\partial^{\alpha}\varphi\in D(\Omega\backslash\text{supp}(u))$ であるから, $$ \partial^{\alpha}u(\varphi)=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(\partial^{\alpha}\varphi)=0 $$ である。よって $\text{supp}(\partial^{\alpha}u)\subset \text{supp}(u)$ である。
  • $(2)$ 任意の$\varphi\in D(\Omega\backslash (\text{supp}(f)\cap\text{supp}(u)))$ に対し、 $$ \text{supp}(f\varphi)\subset \text{supp}(f)\cap (\Omega\backslash (\text{supp}(f)\cap\text{supp}(u)))\subset \Omega\backslash \text{supp}(u) $$ であるから $fu(\varphi)=u(f\varphi)=0$ である。よって $\text{supp}(fu)\subset \text{supp}(f)\cap \text{supp}(u)$ である。
  • $(3)$ 任意の $\varphi\in D(\Omega\backslash \Phi^{-1}(\text{supp}(u)) )=D(\Phi^{-1}(\Omega'\backslash \text{supp}(u) ) )$ に対し $\text{supp}(\varphi\circ\Phi^{-1})=\Phi(\text{supp}(\varphi) )\subset \Omega'\backslash \text{supp}(u)$ であるから、 $$ (u\circ\Phi)(\varphi)=u(\varphi\circ\Phi^{-1}\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rvert)=0 $$ である。よって $\text{supp}(u\circ\Phi)\subset \Phi^{-1}(\text{supp}(u))$ である。 逆の包含関係は注意8.2による。
  • $(4)$ 任意の $\varphi\in D(\Omega\backslash \text{supp}(f))$ に対し $\text{supp}(f\varphi)=\emptyset$ であるから $[f](\varphi)=0$ である。よって $\text{supp}([f])\subset \text{supp}(f)$ である。
  • $(5)$ $f$ の超関数としての台を $S$ とおくと変分学の基本補題(命題5.3)より $f$ は $\Omega\backslash S$ 上でLebesgue測度に関してa.e.で $0$ である。$\Omega\backslash S$ は開集合であり、$f$ は連続関数であるから $f$ は $\Omega\backslash S$ の任意の点で $0$ である*5。よって $f$ の関数としての台は $S$ に含まれる。

10. Fréchet空間 $\mathcal{S}_N$(急減少関数空間)

定義10.1(急減少関数空間 $\mathcal{S}_N$)

各点ごとの演算による $\mathbb{C}$ 上の線形空間 $$ \mathcal{S}_N:=\left\{f\in C^\infty(\mathbb{R}^N):\forall \alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N,\text{ }\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)\rvert<\infty\right\} $$ を考え、$\mathcal{S}_N$ 上のノルムの列 $(p_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を、 $$ p_n:\mathcal{S}_N\ni f\mapsto \underset{\lvert\alpha\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{x\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert\partial^{\alpha}f(x)\rvert\in [0,\infty) $$ と定義する。$\mathcal{S}_N$ にセミノルムの分離族 $\{p_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ が誘導するセミノルム位相を入れ、セミノルム空間とみなす(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相8を参照)。 次の命題10.2で見るように $\mathcal{S}_N$ はFréchet空間(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理を参照)であり、$\mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f\in \mathcal{S}_N$ に収束することは任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f$ に一様収束することと同値である。このFréchet空間を $\mathbb{R}^N$ 上の急減少関数空間と言う。

命題10.2($\mathcal{S}_N$ はFréchet空間)

定義10.1におけるセミノルム空間 $\mathcal{S}_N$ について次が成り立つ。

  • $(2)$ $\mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f\in \mathcal{S}_N$ に収束することは任意の多重指数 $\alpha,\beta\in\mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f$ に一様収束することと同値である。
  • $(3)$ $\mathcal{S}_N$はFréchet空間である。

証明

  • $(1)$ 任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し、 $$ M:=\sup_{x\in \mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)\lvert f(x)\rvert<\infty $$ とおくと、 $$ \lvert f(x)\rvert\leq \frac{M}{1+\lvert x\rvert^2}\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから $\lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}\lvert f(x)\rvert=0$ である。よって $f$ は無限遠で消える連続関数である。
  • $(2)$ 任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f$ に一様収束するならば、任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ p_n(f_i-f)=\underset{\lvert\alpha\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{x\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert\partial^{\alpha}f_i(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。よってセミノルム空間 $\mathcal{S}_N$ の位相で $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f$ に収束する(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題8.6の $(1)$を参照)。
    逆にセミノルム空間 $\mathcal{S}_N$ の位相で $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ が $f$ に収束するとすると、任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ と $\lvert\alpha\rvert,\lvert\beta\rvert\leq n$ なる任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert x^{\beta}\rvert&=\lvert x_1\rvert^{\beta_1}\ldots\lvert x_N\rvert^{\beta_N} \leq \lvert x\rvert^{\beta_1+\ldots+\beta_N}=\lvert x\rvert^{\lvert \beta\rvert}\\ &\leq(1+\lvert x\rvert^2)^{\lvert \beta\rvert}\leq(1+\lvert x\rvert^2)^n\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} \sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}f_i(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)\rvert &\leq\sup_{x\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert\partial^{\alpha}f_i(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert\\ &=p_n(f_i-f)\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ である。よって $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f$ に一様収束する。
  • $(3)$ $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を $\mathcal{S}_N$ のCauchy列(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定義15.1)とする。任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\lvert\alpha\rvert,\lvert \beta\rvert\leq n$ なる $n\in \mathbb{N}$ を取れば $(*)$ より、 $$ \sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}f_i(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f_j(x)\rvert \leq \sup_{x\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert\partial^{\alpha}f_i(x)-\partial^{\alpha}f_j(x)\rvert\leq p_n(f_i-f_j)\quad(\forall i,j\in \mathbb{N}) $$ であるから $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\sup$ ノルムによるBanach空間 $C_0(\mathbb{R}^N)$ におけるCauchy列である。よって $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ はある $f_{\alpha,\beta}\in C_0(\mathbb{R}^N)$ に一様収束する。任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ x^{\beta}f_{\alpha,0}(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}x^{\beta}\partial^{\alpha}f_i(x) =f_{\alpha,\beta}(x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから、 $$ f_{\alpha,\beta}=\text{id}^{\beta}f_{\alpha,0}\quad(\forall \alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N)\quad\quad(**) $$ である。 $$ f:=f_{0,0}\in C_0(\mathbb{R}^N) $$ とおく。今、$f\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であることと、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f=f_{\alpha,0}$ が成り立つことを帰納法で示す。そこである $n\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ f\in C^n(\mathbb{R}^N),\quad \partial^{\alpha}f=f_{\alpha,0}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq n) $$ が成り立つと仮定する。$\lvert\alpha\rvert=n$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し、 $$ \beta:=\alpha+e_j=\alpha+(0,\ldots,0,\overset{j\text{ 番目}}{1},0,\ldots,0)\in \mathbb{Z}_+^N $$ とおく。任意の $x\in \mathbb{R}^N$ と任意の $h\in \mathbb{R}\backslash\{0\}$ に対し微積分学の基本定理より、 $$ \frac{\partial^{\alpha}f_i(x+he_j)-\partial^{\alpha}f_i(x)}{h}=\int_{0}^{1}\partial^{\beta}f_i(x+\theta he_j)d\theta\quad\quad(***) $$ である。$(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\partial^{\alpha}f$ に、 $(\partial^{\beta}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f_{\beta,0}$ にそれぞれ一様収束するので、$(***)$ で $i\rightarrow\infty$ とすれば、 $$ \frac{\partial^{\alpha}f(x+he_j)-\partial^{\alpha}f(x)}{h}=\int_{0}^{1}f_{\beta,0}(x+\theta he_j)d\theta\quad\quad(****) $$ となる。$f_{\beta,0}$ は有界かつ連続なので $(****)$ で $h\rightarrow0$ とすればLebesgue優収束定理より、 $$ \partial_{j}\partial^{\alpha}f(x)=f_{\beta}(x) $$ となる。よって $\lvert\alpha\rvert=n$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f\in C^1(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \partial_j\partial^{\alpha}f=f_{\alpha+e_j,0}\quad(j=1,\ldots,N) $$ が成り立つので、 $$ f\in C^{n+1}(\mathbb{R}^N),\quad \partial^{\alpha}f=f_{\alpha,0}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq n+1) $$ である。よって帰納法より $f\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f=f_{\alpha,0}$ である。$(**)$ より、 $$ \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f=\text{id}^{\beta}f_{\alpha,0}=f_{\alpha,\beta}\in C_0(\mathbb{R}^N)\quad(\forall \alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N) $$ であるから $f\in \mathcal{S}_N$ であり、任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f=f_{\alpha,\beta}$ に一様収束するので $(2)$ より $\mathcal{S}_N$ の位相で $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f$ に収束する。ゆえに $\mathcal{S}_N$ はFréchet空間である。

11. 多項式空間 $\mathcal{P}_N$、多項式的に増加する関数、緩増加関数空間 $\mathcal{T}_N$

定義11.1(多項式空間$\mathcal{P}_N$)

$$ \text{id}^{\alpha}:\mathbb{R}^N\ni x\mapsto x^{\alpha}=x_1^{\alpha_1}\ldots x_N^{\alpha_N}\in \mathbb{R}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N) $$ なる関数の線形結合全体を、 $$ \mathcal{P}_N:=\text{span}\{\text{id}^{\alpha}:\alpha\in \mathbb{Z}_+^N\} $$ と表す。$\mathcal{P}_N$ を $\mathbb{R}^N$ 上の多項式空間、$\mathcal{P}_N$ の元を $\mathbb{R}^N$ 上の多項式と言う。

定義11.2(多項式的に増加する関数)

$f:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ が多項式的に増加する関数であるとは、ある $C\in [0,\infty)$ と $n\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ \lvert f(x)\rvert\leq C(1+\lvert x\rvert^2)^n\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ が成り立つことを言う。

定義11.3(緩増加関数空間 $\mathcal{T}_N$)

$$ \mathcal{T}_N:=\{f\in C^\infty(\mathbb{R}^N): \text{任意の } \alpha\in \mathbb{Z}_+^N\text{ に対し }\partial^{\alpha}f\text{ は多項式的に増加する関数 }\} $$ を $\mathbb{R}^N$ 上の緩増加関数空間と言い、$\mathcal{T}_N$ の元を $\mathbb{R}^N$ 上の緩増加関数と言う。

12. $\mathcal{S}_N$ 上の基本的な連続線形写像

命題12.1

次が成り立つ。

  • $(1)$ $\mathcal{S}_N, \mathcal{P}_N\subset \mathcal{T}_N$.
  • $(2)$ $\mathcal{S_N} \mathcal{T}_N=\{fg:f\in\mathcal{S}_N,g\in \mathcal{T}_N\}\subset \mathcal{S}_N$.
  • $(3)$ $\Phi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $C^1$ 級写像で $1$ 階の偏導関数が有界であるものとすると、任意の多項式的に増加する関数 $f:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ に対し $f\circ\Phi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ も多項式的に増加する関数である。
  • $(4)$ $\Phi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $C^\infty$ 級写像で $1$ 階以上の全ての偏導関数が有界であるものとすると、任意の $f\in \mathcal{T}_N$ に対し $f\circ\Phi\in \mathcal{T}_N$ である。
  • $(5)$ $\Phi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $C^\infty$ 級同相写像で $\Phi,\Phi^{-1}$ の $1$ 階以上の全ての偏導関数が有界であるものとすると、任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $f\circ\Phi\in \mathcal{S}_N$ である。

証明

  • $(1)$ $\mathcal{S}_N$ の元の任意の偏導関数は有界なので $\mathcal{S}_N\subset \mathcal{T}_N$である。$\mathcal{P}_N$ の元の任意の偏導関数は $\mathcal{P}_N$ の元であり、$\mathcal{P}_N$ の元は、 $$ \begin{aligned} \lvert x^{\alpha}\rvert&=\lvert x_1\rvert^{\alpha_1}\ldots\lvert x_N\rvert^{\alpha_N} \leq \lvert x\rvert^{\alpha_1+\ldots+\alpha_N}=\lvert x\rvert^{\lvert \alpha\rvert}\\ &\leq(1+\lvert x\rvert^2)^{\lvert \alpha\rvert}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N,\forall x\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ より多項式的に増加する関数なので、 $\mathcal{P}_N\subset \mathcal{T}_N$ である。
  • $(2)$ 任意の $f\in \mathcal{S}_N$、$g\in \mathcal{T}_N$ と任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ を取る。Leibnizルール(命題1.3)より、 $$ \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}(fg)=\sum_{\gamma\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}(\text{id}^{\beta}\partial^{\gamma}g)(\partial^{\alpha-\gamma}f) $$ である。各 $\gamma\leq \alpha$ に対し $\text{id}^{\beta}\partial^{\gamma}g$ は多項式的に増加する関数であるので $(\text{id}^{\beta}\partial^{\gamma}g)(\partial^{\alpha-\gamma}f)$ は有界である。よって $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}(fg)$ は有界であるから $fg\in \mathcal{S}_N$ である。
  • $(3)$ $f:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を多項式的に増加する関数とすると、ある $C\in [0,\infty)$ と $n\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ \lvert f(x)\rvert\leq C(1+\lvert x\rvert^2)^n\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから、 $$ \lvert f(\Phi(x))\rvert\leq C(1+\lvert\Phi(x)\rvert^2)^n\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ である。よって $f\circ\Phi$ が多項式的に増加する関数であることを示すには $\mathbb{R}^N\ni x\mapsto \lvert\Phi(x)\rvert\in [0,\infty)$ が多項式的に増加する関数であることを示せばよいが、$\Phi$ の一階の偏導関数は有界であることと微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} \lvert\Phi(x)\rvert-\lvert\Phi(0)\rvert\leq \lvert\Phi(x)-\Phi(0)\rvert \leq\sum_{i=1}^{N}\lvert\Phi_i(x)-\Phi_i(0)\rvert \leq\sum_{i,j=1}^{N}\lVert\partial_j\Phi_i\rVert \lvert x\rvert\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから $\mathbb{R}^N\ni x\mapsto \lvert\Phi(x)\rvert\in [0,\infty)$ は多項式的に増加する関数である。
  • $(4)$ 任意の $f\in \mathcal{T}_N$ を取る。$f\circ\Phi\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対しチェインルールより、 $$ \partial^{\alpha}(f\circ\Phi)=\sum_{\lvert\beta\rvert\leq\lvert\alpha\rvert}\varphi_{\beta}((\partial^{\beta}f)\circ\Phi)\quad\quad(*) $$ と表せる。ここで $\varphi_{\beta}$ は $\Phi=(\Phi_1,\ldots,\Phi_N)$ の成分の $1$ 階以上の偏導関数の積と和によって表される有界な $C^\infty$ 級関数である。$f\in \mathcal{T}_N$より各 $\partial^{\beta}f$ は多項式的に増加する関数なので $(3)$ より $(\partial^{\beta}f)\circ\Phi$ も多項式的に増加する関数である。よって $\partial^{\alpha}(f\circ\Phi)$ は多項式的に増加する関数であるから $f\circ\Phi\in\mathcal{T}_N$ である。
  • $(5)$ 任意の $f\in \mathcal{S}_N$、任意の $\alpha,\gamma\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}(f\circ\Phi)$ が有界であることを示せばよい。$\partial^{\alpha}(f\circ\Phi)$ は $(*)$ のように表される。 そして $\text{id}^{\gamma}\in \mathcal{T}_N$ なので $(4)$ より $g:=\text{id}^{\gamma}\circ\Phi^{-1}$ とおくと $g \in \mathcal{T}_N$ である。よって、 $$ \text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}(f\circ\Phi)=(g\circ\Phi)\sum_{\beta\leq\alpha}\varphi_{\beta}((\partial^{\beta}f)\circ\Phi) =\sum_{\beta\leq\alpha}\varphi_{\beta}((g\partial^{\beta}f)\circ\Phi) $$ と表せて、$(2)$ より各 $\beta\leq\alpha$ に対し $g\partial^{\beta}f\in \mathcal{S}_N$ であるから $(g\partial^{\beta}f)\circ\Phi$ は有界である。よって $\text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}(f\circ\Phi)$ は有界である。

命題12.2($\mathcal{S}_N$ 上の基本的な連続線形写像)

Fréchet空間 $\mathcal{S}_N$ に対し、次が成り立つ。

  • $(1)$ 任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto \partial^{\alpha}f\in \mathcal{S}_N $$ は連続線形写像である。
  • $(2)$ 任意の $g\in \mathcal{T}_N$ に対し、 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto fg\in \mathcal{S}_N $$ (命題12.1の$(2)$を参照)は連続線形写像である、
  • $(3)$ $\Phi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $C^\infty$ 級同相写像で $\Phi,\Phi^{-1}$ の $1$ 階以上の全ての偏導関数が有界であるものとすると、 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto f\circ\Phi\in \mathcal{S}_N $$ (命題12.1の$(5)$を参照)は連続線形写像である。
  • $(4)$ 任意の $p\in [1,\infty]$ に対し $\mathcal{S}_N\subset L^p(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto [f]\in L^p(\mathbb{R}^N) $$ は連続線形写像である。

証明

  • $(1)$ 連続性の点列による特徴付け(ネットによる位相空間論命題6.5)より $(*)$ が $\mathcal{S}_N$ の収束列を収束列に写すことを示せばよい。しかしこれは命題10.2の$(2)$より自明である。
  • $(2)$ $\mathcal{S}_N$ はFréchet空間であるから $(**)$ が連続であることを示すには、閉グラフ定理(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定理19.3)より、 $\mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ と $f,h,\in \mathcal{S}_N$ に対し、 $$ f_i\rightarrow f,\quad f_ig\rightarrow h\quad(i\rightarrow\infty) $$ が成り立つと仮定して $h=fg$ が成り立つことを示せばよい。命題10.2の$(2)$より特に、 $$ f(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(x),\quad h(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(x)g(x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから、 $$ h(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(x)g(x)=f(x)g(x)\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) $$ である。よって $h=fg$ であるから $(**)$ は連続である。
  • $(3)$ $\mathcal{S}_N$ はFréchet空間であるから $(***)$ が連続であることを示すには、閉グラフ定理(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定理19.3)より、$\mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ と $f,h\in \mathcal{S}_N$ に対し、 $$ f_i\rightarrow f,\quad f_i\circ\Phi\rightarrow h\quad(i\rightarrow\infty) $$ が成り立つと仮定して $h=f\circ\Phi$ が成り立つことを示せばよい。命題10.2の $(2)$ より特に、 $$ f(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(x),\quad h(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(\Phi(x))\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから、 $$ h(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(\Phi(x))=f(\Phi(x))\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) $$ である。よって $h=f\circ\Phi$ であるから $(**)$ は連続である。
  • $(4)$ 定義10.1における $\mathcal{S}_N$ 上のノルムの列 $(p_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を考える。任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $f$ は有界なので $[f]\in L^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \lVert f\rVert_{\infty}=\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert f(x)\rvert\leq p_n(f)\quad(\forall f\in \mathcal{S}_N,\forall n\in\mathbb{N}) $$ *6であるから $p=\infty$ の場合は $(****)$ は連続である。$p\in [1,\infty)$ とする。$2np>N$ なる $n\in\mathbb{N}$ を取る。 $$ (1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert f(x)\rvert\leq p_n(f)\quad(\forall f\in \mathcal{S}_N,\forall x\in\mathbb{R}^N) $$ であるから、極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)より、 $$ \int_{\mathbb{R}^N}\lvert f(x)\rvert^pdx\leq\int_{\mathbb{R}^N}\frac{p_n(f)^p}{(1+\lvert x\rvert^2)^{np}}dx =\left(\mu(S_{N-1})\int_{[0,\infty)}\frac{r^{N-1}}{(1+r^2)^{np}}dr\right)p_n(f)^p\quad(\forall f\in \mathcal{S}_N)\quad\quad(*****) $$ が成り立つ。ただし $\mu(S_{N-1})$ は $S_{N-1}=\{x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert=1\}$ の面積測度(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定義16.8)である。ここで $2np>N$ より、 $$ \int_{[0,\infty)}\frac{r^{N-1}}{(1+r^2)^{np}}dr\leq 1+\int_{[1,\infty)}r^{N-2np-1}dr=1+\frac{1}{2np-N}<\infty $$ であるから、 $$ C:=\left(\mu(S_{N-1})\int_{[0,\infty)}\frac{r^{N-1}}{(1+r^2)^{np}}dr\right)^{\frac{1}{p}}<\infty $$ とおけば $(*****)$ より、 $$ \lVert f\rVert_p\leq Cp_n(f)\quad(\forall f\in \mathcal{S}_N) $$ となる。よって $p\in [1,\infty)$ の場合も $\mathcal{S}_N\subset L^p(\mathbb{R}^N)$ であり、 $(****)$ は連続である。

13. $L^1(\mathbb{R}^N)$ のFourier変換

定義13.1($L^1(\mathbb{R}^N)$ のFourier変換)

任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し $\widehat{[f]}:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ \widehat{[f]}(k):=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-ik\cdot x}dx\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する。$\widehat{[f]}$ を $[f]$ のFourier変換と言う。$\widehat{[f]}$ は $\widehat{f}$ とも表す。

注意13.2($L^1(\mathbb{R}^N)$ の元のFourier変換は有界連続関数)

任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対しLebesgue優収束定理より $\widehat{[f]}:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ は連続関数である。また、 $$ \sup_{k\in\mathbb{R}^N}\lvert \widehat{[f]}(k)\rvert \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert f\rVert_1 $$ であるから $\widehat{[f]}$ は有界である。

補題13.3

任意の $f\in \mathcal{S}_N\subset L^1(\mathbb{R}^N)$*7、任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ に対し、

  • $(1)$ $\text{id}_j\widehat{f}=-i\widehat{(\partial_jf)}$ が成り立つ。
  • $(2)$ $\widehat{f}$ は偏導関数 $\partial_j\widehat{f}$ を持ち、$\partial_j\widehat{f}=-i\widehat{(\text{id}_jf)}$*8が成り立つ。

証明

  • $(1)$ 任意の $k\in \mathbb{R}^N$ を取る。$e_{-k}:\mathbb{R}^N\ni x\mapsto e^{-ik\cdot x}\in \mathbb{C}$ とおくと、 $$ \begin{aligned} (2\pi)^{\frac{N}{2}}\widehat{(\partial_jf)}(k)&=\int_{\mathbb{R}^N}\partial_jf(x)e_{-k}(x)dx =\int_{\mathbb{R}^N}\partial_j(fe_{-k})(x)dx-\int_{\mathbb{R}^N}f(x)\partial_je_{-k}(x)dx\\ &=\int_{\mathbb{R}^N}\partial_j(fe_{-k})(x)dx+ik_j(2\pi)^{\frac{N}{2}}\widehat{f}(k)\quad\quad(*) \end{aligned} $$ である。$e_{-k}$ は全ての偏導関数が有界な $C^\infty$ 級関数であるので $fe_{-k}\in \mathcal{S}_N$ である。よって命題10.2の $(1)$ より $\lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}f(x)e_{-k}(x)=0$ であるのでFubiniの定理と微積分学の基本定理より $(*)$ の右辺の第一項は $0$ である*9。ゆえに、 $$ \widehat{(\partial_jf)}(k)=ik_j\widehat{f}(k) $$ であるので $\text{id}_j\widehat{f}=-i\widehat{(\partial_jf)}$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $k\in \mathbb{R}^N$、任意の $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ に対し、 $$ \frac{\widehat{f}(k+he_j)-\widehat{f}(k)}{h}=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-ik\cdot x}\left(\frac{e^{-ihx_j}-1}{h}\right)dx $$ である。微積分学の基本定理より、 $$ \left\lvert f(x)e^{-ik\cdot x}\left(\frac{e^{-ihx_j}-1}{h}\right)\right\rvert =\lvert x_jf(x)\rvert\left\lvert\int_{0}^{1}e^{-ih\theta x_j}d\theta\right\rvert\leq\lvert x_jf(x)\rvert $$ であり、$\text{id}_jf\in \mathcal{S}_N\subset L^1(\mathbb{R}^N)$ であるから、Lebesgue優収束定理より、 $$ \partial_j\widehat{f}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-ik\cdot x}(-ix_j)dx=-i\widehat{(\text{id}_jf)}(k) $$ となる。よって $\partial_j\widehat{f}=-i\widehat{(\text{id}_jf)}$ が成り立つ。

命題13.4(Fourier変換の基本性質)

Fourier変換について、

  • $(1)$ 任意の $[f],[g]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(x)g(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}f(x)\widehat{g}(x)dx $$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と任意の $y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \widehat{T_y[f]}=e_{-y}\widehat{[f]},\quad\widehat{e_y[f]}=T_y\widehat{[f]} $$ が成り立つ。ただし $T_y[f]$ は $[f]$ の $y$ による平行移動(定義8.4)であり、$e_y(x)=e^{ix\cdot y}$ $(\forall x\in \mathbb{R}^N)$ である。
  • $(3)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と任意の正則行列 $A\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$ に対し、 $$ \widehat{([f\circ A])}=\frac{1}{\lvert{\rm det}(A)\rvert}\widehat{[f]}\circ {A^{-1}}^t $$ が成り立つ。
  • $(4)$ 任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $\widehat{f}\in \mathcal{S}_N$ であり、 $$ \partial^{\alpha}\widehat{f}=(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{(\text{id}^{\alpha}f)},\quad \text{id}^{\alpha}\widehat{f}=(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{(\partial^{\alpha}f)}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。
  • $(5)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し $\widehat{[f]}\in C_0(\mathbb{R}^N)$(無限遠で消える連続関数)である。

証明

  • $(1)$ 注意13.2より $\widehat{f},\widehat{g}:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ は有界連続関数なので $\widehat{f}g,f\widehat{g}\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ であり、Fubiniの定理より、 $$ \begin{aligned} \int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(x)g(x)dx&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}f(k)g(x)e^{-ik\cdot x}dk\right)dx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}f(k)g(x)e^{-ik\cdot x}dx\right)dk\\ &=\int_{\mathbb{R}^N}f(k)\widehat{g}(k)dk \end{aligned} $$ である。
  • $(2)$ Lebesgue測度の平行移動不変性(測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質命題37.1)より任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し $T_y[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \begin{aligned} \widehat{T_y[f]}(k)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x-y)e^{-ik\cdot x}dx =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-ik\cdot (x+y)}dx\\ &=e^{-ik\cdot y}\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-ik\cdot x}dx=e_{-k}(y)\widehat{[f]}(k)\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。よって $\widehat{T_y[f]}=e_{-k}\widehat{[f]}$ である。また、 $$ \begin{aligned} \widehat{e_y[f]}(k)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{iy\cdot x}e^{-ik\cdot x}dx =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-i(k-y)\cdot x}dx\\ &=\widehat{[f]}(k-y)=T_y\widehat{[f]}(k)\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。よって $\widehat{e_y[f]}=T_y\widehat{[f]}$ である。
  • $(3)$ 変数変換公式(測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質補題40.3)より、 $$ \begin{aligned} &\widehat{[f\circ A]}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(Ax)e^{-ik\cdot x}dx =\frac{1}{\lvert{\rm det}(A)\rvert (2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-ik\cdot (A^{-1}x)}dx\\ &=\frac{1}{\lvert{\rm det}(A)\rvert (2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{-i({A^{-1}}^tk)\cdot x}dx =\frac{1}{\lvert{\rm det}(A)\rvert}\widehat{[f]}({A^{-1}}^tk)\quad(\forall k\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。よって $\widehat{([f\circ A])}=\frac{1}{\lvert{\rm det}(A)\rvert}\widehat{[f]}\circ {A^{-1}}^t$ である。
  • $(4)$ 任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $(*)$ が成り立つことは補題13.3による。任意の $f\in \mathcal{S}_N$、任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}\widehat{f}=(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\text{id}^{\beta}\widehat{(\text{id}^{\alpha}f)}=(-i)^{\lvert\alpha\rvert+\lvert\beta\rvert}\widehat{(\partial^{\beta}\text{id}^{\alpha}f)} $$ であり、注意13.2より右辺は有界なので $\widehat{f}\in \mathcal{S}_N$ である。
  • $(5)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対しベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系16.12の $(3)$ より $D(\mathbb{R}^N)\subset \mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert f_i-f\rVert_1=0$ を満たすものが取れる。注意13.2より、 $$ \sup_{k\in \mathbb{R}^N}\lvert \widehat{f_i}(k)-\widehat{f}(k)\rvert\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert f_i-f\rVert_1\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。ここで $(4)$ と命題10.2の $(1)$ より $\widehat{f_i}\in\mathcal{S}_N\subset C_0(\mathbb{R}^N)$ $(\forall i\in\mathbb{N})$ であり、$C_0(\mathbb{R}^N)$ は $\sup$ ノルムに関して閉であるから $\widehat{f}\in C_0(\mathbb{R}^N)$ である。

14. Gauss関数とFourier変換

定義14.1(Gauss関数)

$g_N:\mathbb{R}^N\rightarrow (0,\infty)$ を、 $$ g_N(x):=\exp\left(-\frac{\lvert x\rvert^2}{2}\right)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する。$g_N$ を $\mathbb{R}^N$ 上のGauss関数と言う。次の命題14.2より $g_N\in \mathcal{S}_N$ であり $g_N$ のFourier変換は $g_N$ 自身である。

命題14.2(Gauss関数とFourier変換)

Gauss関数 $g_N:\mathbb{R}^N\rightarrow (0,\infty)$ は $\mathcal{S}_N$ に属し、 $$ \widehat{g_N}=g_N\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

チェインルールより $g_N\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり、任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}g_N=p_{\alpha,\beta}g_N $$ なる多項式 $p_{\alpha,\beta}\in \mathcal{P}_N$ が取れる。そして任意の $n\in \mathbb{Z}_+$ に対し、 $$ \lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}\lvert x\rvert^{2n}\exp\left(-\frac{\lvert x\rvert^2}{2}\right)=\lim_{t\rightarrow\infty}\frac{t^n}{\exp(\frac{t}{2})}=0 $$ であるから、 $$ \lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}x^{\beta}\partial^{\alpha}g_N(x) =\lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}p_{\alpha,\beta}(x)g_N(x)=0 $$ である。これより $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}g_N$ は無限遠で消える連続関数であるから有界なので $g_N\in \mathcal{S}_N$ である。 $$ g_N(x)=g_1(x_1)\ldots g_1(x_N)\quad(\forall x=(x_1,\ldots,x_N)\in \mathbb{R}^N) $$ であり、Fubiniの定理より、 $$ \widehat{g_N}(k)=\widehat{g_1}(k_1)\ldots \widehat{g_1}(k_N)\quad(\forall k=(k_1,\ldots,k_N)\in\mathbb{R}^N) $$ であるから、$(*)$ が成り立つことを示すには $N=1$ として示せば十分である。$g:=g_1$ とおく。Fubiniの定理と極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)、微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} \left(\int_{\mathbb{R}}g(x)dx\right)^2&=\int_{\mathbb{R}^2}g_2(x,y)dxdy =2\pi\int_{[0,\infty)}r\exp\left(-\frac{r^2}{2}\right)dr\\ &=-2\pi\int_{[0,\infty)}\frac{d}{dr}\exp\left(-\frac{r^2}{2}\right)dr=2\pi \end{aligned} $$ であるから、 $$ \widehat{g}(0)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{\mathbb{R}}g(x)dx=1=g(0)\quad\quad(**) $$ である。 $$ g'+\text{id} g=0\quad\quad(***) $$ であり、この両辺をFourier変換すると命題13.4の $(4)$ より、 $$ \text{id}\widehat{g}+\widehat{g}'=0\quad\quad(****) $$ を得る。よって、 $$ \mathbb{R}\ni x\mapsto \frac{\widehat{g}(x)}{g(x)}\in \mathbb{C} $$ の導関数は $(***)$, $(****)$ より、 $$ \left(\frac{\widehat{g}}{g}\right)'=\frac{\widehat{g}'}{g}-\frac{\widehat{g}g'}{g^2} =-\frac{\text{id}\widehat{g}g}{g^2}+\frac{\text{id}\widehat{g}g}{g^2}=0 $$ である。ゆえに平均値の定理と $(**)$ より、 $$ \frac{\widehat{g}(x)}{g(x)}=\frac{\widehat{g}(0)}{g(0)}=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}) $$ であるので $\widehat{g}=g$ が成り立つ。

15. $L^1(\mathbb{R}^N)$ のFourier逆変換

命題15.1(Fourier逆変換公式)

$f\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ が有界連続であり、$\widehat{f}\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ ならば、 $$ f(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(k)e^{ik\cdot x}dk\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ が成り立つ。

証明

$g$ を $\mathbb{R}^N$ 上のGauss関数(定義14.1)とする。また任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $f_n\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ f_n(x):=f\left(\frac{1}{n}x\right)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ とおく。$\widehat{g}=g$(命題14.2)であること、$f,g$の有界連続性、 Lebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} &(2\pi)^{\frac{N}{2}}f(0)=f(0)(2\pi)^{\frac{N}{2}}\widehat{g}(0)=f(0)\int_{\mathbb{R}^N}g(x)dx=f(0)\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{g}(x)dx\\ &=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N}f_n(x)\widehat{g}(x)dx =\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f_n}(x)g(x)dx =\lim_{n\rightarrow\infty}n^N\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(nx)g(x)dx\\ &=\lim_{n\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(x)g\left(\frac{x}{n}\right)dx =g(0)\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(k)dk \end{aligned} $$ となる。ただし5番目の等号で命題13.4の$(1)$、6番目の等号で命題13.4の$(3)$、7番目の等号で変数変換公式(測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質補題40.3)を用いた。よって、 $$ f(0)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(k)dk $$ が成り立つ。任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し $T_{-x}f=f(\cdot+x)\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ も有界連続であるから、上の結果と命題13.4の $(2)$ より、 $$ f(x)=T_{-x}f(0)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{T_{-x}f}(k)dk =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(k)e^{ik\cdot x}dk $$ となる。

定義15.2(Fourier逆変換)

任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し $\widecheck{[f]}:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ \widecheck{[f]}(k):=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(x)e^{ik\cdot x}dx\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する。$\widecheck{[f]}$ を $[f]$ のFourier逆変換と言う。$\widecheck{[f]}$ は $\widecheck{f}$ とも表す。

任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対しLebesgue優収束定理より $\widecheck{[f]}:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ は連続関数であり、 $$ \sup_{k\in\mathbb{R}^N}\lvert \widecheck{[f]}(k)\rvert \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert f\rVert_1 $$ であるから $\widecheck{[f]}$ は有界である。

命題15.3(Fourier逆変換の基本性質)

Fourier逆変換について、

  • $(1)$ 任意の $[f],[g]\in L^1(\mathbb{R}^N)$に対し、 $$ \int_{\mathbb{R}^N}\widecheck{f}(x)g(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}f(x)\widecheck{g}(x)dx $$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と任意の $y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \widecheck{T_y[f]}=e_{y}\widehat{[f]},\quad\widecheck{e_y[f]}=T_{-y}\widecheck{[f]} $$ が成り立つ。ただし$T_y[f]$ は $[f]$ の $y$ による平行移動(定義8.4)であり、$e_y(x)=e^{ix\cdot y}$ $(\forall x\in \mathbb{R}^N)$ である。
  • $(3)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と任意の正則行列 $A\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{R})$ に対し、 $$ \widecheck{([f\circ A])}=\frac{1}{\lvert{\rm det}(A)\rvert}\widecheck{[f]}\circ {A^{-1}}^t $$ が成り立つ。
  • $(4)$ 任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $\widecheck{f}\in \mathcal{S}_N$ であり、 $$ \partial^{\alpha}\widecheck{f}=i^{\lvert\alpha\rvert}\widecheck{(\text{id}^{\alpha}f)},\quad \text{id}^{\alpha}\widecheck{f}=i^{\lvert\alpha\rvert}\widecheck{(\partial^{\alpha}f)}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N) $$ が成り立つ。
  • $(5)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し $\widecheck{[f]}\in C_0(\mathbb{R}^N)$(無限遠で消える連続関数)である。
  • $(6)$ Gauss関数 $g\in \mathcal{S}_N$(定義14.1)に対し $\widecheck{g}=g$ が成り立つ。
  • $(7)$ $f\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ が有界連続関数であり、$\widecheck{f}\in \mathcal{L}^1(\mathbb{R}^N)$ ならば、 $$ f(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\widecheck{f}(k)e^{-ik\cdot x}dk\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ が成り立つ。

証明

$(1)\sim (5)$ は命題13.4と全く同様にして示せる。$(6),(7)$はそれぞれ命題14.2命題15.1と全く同様にして示せる。

16. Fréchet空間 $\mathcal{S}_N$ 上の自己同型写像としてのFourier(逆)変換

定義16.1(反転)

$u\in D'(\mathbb{R}^N)$ の $C^\infty$ 級同相写像 $$ \mathbb{R}^N\ni x\mapsto -x\in \mathbb{R}^N $$ による変数変換(定義8.1)を $u_{-1}\in D'(\mathbb{R}^N)$ と表す。任意の $[f]\in L^1_{\rm loc}(\mathbb{R}^N)\subset D'(\mathbb{R}^N)$ に対し $f_{-1}(x):=f(-x)$ $(\forall x\in \mathbb{R}^N)$ とおけば、$[f]_{-1}=[f_{-1}]$ である。

命題13.4の $(4)$、命題15.3の $(4)$ より任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $\widehat{f},\widecheck{f}\in \mathcal{S}_N$ である。

定理16.2(Fréchet空間 $\mathcal{S}_N$ 上の自己同型写像としてのFourier変換)

急減少関数空間 $\mathcal{S}_N$ 上のFourier変換 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto \widehat{f}\in \mathcal{S}_N\quad\quad(*) $$ とFourier逆変換 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto \widecheck{f}\in \mathcal{S}_N\quad\quad(**) $$ はそれぞれFréchet空間 $\mathcal{S}_N$ 上の線形同型同相写像であり、互いに逆写像である。また、 $$ \widehat{\widehat{f}}=\widecheck{\widecheck{f}}=f_{-1}\quad\quad(***) $$ である。

証明

$(*), (**)$ が互いに逆写像であることと$(***)$が成り立つことはFourier逆変換公式(命題15.1命題15.3の $(7)$)による。$(*)$ が連続であることを示す。閉グラフ定理(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定理19.3)より $\mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in \mathbb{N}}$ と $f,g\in \mathcal{S}_N$ に対しFréchet空間 $\mathcal{S}_N$ の位相で、 $$ f_i\rightarrow f,\quad \widehat{f_i}\rightarrow g $$ が成り立つとして $\widehat{f}=g$ が成り立つことを示せばよい。このとき $(\widehat{f_i})_{i\in\mathbb{N}}$ は特に $g$ に一様収束する。また命題12.2の $(4)$ より $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f$ に $L^1$ ノルムで収束するから、 $$ \sup_{x\in \mathbb{R}^N}\lvert\widehat{f_i}(x)-\widehat{f}(x)\rvert\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert f_i-f\rVert_1\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ より $(\widehat{f_i})_{i\in\mathbb{N}}$ は $\widehat{f}$ に一様収束する。よって $\widehat{f}=g$ であるから $(*)$ は連続である。 $(**)$ が連続であることも全く同様にして示せる。

17. 緩増加超関数空間 $\mathcal{S}_N'$

命題17.1($\mathcal{S}_N$ における $D(\mathbb{R}^N)$ の稠密性)

Fréchet空間 $\mathcal{S}_N$ において $D(\mathbb{R}^N)$ は稠密である。

証明

Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $\omega\in D(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ 0\leq \omega(x)\leq1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad\omega(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq1) $$ なるものが取れる。任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $\omega_n\in D(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ \omega_n(x):=\omega\left(\frac{x}{n}\right)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ として定義すると、 $$ 0\leq\omega_n(x)\leq1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega_n(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n)\quad\quad(*) $$ である。今、任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(\omega_nf)_{n\in\mathbb{N}}$ が $\mathcal{S}_N$ の位相で $f$ に収束することを示す。そのためには任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}(\omega_nf))_{n\in\mathbb{N}}$ が $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f$ に一様収束することを示せばよい(命題10.2の$(2)$を参照)。 Leibnizルール(命題1.3)より任意の $n\in \mathbb{N}$、任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(\omega_nf)(x)-\partial^{\alpha}f(x)=(\omega_n-1)\partial^{\alpha}f(x)+\sum_{0<\gamma\leq \alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{n^{\lvert\gamma\rvert}}\partial^{\gamma}\omega\left(\frac{x}{n}\right)\partial^{\alpha-\gamma}f(x) $$ であるから $\sup$ ノルムに関して、 $$ \lVert \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}(\omega_nf)-\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f\rVert \leq \lVert (\omega_n-1)\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f\rVert+\sum_{0<\gamma\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{n^{\lvert\gamma\rvert}}\lVert\partial^{\gamma}\omega\rVert\lVert \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha-\gamma}f\rVert\quad\quad(**) $$ となる。$(**)$ の右辺の第二項について $\sum$ の中の $\gamma$ が $0<\lvert\gamma\rvert$ であることから、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{0<\gamma\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{n^{\lvert\gamma\rvert}}\lVert\partial^{\gamma}\omega\rVert\lVert \text{id}^{\beta}\partial^{\alpha-\gamma}f\rVert=0 $$ である。また $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f\in C_0(\mathbb{R}^N)$(無限遠で消える連続関数)であるから*10 任意の$\epsilon\in (0,\infty)$ に対し十分大きい $n_0\in\mathbb{N}$ を取れば、 $$ \lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)\rvert\leq\epsilon\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\geq n_0) $$ となる。よって $(*)$ より $(**)$ の右辺の第一項について、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert (\omega_n-1)\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f\rVert=0 $$ である。ゆえに $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}(\omega_nf))_{n\in\mathbb{N}}$ は $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}f$ に一様収束する。

命題17.2

Fréchet空間 $\mathcal{S}_N$ の位相(定義10.1)を定めるノルムの列 $$ p_n:\mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto \underset{\lvert\alpha\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{x\in \mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert\partial^{\alpha}\varphi(x)\rvert\in [0,\infty)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ を考える。このとき線形汎関数 $u:D(\mathbb{R}^N)\rightarrow\mathbb{C}$ に対し次は互いに同値である。

  • $(1)$ $u$ は $\mathcal{S}_N$ の相対位相で連続である。
  • $(2)$ ある $n\in\mathbb{N}$ と $C\in [0,\infty)$ に対し、 $$ \lvert u(\varphi)\rvert\leq Cp_n(\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つ。

そして $(1),(2)$ が成り立つとき $u$ は $\mathcal{S}_N$ 上の連続線形汎関数に一意拡張できる。

証明

$(2)\Rightarrow(1)$ は自明である。$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$ が成り立つとする。このとき $\{\varphi\in D(\mathbb{R}^N):\lvert u(\varphi)\rvert<1\}$ は $0\in D(\mathbb{R}^N)$ の $\mathcal{S}_N$ の相対位相に関する開近傍である。 よって位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題8.6の $(3)$ よりある $n\in \mathbb{N}$ と $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し、 $$ \{\varphi\in D(\mathbb{R}^N):p_n(\varphi)<\epsilon\}\subset \{\varphi\in D(\mathbb{R}^N):\lvert u(\varphi)\rvert<1\} $$ が成り立つ*11。 これは、 $$ \lvert u(\varphi)\rvert\leq \frac{1}{\epsilon}p_n(\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)) $$ を意味するので $(2)$ が成り立つ。
命題17.1より $D(\mathbb{R}^N)$ は $\mathcal{S}_N$ において稠密であるので、$(2)$ が成り立つならば $u$ は $\mathcal{S}_N$ 上の連続線形汎関数 $\widetilde{u}:\mathcal{S}_N\rightarrow \mathbb{C}$ で、 $$ \lvert\widetilde{u}(\varphi)\rvert\leq Cp_n(\varphi)\quad(\forall \varphi\in \mathcal{S}_N) $$ を満たすものに拡張できる*12。 このとき $\widetilde{u}$ は $\mathcal{S}_N$ 上の連続線形汎関数である。拡張の一意性は $D(\mathbb{R}^N)$ の $\mathcal{S}_N$ における稠密性による。

注意17.3

$K\subset \mathbb{R}^N$ をコンパクト集合とする。Fréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$(定義3.7)の収束列は $\mathcal{S}_N$ の位相で収束する。実際、$(\varphi_i)_{i\in\mathbb{N}}$ がFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ において $\varphi\in D_K(\mathbb{R}^N)$ に収束するとすると、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}\varphi_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\partial^{\alpha}\varphi$ に一様収束する。$\partial^{\alpha}\varphi_i,\partial^{\alpha}\varphi$ の台は $K$ に含まれ、任意の $\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\text{id}^{\beta}$ はコンパクト集合 $K$ 上で有界であるから $(\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}\varphi_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}\varphi$ に一様収束する。すなわち $(\varphi_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\mathcal{S}_N$ の位相で $\varphi$ に収束する。よって $u:D(\mathbb{R}^N)\rightarrow \mathbb{C}$ が $\mathcal{S}_N$ の相対位相で連続ならば $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ である。

定義17,4(緩増加超関数空間 $\mathcal{S}_N'$)

線形汎関数 $u:D(\mathbb{R}^N)\rightarrow\mathbb{C}$ でFréchet空間 $\mathcal{S}_N$ の位相で連続であるものを $\mathbb{R}^N$ 上の緩増加超関数と言う。緩増加超関数全体を $\mathcal{S}_N'$ と表し、これを緩増加超関数空間と言う。注意17.3より $\mathcal{S}_N'\subset D'(\mathbb{R}^N)$ であり、$\mathcal{S}_N'$ は $D'(\mathbb{R}^N)$ の部分空間である。また命題17.2より $\mathcal{S}_N'$ の任意の元 $u$ は $\mathcal{S}_N$ 上の連続線形汎関数に一意拡張できる。そこで $u$ とその一意拡張を同一視することで $\mathcal{S}_N'$ を $\mathcal{S}_N$ 上の連続線形汎関数全体とみなす。

命題17.5($\mathcal{S}_N'$ の基本性質)

緩増加超関数空間 $\mathcal{S}_N'$ について次が成り立つ。

  • $(1)$ 任意の $u\in \mathcal{S}_N'$ と任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}u\in \mathcal{S}_N'$.
  • $(2)$ 任意の $u\in \mathcal{S}_N'$ と任意の緩増加関数 $f\in \mathcal{T}_N$ に対し、$fu\in \mathcal{S}_N'$.
  • $(3)$ $\Phi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}^N$ を $C^\infty$ 同相写像で $\Phi,\Phi^{-1}$ の $1$ 階以上の全ての偏導関数が有界であるものとすると、任意の $u\in \mathcal{S}_N'$ に対し $u\circ \Phi\in \mathcal{S}_N'$.
  • $(4)$ 任意の $p\in [1,\infty]$ に対し $L^p(\mathbb{R}^N)\subset \mathcal{S}_N'$.
  • $(5)$ 多項式的に増加する任意のBorel関数 $f:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ に対し $[f]\in \mathcal{S}_N'$. 特に$\mathcal{T}_N\subset \mathcal{S}_N'$.

証明

  • $(1)$ 命題12.2の $(1)$ による。
  • $(2)$ 命題12.2の $(2)$ による。
  • $(3)$ 命題12.2の $(3)$ による。
  • $(4)$ 命題12.2の $(4)$ とHölderの不等式による。
  • $(5)$ $f:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を多項式的に増加するBorel関数とすると、ある $C\in [0,\infty)$ と $n\in\mathbb{N}$ に対し、 $$ \lvert f(x)\rvert\leq C(1+\lvert x\rvert^2)^n\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ が成り立つ。$\mathcal{S}_N$ の位相で $\varphi_i\rightarrow \varphi$ ならば命題12.2の $(2)$ より $\mathcal{S}_N$ の位相で、 $$ (1+\lvert x\rvert^2)^n\varphi_i\rightarrow (1+\lvert x\rvert^2)\varphi\quad(\forall i\rightarrow\infty)\quad\quad(*) $$ である。よって命題12.2の $(4)$ より $(*)$ は $L^1$ ノルムに関して成り立つ。 ゆえに、 $$ \begin{aligned} &\lvert[f](\varphi_i)-[f](\varphi)\rvert\leq \int_{\mathbb{R}^N}\lvert f(x)\rvert\lvert\varphi_i(x)-\varphi(x)\rvert dx\\ &\leq \int_{\mathbb{R}^N}C(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert \varphi_i(x)-\varphi(x)\rvert dx\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ である。

18. $\mathcal{S}_N'$ のFourier変換

定義18.1(緩増加超関数のFourier変換)

定理17.2より $\mathcal{S}_N$ 上のFourier変換 $$ \mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto \widehat{\varphi}\in \mathcal{S}_N $$ と $\mathcal{S}_N$ 上のFourier逆変換 $$ \mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto \widecheck{\varphi}\in \mathcal{S}_N $$ はFréchet空間 $\mathcal{S}_N$ 上の連続線形写像であるから、任意の緩増加超関数 $u\in \mathcal{S}_N'$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\widehat{u}:\mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto u(\widehat{\varphi})\in \mathbb{C},\\ &\widecheck{u}:\mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto u(\widecheck{\varphi})\in \mathbb{C} \end{aligned} $$ はそれぞれ $\mathcal{S}_N'$ の元である。$\widehat{u}$ を $u$ のFourier変換、$\widecheck{u}$ を $u$ のFourier逆変換と言う。定理17.2より、 $$ \widecheck{\widehat{u}}=u,\quad \widehat{\widecheck{u}}=u,\quad \widehat{\widehat{u}}=\widecheck{\widecheck{u}}=u_{-1} $$ である。

注意18.2($L^1(\mathbb{R}^N)$ のFourier変換と $\mathcal{S}_N'$ のFourier変換の無矛盾性)

任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ に対し、命題13.4の$(1)$、命題15.3の$(1)$より、 $$ \begin{aligned} &[f](\widehat{\varphi})=\int_{\mathbb{R}^N}f(x)\widehat{\varphi}(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f}(x)\varphi(x)dx =\widehat{[f]}(\varphi)\quad(\forall \varphi\in \mathcal{S}_N),\\ &[f](\widecheck{\varphi})=\int_{\mathbb{R}^N}f(x)\widecheck{\varphi}(x)dx=\int_{\mathbb{R}^N}\widecheck{f}(x)\varphi(x)dx =\widecheck{[f]}(\varphi)\quad(\forall \varphi\in \mathcal{S}_N) \end{aligned} $$ である。よって $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ の $\mathcal{S}_N'$ の元としてのFourier変換、Fourier逆変換は、元々の $L^1(\mathbb{R}^N)$ の元としてのFourier変換、Fourier逆変換の定義(定義13.1定義15.2)と矛盾しない。

命題18.3(緩増加超関数のFourier変換の基本性質)

任意の$u\in \mathcal{S}_N'$、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}\widehat{u}=(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{(\text{id}^{\alpha}u)},\quad\text{id}^{\alpha}\widehat{u}=(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{(\partial^{\alpha}u)},\quad\quad(*) $$ $$ \partial^{\alpha}\widecheck{u}=i^{\lvert\alpha\rvert}\widecheck{(\text{id}^{\alpha}u)},\quad \text{id}^{\alpha}\widecheck{u}=i^{\lvert\alpha\rvert}\widecheck{(\partial^{\alpha}u)}\quad\quad(**) $$ が成り立つ。

証明

任意の $\varphi\in \mathcal{S}_N$ に対し命題13.4の $(4)$ より、 $$ \partial^{\alpha}\widehat{u}(\varphi)=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{u}(\partial^{\alpha}\varphi) =(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(\widehat{(\partial^{\alpha}\varphi)}) =(-i)^{\lvert\alpha\rvert}u(\text{id}^{\alpha}\widehat{\varphi}) =(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\text{id}^{\alpha}u(\widehat{\varphi}) =(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{(\text{id}^{\alpha}u)}(\varphi), $$ $$ \text{id}^{\alpha}\widehat{u}(\varphi)=\widehat{u}(\text{id}^{\alpha}\varphi)=u(\widehat{\text{id}^{\alpha}\varphi}) =i^{\lvert\alpha\rvert}u(\partial^{\alpha}\widehat{\varphi}) =(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\partial^{\alpha}u(\widehat{\varphi}) =(-i)^{\lvert\alpha\rvert}\widehat{(\partial^{\alpha}u)}(\varphi) $$ である。よって $(*)$ が成り立つ。全く同様に命題15.3の $(4)$ を用いて $(**)$ が成り立つことも分かる。

19. $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上のユニタリ作用素としてのFourier変換(Plancherelの定理)

定理19.1(Plancherelの定理)

任意の $[f]\in L^2(\mathbb{R}^N)\subset \mathcal{S}_N'$ に対し $\widehat{[f]}\in L^2(\mathbb{R}^N)$、$\widecheck{[f]}\in L^2(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。そして、 $$ \mathcal{F}:L^2(\mathbb{R}^N)\ni [f]\mapsto \widehat{[f]}\in L^2(\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ はHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上のユニタリ作用素(測度と積分6:数え上げ測度と $\ell^p$ 空間定義25.3)であり、 $$ \mathcal{F}^*[f](=\mathcal{F}^{-1}[f])=\widecheck{[f]}\quad(\forall [f]\in L^2(\mathbb{R}^N))\quad\quad(**) $$ が成り立つ。

証明

ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系16.12の $(3)$ より $L^2(\mathbb{R}^N)$ において $D(\mathbb{R}^N)$(したがって $\mathcal{S}_N$) は稠密である。そこでHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ の稠密部分空間 $\mathcal{S}_N$ 上で定義された線形作用素 $$ \mathcal{F}:\mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto \widehat{\varphi}\in L^2(\mathbb{R}^N) $$ を考える。任意の $\varphi\in \mathcal{S}_N$ に対し、 $$ \overline{\widehat{\varphi}}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\overline{\varphi(x)e^{-ik\cdot x}}dx= \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\overline{\varphi(x)}e^{ik\cdot x}dx=\widecheck{\overline{\varphi}}(k)\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) $$ であり、命題13.4命題15.2の $(1)$ とFourier変換とFourier逆変換が互いに逆写像であることから、 $$ \begin{aligned} &(\mathcal{F}\varphi\mid \mathcal{F}\psi)_2=\int_{\mathbb{R}^N}\overline{\widehat{\varphi}}(k)\widehat{\psi}(k)dk =\int_{\mathbb{R}^N}\widecheck{\overline{\varphi}}(k)\widehat{\psi}(k)dk =\int_{\mathbb{R}^N}\overline{\varphi}(k)\widecheck{\widehat{\psi}}(k)dk\\ &=\int_{\mathbb{R}^N}\overline{\varphi}(k)\psi(k)dk =(\varphi\mid \psi)_2\quad(\forall \varphi,\psi\in \mathcal{S}_N) \end{aligned} $$ である。よって特に、 $$ \lVert \mathcal{F}\varphi\rVert_2=\lVert \varphi\rVert_2\quad(\forall \varphi\in \mathcal{S}_N) $$ である。ゆえに $\mathcal{F}$ は $L^2(\mathbb{R}^N)=\overline{\mathcal{S}_N}^{\lVert \cdot\rVert_2}$ 上の等長線形写像に一意拡張できる(位相線形空間1:ノルムと内積命題3.6)。その一意拡張もそのまま $\mathcal{F}:L^2(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^N)$ と表す。全く対称的な議論により、 $$ \mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto \widecheck{\varphi}\in L^2(\mathbb{R}^N) $$ が $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上の等長線形写像に一意拡張できることも分かり、$\mathcal{S}_N$ 上でFourier変換とFourier逆変換が互いに逆写像であることから、その一意拡張は $\mathcal{F}:L^2(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^N)$ の逆写像 $\mathcal{F}^{-1}:L^2(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^N)$である。よって $\mathcal{F}$はHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上のユニタリ作用素である。 任意の $[f]\in L^2(\mathbb{R}^N)$ に対し $[f]$ の $\mathcal{S}_N'$ の元としてのFourier変換 $\widehat{[f]}\in \mathcal{S}_N'$ が $\mathcal{F}[f]\in L^2(\mathbb{R}^N)$ と一致することを示す。$L^2(\mathbb{R}^N)$ のノルムで $[f]$ に収束する $\mathcal{S}_N$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を取れば、任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し命題13.4の $(1)$ とHölderの不等式より、 $$ \begin{aligned} \widehat{[f]}(\varphi)&=[f](\widehat{\varphi})= \int_{\mathbb{R}^N}f(x)\widehat{\varphi}(x)dx= \lim_{i\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N}f_i(x)\widehat{\varphi}(x)dx=\lim_{i\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N}\widehat{f_i}(x)\varphi(x)dx\\ &=\lim_{i\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N}(\mathcal{F}f_i)(x)\varphi(x)dx =\int_{\mathbb{R}^N}\mathcal{F}[f](x)\varphi(x)dx=\mathcal{F}[f](\varphi) \end{aligned} $$ である。よって $\widehat{[f]}=\mathcal{F}[f]\in L^2(\mathbb{R}^N)$ である。全く同様にして任意の $[f]\in L^2(\mathbb{R}^N)$ に対し $[f]$ の $\mathcal{S}_N'$ の元としてのFourier逆変換 $\widecheck{[f]}\in \mathcal{S}_N'$ に対し、$\widecheck{[f]}={\cal F}^{-1}[f]\in L^2(\mathbb{R}^N)$ が成り立つことも分かる。ゆえに $(*)$ はHilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上のユニタリ作用素であり、$(**)$ が成り立つ。

20. コンパクト台超関数空間 $\mathcal{E}_N'$

命題20.1($\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ における $D(\mathbb{R}^N)$ の稠密性)

Fréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$(定義3.3)において $D(\mathbb{R}^N)$ は稠密である。

証明

Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $\omega\in D(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ 0\leq \omega(x)\leq 1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega(x)=1\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq 1) $$ を満たすものが取れる。任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し $\omega_n\in D(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ \omega_n(x):=\omega(\frac{x}{n})\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ として定義すると、 $$ 0\leq \omega_n(x)\leq1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega_n(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n)\quad\quad(*) $$ である。今、任意の $f\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ に対し $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(\omega_nf)_{n\in\mathbb{N}}$ が $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で $f$ に収束することを示す。任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し $(\partial^{\alpha}(\omega_nf))_{n\in\mathbb{N}}$ が $\partial^{\alpha}f$ に $K$ 上で一様収束することを示せばよい(命題3.4の$(1)$を参照)。Leibnizルール(命題1.3)より任意の $n\in \mathbb{N}$、任意の $x\in K$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(\omega_nf)(x)-\partial^{\alpha}f(x) =(\omega_n(x)-1)\partial^{\alpha}f(x)+\sum_{0<\gamma\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{n^{\lvert\gamma\rvert}}\partial^{\gamma}\omega(\frac{x}{n})\partial^{\alpha-\gamma}f(x)\quad\quad(**) $$ である。$(*)$ より十分大きい $n_0\in\mathbb{N}$ を取れば、 $$ (\omega_n(x)-1)=0\quad(\forall x\in K,\forall n\geq n_0) $$ であるから、$(**)$ の右辺の第一項の $K$ 上での $\sup$ ノルムについて、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\sup_{x\in K}\lvert (\omega_n(x)-1)\partial^{\alpha}f(x)\rvert=0 $$ が成り立つ。また $\partial^{\alpha-\gamma}f$ の $K$ 上での有界性と $\lvert\gamma\rvert>0$ であることより $(**)$ の右辺の第二項の $K$ 上での $\sup$ ノルムについて、 $$ \sup_{x\in K}\left\lvert \sum_{0<\gamma\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{n^{\lvert\gamma\rvert}}\partial^{\gamma}\omega(\frac{x}{n})\partial^{\alpha-\gamma}f(x)\right\rvert \leq \sum_{0<\gamma\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{n^{\lvert\gamma\rvert}}\lVert\partial^{\gamma}\omega\rVert_{\infty}\sup_{x\in K}\lvert \partial^{\alpha-\gamma}f(x)\rvert\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) $$ となる。よって $(**)$ より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\sup_{x\in K}\lvert \partial^{\alpha}(\omega_nf)(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert=0 $$ が成り立つので $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(\omega_nf)_{n\in\mathbb{N}}$ は $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で $f$ に収束する。

命題20.2

線形汎関数 $u:D(\mathbb{R}^N)\rightarrow\mathbb{C}$ について次は互いに同値である。

  • $(1)$ $u$ はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の相対位相で連続である。
  • $(2)$ $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ であり $\text{supp}(u)$ はコンパクトである。
  • $(3)$ $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ であり、ある $h\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し $u=hu$ となる。

そして $(1),(2),(3)$ が成り立つとき、$u$ はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形汎関数に一意拡張できる。

証明

$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$(1)$が成り立つとする。各コンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対しFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ の位相は $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の相対位相である(定義3.7を参照)ので $D_K(\mathbb{R}^N)\ni \varphi\mapsto u(\varphi)\in \mathbb{C}$ は連続である。よって $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ である。 $\text{supp}(u)$ がコンパクトではないとすると、任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し $\text{supp}(u)$ は $\overline{B(0,n)}=\{x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n\}$ に含まれないので、超関数の台の定義(定義9.2)より、 $$ u(\varphi_n)=1,\quad \text{supp}(\varphi_n)\subset \mathbb{R}^N\backslash \overline{B(0,n)}=\{x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert>n\} $$ なる $\varphi_n\in D(\mathbb{R}^N)$ が取れる。このとき任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し $(\partial^{\alpha}\varphi_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $K$ 上で $0$ に一様収束するので $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で $\lim_{n\rightarrow\infty}\varphi_n=0$ である。 したがって $u$ の連続性より $\lim_{n\rightarrow\infty}u(\varphi_n)=0$であるが、これは $u(\varphi_n)=1$ $(\forall n\in \mathbb{N})$ に矛盾する。よって $\text{supp}(u)$ はコンパクトである。これより $(1)\Rightarrow(2)$ が成り立つ。
$(2)\Rightarrow(3)$ を示す。$(2)$ が成り立つとする。$\text{supp}(u)\subset U$ を満たす有界開集合 $U\subset \mathbb{R}^N$ を取る。$\overline{U}$ はコンパクトであるからUrysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $h\in D(\mathbb{R}^N)$ で $h(x)=1$ $(\forall x\in \overline{U})$ を満たすものが取れる。このとき任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \text{supp}((1-h)\varphi)\subset \mathbb{R}^N\backslash \overline{U}\subset \mathbb{R}^N\backslash \text{supp}(u) $$ であるから、 $$ u(\varphi)-hu(\varphi)=u((1-h)\varphi)=0 $$ である。ゆえに $u=hu$ であるから $(2)\Rightarrow(3)$ が成り立つ。
$(3)\Rightarrow(1)$ を示す。 $(3)$が成り立つとする。Fréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で $\lim_{n\rightarrow\infty}\varphi_n=\varphi$ であるならば $D_{\text{supp}(h)}(\mathbb{R}^N)$ において $\lim_{n\rightarrow\infty}h\varphi_n=h\varphi$であるから、 $$ hu(\varphi_n)=u(h\varphi_n)\rightarrow u(h\varphi)=hu(\varphi) $$ である。よって $u$ は $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の相対位相で連続である。
$(1),(2),(3) $が成り立つとして $u$ がFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形汎関数に一意拡張できることを示す。一意性は $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ において $D(\mathbb{R}^N)$ が稠密であること(命題20.1)による。存在を示す。$(3)$ より $h\in D(\mathbb{R}^N)$ で $u=hu$ なるものが取れる。そこで、 $$ \widetilde{u}:\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)\ni \varphi\mapsto u(h\varphi)\in \mathbb{C} $$ とおけば $\widetilde{u}$ は $u$ の拡張であり、$(3)\Rightarrow(1)$ の証明で述べたように $\widetilde{u}$ は $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で連続である。 よって存在が示せた。

定義20.3(コンパクト台超関数空間 $\mathcal{E}_N'$)

線形汎関数 $u:D(\mathbb{R}^N)\rightarrow\mathbb{C}$ でFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の相対位相で連続であるようなものを $\mathbb{R}^N$ 上のコンパクト台超関数と言う。$\mathbb{R}^N$ 上のコンパクト台超関数全体を $\mathcal{E}_N'$ と表す。命題20.2より、 $$ \mathcal{E}_N'=\{u\in D'(\mathbb{R}^N):\text{supp}(u)\text{ はコンパクト}\} $$ である。また任意の $u\in \mathcal{E}_N'$ に対し $u$ はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形汎関数に一意拡張できる。そこで $u$ とその一意拡張を同一視することで $\mathcal{E}_N'$ を $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形汎関数全体とみなす。

注意20.4($\mathcal{E}_N'$ は $\mathcal{S}_N'$ に含まれる)

$\mathcal{E}_N'\subset \mathcal{S}_N'$ である。実際、$u\in \mathcal{E}_N'$ とし、$D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(\varphi_i)_{i\in \mathbb{N}}$ が $\mathcal{S}_N$ の位相で $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に収束するとすると、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}\varphi_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\partial^{\alpha}\varphi$ に一様収束するので、特にコンパクト一様収束する。ゆえに $(\varphi_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $\mathcal{E}_N$ の位相で $\varphi$ に収束するので $\lim_{i\rightarrow\infty}u(\varphi_i)=u(\varphi)$ である。ゆえに $u$ は $\mathcal{S}_N$ の位相で連続であるので $u\in \mathcal{S}_N'$ である。

定義20.5(Diracのデルタ超関数)

任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \delta_x:\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)\ni f\mapsto f(x) \in \mathbb{C} $$ は明らかにFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形汎関数である。よって $\delta_x\in \mathcal{E}_N'$ である。そして任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N\backslash \{x\})$ に対し $\delta_x(\varphi)=\varphi(x)=0$ であるから $\text{supp}(\delta_x)\subset \{x\}$ であり、$\delta_x\neq0$ であるから $\text{supp}(\delta_x)=\{x\}$ である。$\delta_x$ を $\{x\}$ を台とするDiracのデルタ超関数と言う。

21. Fréchet空間値連続関数のRiemann積分

定義21.1(分割)

閉直方体 $I=\prod_{j=1}^{N}[a_j,b_j]$ の各辺 $[a_j,b_j]$ に、 $$ a_{j}=t_{j,0}<t_{j,1}<\ldots<t_{j,n(j)}=b_j $$ なる有限個の点が与えられているとする。このとき、 $$ \Delta:=\prod_{j=1}^{N}\{t_{j,0},t_{j,1},\ldots,t_{j,n(j)}\} $$ を $I$ の分割と言い、 $$ K(\Delta):=\left\{\prod_{j=1}^{N}[t_{j,k_j-1},t_{j,k_j}]:j=1,\ldots,N, k_j=1,\ldots,n(j)\right\} $$ の各要素を $\Delta$ によって定まる $I$ の小閉直方体と言う。またこれらの小閉直方体の辺の長さの最大値 $$ d(\Delta):=\underset{\substack{j=1,\ldots,N,\\ k_j=1,\ldots,n(j)}}{{\rm max}}(t_{j,k_j}-t_{j,k_j-1}) $$ を分割 $\Delta$ の幅と言う。さらに各$J = \prod_{j=1}^{N}[t_{j,k_j-1},t_{j,k_j}] \in K(\Delta)$ に対し $$ v(J) := \prod_{j=1}^{N} (t_{j,k_j} - t_{j,k_j-1}) \in \mathbb{R} $$ と定義する。

定義21.2(分割全体のなす有向集合)

閉直方体 $I$ の分割全体を $\mathcal{D}(I)$ と表す。$\Delta_1,\Delta_2\in \mathcal{D}(I)$ に対し、 $$ \Delta_1\leq \Delta_2\quad\iff \quad \Delta_1\subset \Delta_2 $$ として $\mathcal{D}(I)$ における順序 $\leq$ を定義する。$\Delta_1\leq\Delta_2$ のとき $\Delta_2$ を $\Delta_1$ の細分と言う。任意の $\Delta_1,\Delta_2\in \mathcal{D}(I)$ に対し $\Delta_3=\Delta_1\cup\Delta_2\in \mathcal{D}(I)$、$\Delta_1,\Delta_2\leq\Delta_3$ であるから $\mathcal{D}(I)$ はこの順序 $\leq$ によって有向集合である。

定義21.3(Riemann和)

$I$ を閉直方体、$F$ を $\mathbb{C}$ 上の線形空間, $f:I\rightarrow F$ とする。任意の $J\in K(\Delta)$ に対し代表点 $\xi_J\in J$ を取り $\xi:=(\xi_J)_{J\in K(\Delta)}$ とおく。 $$ s(f,\Delta,\xi_{\Delta}):=\sum_{J\in K(\Delta)}f(\xi_J)v(J) $$ を $\Delta$ とその代表点 $\xi_{\Delta}=(\xi_J)_{J\in K(\Delta)}$ によって定まる $f$ のRiemann和と言う。

補題21.4

$(X,d)$ をコンパクト距離空間、$F$ を $\mathbb{C}$ 上のセミノルム空間、 $f:X\rightarrow F$ を連続関数、$p:F\rightarrow [0,\infty)$ を連続なセミノルムとする。このとき任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ に対し $\delta\in (0,\infty)$ が存在し、任意の $x,y \in X$ に対して、 $$ d(x,y)<\delta\quad\Rightarrow\quad p(f(x)-f(y))<\epsilon $$ が成り立つ。

証明

任意の $x\in X$ に対し $X\ni y\mapsto p(f(y)-f(x))\in [0,\infty)$ は連続であるから $\delta_x\in (0,\infty)$ が存在し、任意の $y \in X$ に対して、 $$ d(y,x)<2\delta_x\quad\Rightarrow\quad p(f(y)-f(x))<\frac{\epsilon}{2} $$ となる。$X$ はコンパクトなので有限個の $x_1,\ldots,x_n\in X$ が取れて、 $$ X=\bigcup_{j=1}^{n}B(x_j,\delta_{x_j}) $$ となる。 $$ \delta:={\rm min}(\delta_{x_1},\ldots,\delta_{x_n}) $$ とおき $d(x,y)<\delta$ なる任意の $x,y\in X$ を取る。$x\in B(x_j,\delta_{x_j})$ なる $j\in \{1,\ldots,n\}$ に対し、 $$ d(y,x_j)\leq d(y,x)+d(x,x_j)<2\delta_{x_j} $$ であるから、 $$ p(f(y)-f(x))\leq p(f(y)-f(x_j))+p(f(x_j)-f(x))<\epsilon $$ である。

命題21.5

$I$を閉直方体、$F$ を $\mathbb{C}$ 上のFréchet空間、$f:I\rightarrow F$ を連続関数とする。このときRiemann和からなる $F$ のネット $(s(f,\Delta,\xi_{\Delta}))_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}$ は代表点 $(\xi_{\Delta})_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}$ の取り方によらず唯一つの点 $s(f)\in F$ に収束する。また、 $$ \lim_{d(\Delta)\rightarrow0}s(f,\Delta,\xi_{\Delta})=s(f)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

$\{p_n\}_{n\in\mathbb{N}}$ をFréchet空間 $F$ のセミノルム位相を誘導するセミノルムの可算分離族(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定義15.2)とする。 セミノルム位相の基本性質(位相線形空間2:セミノルム位相と汎弱位相命題8.6の$(3)$)より $0\in F$ の任意の近傍 $V$ に対し $n\in\mathbb{N}$ と $\epsilon\in(0,\infty)$ が存在し $\bigcap_{j=1}^{n}(p_j<\epsilon)\subset V$ となる。そして補題21.4より十分小さい $\delta\in (0,\infty)$ を取れば $d(\Delta),d(\Delta')<\delta$ なる任意の $\Delta,\Delta'\in \mathcal{D}(I)$ と任意の代表点 $\xi_{\Delta}, \eta_{\Delta'}$ に対し、 $$ s(f,\Delta,\xi_{\Delta})-s(f,\Delta',\eta_{\Delta'})\in \bigcap_{j=1}^{n}(p_j<\epsilon)\subset V $$ となる。これより $\lim_{n\rightarrow\infty}d(\Delta_n)=0$ なる $\mathcal{D}(I)$ の列 $(\Delta_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を取れば、$(s(f,\Delta_n,\xi_{\Delta_n}))_{n\in\mathbb{N}}$ はCauchy列であるから収束し、その収束点を $s(f)$ とすれば $(*)$ が成り立つ。そしてネット $(s(f,\Delta,\xi_{\Delta}))_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}$ は代表点 $(\xi_{\Delta})_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}$ の取り方によらず $s(f)$ に収束することが分かる。

定義21.6(Fréchet空間値Riemann積分)

$I$ を閉直方体、$F$ を $\mathbb{C}$ 上のFréchet空間、$f:I\rightarrow F$ を連続関数とする。命題21.5よりRiemann和からなる $F$ のネット $(s(f,\Delta,\xi))_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}$ は代表点 $(\xi_{\Delta})_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}$ の取り方によらず唯一つの点に収束する。それを、 $$ \int_{I}f(x)dx=\lim_{\Delta\in \mathcal{D}(I)}s(f,\Delta,\xi_{\Delta}) $$ と表し、$f$ のRiemann積分と言う。

注意21.7

Fréchet空間値連続関数のRiemann積分は、Fréchet空間が $\mathbb{C}$ の場合は、測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質命題36.7より、Lebesgue測度による積分である。(全く同様にFréchet空間がBanach空間の場合は、Lebesgue測度によるBochner積分(測度と積分9:Bochner積分定義44.1)であることが分かる。)

22. Fréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$、$\mathcal{S}_N$ 上の平行移動と微分の連続性

命題22.1(Fréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の平行移動と微分の連続性)

任意の $f\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ に対しFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$(定義3.3)の位相に関して、

  • $(1)$ $\mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_{y}f\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ は連続である。ただし $T_yf$ は $f$ の $y$ による平行移動、すなわち $T_yf(x)=f(x-y)$ $(\forall x,y\in \mathbb{R}^N)$ である。
  • $(2)$

$$ \lim_{h\rightarrow0}\frac{T_{-he_j}f-f}{h}=\partial_jf\quad(j=1,\ldots,N) $$ が成り立つ。

証明

  • $(1)$ 任意の $x,y\in\mathbb{R}^N$ に対し $T_{x+y}f=T_xT_yf$ であるから $\mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_yf\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の連続性を示すには $y=0$ における連続性を示せば十分である。そのためには任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \lim_{y\rightarrow0}\sup_{x\in K}\lvert \partial^{\alpha}T_yf(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert=0\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せばよい。微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} &\partial^{\alpha}T_yf(x)-\partial^{\alpha}f(x)=\partial^{\alpha}f(x-y)-\partial^{\alpha}f(x)\\ &=\sum_{j=1}^{N}(-y_j)\left(\int_{0}^{1}\partial_j\partial^{\alpha}f(x-\theta y)d\theta\right)\quad(\forall x,y\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} &\sup_{x\in K}\lvert\partial^{\alpha}T_yf(x)-\partial^{\alpha}f(x)\rvert \leq \sup_{x\in K}\sum_{j=1}^{N}\lvert y_j\rvert \left\lvert \int_{0}^{1}\partial_j\partial^{\alpha}f(x-\theta y)d\theta\right\rvert \\ &\leq\sum_{j=1}^{N}\lvert y_j\rvert\sup_{x\in K+\overline{B(0,1)}}\lvert\partial_j\partial^{\alpha}f(x)\rvert\quad(\forall y\in K+\overline{B(0,1)}) \end{aligned} $$ である。よって $(*)$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \lim_{h\rightarrow0}\sup_{x\in K}\left\lvert \frac{\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-\partial^{\alpha}f(x)}{h}-\partial^{\alpha}\partial_jf(x)\right\rvert=0\quad\quad(**) $$ が成り立つことを示せばよい。微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} &\frac{\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-\partial^{\alpha}f(x)}{h}-\partial^{\alpha}\partial_jf(x) =\int_{0}^{1}(\partial^{\alpha}\partial_jf(x+the_j)-\partial^{\alpha}\partial_jf(x))dt\\ &=\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}th\partial^{\alpha}\partial_j^2f(x+sthe_j)dsdt\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N,\forall h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} &\sup_{x\in K}\left\lvert \frac{\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-\partial^{\alpha}f(x)}{h}-\partial^{\alpha}\partial_jf(x)\right\rvert\leq \sup_{x\in K}\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}\lvert th\rvert\lvert\partial^{\alpha}\partial_j^2f(x+sthe_j)\rvert dsdt\\ &\leq\lvert h\rvert\sup_{x\in K+\overline{B(0,1)}}\lvert\partial^{\alpha}\partial_j^2f(x)\rvert\quad(\forall h\in \mathbb{R}:0<\lvert h\rvert\leq1) \end{aligned} $$ である。よって $(**)$ が成り立つ。

命題22.2($\mathcal{S}_N$ 上の平行移動と微分の連続性)

任意の $f\in \mathcal{S}_N$ に対し $\mathcal{S}_N$(定義10.1)の位相に関して、

  • $(1)$ $\mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_{y}f\in \mathcal{S}_N$ は連続である。
  • $(2)$

$$ \lim_{h\rightarrow0}\frac{T_{-he_j}f-f}{h}=\partial_jf\quad(j=1,\ldots,N) $$ が成り立つ。

証明

  • $(1)$ 任意の$x,y\in\mathbb{R}^N$ に対し $T_{x+y}f=T_xT_yf$ であるから $\mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_yf\in \mathcal{S}_N$ の連続性を示すには $y=0$ における連続性を示せば十分である。そのためには任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lim_{y\rightarrow0}\sup_{x\in \mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}T_yf(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)\rvert=0 $$ が成り立つことを示せばよい。微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} &\partial^{\alpha}T_yf(x)-\partial^{\alpha}f(x)=\partial^{\alpha}f(x-y)-\partial^{\alpha}f(x)\\ &=\sum_{j=1}^{N}\int_{0}^{1}(-y_j)\partial_j\partial^{\alpha}f(x-\theta y)d\theta\quad(\forall x,y\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であり、多重二項定理より、 $$ x^{\beta}=(x-\theta y+\theta y)^{\beta}=\sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}(x-\theta y)^{\beta-\gamma}(\theta y)^{\gamma} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} &x^{\beta}\partial^{\alpha}T_yf(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x) =\sum_{j=1}^{N}\int_{0}^{1}x^{\beta}(-y_j)\partial_j\partial^{\alpha}f(x-\theta y)d\theta\\ &=\sum_{j=1}^{N}\sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}\int_{0}^{1}(-y_j)(\theta y)^{\gamma}(x-\theta y)^{\beta-\gamma}\partial_j\partial^{\alpha}f(x-\theta y)d\theta \end{aligned} $$ である。よって任意の $y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} \sup_{x\in \mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}T_yf(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)\rvert \leq\sum_{j=1}^{N}\sum_{\gamma\leq \beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lvert y\rvert^{\lvert \gamma\rvert+1}\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta-\gamma}\partial_j\partial^{\alpha}f(x)\rvert \end{aligned} $$ であるから $(*)$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lim_{h\rightarrow0}\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\left\lvert \frac{x^{\beta}\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)}{h}-x^{\beta}\partial^{\alpha}\partial_jf(x)\right\rvert=0\quad\quad(**) $$ が成り立つことを示せばよい。任意の $x\in \mathbb{R}^N$ と $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ に対し微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} &\frac{\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-\partial^{\alpha}f(x)}{h}-\partial^{\alpha}\partial_jf(x) =\int_{0}^{1}(\partial^{\alpha}\partial_jf(x+the_j)-\partial^{\alpha}\partial_jf(x))dt\\ &=\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}th\partial^{\alpha}\partial_j^2f(x+sthe_j)dsdt \end{aligned} $$ であり、多重二項定理より、 $$ x^{\beta}=(x+sthe_j-sthe_j)^{\beta}=\sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}(x+sthe_j)^{\beta-\gamma}(-sthe_j)^{\gamma} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} &\frac{x^{\beta}\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)}{h}-x^{\beta}\partial^{\alpha}\partial_jf(x)\\ &=\sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix} \int_{0}^{1}\int_{0}^{1}th(-sthe_j)^{\gamma}(x+sthe_j)^{\beta-\gamma}\partial^{\alpha}\partial_j^2f(x+sthe_j)dsdt \end{aligned} $$ である。よって任意の $h\in \mathbb{R}\backslash \{0\}$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\left\lvert \frac{x^{\beta}\partial^{\alpha}T_{-he_j}f(x)-x^{\beta}\partial^{\alpha}f(x)}{h}-x^{\beta}\partial^{\alpha}\partial_jf(x)\right\rvert\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lvert h\rvert^{1+\lvert\gamma\rvert}\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert x^{\beta-\gamma}\partial^{\alpha}\partial_j^2f(x)\rvert \end{aligned} $$ であるから $(**)$ が成り立つ。

23. テスト関数と超関数の合成積

定義23.1(テスト関数と超関数の合成積)

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$(resp. $\mathcal {S}_N$、$\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$)と任意の $u\in D'(\mathbb{R}^N)$(resp. $\mathcal{S}_N'$, $\mathcal{E}_N'$)に対し $f*u:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ f* u(x):=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_xf_{-1})\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する*13。 これをテスト関数 $f$ と超関数 $u$ の合成積と言う。次の命題23.3命題23.4より $f*u\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \partial^{\alpha}(f*u)=(\partial^{\alpha}f)*u=f*(\partial^{\alpha}u)\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N) $$ が成り立つ。

注意23.2

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$ と $[g]\in L^1_{\rm loc}(\mathbb{R}^N)\subset D'(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} (f*[g])(x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}[g](T_xf_{-1})=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}g(y)f(x-y)dy\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}g(x-y)f(y)dy\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。ただし三番目の等号はLebesgue測度の平行移動不変性による。

命題23.3(テスト関数と超関数の合成積は滑らかな関数)

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$ と $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し $f*u\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \partial^{\alpha}(f*u)=(\partial^{\alpha}f)*u=f*(\partial^{\alpha}u)\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

任意の $x\in\mathbb{R}^N$ を取り、コンパクト集合 $$ K:=\overline{B(x,1)}-\text{supp}(f) $$ を定義する。このとき$\lvert y\rvert\leq1$ なる任意の $y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \text{supp}(T_yT_xf_{-1})=x+y-\text{supp}(f)\subset K $$ である。よって、Fréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ の位相はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の相対位相であること(定義3.7を参照)と命題22.1より、Fréchet空間$D_K(\mathbb{R}^N)$ において、 $$ \lim_{\substack{\lvert y\rvert\leq1,\\y\rightarrow0}}T_yT_xf_{-1}=T_xf_{-1}, $$ $$ \lim_{\substack{0<\lvert h\rvert\leq1,\\h\rightarrow0}}\frac{T_{he_j}T_xf_{-1}-T_xf_{-1}}{h} =-\partial_jT_{x}f_{-1}=T_x(\partial_jf)_{-1}\quad(j=1,\ldots,N) $$ が成り立つ。超関数の定義(定義4.1)より $u$ をFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ 上に制限したものは連続なので、 $$ \lim_{\substack{\lvert y\rvert\leq1,\\y\rightarrow0}}(f*u)(x+y)=\lim_{\substack{\lvert y\rvert\leq1,\\y\rightarrow0}}\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_{y}T_xf_{-1})=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_xf_{-1})=(f*u)(x), $$ $$ \begin{aligned} \lim_{\substack{0<\lvert h\rvert\leq1,\\h\rightarrow0}}&\frac{(f*u)(x+he_j)-(f*u)(x)}{h} =\lim_{\substack{0<\lvert h\rvert\leq1,\\h\rightarrow0}}\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u\left(\frac{T_{he_j}T_xf_{-1}-T_xf_{-1}}{h}\right)\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(\partial_jf)_{-1})=((\partial_jf)*u)(x)\quad(j=1,\ldots,N) \end{aligned} $$ が成り立つ。よって $f*u:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ は連続であり、各 $j\in \{1,\ldots,N\}$ について第 $j$ 座標に関して偏微分可能で、 $$ \partial_j(f*u)=(\partial_jf)*u\quad(j=1,\ldots,N) $$ である。この結果と帰納法により $f*u\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(f*u)=(\partial^{\alpha}f)*u $$ が成り立つことが分かる。また任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$、任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} ((\partial^{\alpha}f)*u)(x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(\partial^{\alpha}f)_{-1}) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(T_x\partial^{\alpha}f_{-1})\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\partial^{\alpha}u(T_xf_{-1}) =(f*(\partial^{\alpha}u))(x) \end{aligned} $$ であるから $(\partial^{\alpha}f)*u=f*\partial^{\alpha}u$ である。よって $(*)$ が成り立つ。

命題23.4(テスト関数と超関数の合成積は滑らかな関数)

任意の $f\in \mathcal{S}_N$(resp. $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$)と任意の $u\in \mathcal{S}_N'$(resp. $\mathcal{E}_N'$)に対し $f*u\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \partial^{\alpha}(f*u)=(\partial^{\alpha}f)*u=f*(\partial^{\alpha}u)\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

命題22.2の $(1)$(resp. 命題22.1の $(1)$ )よりFréchet空間 $\mathcal{S}_N$(resp. $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ )において、 $$ \mathbb{R}^N\ni x\mapsto T_xf_{-1}\in \mathcal{S}_N\quad\text{resp}. \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)) $$ は連続であるので、 $$ f*u:\mathbb{R}^N\ni x\mapsto \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_xf_{-1})\in \mathbb{C} $$ は連続である。また命題22.2の $(2)$(命題22.1の $(2)$ )より任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対しFréchet空間 $\mathcal{S}_N$(resp. $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$)において、 $$ \lim_{h\rightarrow0}\frac{T_{he_j}T_xf_{-1}-T_xf_{-1}}{h}=-\partial_jT_xf_{-1}=T_x(\partial_jf)_{-1}\quad(j=1,\ldots,N) $$ であるので、 $$ \begin{aligned} \lim_{h\rightarrow0}&\frac{(f*u)(x+he_j)-(f*u)(x)}{h}=\lim_{h\rightarrow0}u\left(\frac{T_{he_j}T_xf_{-1}-T_xf_{-1}}{h}\right)\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(\partial_jf)_{-1})=((\partial_jf)*u)(x)\quad(j=1,\ldots,N) \end{aligned} $$ である。よって $f*u:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ は連続であり、各 $j\in \{1,\ldots,N\}$ について第 $j$ 座標に関して偏微分可能で、 $$ \partial_j(f*u)=(\partial_jf)*u\quad(j=1,\ldots,N) $$ である。この結果と帰納法により $f*u\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ であり任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(f*u)=(\partial^{\alpha}f)*u $$ が成り立つことが分かる。また任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$、任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} ((\partial^{\alpha}f)*u)(x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(\partial^{\alpha}f)_{-1}) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(T_x\partial^{\alpha}f_{-1})\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\partial^{\alpha}u(T_xf_{-1}) =(f*(\partial^{\alpha}u))(x) \end{aligned} $$ であるから $(\partial^{\alpha}f)*u=f*\partial^{\alpha}u$ である。よって定義23.1の $(*)$ が成り立つ。

命題23.5(合成積の台)

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$ と $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \text{supp}(f*u)\subset \overline{\text{supp}(f)+\text{supp}(u)} $$ が成り立つ。

証明

$(f*u)(x)\neq0$ ならば $u(T_xf_{-1})\neq0$ なので、 $$ (x-\text{supp}(f))\cap\text{supp}(u)=\text{supp}(T_xf_{-1})\cap \text{supp}(u)\neq\emptyset $$ である。よってある $y\in \text{supp}(f)$ と $z\in \text{supp}(u)$ に対し $x-y=z$ であるので、 $$ x=y+z\in \text{supp}(f)+\text{supp}(u) $$ である。ゆえに、 $$ \text{supp}(f*u)=\overline{\{x\in\mathbb{R}^N:(f*u)(x)\neq0\}}\subset \overline{\text{supp}(f)+\text{supp}(u)} $$ である。

系23.6($D(\mathbb{R}^N)*\mathcal{E}_N'\subset D(\mathbb{R}^N)$)

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$、$u\in \mathcal{E}_N'$ に対し $f*u\in D(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。

証明

$\text{supp}(f)$、$\text{supp}(u)$ はコンパクトであるから $\text{supp}(f)+\text{supp}(u)$ はコンパクトである。よって命題23.5より $\text{supp}(f*u)$ はコンパクトである。ゆえに $f*u\in D(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。

命題23.7(合成積の結合法則)

任意の $f,g\in D(\mathbb{R}^N)$ と任意の $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ (f*g)*u=f*(g*u) $$ が成り立つ。

証明

任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対し、 $$ ( (f*g)*u)(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(f*g)_{-1})=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(f_{-1}*g_{-1}) )\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ である*14。$\text{supp}(f_{-1})=-\text{supp}(f)\subset I$ を満たす閉直方体 $I\subset \mathbb{R}^N$($N$ 個の有界閉区間の直積)を取る。コンパクト集合 $K:=I-\text{supp}(g)$ に対し、Fréchet空間$D_K(\mathbb{R}^N)$ の位相はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相の相対位相であるから、命題22.1より、 $$ I\ni y\mapsto f_{-1}(y)T_yg_{-1}\in D_K(\mathbb{R}^N) $$ はFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ 値連続関数である。よってRiemann積分(定義21.6) $$ \int_{I}f_{-1}(y)T_yg_{-1}dy\in D_K(\mathbb{R}^N) $$ が定義できる。Diracのデルタ超関数(定義20.5) $\delta_x\in \mathcal{E}'_N$ $(\forall x\in\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\delta_x\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}f_{-1}(y)T_yg_{-1}dy\right) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}f_{-1}(y)\delta_x(T_yg_{-1})dy\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f_{-1}(y)g_{-1}(x-y)dy=(f_{-1}*g_{-1})(x) \end{aligned} $$ であるから、 $$ f_{-1}*g_{-1}=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}f_{-1}(y)T_yg_{-1}dy\quad\quad(**) $$ である。また超関数の定義(定義4.1)より任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対し、 $$ D_K(\mathbb{R}^N)\ni \varphi\mapsto u(T_x\varphi)\in \mathbb{C} $$ は連続線形汎関数であるから $(*)$, $(**)$ より、 $$ \begin{aligned} ( (f*g)*u)(x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(f_{-1}*g_{-1}))=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u\left(T_x\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}f_{-1}(y)T_yg_{-1}dy\right)\right)\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f_{-1}(y) \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_{x+y}g_{-1})dy =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f_{-1}(y)(g*u)(x+y)dy\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)(g*u)(x-y)dy=(f*(g*u))(x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。よって $(f*g)*u=f*(g*u)$ が成り立つ。

命題23.8(超関数としての合成積)

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$ と $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ (f*u)(\varphi)=u(\varphi*f_{-1})\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つ。

証明

任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ を取り $\text{supp}(\varphi)\subset I$ なる有閉直方体 $I\subset \mathbb{R}^N$ を取る。そしてコンパクト集合 $K:=I-\text{supp}(f)$ を定義する。このとき命題22.1より、 $$ I\ni x\mapsto \varphi(x)T_xf_{-1}\in D_K(\mathbb{R}^N) $$ はFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ 値連続関数であるから、Riemann積分(定義21.6) $$ \int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\in D_K(\mathbb{R}^N) $$ が定義できる。 Diracのデルタ超関数(定義20.5) $\delta_y\in \mathcal{E}'_N$ $(\forall y\in\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\delta_y\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\right) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)\delta_y(T_xf_{-1})dx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)f_{-1}(y-x)dx =(\varphi*f_{-1})(y)\quad(\forall y\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx=\varphi*f_{-1} $$ である。そして超関数の定義(定義4.1)より $u$ の $D_K(\mathbb{R}^N)$ 上への制限は連続線形汎関数であるから、 $$ (f*u)(\varphi)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}u(T_xf_{-1})\varphi(x)dx =u\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\right)=u(\varphi*f_{-1}) $$ である。

24. $\mathcal{S}_N*\mathcal{S}_N'$ のFourier変換

命題24.1($\mathcal{S}_N*\mathcal{S}_N'\subset \mathcal{T}_N$)

任意の $f\in \mathcal{S}_N$ と $u\in \mathcal{S}_N'$ に対し $f*u$ は緩増加関数空間 $\mathcal{T}_N$(定義11.3)に属する。

証明

命題17.2より $u\in \mathcal{S}_N'$ に対し $n\in\mathbb{N}$ と $C\in [0,\infty)$ が存在し、 $$ \lvert u(\varphi)\rvert\leq Cp_n(\varphi)\quad(\forall \varphi\in \mathcal{S}_N) $$ が成り立つ。ただし、 $$ p_n(\varphi)=\underset{\lvert\beta\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{y\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert y\rvert^2)^n\lvert\partial^{\beta}\varphi(y)\rvert\quad(\forall \varphi\in \mathcal{S}_N) $$ である。 $$ 1+\lvert x+y\rvert^2\leq 2(1+\lvert x\rvert^2)(1+\lvert y\rvert^2)\quad(\forall x,y\in\mathbb{R}^N) $$ であるから、 $$ 1+\lvert y\rvert^2\leq 2(1+\lvert x\rvert^2)(1+\lvert x-y\rvert^2)\quad(\forall x,y\in\mathbb{R}^N) $$ である。よって任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert\partial^{\alpha}(f*u)(x)\rvert&=\lvert ((\partial^{\alpha}f)*u)(x)\rvert =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lvert u(T_x(\partial^{\alpha}f)_{-1})\rvert \leq\frac{C}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}p_n(T_x(\partial^{\alpha}f)_{-1})\\ &=\frac{C}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\underset{\lvert\beta\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{y\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert y\rvert^2)^n\lvert \partial^{\beta}\partial^{\alpha}f(x-y)\rvert\\ &\leq\frac{2^nC}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\underset{\lvert\beta\rvert\leq n}{\rm max}\sup_{y\in\mathbb{R}^N}(1+\lvert x-y\rvert^2)^n\lvert\partial^{\beta}\partial^{\alpha}f(x-y)\rvert(1+\lvert x\rvert^2)^n\\ &\leq \frac{2^nC}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}p_n(\partial^{\alpha}f)(1+\lvert x\rvert^2)^n\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから $\partial^{\alpha}(f*u)$ は多項式的に増加する関数である。ゆえに $f*u\in \mathcal{T}_N$ である。

命題24.2($\mathcal{S}_N*\mathcal{S}_N\subset \mathcal{S}_N$)

任意の $f,g\in \mathcal{S}_N$ に対し $f*g\in \mathcal{S}_N$ が成り立つ。そして、 $$ \widehat{f*g}=\widehat{f}\widehat{g},\quad \widecheck{f*g}=\widecheck{f}\widecheck{g}, $$ $$ \widehat{fg}=\widehat{f}*\widehat{g},\quad \widecheck{fg}=\widecheck{f}*\widecheck{g} $$ が成り立つ。

証明

任意の $f,g\in \mathcal{S}_N$ を取る。$f*g\in \mathcal{S}_N$ であることを示すには任意の $\alpha,\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\text{id}^{\beta}\partial^{\alpha}(f*g)$ が有界であることを示せばよい。多重二項定理より、 $$ \begin{aligned} x^{\beta}\partial^{\alpha}(f*g)(x)&=x^{\beta}( (\partial^{\alpha}f)*g)(x) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}(x-y+y)^{\beta}\partial^{\alpha}f(y)g(x-y)dy\\ &=\sum_{\gamma\leq \beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix} \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}(y^{\gamma}\partial^{\alpha}f(y))( (x-y)^{\beta-\gamma}g(x-y))dy\\ &=\sum_{\gamma\leq \beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}( (\text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}f)*(\text{id}^{\beta-\gamma}g) )(x)\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であり、$\text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}f, \text{id}^{\beta-\gamma}g\in \mathcal{S}_N$ は有界かつ可積分であるから、 $$ \begin{aligned} &\lvert x^{\beta}\partial^{\alpha}(f*g)(x)\rvert\leq \sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}\lvert ( (\text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}f)*(\text{id}^{\beta-\gamma}g) )(x)\rvert\\ &\leq \sum_{\gamma\leq\beta}\begin{pmatrix}\beta\\\gamma\end{pmatrix}\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert \text{id}^{\gamma}\partial^{\alpha}f\rVert_1\lVert \text{id}^{\beta-\gamma}g\rVert_{\infty}<\infty\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。よって $f*g\in \mathcal{S}_N$ である。Fubiniの定理とLebesgue測度の平行移動不変性より、 $$ \begin{aligned} &\widehat{(f*g)}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}(f*g)(x)e^{-ik\cdot x}dx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^N}\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}f(y)e^{-ik\cdot y}g(x-y)e^{-ik\cdot (x-y)}dy\right)dx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^N}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)e^{-ik\cdot y}\left(\int_{\mathbb{R}^N}g(x-y)e^{-ik\cdot(x-y)}dx\right)dy\\ &=\frac{1}{(2\pi)^N}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)e^{-ik\cdot y}\left(\int_{\mathbb{R}^N}g(x)e^{-ik\cdot x}dx\right)dy\\ &=\widehat{f}(k)\widehat{g}(k)\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ である。全く同様にして、 $$ \widecheck{f*g}(k)=\widecheck{f}(k)\widecheck{g}(k)\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) $$ が成り立つことも分かる。定理16.2より、 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto \widehat{f}\in \mathcal{S}_N,\quad \mathcal{S}_N\ni f\mapsto \widecheck{f}\in \mathcal{S}_N $$ は互いに逆写像であるから上の結果より任意の $f,g\in \mathcal{S}_N$ に対し、 $$ \widehat{fg}=\widehat{(\widecheck{\widehat{f}})(\widecheck{\widehat{g}})}= \widehat{f}*\widehat{g},\quad \widecheck{fg}=\widecheck{(\widehat{\widecheck{f}})(\widehat{\widecheck{g}})}= \widecheck{f}*\widecheck{g} $$ である。

定理24.3($\mathcal{S}_N*\mathcal{S}_N'$ のFourier変換)

任意の $f\in \mathcal{S}_N$ と任意の $u\in \mathcal{S}_N'$ に対し $f*u$ のFourier(逆)変換について、 $$ \widehat{f*u}=(\widehat{f})(\widehat{u}),\quad \widecheck{f*u}=(\widecheck{f})(\widecheck{u}),\quad\quad(*) $$ が成り立つ(命題24.1命題17.5の $(5)$ より $f*u\in \mathcal{T}_N\subset \mathcal{S}_N'$ であることに注意)。 また、 $$ \widehat{fu}=\widehat{f}*\widehat{u},\quad \widecheck{fu}=\widecheck{f}*\widecheck{u}\quad\quad(**) $$ が成り立つ。

証明

定理16.2より、 $$ \mathcal{S}_N\ni \varphi\mapsto \widehat{\varphi}\in \mathcal{S}_N, $$ $$ \mathcal{S}_N\ni\varphi\mapsto \widecheck{\varphi}\in \mathcal{S}_N $$ はそれぞれ同相写像であり、互いに逆写像である。そして命題17.1より $\mathcal{S}_N$ において $D(\mathbb{R}^N)$ は稠密である。よって $(*)$ を示すには、任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \widehat{(f*u)}(\widecheck{\varphi})=(\widehat{f}\widehat{u})(\widecheck{\varphi}),\quad \widecheck{(f*u)}(\widehat{\varphi})=(\widecheck{f}\widecheck{u})(\widehat{\varphi}) $$ が成り立つことを示せばよい。$\text{supp}(\varphi)$ はコンパクトなので $\text{supp}(\varphi)\subset I$ なる $\mathbb{R}^N$ の閉直方体 $I$(有界閉区間 $N$ 個の直積)が取れる。命題22.2より、 $$ I\ni x\mapsto \varphi(x)T_xf_{-1}\in \mathcal{S}_N $$ はFréchet空間 $\mathcal{S}_N$ 値連続関数であるから、Riemann積分(定義21.6) $$ \int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\in \mathcal{S}_N $$ が定義できる。Diracのデルタ超関数(定義20.5)$\delta_y\in \mathcal{E}_N'\subset \mathcal{S}_N'$ $(\forall y\in\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\delta_y\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\right) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)\delta_y(T_xf_{-1})dx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)f_{-1}(y-x)dx =(\varphi*f_{-1})(y)\quad(\forall y\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx=\varphi*f_{-1} $$ である。よって命題24.2より、 $$ \begin{aligned} &\widehat{(f*u)}(\widecheck{\varphi})=(f*u)(\widehat{\widecheck{\varphi}})=(f*u)(\varphi)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\varphi(x)u(T_xf_{-1})dx\\ &=u\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\right) =u(\varphi*f_{-1})=\widehat{u}(\widecheck{\varphi}\widehat{f})=(\widehat{f}\widehat{u})(\widecheck{\varphi}), \end{aligned} $$ $$ \begin{aligned} &\widecheck{(f*u)}(\widehat{\varphi})=(f*u)(\widecheck{\widehat{\varphi}})=(f*u)(\varphi)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\varphi(x)u(T_xf_{-1})dx\\ &=u\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)T_xf_{-1}dx\right) =u(\varphi*f_{-1})=\widecheck{u}(\widehat{\varphi}\widecheck{f})=(\widecheck{f}\widecheck{u})(\widehat{\varphi}) \end{aligned} $$ である。これより $(*)$ が成り立つ。 また $(*)$ より、 $$ \widehat{(fu)}=\widehat{(\widecheck{\widehat{f}})(\widecheck{\widehat{u}})}=\widehat{f}*\widehat{u},\quad \widecheck{(fu)}=\widecheck{(\widehat{\widecheck{f}})(\widehat{\widecheck{u}})}=\widecheck{f}*\widecheck{u} $$ であるから $(**)$ が成り立つ。

25. $\mathcal{E}_N'$ のFourier変換

補題25.1

任意の $k\in\mathbb{R}^N$ に対し $e_k:\mathbb{R}^N\ni x\mapsto e^{ik\cdot x}\in\mathbb{C}$ とおくと、 $$ \mathbb{R}^N\ni k\mapsto e_k\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 値の連続関数である。

証明

$\mathbb{R}^N$ の列 $(k_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が $k\in \mathbb{R}^N$ に収束するとする。このとき任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\sup_{x\in K}\lvert\partial^{\alpha}e_{k_n}(x)-\partial^{\alpha}e_k(x)\rvert =\sup_{x\in K}\lvert k_n^{\alpha}e_{k_n}(x)-k^{\alpha}e_k(x)\rvert\\ &\leq\lvert k_n^{\alpha}-k^{\alpha}\rvert+\lvert k^{\alpha}\rvert\sup_{x\in K}\lvert 1-e^{i(k-k_n)\cdot x}\rvert\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ であるから、$(\partial^{\alpha}e_{k_n})_{n\in\mathbb{N}}$ は $\partial^{\alpha}e_k$ に $K$ 上で一様収束する。よってFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ において $(e_{k_n})_{n\in\mathbb{N}}$ は $e_k\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ に収束するので $(*)$ は連続である。

定理25.2($\mathcal{E}_N'$ のFourier変換)

任意の $u\in \mathcal{E}_N'$ に対し $\widehat{u}\in \mathcal{T}_N$ であり、 $$ \widehat{u}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(e_{-k}),\quad \widecheck{u}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(e_k)\quad(\forall k\in\mathbb{R}^N) $$ が成り立つ。ただし $e_k:\mathbb{R}^N\ni x\mapsto e^{ik\cdot x}\in\mathbb{C}$ である。

証明

命題20.2よりある $h\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し $u=hu$ である。よって定理24.3命題24.1より、 $$ \begin{aligned} &\widehat{u}=\widehat{hu}=\widehat{h}*\widehat{u}\in \mathcal{T}_N,\\ &\widecheck{u}=\widecheck{hu}=\widecheck{h}*\widecheck{u}\in \mathcal{T}_N \end{aligned} $$ である。任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ を取り $\text{supp}(\varphi)\subset I$ を満たす閉直方体 $I\subset \mathbb{R}^N$ を取る。補題25.1より、 $$ I\ni x\mapsto \varphi(x)e_{-x}\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N) $$ はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 値連続関数である。よってRiemann積分(定義21.6) $$ \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)e_{-x}dx\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N) $$ が定義できる。Diracのデルタ超関数 $\delta_k\in \mathcal{E}_N'$ $(\forall k\in \mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\delta_k\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)e_{-x}dx\right) =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)\delta_k(e_{-x})dx\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)e^{-ik\cdot x}dx=\widehat{\varphi}(k)\quad(\forall k\in\mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)e_{-x}dx=\widehat{\varphi} $$ である。よって、 $$ \widehat{u}(\varphi)=u(\widehat{\varphi})=u\left(\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{I}\varphi(x)e_{-x}dx\right)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\varphi(x)u(e_{-x})dx $$ である。これが任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対して成り立つので、 $$ \widehat{u}(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(e_{-x})\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) $$ が成り立つ。全く同様にして、 $$ \widecheck{u}(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(e_{x})\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N) $$ が成り立つことも分かる。

系25.3(Diracのデルタ超関数のFourier変換)

任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し $\{x\}$ を台とするDiracのデルタ超関数 $\delta_x\in \mathcal{E}_N'$ のFourier変換は、 $$ \widehat{\delta_x}(k)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}e^{-ik\cdot x}\quad(\forall k\in \mathbb{R}^N) $$ である。

系25.4($\mathcal{S}_N*\mathcal{E}_N'\subset \mathcal{S}_N$)

任意の $f\in \mathcal{S}_N$ と $u\in \mathcal{E}_N'$ に対し $f*u\in \mathcal{S}_N$ が成り立つ。

証明

定理24.3定理25.2命題12.1の $(2)$ より、 $$ \widehat{f*u}=\widehat{f}\widehat{u}\in \mathcal{S}_N\mathcal{T}_N\subset \mathcal{S}_N $$ である。よって、 $$ f*u=\widecheck{\widehat{f*u}}\in \mathcal{S}_N $$ である。

26. Friedrichsの軟化子

定義26.1(Friedrichsの軟化子)

正の実数 $C$ に対し $\psi:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{R}$ を、 $$ \psi(x):=\left\{\begin{array}{cl}C\exp\left(\frac{1}{\lvert x\rvert^2-1}\right)&(\lvert x\rvert<1)\\0&(\lvert x\rvert\geq 1)\end{array}\right. $$ と定義すれば、ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分補題15.3より $\psi\in D(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \psi(x)\geq0\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \{x\in\mathbb{R}^N:\psi(x)>0\}=\{x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert<1\}, $$ $$ \psi(x)=\psi(y)\quad(\forall x,y\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert=\lvert y\rvert),\quad \widehat{\psi}(0)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\psi(x)dx=1 $$ となる。ただし最後の式に関しては成り立つように $C$を調節する。この $\psi$ と任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $\psi_{\epsilon}\in D(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ \psi_{\epsilon}(x):=\frac{1}{\epsilon^N}\psi(\frac{x}{\epsilon})\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ と定義する。このとき、

  • $(1)$ 任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対し $\psi_{\epsilon}(x)\geq0$.
  • $(2)$ $\{x\in\mathbb{R}^N:\psi_{\epsilon}(x)>0\}=\{x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert<\epsilon\}$.
  • $(3)$ $\lvert x\rvert=\lvert y\rvert$ を満たす任意の $x,y\in \mathbb{R}^N$ に対し $\psi_{\epsilon}(x)=\psi_{\epsilon}(y)$.
  • $(4)$ $\widehat{\psi_{\epsilon}}(0)=1$.

である。逆順序による有向集合 $(0,\infty)$ で添字付けれらた $D(\mathbb{R}^N)$ のネット $(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ を $\mathbb{R}^N$ 上のFriedrichsの軟化子と言う。

命題26.2(Friedrichsの軟化子の基本性質)

$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ を $\mathbb{R}^N$ 上のFriedrichsの軟化子とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $f\in C(\mathbb{R}^N)$ に対し $(\psi_{\epsilon}*f)_{\epsilon\in(0,\infty)}$ は $f$ にコンパクト一様収束(定義3.2)する。
  • $(2)$ 任意の $f\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ に対し $(\psi_{\epsilon}*f)_{\epsilon\in(0,\infty)}$ は $f$ にFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相(定義3.3)で収束する。
  • $(3)$ 任意の $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し $(\psi_{\epsilon}*u)_{\epsilon\in(0,\infty)}$ は $u$ に超関数空間 $D'(\mathbb{R}^N)$ の位相(定義4.1)で収束する。

証明

  • $(1)$ 任意のコンパクト集合 $K$ を取り $(\psi_{\epsilon}*f)_{\epsilon\in(0,\infty)}$ が $f$ に $K$ 上で一様収束することを示せばよい。Friedrichsの軟化子の定義における $(1),(2),(4)$ より任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert (\psi_{\epsilon}*f)(x)-f(x)\rvert&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\left\lvert\int_{\mathbb{R}^N}\psi_{\epsilon}(y)(f(x-y)-f(x))dy\right\rvert\\ &\leq\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\lvert y\rvert<\epsilon}\psi_{\epsilon}(y)\lvert f(x-y)-f(x)\rvert dy\quad\quad(*) \end{aligned} $$ である。距離空間の位相の基本的性質定理7.3より $f$ はコンパクト集合 $K+\overline{B(0,1)}$ 上で一様連続であるから、任意の $\delta\in (0,\infty)$ に対し十分小さい $\epsilon_0\in (0,1)$ を取れば、 $$ \lvert f(x-y)-f(x)\rvert\leq \delta\quad(\forall x\in K,\forall y\in B(0,\epsilon_0)) $$ となる。よって $(*)$ より、 $$ \lvert\psi_{\epsilon}*f(x)-f(x)\rvert\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\lvert y\rvert<\epsilon}\psi_{\epsilon}(y)\lvert f(x-y)-f(x)\rvert dy\leq\delta\quad(\forall x\in K,\forall \epsilon\in (0,\epsilon_0)) $$ が成り立つ。ゆえに$(\psi_{\epsilon}*f)_{\epsilon\in(0,\infty)}$ は $f$ に $K$ 上で一様収束する。
  • $(2)$ $(1)$より任意の $\alpha\in\mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}(\psi_{\epsilon}*f))_{\epsilon\in(0,\infty)}=(\psi_{\epsilon}*\partial^{\alpha}f)_{\epsilon\in (0,\infty)}$ は $\partial^{\alpha}f$ にコンパクト一様収束する。よってFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で $(\psi_{\epsilon}*f)_{\epsilon\in(0,\infty)}$ は $f$ に収束する。
  • $(3)$ 任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ (\psi_{\epsilon}*u)(\varphi)\rightarrow u(\varphi)\quad(\epsilon\rightarrow+0) $$ が成り立つことを示せばよい。命題23.8とFriedrichsの軟化子の定義における $(3)$ より、 $$ (\psi_{\epsilon}*u)(\varphi)=u(\varphi*\psi_{\epsilon})=u(\psi_{\epsilon}*\varphi)\quad(\forall \epsilon\in (0,\infty)) $$ である。コンパクト集合 $K=\text{supp}(\varphi)+\overline{B(0,1)}$ に対しFriedrichsの軟化子の定義における $(2)$ と命題23.5より、 $$ \text{supp}(\psi_{\epsilon}*\varphi)\subset \text{supp}(\varphi)+\text{supp}(\psi_{\epsilon})\subset K\quad(\forall \epsilon\in (0,1)) $$ であるから、$(2)$ よりFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$(定義3.7)において $(\psi_{\epsilon}*\varphi)_{\epsilon\in (0,1)}$ は $\varphi$ に収束する。そして超関数の定義(定義4.1)より $u$ の $D_K(\mathbb{R}^N)$ 上への制限は連続であるから、 $$ (\psi_{\epsilon}*u)(\varphi)=u(\psi_{\epsilon}*\varphi)\rightarrow u(\varphi)\quad(\epsilon\rightarrow+0) $$ である。

27. $\mathcal{E}_N'$ と $D'(\mathbb{R}^N)$ の合成積

補題27.1

次が成り立つ.

  • $(1)$ 任意の $u\in \mathcal{E}_N'$ に対し、 $$ \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)\ni f\mapsto f*u\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N) $$ (系25.4を参照)はFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形写像である。
  • $(2)$ 任意の $u\in \mathcal{E}_N'$ に対し、 $$ \mathcal{S}_N\ni f\mapsto f*u\in \mathcal{S}_N $$ はFréchet空間 $\mathcal{S}_N$上の連続線形写像である。

証明

  • $(1)$ 閉グラフ定理(位相線形空間4:Fréchet空間と関数解析の基本定理定理19.3)より $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ と $f,g\in \mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ に対し、Fréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で、 $$ f_i\rightarrow f,\quad f_i*u\rightarrow g\quad(i\rightarrow\infty) $$ が成り立つと仮定して $g=f*u$ が成り立つことを示せばよい。任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で $\lim_{i\rightarrow\infty} T_x(f_i)_{-1}=T_xf_{-1}$ であるから、$u\in \mathcal{E}_N'$ より、 $$ g(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}(f_i*u)(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x(f_i)_{-1})=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_xf_{-1})=(f*u)(x) $$ である。よって $g=f*u$である。
  • $(2)$ $u\in \mathcal{E}_N'\subset \mathcal{S}_N'$ であるから、$(1)$ と全く同様にして閉グラフ定理を用いて示せる。

定義27.2($\mathcal{E}_N'$ と $D'(\mathbb{R}^N)$ の合成積)

任意の $v\in \mathcal{E}_N'$ と $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し $v*u:D(\mathbb{R}^N)\rightarrow\mathbb{C}$ を、 $$ (v*u)(\varphi):=u(\varphi*v_{-1})\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)) $$ と定義する。ただし $v_{-1}$ は超関数 $v$ の反転(定義16.1)である。命題23.5補題27.1の $(1)$ より任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ D_K(\mathbb{R}^N)\ni \varphi\mapsto \varphi*v_{-1}\in D_{K-\text{supp}(v)}(\mathbb{R}^N) $$ はFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ からFréchet空間 $D_{K-\text{supp}(v)}(\mathbb{R}^N)$(定義3.7)への連続線形写像であるから、 $$ D_K(\mathbb{R}^N)\ni \varphi\mapsto (v*u)(\varphi)=u(\varphi*v_{-1})\in \mathbb{C} $$ はFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ 上の連続線形汎関数である。よって $v*u\in D'(\mathbb{R}^N)$ である。$v*u\in D'(\mathbb{R}^N)$ を $v\in \mathcal{E}_N'$ と $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ の合成積と言う。命題23.8よりこれは $f\in D(\mathbb{R}^N)$ と $u\in D'(\mathbb{R}^N)$ の合成積の定義と矛盾しない。

命題27.3($\mathcal{E}_N'*\mathcal{S}_N'\subset \mathcal{S}_N'$)

任意の $v\in \mathcal{E}_N'$ と $u\in \mathcal{S}_N'$ に対し $v*u\in \mathcal{S}_N'$ が成り立つ。また $\widehat{v*u}=\widehat{v}\widehat{u}$ が成り立つ。

証明

$\mathcal{S}_N$ の位相で $\lim_{i\rightarrow\infty}\varphi_i=\varphi$ ならば補題27.1より $\mathcal{S}_N$ の位相で $\lim_{i\rightarrow\infty}\varphi_i*v_{-1}=\varphi*v_{-1}$ であるから、 $$ (v*u)(\varphi_i)=u(\varphi_i*v_{-1})\rightarrow u(\varphi*v_{-1})=(v*u)(\varphi) $$ である。よって $v*u\in \mathcal{S}_N'$ である。任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し定理24.3より、 $$ \widehat{(v*u)}(\varphi)=(v*u)(\widehat{\varphi})=u(\widehat{\varphi}*v_{-1}) =u(\widehat{\varphi}*\widehat{\widehat{v}}) =u(\widehat{\varphi\widehat{v}})=\widehat{u}(\varphi\widehat{v}) =(\widehat{v}\widehat{u})(\varphi) $$ であるから $\widehat{v*u}=\widehat{v}\widehat{u}$ が成り立つ。

補題27.4

$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子(定義26.1)とし、$v\in \mathcal{E}_N'$、$u\in D'(\mathbb{R}^N)$ とする。このとき超関数空間 $D'(\mathbb{R}^N)$ の位相(定義4.1)で、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}(\psi_{\epsilon}*v)*u=v*u\quad\quad(*) $$ が成り立つ。

証明

任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し命題23.7より、 $$ ((\psi_{\epsilon}*v)*u)(\varphi)=u(\varphi*(\psi_{\epsilon}*v)_{-1}) =u(\varphi*(\psi_{\epsilon}*v_{-1}))=u((\varphi*\psi_{\epsilon})*v_{-1}) $$ であり、命題26.2の $(2)$ と補題27.1の $(1)$ よりFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ の位相で、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}(\varphi*\psi_{\epsilon})*v_{-1}=\varphi*v_{-1} $$ である。ここでコンパクト集合 $K:=\text{supp}(\varphi)-\text{supp}(v)+\overline{B(0,1)}$ に対し命題23.5より、 $$ \text{supp}( (\varphi*\psi_{\epsilon})*v_{-1})=\text{supp}(\varphi)+\text{supp}(\psi_{\epsilon})-\text{supp}(v) \subset K\quad(\forall \epsilon\in (0,1)) $$ であるからFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$(定義3.7)の位相で $((\varphi*\psi_{\epsilon})*v_{-1})_{\epsilon\in(0,1)}$ は $\varphi*v_{-1}$ に収束する。そして $u$ の $D_K(\mathbb{R}^N)$ 上への制限は連続線形汎関数であるから、 $$ ((\psi_{\epsilon}*v)*u)(\varphi)=u((\varphi*\psi_{\epsilon})*v_{-1})\rightarrow u(\varphi*v_{-1})=(v*u)(\varphi)\quad(\epsilon\rightarrow+0) $$ である。よって超関数空間 $D'(\mathbb{R}^N)$ の位相で $(*)$ が成り立つ。

命題27.5(合成積の結合法則)

任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$ と $v\in \mathcal{E}_N'$、$u\in D'(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ (f*v)*u=f*(v*u) $$ が成り立つ。

証明

$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子(定義26.1)とし、 $$ v_{\epsilon}:=\psi_{\epsilon}*v\in D(\mathbb{R}^N)\quad(\forall \epsilon\in (0,\infty)) $$ とおく。このとき補題27.4命題23.7より任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} (f*(v*u))(x)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}(v*u)(T_xf_{-1}) =\lim_{\epsilon\rightarrow+0}\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}(v_{\epsilon}*u)(T_xf_{-1})\\ &=\lim_{\epsilon\rightarrow+0}(f*(v_{\epsilon}*u))(x) =\lim_{\epsilon\rightarrow+0}((f*v_{\epsilon})*u)(x) \end{aligned} $$ であり、命題23.7補題27.1の $(1)$ よりFréchet空間 $\mathcal{E}(\mathbb{R}^N)$ において、 $$ f*v_{\epsilon}=(f*\psi_{\epsilon})*v\rightarrow f*v\quad(\epsilon\rightarrow+0)\quad\quad(*) $$ である。コンパクト集合 $K:=\text{supp}(f)+\text{supp}(v)+\overline{B(0,1)}$ に対し命題23.5より、 $$ \text{supp}(f*v_{\epsilon})\subset \text{supp}(f)+\text{supp}(\psi_{\epsilon})+\text{supp}(v)\subset K\quad(\forall \epsilon\in (0,1)) $$ であるからFréchet空間 $D_K(\mathbb{R}^N)$ において $(f*v_{\epsilon})_{\epsilon\in(0,1)}$ は $f*v$ に収束する。そして任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し $u$ のFréchet空間 $D_{x-K}(\mathbb{R}^N)$ 上への制限は連続であるから、 $$ D_K(\mathbb{R}^N)\ni \varphi\mapsto (\varphi*u)(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}u(T_x\varphi_{-1})\in \mathbb{C} $$ は連続である。ゆえに $(*)$ より任意の $x\in\mathbb{R}^N$ に対し、 $$ (f*(v*u))(x)=\lim_{\epsilon\rightarrow+0}((f*v_{\epsilon})*u)(x) =((f*v)*u)(x) $$ が成り立つ。

命題27.6(コンパクト台超関数同士の合成積の可換性)

任意の $u,v\in \mathcal{E}_N'$ に対し $u*v=v*u$ が成り立つ。

証明

$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子とし、 $$ u_{\epsilon}:=\psi_{\epsilon}*u\in D(\mathbb{R}^N)\quad(\forall u\in {\mathcal E}_N',\forall\epsilon\in (0,\infty)) $$ とおく。

  • $(1)$ 任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$、$u\in \mathcal{E}_N'$ に対し $f*u=u*f$ が成り立つことを示す。補題27.4命題27.5より任意の $\varphi \in D{R}^N$ に対し、 $$ (u*f)(\varphi)=\lim_{\epsilon\rightarrow+0}(u_{\epsilon}*f)(\varphi) =\lim_{\epsilon\rightarrow+0}(f*u_{\epsilon})(\varphi) =\lim_{\epsilon\rightarrow+0}((f*\psi_{\epsilon})*u)(\varphi) =(f*u)(\varphi) $$ である。
  • $(2)$ 任意の $u,v\in \mathcal{E}_N'$ に対し $u*v=v*u$ が成り立つことを示す。 $(1)$ と命題26.2の$(3)$、補題27.4より任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \begin{aligned} (u*v)(\varphi)&=v(\varphi*u_{-1})=\lim_{\epsilon\rightarrow+0}v_{\epsilon}(\varphi*u_{-1}) =\lim_{\epsilon\rightarrow+0}(u*v_{\epsilon})(\varphi) =\lim_{\epsilon\rightarrow+0}(v_{\epsilon}*u)(\varphi) =(v*u)(\varphi) \end{aligned} $$ である。

28. Banach空間 $C_0(\mathbb{R}^N)$、$L^p(\mathbb{R}^N)$ $(p\in[1,\infty))$ における平行移動の連続性

命題28.1($C_0(\mathbb{R}^N)$ における平行移動の連続性)

任意の $f\in C_0(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_yf\in C_0(\mathbb{R}^N) $$ は連続である。ただし $C_0(\mathbb{R}^N)$ は無限遠で消える連続関数全体に $\sup$ ノルムを入れたBanach空間である。

証明

任意の $f\in C_0(\mathbb{R}^N)$ に対し $f$ が一様連続であることを示せばよい。任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ を取り、コンパクト集合 $$ K:=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert f(x)\rvert\geq \frac{\epsilon}{2}\} $$ を定義する。任意の $x\in K$ に対し $f$ は $x$ において連続であるから $\delta_x\in (0,\infty)$ が存在し、 $$ B(x,\delta_x)\subset f^{-1}(B(f(x),\frac{\epsilon}{2}))\quad\quad(*) $$ が成り立つ。$K$ のコンパクト性より有限個の $x_1,\ldots,x_n\in K$ が取れて、 $$ K\subset \bigcup_{j=1}^{n}B\left(x_j,\frac{\delta_{x_j}}{2}\right)\quad\quad(**) $$ となる。 $$ \delta:={\rm min}\left(\frac{\delta_{x_1}}{2},\ldots,\frac{\delta_{x_n}}{2}\right)\quad\quad(***) $$ とおく。 $$ \lvert x-y\rvert<\delta\quad\quad(****) $$ なる任意の $x,y\in \mathbb{R}^N$ を取る。もし $x,y\notin K$ ならば $K$ の定義より、 $$ \lvert f(y)-f(x)\rvert\leq \lvert f(y)\rvert+\lvert f(x)\rvert<\frac{\epsilon}{2}+\frac{\epsilon}{2}=\epsilon $$ である。$x,y$ のうち少なくとも一方が $K$ に属する場合。$x\in K$ とする。このとき $(**)$ よりある $j\in \{1,\ldots,n\}$ に対し $x\in B(x_j,\frac{\delta_{x_j}}{2})$ であり、$(***)$, $(****)$ より $x,y\in B(x_j,\delta_{x_j})$ である。よって $(*)$ より、 $$ \lvert f(y)-f(x)\rvert\leq \lvert f(y)-f(x_j)\rvert+\lvert f(x_j)-f(x)\rvert<\frac{\epsilon}{2}+\frac{\epsilon}{2}=\epsilon $$ である。ゆえに $f$ は一様連続である。

命題28.2($L^p(\mathbb{R}^N)$ における平行移動の連続性)

任意の $p\in [1,\infty)$ と $[f]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_y[f]\in L^p(\mathbb{R}^N) $$ は連続である。

証明

$T_{y_1+y_2}[f]=T_{y_1}T_{y_2}[f]$ $(\forall y_1,y_2\in \mathbb{R}^N)$ であるから $(*)$ の連続性を示すには $0\in \mathbb{R}^N$ における連続性を示せば十分である。まずLebesgue測度の平行移動不変性より $\lVert T_y[f]\rVert_p=\lVert [f]\rVert_p$ $(\forall y\in \mathbb{R}^N)$ である。任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取る。測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題32.1より、 $$ \lVert f-g\rVert_p<\frac{\epsilon}{3} $$ なる台がコンパクトな連続関数 $g\in C_c(\mathbb{R}^N)\subset C_0(\mathbb{R}^N)$ が取れ、 $$ \begin{aligned} &\lVert T_y[f]-[f]\rVert_p\leq\lVert T_yf-T_yg\rVert_p+\lVert T_yg-g\rVert_p+\lVert g-f\rVert_p\\ &=2\lVert f-g\rVert_p+\lVert T_yg-g\rVert_p<\frac{2}{3}\epsilon+\lVert T_yg-g\rVert_p\quad(\forall y\in \mathbb{R}^N)\quad\quad(**) \end{aligned} $$ となる。今、コンパクト集合 $K:=\text{supp}(g)+\overline{B(0,1)}$ を定義すると、 $$ \text{supp}(T_yg-g)\subset \text{supp}(g)+\overline{B(0,1)}=K\quad(\forall y\in \overline{B(0,1)}) $$ であるから、任意の $y\in \overline{B(0,1)}$ に対し、 $$ \lVert T_yg-g\rVert_p=\left(\int_{\mathbb{R}^N}\lvert T_yg(x)-g(x)\rvert^pdx\right)^{\frac{1}{p}}\leq\lVert T_yg-g\rVert \lvert K\rvert^{\frac{1}{p}} $$ となる(ただし $\lVert T_yg-g\rVert$ は $\sup$ ノルムである)。よって命題28.1より、 $$ \lVert T_yg-g\rVert_p\leq\lVert T_yg-g\rVert \lvert K\rvert^{\frac{1}{p}}\rightarrow0\quad(y\rightarrow0) $$ であるから、十分小さい $\delta\in (0,\infty)$ を取れば、$(**)$ より、 $$ \lVert T_y[f]-[f]\rVert_p<\epsilon\quad(\forall y\in B(0,\delta)) $$ となる。ゆえに $(*)$ は $0\in \mathbb{R}^N$ において連続である。

29. $L^1(\mathbb{R}^N)$ と $C_0(\mathbb{R}^N)$、$L^1(\mathbb{R}^N)$ と $L^p(\mathbb{R}^N)$ $(p\in [1,\infty))$ の合成積

定義29.1($L^1(\mathbb{R}^N)$ と $C_0(\mathbb{R}^N)$ の合成積)

任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と $g\in C_0(\mathbb{R}^N)$ を取る。命題28.1より、 $$ \mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_yg\in C_0(\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ はBanach空間 $C_0(\mathbb{R}^N)$ 値連続関数である。$\mathbb{R}^N$ は $\sigma$ -コンパクトであるから $(*)$ の像は、その連続性より $\sigma$ -コンパクト、したがって可分である*15。よって、 $$ (\mathbb{R}^N,\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N})\ni y\mapsto f(y)T_yg\in C_0(\mathbb{R}^N)\quad\quad(**) $$ はBanach空間 $C_0(\mathbb{R}^N)$ 値のBochner可測関数(測度と積分9:Bochner積分定義41.1) である。 そして、 $$ \int_{\mathbb{R}^N}\lVert f(y)T_yg\rVert dy=\lVert g\rVert\int_{\mathbb{R}^N}\lvert f(y)\rvert dy =\lVert [f]\rVert_1\lVert g\rVert<\infty\quad\quad(***) $$ であるから、$(**)$ はLebesgue測度に関してBochner可積分であり、Bochner積分(測度と積分9:Bochner積分定義41.1) $$ [f]*g:=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)T_ygdy\in C_0(\mathbb{R}^N) $$ が定義できる。これを $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と $g\in C_0(\mathbb{R}^N)$ の合成積と言う。任意の $x\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \delta_x:C_0(\mathbb{R}^N)\ni h\mapsto h(x)\in \mathbb{C} $$ はBanach空間 $C_0(\mathbb{R}^N)$ 上の有界線形汎関数であるから、 $$ \delta_x([f]*g)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)\delta_x(T_yg)dy =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)g(x-y)dy $$ である。よって $[f]*g\in C_0(\mathbb{R}^N)$ は、 $$ \mathbb{R}^N\ni x\mapsto \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)g(x-y)dy\in \mathbb{C} $$ である。ゆえにこの $L^1(\mathbb{R}^N)$ と $C_0(\mathbb{R}^N)$ の合成積の定義はテスト関数と超関数の合成積の定義(定義23.1)と矛盾しない。

定義29.2($L^1(\mathbb{R}^N)$ と $L^p(\mathbb{R}^N)$ の合成積)

$p\in [1,\infty)$ とし、任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と $[g]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ を取る。命題28.2より、 $$ \mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_y[g]\in L^p(\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ はBanach空間 $L^p(\mathbb{R}^N)$ 値連続関数である。$\mathbb{R}^N$ は $\sigma$ -コンパクトであるから $(*)$ の像は、その連続性より $\sigma$ -コンパクト、したがって可分である。よって、 $$ (\mathbb{R}^N,\mathcal{B}_{\mathbb{R}^N})\ni y\mapsto f(y)T_y[g]\in L^p(\mathbb{R}^N) $$ はBanach空間 $L^p(\mathbb{R}^N)$ 値のBochner可測関数(測度と積分9:Bochner積分定義41.1) である。 そして、 $$ \int_{\mathbb{R}^N}\lVert f(y)T_y[g]\rVert_p dy=\lVert [g]\rVert_p\int_{\mathbb{R}^N}\lvert f(y)\rvert dy =\lVert [f]\rVert_1\lVert g\rVert_p<\infty $$ であるから、$(**)$ はLebesgue測度に関してBochner可積分であり、Bochner積分(測度と積分9:Bochner積分定義41.1) $$ [f]*[g]:=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)T_y[g]dy\in L^p(\mathbb{R}^N) $$ が定義できる。これを $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と $[g]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ の合成積と言う。任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対しHölderの不等式より $$ L^p(\mathbb{R}^N)\ni [h]\mapsto [h](\varphi)=\int_{\mathbb{R}^N}h(x)\varphi(x)dx\in \mathbb{C} $$ は $L^p(\mathbb{R}^N)$ 上の有界線形汎関数であるから、 $$ \begin{aligned} ([f]*[g])(\varphi)&=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)(T_y[g])(\varphi)dy =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}f(y)g(x-y)\varphi(x)dx\right)dy\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\left(\int_{\mathbb{R}^N}f(y)g(x-y)dy\right)\varphi(x)dx\quad(\text{Fubiniの定理}) \end{aligned} $$ である。よって $[f]*[g]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ の代表元はLebesgue測度に関してa.e. $x\in \mathbb{R}^N$ で、 $$ \mathbb{R}^N\ni x\mapsto \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)g(x-y)dy\in \mathbb{C} $$ に等しい。ゆえにこの $L^1(\mathbb{R}^N)$ と $L^p(\mathbb{R}^N)$ の合成積の定義はテスト関数と超関数の合成積の定義(定義23.1)と矛盾しない。

命題29.3(Youngの不等式)

$L^1(\mathbb{R}^N)$ と $C_0(\mathbb{R}^N)$、$L^1(\mathbb{R}^N)$ と $L^p(\mathbb{R}^N)$ $(p\in[1,\infty))$ の合成積について、

  • $(1)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と $g\in C_0(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \lVert [f]*g\rVert\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert [f]\rVert_1\lVert g\rVert $$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $[f]\in L^1(\mathbb{R}^N)$ と $[g]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \lVert [f]*[g]\rVert_p\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert [f]\rVert_1\lVert [g]\rVert_p $$ が成り立つ。

証明

  • $(1)$ Bochner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2の $(1)$ )より、 $$ \begin{aligned} \lVert [f]*g\rVert&=\left\lVert \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)T_ygdy\right\rVert \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\lVert f(y)T_yg\rVert dy=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert [f]\rVert_1\lVert g\rVert \end{aligned} $$ である。
  • $(2)$ Bochner積分の基本性質(測度と積分9:Bochner積分命題44.2の $(1)$ )より、 $$ \begin{aligned} \lVert [f]*[g]\rVert_p&=\left\lVert \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)T_y[g]dy\right\rVert_p \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\lVert f(y)T_y[g]\rVert_p dy=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert [f]\rVert_1\lVert [g]\rVert_p \end{aligned} $$ である。

命題29.4($C_0(\mathbb{R}^N)$ と $L^p(\mathbb{R}^N)$ のFriedrichsの軟化子による軟化)

$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ を $\mathbb{R}^N$ 上のFriedrichsの軟化子(定義26.1)とする。このとき、

  • $(1)$ 任意の $[f]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ $(p\in[1,\infty))$ に対し、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}\lVert \psi_{\epsilon}*[f]-[f]\rVert_p=0 $$ が成り立つ。
  • $(2)$ 任意の $f\in C_0(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \lim_{\epsilon\rightarrow+0}\lVert \psi_{\epsilon}*f-f\rVert=0 $$ が成り立つ。

証明

  • $(1)$ 任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対しFriedrichsの軟化子の定義(定義26.1)の $(4)$ より、 $$ \psi_{\epsilon}*[f]-[f]=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\psi_{\epsilon}(y)(T_y[f]-[f])dy $$ である。よって $\mathbb{R}^N\ni y\mapsto T_y[f]\in L^p(\mathbb{R}^N)$ の $0\in\mathbb{R}^N$ における連続性(命題28.2)とFriedrichsの軟化子の定義(定義26.1)の $(2),(4)$ より、 $$ \left\lVert \psi_{\epsilon}*[f]-[f]\right\rVert_p \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\psi_{\epsilon}(y)\lVert T_y[f]-[f]\rVert_pdy\rightarrow0\quad(\epsilon\rightarrow+0) $$ である。
  • $(2)$ $(1)$と全く同様にして示せる。

30. Sobolev空間 $H^m(\Omega)$

定義30.1(Sobolev空間 $H^m(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とする。任意の $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し $L^2(\Omega)$ の線形部分空間 $$ H^m(\Omega):=\{[f]\in L^2(\Omega):\lvert\alpha\rvert\leq m\text{ を満たす任意の }\alpha\in \mathbb{Z}_+^N\text{ に対し }\partial^{\alpha}[f]\in L^2(\Omega)\} $$ を定義する。ただし $\partial^{\alpha}[f]$ は超関数としての弱微分(定義6.2)である。そして $L^2(\Omega)$ の内積 $(\cdot \mid \cdot)_2$ に対し、 $$ ([f]\mid [g])_{2,m}:=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}(\partial^{\alpha}[f]\mid \partial^{\alpha}[g])_2\quad(\forall [f],[g]\in H^m(\Omega)) $$ として $H^m(\Omega)$ の内積を定義する。この内積 $(\cdot\mid \cdot)_{2,m}$ による内積空間 $H^m(\Omega)$ を $\Omega$ 上の $m$ 階Sobolev空間と言う。 次の命題30.2で見るようにSobolev空間 $H^m(\Omega)$ はHilbert空間である。 Sobolev空間 $H^m(\Omega)$ のノルムは、 $$ \lVert [f]\rVert_{2,m}:=\sqrt{([f]\mid [f])_{2,m}}=\sqrt{\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}[f]\rVert_2^2}\quad(\forall [f]\in H^m(\Omega)) $$ と表す。

命題30.2(Sobolev空間 $H^m(\Omega)$ の完備性)

開集合 $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ と $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し $\Omega$ 上の $m$ 階Sobolev空間 $H^m(\Omega)$ を考える。このとき、

  • $(1)$ 任意の $[f]\in H^m(\Omega)$ と $\lvert\beta\rvert\leq m$ なる任意の多重指数 $\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lVert \partial^{\beta}[f]\rVert_2\leq \lVert [f]\rVert_{2,m}\leq \sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}[f]\rVert_2\quad(\forall [f]\in H^m(\Omega))\quad\quad(*) $$ が成り立つ。
  • $(2)$ $H^m(\Omega)$ はHilbert空間である。

''証明’’

  • $(1)$ 直和Hilbert空間(測度と積分6:数え上げ測度と $\ell^p$ 空間定義26.3)$\bigoplus_{\lvert\alpha\rvert\leq m}L^2(\Omega)$ の内積を $(\cdot\mid\cdot)_{\oplus}$、ノルムを $\lVert\cdot\rVert_{\oplus}$ と表す。 このとき任意の $[f],[g]\in H^m(\Omega)$ に対し、 $$ ([f]\mid [g])_{2,m}=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}(\partial^{\alpha}[f]\mid \partial^{\alpha}[g])_2=( (\partial^{\alpha}[f])_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\mid (\partial^{\alpha}[g])_{\lvert\alpha\rvert\leq m})_{\oplus} $$ であるから、 $$ H^m(\Omega)\ni [f]\mapsto (\partial^{\alpha}[f])_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\in \bigoplus_{\lvert\alpha\rvert\leq m}L^2(\Omega) $$ は内積を保存するのでノルムを保存する。よって、 $$ \lVert [f]\rVert_{2,m}=\lVert (\partial^{\alpha}[f])_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\rVert_{\oplus} \leq \sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}[f]\rVert_{\oplus} =\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}[f]\rVert_2 $$ であり、$\lvert\beta\rvert\leq m$ なる任意の $\beta\in\mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lVert \partial^{\beta}[f]\rVert_{2}=\lVert \partial^{\beta}[f]\rVert_{\oplus} \leq \lVert (\partial^{\alpha}[f])_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\rVert_{\oplus} =\lVert [f]\rVert_{2,m} $$ である。よって $(*)$ が成り立つ。
  • $(2)$ $([f_i])_{i\in\mathbb{N}}$ を $H^m(\Omega)$ のCauchy列とする。$(1)$ より $\lvert\alpha\rvert\leq m$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(\partial^{\alpha}[f_i])_{i\in\mathbb{N}}$ はHilbert空間 $L^2(\Omega)$ のCauchy列であるから、$[f^{(\alpha)}]\in L^2(\Omega)$ で、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert [\partial^{\alpha}f_i]-[f^{(\alpha)}]\rVert_2=0\quad\quad(**) $$ なるものが定まる。 $$ [f]:=[f^{(0)}]\in L^2(\Omega) $$ とおく。$(**)$ と命題5.5より $\lvert\alpha\rvert\leq m$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\partial^{\alpha}[f_i]=[f^{(\alpha)}]\quad(D'(\Omega)\text{ の位相 })\quad\quad(***) $$ が成り立つ。特に、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}[f_i]=[f]\quad(D'(\Omega)\text{ の位相 }) $$ であるから、弱微分の連続性(命題6.3)より任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\partial^{\alpha}[f_i]=\partial^{\alpha}[f]\quad(D'(\Omega)\text{ の位相 })\quad\quad(****) $$ が成り立つ。よって $(***)$, $(****)$ より $\lvert\alpha\rvert\leq m$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}[f]=[f^{(\alpha)}]\in L^2(\Omega) $$ であるから、$[f]\in H^m(\Omega)$ である。そして $(**)$ と $(1)$ より、 $$ \lVert [f_i]-[f]\rVert_{2,m}\leq \sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}[f_i]-\partial^{\alpha}[f]\rVert_2\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ であるから $H^m(\Omega)$ のCauchy列 $([f_i])_{i\in\mathbb{N}}$ は $[f]\in H^m(\Omega)$ に収束する。ゆえに $H^m(\Omega)$ はHilbert空間である。

31. Sobolev空間の変数変換

命題31.2(Sobolev空間の変数変換)

$\Omega,\Omega'\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、$\Phi:\Omega\rightarrow\Omega'$ を $C^\infty$ 級同相写像で $\Phi,\Phi^{-1}$ の $1$ 階以上の全ての偏導関数が有界であるものとする。このとき任意の $m\in\mathbb{N}$、任意の $u\in H^m(\Omega')$ に対し $u\circ\Phi\in H^m(\Omega)$ が成り立つ。ただし $u\circ\Phi$ は超関数としての変数変換(定義8.1)である。そして、 $$ H^m(\Omega')\ni u\mapsto u\circ\Phi\in H^m(\Omega) $$ は有界線形作用素である。

証明

超関数の変数変換に関するチェインルール(命題8.3)より、 $$ \partial_j(u\circ\Phi)=\sum_{i=1}^{N}\partial_j\Phi_i(( \partial_iu)\circ\Phi)\quad(j=1,\ldots,N) $$ である。チェインルールとLiebnizルール(命題7.2)を繰り返し用いることにより $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\Phi$ の $1$ 階以上の偏導関数のみによる有界な $\varphi_{\beta}\in C^\infty(\Omega)$ $(\beta\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\beta\rvert\leq \lvert\alpha\rvert)$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}(u\circ\Phi)=\sum_{\lvert\beta\rvert\leq\lvert\alpha\rvert}\varphi_{\beta}((\partial^{\beta}u)\circ\Phi) $$ と表されることが分かる。$\lvert\beta\rvert\leq\lvert\alpha\rvert$ なる各 $\beta\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し変数変換公式(測度と積分8:Lebesgue測度の基本的性質補題40.3)より、 $$ \begin{aligned} \lVert(\partial^{\beta}u)\circ\Phi\rVert_2^2&=\int_{\Omega}\lvert(\partial^{\beta}u)\circ\Phi(x)\rvert^2dx=\int_{\Omega'}\lvert\partial^{\beta}u(x)\rvert^2\lvert {\rm det}{\Phi^{-1}}'(x)\rvert dx\\ &\leq \lVert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rVert_{\infty}\lVert \partial^{\beta}u\rVert_2^2 \end{aligned} $$ であるから、 $$ \begin{aligned} \lVert\partial^{\alpha}(u\circ\Phi)\rVert_2 &\leq \sum_{\lvert \beta\rvert\leq \lvert\alpha\rvert}\lVert\varphi_{\beta}\rVert_{\infty}\lVert(\partial^{\beta}u)\circ\Phi\rVert_2 \leq \sum_{\lvert\beta\rvert\leq\lvert\alpha\rvert}\lVert\varphi_{\beta}\rVert_{\infty}\lVert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rVert_{\infty}^{\frac{1}{2}}\lVert \partial^{\beta}u\rVert_2\\ &\leq \left(\sum_{\lvert\beta\rvert\leq\lvert\alpha\rvert}\lVert\varphi_{\beta}\rVert_{\infty}\lVert {\rm det}{\Phi^{-1}}'\rVert_{\infty}^{\frac{1}{2}}\right)\lVert u\rVert_{2,m} \end{aligned} $$ である。よって $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し定数 $c_{\alpha}\in [0,\infty)$ が存在し、 $$ \lVert\partial^{\alpha}(u\circ\Phi)\rVert_2\leq c_{\alpha}\lVert u\rVert_{2,m} $$ が成り立つので $u\circ\Phi\in H^m(\Omega)$ であり、 $$ \lVert u\circ\Phi\rVert_{2,m}\leq \sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}(u\circ\Phi)\rVert_2 \leq \left(\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}c_{\alpha}\right)\lVert u\rVert_{2,m} $$ であるから、 $$ H^m(\Omega')\ni u\mapsto u\circ\Phi\in H^m(\Omega) $$ は有界線形作用素である。

32. Sobolev空間 $H^m_0(\Omega)$

定義32.1(Sobolev空間 $H^m_0(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$m\in \mathbb{Z}_+$ とする。明らかに $D(\Omega)\subset H^m(\Omega)$ である。そこで $D(\Omega)$ の $H^m(\Omega)$ における閉包を、 $$ H^m_0(\Omega):=\overline{D(\Omega)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}}\subset H^m(\Omega) $$ と表す。

定理32.2($H^m(\mathbb{R}^N)=H^m_0(\mathbb{R}^N)$)

任意の $m\in \mathbb{Z}_+$ に対し $H^m(\mathbb{R}^N)=H^m_0(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。

証明

Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)により $\omega\in D(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ 0\leq \omega(x)\leq 1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega(x)=1\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq1) $$ を満たすものを取り、任意の $n\in \mathbb{N}$ に対し $\omega_n\in D(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ \omega_n(x):=\omega(n^{-1}x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ として定義する。このとき、 $$ 0\leq \omega_n(x)\leq 1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega_n(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n)\quad\quad(*) $$ である。$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon>0}$ をFriedrichsの軟化子(定義26.1)とする。任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ を取り、 $$ u_n:=\omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*u)\in D(\mathbb{R}^N)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ とおく。このとき $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対しLeibnizルール(命題7.2)より、 $$ \partial^{\alpha}u_n-\partial^{\alpha}u=\left(\omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha}u)-\partial^{\alpha}u\right)+\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\partial^{\beta}\omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha-\beta}u)\quad(\forall n\in\mathbb{N})\quad\quad(**) $$ である。$(**)$ の右辺の第一項の $L^2$ ノルムは、$(*)$ とLebesgue優収束定理、 命題29.4より、 $$ \begin{aligned} &\lVert\omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha}u)-\partial^{\alpha}u\rVert_2 \leq \lVert \omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha}u-\partial^{\alpha}u)\rVert_2+\lVert (\omega_n-1)\partial^{\alpha}u\rVert_2\\ &\leq\lVert \psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha}u-\partial^{\alpha}u\rVert_2+\left(\int_{\mathbb{R}^N}\lvert (\omega_n(x)-1)\partial^{\alpha}u(x)\rvert^2dx\right)^{\frac{1}{2}}\\ &\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) \end{aligned} $$ となる。また、 $$ \partial^{\beta}\omega_n(x)=n^{-\lvert\beta\rvert}(\partial^{\beta}\omega)(n^{-1}x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ より、 $$ \lVert \partial^{\beta}\omega_n\rVert_{\infty}\leq n^{-\lvert \beta\rvert}\lVert \partial^{\beta}\omega\rVert_{\infty} $$ であり、Youngの不等式(命題29.3)より、 $$ \lVert \psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha-\beta}u\rVert_2\leq \lVert \partial^{\alpha-\beta}u\rVert_2 $$ であるから、$(**)$ の右辺の第二項の $L^2$ ノルムは、 $$ \left\lVert\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\partial^{\beta}\omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*\partial^{\alpha-\beta}u)\right\rVert_2 \leq \sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}n^{-\lvert \beta\rvert}\lVert\partial^{\beta}\omega\rVert_{\infty}\lVert\partial^{\alpha-\beta}u\rVert_2\rightarrow0\quad(n\rightarrow\infty) $$ となる。よって、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert\partial^{\alpha}u_n-\partial^{\alpha}u\rVert_2=0 $$ が成り立つ。これが $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対して成り立つので、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert u_n-u\rVert_{2,m}=0 $$ が成り立つ。ゆえに $u\in H^m_0(\mathbb{R}^N)$ であるから $H^m(\mathbb{R}^N)=H^m_0(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。

命題32.3($H^m_0(\Omega)$ の $0$ 拡張)

$\Omega,\widetilde{\Omega}\subset \mathbb{R}^N$ を $\Omega\subset \widetilde{\Omega}$ を満たす開集合とし、$u\in H^m_0(\Omega)$ とする。このとき $u$ の $\widetilde{\Omega}$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{u}$*16は $H^m_0(\widetilde{\Omega})$ に属し、 $$ \partial^{\alpha}\widetilde{u}=\widetilde{\partial^{\alpha}u}\quad(\forall\alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m),\quad\lVert \widetilde{u}\rVert_{2,m}=\lVert u\rVert_{2,m} $$ が成り立つ。

証明

$D(\Omega)$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u_i-u\rVert_{2,m}=0$ を満たすものを取る。このとき $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $\varphi\in D(\widetilde{\Omega})$ に対し、 $$ \begin{aligned} \partial^{\alpha}\widetilde{u}(\varphi)&=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\widetilde{u}(\partial^{\alpha}\varphi)=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\Omega}u(x)\partial^{\alpha}\varphi(x)dx= \lim_{i\rightarrow\infty}(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\int_{\Omega}u_i(x)\partial^{\alpha}\varphi(x)dx\\ &=\lim_{i\rightarrow\infty}\int_{\Omega}\partial^{\alpha}u_i(x)\varphi(x)dx =\int_{\Omega}\partial^{\alpha}u(x)\varphi(x)dx=\int_{\widetilde{\Omega}}\widetilde{\partial^{\alpha}u}(x)\varphi(x)dx =\widetilde{\partial^{\alpha}u}(\varphi) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \partial^{\alpha}\widetilde{u}=\widetilde{\partial^{\alpha}u}\in L^2(\widetilde{\Omega}) $$ であり、 $$ \lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\partial^{\alpha}u_i\rVert_2 =\lVert \widetilde{\partial^{\alpha}u}-\partial^{\alpha}u_i\rVert_2 =\lVert \partial^{\alpha}u-\partial^{\alpha}u_i\rVert_2\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。よって $\widetilde{u}\in H^m(\widetilde{\Omega})$ であり、$\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert \widetilde{u}-u_i\rVert_{2,m}=0$ であるので $\widetilde{u}\in H^m_0(\widetilde{\Omega})$ である。また、 $$ \lVert \widetilde{u}\rVert_{2,m}^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \widetilde{\partial^{\alpha}u}\rVert_2^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2^2=\lVert u\rVert_{2,m}^2 $$ である。

33. Sobolev空間の元の台を保存する $0$ 拡張

補題33.1

$S\subset \Omega\subset \widetilde{\Omega}\subset \mathbb{R}^N$ とし、$\Omega,\widetilde{\Omega}$ は $\mathbb{R}^N$ の開集合で、$\mathbb{R}^N$ の距離に関して、 $$ d(S,\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0 $$ が成り立つとする(定義2.1を参照)。このとき全ての偏導関数が有界な非負値関数 $h\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ h(x)=1\quad(\forall x\in S),\quad d(\text{supp}(h),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0 $$ を満たすものが存在する。

証明

$$ r:=d(S,\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0,\quad r_1:=\frac{r}{3}>0 $$ とおき、 $$ E:=\{x\in \mathbb{R}^N: d(x,S)<r_1\} $$ とおく。(命題2.2より $E$ は $\mathbb{R}^N$ の開集合である。)そして $(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子(定義26.1)とし、$h:=\psi_{r_1}*[\chi_E]\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ とおく。このとき、 $$ h(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\lvert y\rvert<r_1}\psi_{r_1}(y)E(x-y)dy\geq0\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ であるから $h$ は非負値であり、任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert\partial^{\alpha}h(x)\rvert&=\lvert(\partial^{\alpha}\psi_{r_1})*[\chi_E](x)\rvert \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\lvert y\rvert<r_1}\lvert\partial^{\alpha}\psi_{r_1}(y)\rvert\chi_E(x-y)dy\\ &\leq\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert \partial^{\alpha}\psi_{r_1}\rVert_1<\infty\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) \end{aligned} $$ であるから $h$ の全ての偏導関数は有界である。また任意の $x\in S$ と $\lvert y\rvert<r_1$ なる任意の $y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ d(x-y,\text{ }S)\leq \lvert x-y-x\rvert=\lvert y\rvert<r_1 $$ であるから $x-y\in E$ である。よって、 $$ h(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\lvert y\rvert<r_1}\psi_{r_1}(y)E(x-y)dy =\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\lvert y\rvert<r_1}\psi_{r_1}(y)dy=1\quad(\forall x\in S) $$ である。後は $d(\text{supp}(h),\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0$ が成り立つことを示せばよい。命題23.5より、 $$ \text{supp}(h)=\text{supp}(\psi_{r_1}*[\chi_E])\subset \overline{E+\text{supp}(\psi_{r_1})}=\overline{E+B(0,r_1)} $$ であるから、 $$ d(\text{supp}(h),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega) \geq d(E+B(0,r_1),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)=\inf\{\lvert x+y-z\rvert:x\in E,y\in B(0,r_1),z\in \widetilde{\Omega}\backslash\Omega\}\quad\quad(*) $$ である(命題2.2を参照)。今、任意の $x\in E$、$y\in B(0,r_1)$、$z\in \widetilde{\Omega}\backslash \Omega$ を取る。$x\in E$ より $\lvert x-s\rvert<r_1$ なる $s\in S$ が取れる。三角不等式より、 $$ \lvert s-z\rvert\geq d(S,\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)=r,\quad \lvert x+y-s\rvert\leq \lvert x-s\rvert+\lvert y\rvert<2r_1 $$ であるから、 $$ \lvert x+y-z\rvert\geq \lvert s-z\rvert-\lvert x+y-s\rvert>r-2r_1=r_1 $$ である。よって $(*)$ より、 $$ d(\text{supp}(h),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega) \geq \inf\{\lvert x+y-z\rvert:x\in E,y\in B(0,r_1),z\in \widetilde{\Omega}\backslash\Omega\}\geq r_1>0 $$ が成り立つ。

注意33.2

補題33.1おける $h\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ について、$d(\text{supp}(h),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0$ より、 $$ \text{supp}(h)\subset \mathbb{R}^N\backslash(\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)=(\mathbb{R}^N\backslash \widetilde{\Omega})\cup \Omega $$ であるから $h$ を $\widetilde{\Omega}$ に制限したものを $h_0\in C^\infty(\widetilde{\Omega})$ とすると、 $$ \text{supp}(h_0)\subset \text{supp}(h)\cap \widetilde{\Omega}\subset \Omega $$ である。

定理33.3(Sobolev空間の元の台を保存する $0$ 拡張)

$\Omega,\widetilde{\Omega}\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$\Omega\subset \widetilde{\Omega}$ とし、$u\in H^m(\Omega)$ とする、そして $u$ の台 $\text{supp}(u)$(定義9.2)が、 $$ d(\text{supp}(u),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0 $$ を満たすとする。このとき、$\partial^{\alpha}u\in L^2(\Omega)$ $(\lvert\alpha\rvert\leq m)$ の $\widetilde{\Omega}$ 上への $0$ 拡張を $\widetilde{\partial^{\alpha}u}\in L^2(\widetilde{\Omega})$ とすると、 $$ \widetilde{u}\in H^m(\widetilde{\Omega}),\quad \lVert \widetilde{u}\rVert_{2,m}=\lVert u\rVert_{2,m},\quad \text{supp}(\widetilde{u})=\text{supp}(u) $$ が成り立つ。またもし $\widetilde{u}\in H^m_0(\widetilde{\Omega})$ ならば $u\in H^m_0(\Omega)$ が成り立つ。

証明

$\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\text{supp}(\partial^{\alpha}u)\subset \text{supp}(u)$ である(命題9.3の$(1)$ )から、 $$ d(\text{supp}(\partial^{\alpha}u),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega) \geq d(\text{supp}(u),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0 $$ である。よって $\text{supp}(\partial^{\alpha}u)$ は $\widetilde{\Omega}$ において閉である*17ので、 $$ \text{supp}(\widetilde{\partial^{\alpha}u})=\text{supp}(\partial^{\alpha}u) $$ が成り立つ。これより、 $$ \text{supp}(\widetilde{\partial^{\alpha}u})=\text{supp}(\partial^{\alpha}u)\subset \text{supp}(u)\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m)\quad\quad(*) $$ である。また、 $$ \text{supp}(\partial^{\alpha}\widetilde{u})\subset \text{supp}(\widetilde{u})=\text{supp}(u)\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m)\quad\quad(**) $$ である(命題9.3の $(1)$ )。 補題33.1注意33.2より全ての偏導関数が有界な $h\in C^\infty(\widetilde{\Omega})$ で、 $$ h(x)=1\quad(\forall x\in \text{supp}(u)),\quad \text{supp}(h)\subset \Omega\quad\quad(***) $$ を満たすものが取れる。$(***)$ の左の式と $(*), (**)$ より、 $$ \widetilde{\partial^{\alpha}u}=h(\widetilde{\partial^{\alpha}u}),\quad\partial^{\alpha}\widetilde{u}=h\partial^{\alpha}\widetilde{u}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m) $$ であり、$(***)$ の右の式より、 $$ h\varphi\in D(\Omega)\quad(\forall \varphi\in D(\widetilde{\Omega})) $$ である。よって $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $\varphi\in D(\widetilde{\Omega})$ に対し、 $$ \begin{aligned} &\widetilde{\partial^{\alpha}u}(\varphi)=h(\widetilde{\partial^{\alpha}u})(\varphi) =\widetilde{\partial^{\alpha}u}(h\varphi)=\partial^{\alpha}u(h\varphi) =(-1)^{\lvert\alpha\rvert}u(\partial^{\alpha}(h\varphi))\\ &=(-1)^{\lvert\alpha\rvert}\widetilde{u}(\partial^{\alpha}(h\varphi)) =\partial^{\alpha}\widetilde{u}(h\varphi) =h(\partial^{\alpha}\widetilde{u})(\varphi) =\partial^{\alpha}\widetilde{u}(\varphi) \end{aligned} $$ であるから、 $$ \partial^{\alpha}\widetilde{u}=\widetilde{\partial^{\alpha}u}\in L^2(\widetilde{\Omega})\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m) $$ である。これより $\widetilde{u}\in H^m(\widetilde{\Omega})$ であり、 $$ \lVert \widetilde{u}\rVert_{2,m}^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2^2 =\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert\widetilde{\partial^{\alpha}u}\rVert_2^2 =\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert\partial^{\alpha}u\rVert_2^2 =\lVert u\rVert_{2,m}^2 $$ である。
後半を示す。$\widetilde{u}\in H^m_0(\widetilde{\Omega})$ ならば $D(\widetilde{\Omega})$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert \widetilde{u}-u_i\rVert_{2,m}=0$ なるものが取れる。全ての偏導関数が有界な $h\in C^\infty(\widetilde{\Omega})$ で $(***)$ を満たすものを取ると、$h\widetilde{u}=\widetilde{u}$ であり、$(hu_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $D(\Omega)$ の列である。$h$ の全ての偏導関数は有界なのでLiebnizルール(命題7.2)より $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lVert \partial^{\alpha}(h\widetilde{u})-\partial^{\alpha}(hu_i)\rVert_2 \leq\sum_{\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix}\lVert\partial^{\beta}h\rVert_{\infty}\lVert \partial^{\alpha-\beta}(\widetilde{u}-u_i)\rVert_2\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ が成り立つ。よって $H^m(\widetilde{\Omega})$ において $h\widetilde{u}=\lim_{i\rightarrow\infty}hu_i$ であるから、その $\Omega$ 上への制限を考えれば、 $$ u=\widetilde{u}|_{\Omega}=(h\widetilde{u})|_{\Omega}=\lim_{i\rightarrow\infty}hu_i\in \overline{D(\Omega)}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}}=H^m_0(\Omega) $$ となる。

注意33.4(境界との距離)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$E\subset \Omega$とする。このとき $\Omega$ の境界 $\partial\Omega=\overline{\Omega}\backslash \Omega$ に対し、 $$ d(E,\text{ }\mathbb{R}^N\backslash \Omega)=d(E,\text{ }\partial\Omega) $$ である。実際、$\partial\Omega\subset \mathbb{R}^N\backslash \Omega$ より $\leq$ は自明である。任意の $x\in E$ と $y\in \mathbb{R}^N\backslash \Omega$ に対し、 $$ s:=\sup\{t\in [0,1]:x+t(y-x)\in\Omega\} $$ とおけば $\Omega$ が開集合であることから $x+s(y-x)\notin \Omega$ であり、 $x+s(y-x)$ に収束する $\Omega$ の点列 $(x+t_n(y-x))_{n\in\mathbb{N}}$ が取れるから $x+s(y-x)\in\overline{\Omega}$、よって $x+s(y-x)\in \partial\Omega$ である。ゆえに、 $$ \lvert x-y\rvert\geq s\lvert x-y\rvert=\lvert x-(x+s(y-x))\rvert\geq d(E,\text{ }\partial\Omega) $$ であるから $d(E,\mathbb{R}^N\backslash \Omega)\geq d(E,\partial\Omega)$ である。

系33.5(台と境界の距離が正ならば $H_0$ に属する)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$u\in H^m(\Omega)$ とし、 $$ d(\text{supp}(u),\text{ }\partial\Omega)=d(\text{supp}(u),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash \Omega)>0 $$ とする。このとき $u\in H^m_0(\Omega)$ が成り立つ。

証明

定理33.3の前半より $u$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{u}$ は $H^m(\mathbb{R}^N)$ に属し、定理32.2より $H^m(\mathbb{R}^N)=H^m_0(\mathbb{R}^N)$ であるから、定理33.3の後半より $u\in H^m_0(\Omega)$ である。

系33.6

$\Omega\subset \widetilde{\Omega}\subset \mathbb{R}^N$ を開集合とし、 $$ d(\Omega,\text{ } \partial\widetilde{\Omega})=d(\Omega,\text{ }\mathbb{R}^N\backslash \widetilde{\Omega})>0 $$ が成り立つとする。このとき任意の $u\in H^m(\widetilde{\Omega})$ に対し $D(\widetilde{\Omega})$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u|_{\Omega}-u_i|_{\Omega}\rVert_{2,m}=0 $$ を満たすものが存在する。ただし $u|_{\Omega},u_i|_{\Omega}$ は $u,u_i$ の $\Omega$ 上への制限である。

証明

補題33.1より全ての偏導関数が有界な $h\in C^\infty(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ h(x)=1\quad(\forall x\in \Omega),\quad d(\text{supp}(h),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash\widetilde{\Omega})>0 $$ を満たすものが取れる。$h$ の全ての偏導関数は有界であるからLeibnizルール(命題7.2)より $hu\in H^m(\widetilde{\Omega})$ であり、$hu$ の台は $\text{supp}(hu)\subset \text{supp}(h)$ を満たす(命題9.3の $(2)$ )ので、 $$ d(\text{supp}(hu),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash \widetilde{\Omega})\geq d(\text{supp}(h),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash \widetilde{\Omega})>0 $$ である。よって系33.5より $hu\in H^m_0(\widetilde{\Omega})$ であるから $D(\widetilde{\Omega})$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert hu-u_i\rVert_{2,m}=0$ を満たすものが取れる。$h(x)=1$ $(\forall x\in \Omega)$ より $(hu)|_{\Omega}=u|_{\Omega}$ であるから、 $$ \lVert u|_{\Omega}-u_i|_{\Omega}\rVert_{2,m} =\lVert (hu)|_{\Omega}-u_i|_{\Omega}\rVert_{2,m}\leq \lVert hu-u_i\rVert_{2,m}\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。

34. 半空間 $\mathbb{R}^N_+$ 上のSobolev空間 $H^m(\mathbb{R}^N_+)$ の拡張作用素

定義34.1(半空間)

$\mathbb{R}^N_+:=\mathbb{R}^{N-1}\times (0,\infty)$, $\mathbb{R}^N_-:=\mathbb{R}^{N-1}\times(-\infty,0)$ と定義する。これらを半空間と呼ぶ。

命題34.2(半空間上の拡張作用素の補題)

$$ H^m(\mathbb{R}^N_+)=\overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}}^{\lVert\cdot\rVert_{2,m}}=\overline{\{u|_{\mathbb{R}^N_+}:u\in D(\mathbb{R}^N)\}}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}} $$ が成り立つ(ただし $u|_{\mathbb{R}^N_+}$ は $u$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への制限である)。すなわち任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u-u_i|_{\mathbb{R}^N_+}\rVert_{2,m}=0$ を満たすものが取れる。

証明

任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ を取る。任意の $t\in (0,\infty)$ に対し $\mathbb{R}^N_{+,-t}:=\mathbb{R}^{N-1}\times(-t,\infty)$ とおき、 $$ \Phi_t:\mathbb{R}^N_{+,-t}\ni x\mapsto x+te_N\in \mathbb{R}^N_+ $$ とおく。このとき命題31.2より $u\circ\Phi_t\in H^m(\mathbb{R}^N_{+,-t})$ である。そして、 $$ d(\mathbb{R}^N_+,\text{ }\mathbb{R}^N\backslash \mathbb{R}^N_{+,-t})=t>0 $$ であるから、系33.6より、 $$ (u\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}\in \overline{D(\mathbb{R}^N_{+,-t})|_{\mathbb{R}^N_+}}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}} \subset \overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}}\subset H^m(\mathbb{R}^N_+)\quad(\forall t\in (0,\infty)) $$ である。これより $u\in \overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}}^{\lVert \cdot\rVert_{2,m}}$ が成り立つことを示すには、 $$ \lim_{t\rightarrow+0}\lVert u-(u\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}\rVert_{2,m}=0 $$ が成り立つことを示せばよい。そのためには $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $u_{\alpha}:=\partial^{\alpha}u\in L^2(\mathbb{R}^N_+)$ とおき、 $$ \lim_{t\rightarrow+0}\lVert u_{\alpha}-(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}\rVert_2=0\quad\quad(*) $$ が成り立つことを示せばよい。(超関数の変数変換に関するチェインルール(命題8.3)より $\partial^{\alpha}(u\circ\Phi_t)=(\partial^{\alpha}u)\circ\Phi_t=u_{\alpha}\circ\Phi_t$ であることに注意。)$u_{\alpha},(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}\in L^2(\mathbb{R}^N_+)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張を $\widetilde{u_{\alpha}},\widetilde{(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}}\in L^2(\mathbb{R}^N)$ とおくと、 $$ \begin{aligned} &\lVert u_{\alpha}-(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}\rVert_2 =\lVert \widetilde{u_{\alpha}}-\widetilde{(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}}\rVert_2\\ &\leq \lVert \widetilde{u_{\alpha}}-T_{-te_N}\widetilde{u_{\alpha}}\rVert_2+\lVert T_{-te_N}\widetilde{u_{\alpha}}-\widetilde{(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}}\rVert_2\quad(\forall t\in(0,\infty))\quad\quad(**) \end{aligned} $$ である。$(**)$ の右辺の第一項については命題28.2より、 $$ \lim_{t\rightarrow+0}\lVert \widetilde{u_{\alpha}}-T_{-te_N}\widetilde{u_{\alpha}}\rVert_2=0 $$ であり、$(**)$ の右辺の第二項についてはLebesgue測度の平行移動不変性とLebesgue優収束定理より、 $$ \begin{aligned} &\lVert T_{-te_N}\widetilde{u_{\alpha}}-\widetilde{(u_{\alpha}\circ\Phi_t)|_{\mathbb{R}^N_+}}\rVert_2^2 =\int_{\mathbb{R}^{N-1}\times(-t,0)}\lvert u_{\alpha}(x+te_N)\rvert^2dx\\ &=\int_{\mathbb{R}^{N-1}\times (0,t)}\lvert u_{\alpha}(x)\rvert^2dx\rightarrow0\quad(t\rightarrow+0) \end{aligned} $$ である。よって $(*)$ が成り立つ。

命題34.3($H^m_0(\mathbb{R}^N_+)$ の $0$ 拡張による特徴付け)

$u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し $u$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張を $\widetilde{u}\in L^2(\mathbb{R}^N)$とおく。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $u\in H^m_0(\mathbb{R}^N)$.
  • $(2)$ $\widetilde{u}\in H^m(\mathbb{R}^N)$.

証明

$(1)\Rightarrow(2)$ は命題32.3による。$(2)\Rightarrow(1)$ を示す。$(2)$が成り立つとする。Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)により $\omega\in D(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ 0\leq \omega(x)\leq1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq1) $$ を満たすものを取り、任意の $n\in\mathbb{N}$ に対し $\omega_n\in D(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ \omega_n(x):=\omega(n^{-1}x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ として定義する。このとき、 $$ 0\leq \omega_n(x)\leq1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega_n(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n)\quad\quad(*) $$ である。$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in (0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子(定義26.1)とする。そして $\widetilde{u}\in H^m(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ u_n:=\omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\widetilde{u})\in D(\mathbb{R}^N)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ と定義する。すると命題23.5より、 $$ \begin{aligned} \text{supp}(u_n)&\subset \text{supp}(\psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\widetilde{u})\subset \text{supp}(\psi_{\frac{1}{2n}})+\text{supp}(T_{\frac{1}{n}e_N}\widetilde{u})\\ &\subset \overline{\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq(2n)^{-1}\}+\mathbb{R}^{N-1}\times [n^{-1},\infty)}\\ &\subset \mathbb{R}^{N-1}\times [(2n)^{-1},\infty)\subset \mathbb{R}^N_+ \end{aligned} $$ であるから $(u_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $D(\mathbb{R}^N_+)$ の列である。ゆえに $(1)$ が成り立つことを示すには $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \widetilde{u}-u_n\rVert_{2,m}=0$ が成り立つことを示せばよい。$\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ を取る。Leibnizルール(命題7.2)より、 $$ \partial^{\alpha}u_n=\omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha}\widetilde{u})+ \sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix} \partial^{\beta}\omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha-\beta}\widetilde{u}) $$ であるから、 $$ \lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\partial^{\alpha}u_n\rVert_2 \leq \lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha}\widetilde{u})\rVert_2+\sum_{0<\beta\leq\alpha}\begin{pmatrix}\alpha\\\beta\end{pmatrix} \lVert\partial^{\beta}\omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha-\beta}\widetilde{u})\rVert_2\quad(\forall n\in\mathbb{N})\quad\quad(**) $$ である。 $$ \partial^{\beta}\omega_n(x)=n^{-\lvert\beta\rvert}\partial^{\beta}\omega(n^{-1}x)\quad(\forall n\in\mathbb{N},\forall x\in\mathbb{R}^N) $$ より、 $$ \lVert \partial^{\beta}\omega_n\rVert_{\infty}=n^{-\lvert\beta\rvert}\lVert \partial^{\beta}\omega\rVert_{\infty}\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ であり、Youngの不等式(命題29.3)より、 $$ \lVert \psi_{\frac{1}{2n}}*T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha-\beta}\widetilde{u}\rVert_2 \leq \lVert T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha-\beta}\widetilde{u}\rVert_2 =\lVert \partial^{\alpha-\beta}\widetilde{u}\rVert_2\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ であるから、$(**)$ の右辺の第二項は $n\rightarrow\infty$ で $0$ に収束する。$(**)$ の右辺の第一項を考える。$(*)$ の左の式とYoungの不等式(命題29.3)より、 $$ \begin{aligned} &\lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}}*\partial^{\alpha}\widetilde{u})\rVert_2\leq \lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\omega_n\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2+\lVert \omega_n(\partial^{\alpha}\widetilde{u}-\psi_{\frac{1}{2n}e_N}*\partial^{\alpha}\widetilde{u})\rVert_2\\ &+\lVert \omega_n(\psi_{\frac{1}{2n}e_N}*\partial^{\alpha}\widetilde{u}-\psi_{\frac{1}{2n}e_N}*T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha}\widetilde{u})\rVert_2\\ &\leq \lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\omega_n\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2+\lVert\partial^{\alpha}\widetilde{u}-\psi_{\frac{1}{2n}e_N}*\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2+\lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2\quad\quad(***) \end{aligned} $$ であり、$(*)$ とLebesgue優収束定理より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\omega_n\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2=0, $$ Friedrichsの軟化子の性質(命題29.4)より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert\partial^{\alpha}\widetilde{u}-\psi_{\frac{1}{2n}e_N}*\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2=0, $$ $L^2(\mathbb{R}^N)$ における平行移動の連続性(命題28.2)より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-T_{\frac{1}{n}e_N}\partial^{\alpha}\widetilde{u}\rVert_2=0 $$ であるから、$(***)$ の右辺は $n\rightarrow\infty$ で $0$ に収束する。よって $(**)$ の右辺の第一項は $n\rightarrow\infty$ で $0$ に収束する。ゆえに $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \partial^{\alpha}\widetilde{u}-\partial^{\alpha}u_n\rVert_2=0 $$ が成り立つので $\lim_{n\rightarrow\infty}\lVert \widetilde{u}-u_n\rVert_{2,m}=0$ が成り立つ。

補題34.4(Vandelmondeの行列式)

任意の $x_1,\ldots,x_N\in \mathbb{C}$ に対し、 $$ V_N(x_1,\ldots,x_N):=\begin{pmatrix}x_1^0&x_2^0&\ldots&x_N^0\\x_1^1&x_2^1&\ldots&x_N^1\\\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\x_1^{N-1}&x_2^{N-1}&\ldots&x_N^{N-1}\end{pmatrix}\in \mathbb{M}_{N\times N}(\mathbb{C}) $$ とおく。このとき、 $$ {\rm det}V_N(x_1,\ldots,x_N)=\prod_{1\leq i<j\leq N}(x_j-x_i) $$ が成り立つ。

証明

$N$ に関する帰納法で示す。$N=2$ の場合は、 $$ {\rm det}\begin{pmatrix}1&1\\x_1&x_2\end{pmatrix}=x_2-x_1 $$ であるから成り立つ。ある $N-1\geq2$ に対して成り立つと仮定して $N$ の場合も成り立つことを示す。$x_1,\ldots,x_{N-1}\in \mathbb{C}$ のうち互いに等しいものがあれば $V(x_1,\ldots,x_N)$ は互いに等しい列を持つので、行列式の反対称性より $(*)$ は成り立つ。互いに異なる $x_1,\ldots,x_{N-1}\in \mathbb{C}$ を取り、 $$ p(x):={\rm det}V_N(x_1,\ldots,x_{N-1},x)\in \mathbb{C}\quad(\forall x\in \mathbb{C}) $$ とおく。このとき $p(x)$ は $x$ の $N-1$ 次の多項式であり、$x^{N-1}$ の係数は、 $$ {\rm det}V_{N-1}(x_1,\ldots,x_{N-1})=\prod_{1\leq i<j\leq N-1}(x_j-x_i)\neq0 $$ である。そして $p(x_1)=\ldots=p(x_{N-1})=0$ であるから、 $$ p(x)=\left(\prod_{1\leq i<j\leq N-1}(x_j-x_i)\right)(x-x_1)\ldots(x-x_{N-1}) $$ である。よって任意の $x_N\in\mathbb{C}$ に対し、 $$ \begin{aligned} {\rm det}V_N(x_1,\ldots,x_N)&=p(x_N)=\left(\prod_{1\leq i<j\leq N-1}(x_j-x_i)\right)(x_N-x_1)\ldots(x_N-x_{N-1})\\ &=\prod_{1\leq i<j\leq N}(x_j-x_i) \end{aligned} $$ であるから $N$ の場合も成り立つ。

定理34.5(半空間上のSobolev空間の拡張作用素の構成)

$m\in \mathbb{Z}_+$ に対し補題34.4により、 $$ \sum_{k=1}^{m}a_k(-k)^{j-1}=1\quad(j=1,\ldots,m)\quad\quad(*) $$ として定まる $a_1,\ldots,a_m\in\mathbb{R}$ を取る。これに対し、 $$ \Phi_k:\mathbb{R}^N_-\ni (x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)\mapsto (x_1,\ldots,x_{N-1},-kx_N)\in \mathbb{R}^N_+\quad(k=1,\ldots,m) $$ とおき、 $$ u^{(k)}:=u\circ\Phi_k\in H^m(\mathbb{R}^N_-)\quad(\forall u\in H^m(\mathbb{R}^N_+), k=1,\ldots,m) $$ とおく。(Sobolev空間の変数変換(命題31.2)より $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し $u\circ\Phi_k\in H^m(\mathbb{R}^N_-)$である。) そして任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し、 $$ Eu:=\widetilde{u}+\sum_{k=1}^{m}a_k\widetilde{u^{(k)}}\in L^2(\mathbb{R}^N) $$ とおく。(ただし $v\in L^2(\mathbb{R}^N_{\pm})$ に対し $\widetilde{v}\in L^2(\mathbb{R}^N)$ を $v$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張とする。)このとき任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し $Eu\in H^m(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \partial^{\alpha}Eu=\widetilde{\partial^{\alpha}u}+\sum_{k=1}^{m}a_k\widetilde{\partial^{\alpha}u^{(k)}}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m)\quad\quad(**) $$ が成り立つ。そして、 $$ E:H^m(\mathbb{R}^N_+)\ni u\mapsto Eu\in H^m(\mathbb{R}^N) $$ は有界線形作用素である。

証明

$\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ E_{\alpha}: H^m(\mathbb{R}^N_+)\ni u\mapsto \widetilde{\partial^{\alpha}u}+\sum_{k=1}^{m}a_k\widetilde{\partial^{\alpha}u^{(k)}}\in L^2(\mathbb{R}^N)\quad\quad(**) $$ とおく。Sobolev空間の変数変換(命題31.2)より、 $$ H^m(\mathbb{R}^N_+)\ni u\mapsto u^{(k)}\in H^m(\mathbb{R}^N_-)\quad(k=1,\ldots,m) $$ はそれぞれ有界線形作用素であるので $(**)$ は有界線形作用素である。今、 $$ \partial^{\alpha}Eu=E_{\alpha}u\quad(\forall u\in D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+},\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+:\lvert\alpha\rvert\leq m)\quad\quad(***) $$ ($D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}$ は $D(\mathbb{R}^N)$ の元を $\mathbb{R}^N_+$ 上に制限したもの全体)が成り立つことを帰納法によって示す。そこである $n\in \{0,1\ldots,m-1\}$ に対し、 $$ \partial^{\alpha}Eu=E_{\alpha}u\quad(\forall u\in D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+},\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+:\lvert\alpha\rvert\leq n)\quad\quad(****) $$ が成り立つと仮定する。($n=0$の場合は自明に成り立つ。)$\lvert\alpha\rvert=n$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$ を取り、 $$ \beta:=\alpha+e_j=\alpha+(0,\ldots,0,\overset{j\text{ 番目}}{1},0,\ldots,0)\in \mathbb{Z}_+^N $$ とおく。任意の $u\in D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}$ を取る。任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し帰納法の仮定 $(****)$ と部分積分より、 $$ \begin{aligned} &\partial^{\beta}Eu(\varphi)=\partial_j\partial^{\alpha}Eu(\varphi)=\partial_jE_{\alpha}u(\varphi) =-E_{\alpha}(\partial_j\varphi)\\ &=-\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial^{\alpha}u(x)\partial_j\varphi(x)dx-\sum_{k=1}^{m}a_k\int_{\mathbb{R}^N_-}\partial^{\alpha}u^{(k)}(x)\partial_j\varphi(x)dx\\ &=E_{\beta}u(\varphi)-\left(\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_j(\partial^{\alpha}u\varphi)(x)dx+\sum_{k=1}^{m}a_k\int_{\mathbb{R}^N_-}\partial_j(\partial^{\alpha}u^{(k)}\varphi)(x)dx\right)\quad\quad(*****) \end{aligned} $$ であるから、$j\in \{1,\ldots,N-1\}$ の場合はFubiniの定理と微積分学の基本定理より $(*****)$ の右辺の第二項は $0$ である。$j=N$の場合、$(*****)$ の右辺の第二項は、Fubiniの定理と微積分学の基本定理より、 $$ \begin{aligned} &\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_N(\partial^{\alpha}u\varphi)(x)dx+\sum_{k=1}^{m}a_k\int_{\mathbb{R}^N_-}\partial_N(\partial^{\alpha}u^{(k)}\varphi)(x)dx\\ &=-\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\partial^{\alpha}u(x,0)\varphi(x,0)dx+\sum_{k=1}^{m}a_k\int_{\mathbb{R}^{N-1}} \partial^{\alpha}u^{(k)}(x,0)\varphi(x,0)dx\\ &=-\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\partial^{\alpha}u(x,0)\varphi(x,0)dx+\sum_{k=1}^{m}a_k(-k)^{\alpha_N}\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\partial^{\alpha}u(x,0)\varphi(x,0)dx\\ &=\left(-1+\sum_{k=1}^{m}a_k(-k)^{\alpha_N}\right)\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\partial^{\alpha}u(x,0)\varphi(x,0)dx \end{aligned} $$ であるから、$(*)$ より $0$ である。よって、 $$ \partial^{\beta}Eu(\varphi)=E_{\beta}u(\varphi)\quad(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つ。ゆえに、 $$ \partial^{\alpha}Eu=E_{\alpha}u\quad(\forall u\in D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+},\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+:\lvert\alpha\rvert\leq n+1) $$ が成り立つので、帰納法より $(***)$ が成り立つ。今、任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ を取る。命題34.2より $D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u-u_i\rVert_{2,m}=0$ なるものが取れる。$\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $(**)$ が有界線形作用素であることと命題5.5より、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}E_{\alpha}u_i=E_{\alpha}u\quad(D'(\mathbb{R}^N)\text{ の位相}) $$ であり、命題6.3より、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\partial^{\alpha}Eu_i=\partial^{\alpha}Eu\quad(D'(\mathbb{R}^N)\text{ の位相}) $$ である。よって $(***)$ より、 $$ E_{\alpha}u=\lim_{i\rightarrow\infty}E_{\alpha}u_i=\lim_{i\rightarrow\infty}\partial^{\alpha}Eu_i=\partial^{\alpha}Eu $$ である。これで任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し $Eu\in H^m(\mathbb{R}^N)$ であることと $(**)$ が成り立つことが示された。そして $\lvert\alpha\rvert\leq m$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ H^m(\mathbb{R}^N_+)\ni u\mapsto \partial^{\alpha}Eu=E_{\alpha}u\in L^2(\mathbb{R}^N) $$ は有界線形作用素であるので、 $$ E:H^m(\mathbb{R}^N_+)\ni u\mapsto Eu\in H^m(\mathbb{R}^N) $$ は有界線形作用素である。

定義34.6(半空間上のSobolev空間の拡張作用素)

’’定理34.5’’における有界線形作用素 $E:H^m(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N)$ を $H^m(\mathbb{R}^N_+)$ の拡張作用素と言う。任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N_+)$ に対し $Eu|_{\mathbb{R}^N_+}=u$ であることに注意。

35. 滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合 $\Omega$ 上のSobolev空間 $H^m(\Omega)$ の拡張作用素

定理35.1(滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合上のSobolev空間の拡張作用素の存在)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合(ベクトル解析5:多様体の向き定義21.3)、$m\in\mathbb{Z}_+$ とする。このとき有界線形作用素 $$ E:H^m(\Omega)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N) $$ で、 $$ Eu|_{\Omega}=u\quad(\forall u\in H^m(\Omega)) $$ を満たすものが存在する。(これを $H^m(\Omega)$ の拡張作用素と言う。)

証明

開集合の滑らかな境界の定義と $\partial\Omega$ のコンパクト性より $\mathbb{R}^N$ の有限個の局所座標 $( (U_k,\Phi_k))_{k=1,\ldots,\ell}$ で次を満たすものが取れる。

  • $(1)$ $\partial\Omega\subset \bigcup_{k=1}^{\ell}U_k$.
  • $(2)$ 各$k\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し、 $$ \Phi_k(U_k)=(-1,1)^N,\quad\Phi_k(U_k\cap\Omega)=(-1,1)^{N-1}\times (0,1),\quad \Phi_k(U_k\cap\partial\Omega)=(-1,1)^{N-1}\times\{0\}. $$
  • $(3)$ 各 $k\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し $\Phi_k,\Phi_k^{-1}$ の全ての偏導関数は有界。

$\partial\Omega$ はコンパクトであるので $(1)$ と測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題27.4より閉包がコンパクトな開集合 $D$ で、 $$ \partial\Omega\subset D\subset \overline{D}\subset \bigcup_{k=1}^{\ell}U_k $$ を満たすものが取れる。このとき命題2.2の $(4)$ より、 $$ d(\partial\Omega,\text{ }\mathbb{R}^N\backslash D)>0\quad\quad(*) $$ であり、$1$の分割(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分系15.6)より $h_k\in D(U_k)$ $(k=1,\ldots,\ell )$ で、 $$ \sum_{k=1}^{\ell}h_k(x)=1\quad(\forall x\in D)\quad\quad(**) $$ を満たすものが取れる。今、 $$ h_0:=1-\sum_{k=1}^{\ell}h_k\in C^\infty(\mathbb{R}^N) $$ とおく。このとき $h_0$ は全ての偏導関数が有界なのでLeibnizルール(命題7.2)より任意の $u\in H^m(\Omega)$ に対し $h_0u\in H^m(\Omega)$ であり、 注意33.4と $(*), (**)$ より、 $$ d(\text{supp}(h_0u),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash\Omega) =d(\text{supp}(h_0u),\text{ }\partial\Omega)\geq d(\text{supp}(h_0),\text{ }\partial\Omega)\geq d(\mathbb{R}^N\backslash D,\text{ }\partial\Omega)>0 $$ である。よって系33.5より $h_0u\in H^m_0(\Omega)$ であるから、命題32.3より $h_0u$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{h_0u}$ は $H^m(\mathbb{R}^N)$ に属する。これより有界線形作用素 $$ E_0:H^m(\Omega)\ni u\mapsto \widetilde{h_0u}\in H^m(\mathbb{R}^N\quad\quad(***) $$ が定義できる。任意の $k\in \{1,\ldots,\ell\}$ を取り固定する。$\text{supp}(h_k)\subset U_k$ はコンパクトであるので $\epsilon\in (0,1)$ で、 $$ \Phi_k(\text{supp}(h_k))\subset (-\epsilon,\epsilon)^N $$ を満たすものが取れる。$\Phi_k$ の $U_k\cap\Omega$ 上への制限を $\Psi_k$ とおくと、$(2),(3)$ とSobolev空間の変数変換(命題31.2)より、任意の $u\in H^m(\Omega)$ に対し、 $$ (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\in H^m( (-1,1)^{N-1}\times (0,1)),\quad \text{supp}((h_ku)\circ\Psi_k^{-1})\subset (-\epsilon,\epsilon)^{N-1}\times (0,\epsilon) $$ であり、 $$ d(\text{supp}( (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}),\text{ }\mathbb{R}^N_+\backslash (-1,1)^{N-1}\times(0,1))\geq1-\epsilon>0 $$ である。よって定理33.3より $(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\in H^m( (-1,1)^{N-1}\times (0,1))$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}$ は、 $$ \begin{aligned} &\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\in H^m(\mathbb{R}^N_+),\quad \lVert \widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\rVert_{2,m}=\lVert (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\rVert_{2,m},\\ &\text{supp}(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})=\text{supp}((h_ku)\circ\Psi_k^{-1})\subset (-\epsilon,\epsilon)^{N-1}\times (0,\epsilon)\quad\quad(****) \end{aligned} $$ を満たす。今、$H^m(\mathbb{R}^N_+)$ の拡張作用素(定義34.6)を、 $$ F:H^m(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N) $$ とすると、$(****)$ と $F$ の構成の仕方(定理34.5を参照)より、 $$ \text{supp}(F(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})) \subset \bigcup_{j=1}^{m}(-\epsilon,\epsilon)^{N-1}\times(-j^{-1}\epsilon,\epsilon)\subset (-\epsilon,\epsilon)^N $$ であるから、系33.5より、 $$ (F(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}))|_{(-1,1)^N}\in H^m_0((-1,1)^N) $$ である。よって $(3)$ とSobolev空間の変数変換(命題31.2)より、 $$ (F(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}))\circ\Phi_k\in H^m_0(U_k)\quad\quad(*****) $$ である。$(*****)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張を $E_ku$と すると命題32.3より $E_ku\in H^m(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \lVert E_ku\rVert_{2,m}=\lVert (F(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}))\circ\Phi_k\rVert_{2,m} $$ である。よって $(****)$ より $\Phi_k,\Psi_k,h_k$ のみによる定数 $C_1,C_2,C_3\in [0,\infty)$ が存在し、任意の $u\in H^m(\Omega)$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lVert E^ku\rVert_{2,m}&\leq C_1\lVert F\left(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\right)\rVert_{2,m} \leq C_1\lVert F\rVert\lVert (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\rVert_{2,m}\\ &\leq C_1\lVert F\rVert C_2\lVert h_ku\rVert_{2,m}\leq C_1\lVert F\rVert C_2C_3\lVert u\rVert_{2,m} \end{aligned} $$ となる。これより、 $$ E_k:H^m(\Omega)\ni u\mapsto E_ku\in H^m(\mathbb{R}^N) $$ は有界線形作用素である。 任意の $u\in H^m(\Omega)$、任意の $x\in \Omega$ を取る。$x\in U_k$ ならば、 $$ E_ku(x)=(F(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}))(\Phi_k(x)) =(F(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}))(\Psi_k(x)) =h_k(x)u(x) $$ であり、$x\notin U_k$ ならば $E_ku(x)=0=h_k(x)u(x)$ であるから、 $$ E_ku|_{\Omega}=h_ku\quad(\forall u\in H^m(\Omega))\quad\quad(******) $$ である。そこで有界線形作用素 $$ E:=E_0+\sum_{k=1}^{\ell}E_k:H^m(\Omega)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N) $$ を考えると、$(***), (******)$ より、 $$ Eu|_{\Omega}=E_0u|_{\Omega}+\sum_{k=1}^{\ell}E_ku|_{\Omega} =h_0u+\sum_{k=1}^{\ell}h_ku=u\quad(\forall u\in H^m(\Omega)) $$ であるから、$E$ は求める有界線形作用素である。

系35.2(滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合 $\Omega\subset \mathbb{R}^N$ に対し $H^m(\Omega)=\overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}}^{\lVert\cdot\rVert_{2,m}}$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合とする。このとき、 $$ H^m(\Omega)=\overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}}^{\lVert\cdot\rVert_{2,m}}=\overline{\{u|_{\Omega}:u\in D(\mathbb{R}^N)\}}^{\lVert\cdot\rVert_{2,m}} $$ が成り立つ。

証明

$E:H^m(\Omega)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N)$ を拡張作用素(定理35.1)とする。任意の $u\in H^m(\Omega)$ に対し $Eu\in H^m(\mathbb{R}^N)$ であり、 $H^m(\mathbb{R}^N)=H^m_0(\mathbb{R}^N)$(定理32.2)であるから、$D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert Eu-u_i\rVert_{2,m}=0 $$ を満たすものが取れる。$\Omega$ 上への制限を考えれば、 $$ \lVert u-u_i\rVert_{2,m}=\lVert Eu|_{\Omega}-u_i|_{\Omega}\rVert_{2,m} \leq \lVert Eu-u_i\rVert_{2,m}\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ であるから $u\in \overline{D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}}^{\lVert\cdot\rVert_{2,m}}$ である。

36. 半空間 $\mathbb{R}^N_+$ 上のSobolev空間 $H^1(\mathbb{R}^N_+)$ のトレース作用素

補題36.1

有界線形作用素 $$ \Gamma:H^1(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1}) $$ で、任意の $f\in H^1(\mathbb{R}^N)\cap C(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \Gamma f=f(\cdot,0)\quad\quad(*) $$ を満たすものが唯一つ存在する. ただし $N=1$ の場合は $L^2(\mathbb{R}^{N-1})=\mathbb{C}$、$f(\cdot,0)=f(0)$ とみなす。

証明

一意性は $H^1(\mathbb{R}^N)$ における $D(\mathbb{R}^N)\subset H^1(\mathbb{R}^N)\cap C(\mathbb{R}^N)$ の稠密性(定理32.2)による。存在を示す。 $$ \Gamma_0:(D(\mathbb{R}^N),\lVert \cdot\rVert_{2,1})\ni f\mapsto f(\cdot,0)\in L^2(\mathbb{R}^{N-1}) $$ なる線形作用素を考え、これが有界線形作用素であることを示す。$h\in D(\mathbb{R})$ で $h(0)=1$、$h(1)=0$ なるものを取り、 $$ C:={\rm max}(\lVert h\rVert_2,\lVert h'\rVert_2) $$ とおく。このとき任意の $f\in D(\mathbb{R}^N)$、任意の $x\in \mathbb{R}^{N-1}$ に対し微積分学の基本定理とHölderの不等式より、 $$ \begin{aligned} \lvert \Gamma_0f(x)\rvert&=\lvert f(x,0)\rvert=\lvert h(1)f(x,1)-h(0)f(x,0)\rvert =\left\lvert\int_{0}^{1}(h'(t)f(x,t)+h(t)\partial_Nf(x,t))dt\right\rvert\\ &\leq\int_{0}^{1}\lvert h'(t)f(x,t)\rvert dt+\int_{0}^{1}\lvert h(t)\partial_Nf(x,t)\rvert dt\\ &\leq \lVert h'\rVert_2\left(\int_{0}^{1}\lvert f(x,t)\rvert^2 dt\right)^{\frac{1}{2}}+\lVert h\rVert_2\left(\int_{0}^{1}\lvert \partial_Nf(x,t)\rvert^2 dt\right)^{\frac{1}{2}}\\ &\leq C\left(\left(\int_{\mathbb{R}}\lvert f(x,t)\rvert^2dt\right)^{\frac{1}{2}}+\left(\int_{\mathbb{R}}\lvert\partial_Nf(x,t)\rvert^2dt\right)^{\frac{1}{2}}\right) \end{aligned} $$ であるから、Minkowskiの不等式とTonelliの定理より、 $$ \begin{aligned} \lVert \Gamma_0f\rVert_2&=\left(\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\lvert f(x,0)\rvert^2dx\right)^{\frac{1}{2}} \leq C\left(\left(\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\int_{\mathbb{R}}\lvert f(x,t)\rvert^2dtdx\right)^{\frac{1}{2}}+\left(\int_{\mathbb{R}^{N-1}}\int_{\mathbb{R}}\lvert\partial_Nf(x,t)\rvert^2dt\right)^{\frac{1}{2}}\right)\\ &=C(\lVert f\rVert_2+\lVert \partial_Nf\rVert_{2})\leq 2C\lVert f\rVert_{2,1} \end{aligned} $$ である。よって $(**)$ は有界線形作用素である。$H^1(\mathbb{R}^N)$ において $D(\mathbb{R}^N)$ は稠密である(定理32.2)から、位相線形空間1:ノルムと内積命題3.6より $(**)$ は有界線形作用素 $$ \Gamma:H^1(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1}) $$ に一意拡張できる。後はこの $\Gamma$ が任意の $f\in H^1(\mathbb{R}^N)\cap C(\mathbb{R}^N)$ に対し $(*)$ を満たすことを示せばよい。Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $\omega\in D(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ 0\leq \omega(x)\leq 1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega(x)=1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq 1) $$ を満たすものを取り、各 $n\in\mathbb{N}$ に対し $\omega_n\in D(\mathbb{R}^N)$ を、 $$ \omega_n(x):=\omega(n^{-1}x)\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N) $$ とおく。このとき、 $$ 0\leq \omega_{n}(x)\leq1\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N),\quad \omega_n(x)=1\quad(\forall x\in\mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n) $$ である。$(\psi_{\epsilon})_{\epsilon\in(0,\infty)}$ をFriedrichsの軟化子(定義26.1)とする。今、任意の $f\in H^1(\mathbb{R}^N)\cap C(\mathbb{R}^N)$ を取り、 $$ f_n:=\omega_n(\psi_{\frac{1}{n}}*f)\in D(\mathbb{R}^N)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ とおく。このとき命題26.2の $(1)$ より $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ は $f$ にコンパクト一様収束する*18ので、特に $(f_n(\cdot,0))_{n\in\mathbb{N}}$ は $f(\cdot,0)$ に各点収束する。また定理32.2の証明より、 $$ \lim_{n\rightarrow\infty}\lVert f-f_n\rVert_{2,1}=0 $$ であり、$\Gamma:H^1(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1})$ は有界線形作用素であるので $(\Gamma f_n)_{n\in\mathbb{N}}=(f_n(\cdot,0))_{n\in\mathbb{N}}$ は $L^2(\mathbb{R}^{N-1})$ において $\Gamma f$ に収束する。よって $(f_n(\cdot,0))_{n\in\mathbb{N}}$ のある部分列 $(f_{k(n)}(\cdot,0))_{n\in\mathbb{N}}$と、$\Gamma f\in L^2(\mathbb{R}^{N-1})$ のある代表元 $g:\mathbb{R}^{N-1}\rightarrow \mathbb{C}$ が存在し、 $$ g(x)=\lim_{n\rightarrow\infty}f_{k(n)}(x,0)\quad(\text{a.e. }x\in \mathbb{R}^{N-1}) $$ が成り立つ*19。 ゆえに、 $$ f(x,0)=\lim_{n\rightarrow\infty}f_{k(n)}(x,0)=g(x)\quad(\text{a.e. }x\in \mathbb{R}^{N-1}) $$ であるから $\Gamma f=[g]=f(\cdot,0)$ である。

定理36.2($H^1(\mathbb{R}^N_+)$ のトレース作用素の一意存在)

有界線形作用素 $$ \Gamma:H^1(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1}) $$ で、任意の $f\in H^1(\mathbb{R}^N_+)\cap C(\overline{\mathbb{R}^N_+})$ に対し、 $$ \Gamma f=f(\cdot,0) $$ を満たすものが唯一つ存在する。(これを $H^1(\mathbb{R}^N_+)$ のトレース作用素と言う。)ただし $N=1$ の場合は $L^2(\mathbb{R}^{N-1})=\mathbb{C}$、$f(\cdot,0)=f(0)$ とみなす。

証明

一意性は $H^1(\mathbb{R}^N_+)$ における $D(\mathbb{R}^N)|_{\mathbb{R}^N_+}\subset H^1(\mathbb{R}^N_+)\cap C(\overline{\mathbb{R}^N_+})$ が稠密であること(命題34.2)よる。存在を示す。$H^1(\mathbb{R}^N_+)$ 上の拡張作用素(定義34.6) $$ E:H^1(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow H^1(\mathbb{R}^N) $$ と、補題36.1における有界線形作用素 $$ \Gamma_0:H^1(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1}),\quad \Gamma_0f=f(\cdot,0)\quad(\forall f\in H^1(\mathbb{R}^N)\cap C(\mathbb{R}^N)) $$ を考える。そしてこれらの合成によって有界線形作用素 $$ \Gamma:=\Gamma_0E:H^1(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1}) $$ を定義する。任意の $f\in H^1(\mathbb{R}^N_+)\cap C(\overline{\mathbb{R}^N_+})$ を取り、$\Gamma f$ が $(*)$ を満たすことを示せばよい。$E$ の定義(定理34.5を参照)より $Ef\in H^1(\mathbb{R}^N)$ の代表元 $\widetilde{f}:\mathbb{R}^N\rightarrow\mathbb{C}$ として、 $$ \widetilde{f}(x)=\left\{\begin{array}{cl}f(x_1,\ldots,x_{N-1},x_N)&(x_N\geq0)\\ f(x_1,\ldots,x_{N-1},-x_N)&(x_N<0)\end{array}\right. $$ を満たすものが取れ、$f\in C(\overline{\mathbb{R}^N_+})$ であるから $\widetilde{f}\in C(\mathbb{R}^N)$ である。よって $Ef=\widetilde{f}\in H^1(\mathbb{R}^N)\cap C(\mathbb{R}^N)$ であるので、 $$ \Gamma f=\Gamma_0Ef=\Gamma_0\widetilde{f}=\widetilde{f}(\cdot,0)=f(\cdot,0) $$ である。これで存在が示せた。

命題36.3($H^1(\mathbb{R}^N_+)$ のトレース作用素の基本性質)

$\Gamma:H^1(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1})$ をトレース作用素とし、$u\in H^1(\mathbb{R}^N_+)$ とする。また $\widetilde{u}\in L^2(\mathbb{R}^N)$ を $u$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張とする。このとき次は互いに同値である。

  • $(1)$ $u\in H^1_0(\mathbb{R}^N_+)$.
  • $(2)$ $\widetilde{u}\in H^1(\mathbb{R}^N)$.
  • $(3)$ $\Gamma u=0$.

証明

$(1)\Leftrightarrow(2)$ は命題34.3による。 $(1)\Rightarrow(3)$ を示す。$(1)$ が成り立つならば $D(\mathbb{R}^N_+)\subset H^1(\mathbb{R}^N_+)\cap C(\overline{\mathbb{R}^N_+})$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u-u_i\rVert_{2,1}=0 $$ を満たすものが取れる。よって、 $$ \Gamma u=\lim_{i\rightarrow\infty}\Gamma u_i=\lim_{i\rightarrow\infty}u_i(0,\cdot)=0 $$ であるから $(3)$ が成り立つ。
$(3)\Rightarrow(2)$ を示す。$(3)$ が成り立つとする。命題34.2より $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u-u_i|_{\mathbb{R}^N_+}\rVert_{2,1}=0\quad\quad(*) $$ を満たすものが取れる。任意の $j\in \{1,\ldots,N\}$、任意の $\varphi\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し部分積分より、 $$ \begin{aligned} \partial_j\widetilde{u}(\varphi)&=-\widetilde{u}(\partial_j\varphi)=-\int_{\mathbb{R}^N_+}u(x)\partial_j\varphi(x)dx =-\lim_{i\rightarrow\infty}\int_{\mathbb{R}^N_+}u_i(x)\partial_j\varphi(x)dx\\ &=\lim_{i\rightarrow\infty}\left(-\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_j(u_i\varphi)(x)dx+\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_ju_i(x)\varphi(x)dx\right)\quad\quad(**) \end{aligned} $$ である。$(**)$ の右辺の第一項について考える。$j\in \{1,\ldots,N-1\}$ の場合、Fubiniの定理と微積分学の基本定理より、 $$-\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_j(u_i\varphi)(x)dx=0\quad(\forall i\in \mathbb{N}) $$ であり、$j=N$の場合、$(*)$ より $\lim_{i\rightarrow\infty}\Gamma u_i=\Gamma u=0$ であることと、Fubiniの定理、微積分学の基本定理、Hölderの不等式より、 $$-\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_N(u_i\varphi)(x)dx =\int_{\mathbb{R}^{N-1}}u_i(x,0)\varphi(x,0)dx=\int_{\mathbb{R}^{N-1}}(\Gamma u_i)(x)\varphi(x,0)dx\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ である。また $(**)$ の右辺の第二項については $(*)$ より、 $$ \int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_ju_i(x)\varphi(x)dx\rightarrow\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_ju(x)\varphi(x)dx\quad(i\rightarrow\infty) $$ であるから $(**)$ の右辺は、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\left(-\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_j(u_i\varphi)(x)dx+\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_ju_i(x)\varphi(x)dx\right)=\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_ju(x)\varphi(x)dx $$ となる。ゆえに、 $$ \partial_j\widetilde{u}(\varphi)=\int_{\mathbb{R}^N_+}\partial_ju(x)\varphi(x)dx =\int_{\mathbb{R}^N_+}\widetilde{\partial_ju}(x)\varphi(x)dx =\widetilde{\partial_ju}(\varphi) $$ であるから、 $$ \partial_j\widetilde{u}=\widetilde{\partial_ju}\in L^2(\mathbb{R}^N)\quad(j=1,\ldots,N) $$ である。これより $\widetilde{u}\in H^1(\mathbb{R}^N)$ であるので $(2)$ が成り立つ。

37. 滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合 $\Omega$ 上のSobolev空間 $H^1(\Omega)$のトレース作用素

定理37.1(滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合 $\Omega$ 上のSobolev空間 $H^1(\Omega)$ のトレース作用素)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合(ベクトル解析5:多様体の向き定義21.3)とする。このとき有界線形作用素 $$ \gamma:H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega) $$ で、 $$ \gamma u=u|_{\partial\Omega}\quad(\forall u\in H^1(\Omega)\cap C(\overline{\Omega})) $$ を満たすものが唯一つ存在する。(これを $H^1(\Omega)$ のトレース作用素と言う。)ただし $L^2(\partial\Omega)$ はコンパクト超曲面 $\partial\Omega$ の面積測度(定義16.8)に関する $L^2$ 空間である。

証明

一意性は系35.2より $H^1(\Omega)$ において $D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}\subset H^1(\Omega)\cap C(\overline{\Omega})$ が稠密であることによる。存在を示す。$\mathbb{R}^N$ の有限個の局所座標 $( (U_k,\Phi_k))_{k=1,\ldots,\ell}$ で次を満たすものが取れる。

  • $(1)$ $\partial\Omega\subset \bigcup_{k=1}^{\ell}U_k$.
  • $(2)$ 各$k\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し、 $$ \Phi_k(U_k)=(-1,1)^N,\quad\Phi_k(U_k\cap\Omega)=(-1,1)^{N-1}\times (0,1),\quad \Phi_k(U_k\cap\partial\Omega)=(-1,1)^{N-1}\times\{0\}. $$
  • $(3)$ 各 $k\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し $\Phi_k,\Phi_k^{-1}$ の全ての偏導関数は有界。

$\partial\Omega$ はコンパクトであるので $(1)$ と測度と積分7:局所コンパクトHausdorff空間上のRadon測度命題27.4より閉包がコンパクトな開集合 $D$ で、 $$ \partial\Omega\subset D\subset \overline{D}\subset \bigcup_{k=1}^{\ell}U_k $$ を満たすものが取れる。このとき命題2.2の $(4)$ より、 $$ d(\partial\Omega,\text{ }\mathbb{R}^N\backslash D)>0 $$ であり、$1$ の分割(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分]]の系15.6)より $h_k\in D(U_k)$ $(k=1,\ldots,\ell)$ で、 $$ \sum_{k=1}^{\ell}h_k(x)=1\quad(\forall x\in D)\quad\quad(*) $$ を満たすものが取れる。任意の $k\in \{1,\ldots,\ell\}$ を取り固定する。$\text{supp}(h_k)\subset U_k$ はコンパクトであるので $\epsilon\in (0,1)$ で、 $$ \Phi_k(\text{supp}(h_k))\subset [-\epsilon,\epsilon]^N $$ を満たすものが取れる。$\Phi_k$ の $U_k\cap \Omega$ 上への制限を $\Psi_k$ とおく。そして $(2)$ により、 $$ \Phi_k(x)=(\Theta_k(x),0)\quad(\forall x\in U_k\cap \partial\Omega) $$ として $\partial\Omega$ の局所座標 $(U_k\cap\partial\Omega,\Theta_k)$ を定義する。$(2),(3)$ とSobolev空間の変数変換(命題31.2)より任意の $u\in H^1(\Omega)$ に対し、 $$ (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\in H^1( (-1,1)^{N-1}\times (0,1)),\quad \text{supp}( (h_ku)\circ\Psi_k^{-1})\subset [-\epsilon,\epsilon]^{N-1}\times (0,\epsilon] $$ であり(右の式に関しては命題9.3を参照)、 $$ d(\text{supp}( (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}),\text{ }\mathbb{R}^N_+\backslash ( (-1,1)^{N-1}\times (0,1)))\geq 1-\epsilon>0\quad\quad(**) $$ であるから、定理33.3より $(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\in H^1( (-1,1)^{N-1}\times (0,1))$ の $\mathbb{R}^N_+$ 上への $0$ 拡張 $\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}$ は、 $$ \begin{aligned} &\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\in H^1(\mathbb{R}^N_+),\quad \lVert \widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\rVert_{2,1}=\lVert (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\rVert_{2,1},\\ &\text{supp}(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})=\text{supp}((h_ku)\circ\Psi_k^{-1})\subset [-\epsilon,\epsilon]^{N-1}\times (0,\epsilon]\quad\quad(***) \end{aligned} $$ を満たす。今、$H^1(\mathbb{R}^N_+)$ のトレース作用素(定理36.2)を、 $$ \Gamma:H^1(\mathbb{R}^N_+)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^{N-1}) $$ とする。$(***)$ より、 $$ \Gamma\left(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\right)\in L^2(\mathbb{R}^{N-1}),\quad \text{supp}\left(\Gamma\left(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\right)\right)\subset [-\epsilon,\epsilon]^{N-1}\quad\quad(****) $$ である。$(3)$ より $\partial\Omega$ の局所座標 $(U_k\cap\partial\Omega,\Theta_k)$ に対する計量行列の行列式(ベクトル解析3:Euclid空間内の多様体の計量定義12.2)は有界であるから面積測度の定義(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定義16.8)より、 $$ \Gamma\left(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\right)\circ\Theta_k\in L^2(U_k\cap\partial\Omega)\quad\quad(*****) $$ である。そこで $(*****)$ の $\partial\Omega$ 上への $0$ 拡張を $\gamma_ku\in L^2(\partial\Omega)$ とおく。このとき面積測度の定義と $(***)$ とSobolev空間の変数変換(命題31.2)より $\Theta_k,\Psi_k,h_k$ のみによる定数 $C_1,C_2,C_3\in [0,\infty)$ が存在し、任意の $u\in H^1(\Omega)$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lVert \gamma_ku\rVert_2&=\left\lVert \Gamma(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})\circ\Theta_k\right\rVert_2\leq C_1\left\lVert \Gamma(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})\right\rVert_2\\ &C_1\lVert \Gamma\rVert\left\lVert \widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\right\rVert_{2,1} =C_1\lVert \Gamma\rVert\left\lVert (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\right\rVert_{2,1}\\ &\leq C_1\lVert \Gamma\rVert C_2\lVert h_ku\rVert_{2,1} \leq C_1\lVert \Gamma\rVert C_2C_3\lVert u\rVert_{2,1} \end{aligned} $$ となる。これより、 $$ \gamma_k:H^1(\Omega)\ni u\mapsto\gamma_ku\in L^2(\partial\Omega) $$ は有界線形作用素である。任意の $u\in H^1(\Omega)\cap C(\overline{\Omega})$ に対し $(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\in C((-1,1)^{N-1}\times[0,1) )$ であり、 $$ \text{supp}( (h_ku)\circ\Psi_k^{-1})\subset [-\epsilon,\epsilon]^{N-1}\times [0,\epsilon] $$ であるから $\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\in C(\overline{\mathbb{R}^N_+})$ である。よって任意の $x\in\partial\Omega$ に対し、$x\in U_k$ ならば、 $$ \begin{aligned} (\gamma_ku)(x)&=\Gamma(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})(\Theta_k(x))=(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})(\Theta_k(x),0)\\ &=(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})(\Psi_k(x)) =h_k(x)u(x) \end{aligned} $$ であり、$x\notin U_x$ ならば $(\gamma_ku)(x)=0=h_k(x)u(x)$ である。ゆえに、 $$ \gamma_ku=(h_ku)|_{\partial\Omega}\quad(\forall u\in H^k(\Omega)\cap C(\overline{\Omega}))\quad\quad(******) $$ である。そこで有界線形作用素 $$ \gamma:=\sum_{k=1}^{\ell}\gamma_k:H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega) $$ を定義すれば、$(**)$, $(******)$ より任意の $u\in H^1(\Omega)\cap C(\overline{\Omega})$ に対し、 $$ \gamma u=\sum_{k=1}^{\ell}\gamma_ku=\sum_{k=1}^{\ell}(h_ku)|_{\partial\Omega}=u|_{\partial\Omega} $$ である。これで存在が示せた。

定理37.2(滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合 $\Omega$ 上のSobolev空間 $H^1(\Omega)$ のトレース作用素の基本性質)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合とし、 $\gamma:H^1(\Omega)\rightarrow L^2(\partial\Omega)$ をトレース作用素(定理37.1)とする。このとき $u\in H^1(\Omega)$ に対し次は互いに同値である。

  • $(1)$ $u\in H^1_0(\Omega)$.
  • $(2)$ $\gamma u=0$.
  • $(3)$ $\widetilde{u}\in H^1(\mathbb{R}^N)$.(ただし $\widetilde{u}$ は $u$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張である。)

証明

定理37.1の証明で用いた記号を踏襲する。$(1)\Rightarrow(2)$ を示す。$u\in H^1_0(\Omega)$ ならば、$D(\Omega)$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u-u_i\rVert_{2,1}=0$ なるものが取れる。$u_i|_{\partial\Omega}=0$ $(\forall i\in \mathbb{N})$ より、 $$ \gamma u=\lim_{i\rightarrow\infty}\gamma u_i=\lim_{i\rightarrow\infty}u_i|_{\partial\Omega}=0 $$ である。よって $(1)\Rightarrow(2)$ が成り立つ。
$(2)\Rightarrow(3)$ を示す。$\gamma u=0$ とする。系35.2より $D(\mathbb{R}^N)|_{\Omega}$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u-u_i\rVert_{2,1}=0$ を満たすものが取れる。各 $k\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し、 $$ \gamma_ku=\lim_{i\rightarrow\infty}\gamma_ku_i=\lim_{i\rightarrow\infty}(h_ku_i)|_{\partial\Omega}=h_k|_{\partial\Omega}\gamma u=0 $$ であるから定理37.1の $(*****)$ が $0$ であるので、 $$ \Gamma(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}})|_{(-1,1)^{N-1}}=0 $$ であり、定理37.1の $(****)$ より $\text{supp}(\Gamma(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}))\subset (-1,1)^{N-1}$ であるので、 $$ \Gamma\left(\widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\right)=0 $$ である。よって命題36.3より、 $$ \widetilde{(h_ku)\circ\Psi_k^{-1}}\in H^1(\mathbb{R}^N_+)\quad\quad(*) $$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張は $H^1(\mathbb{R}^N)$ に属する。$(*)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張は $(h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k\in L^2((-1,1)^N)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張であり、それが $H^1(\mathbb{R}^N)$ に属するので、 $$ (h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k\in H^1((-1,1)^N) $$ である。そして、 $$ \text{supp}( (h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k)\subset [-\epsilon,\epsilon]^N\quad\quad(**) $$ であるから、系33.5より、 $$ (h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k\in H^1_0((-1,1)^N) $$ である。よってSobolev空間の変数変換(命題31.2)より、 $$ (h_k\widetilde{u})|_{U_k}\in H^1_0(U_k) $$ であるから、命題32.3より $h_k\widetilde{u}\in H^1(\mathbb{R}^N)$ である。ここで、 $$ h_0:=1-\sum_{k=1}^{\ell}h_k $$ に対し、定理37.1の $(*)$ より、 $$ d(\text{supp}(h_0u),\text{ }\mathbb{R}^N\backslash\Omega) =d(\text{supp}(h_0u),\text{ }\partial\Omega)\geq d(\text{supp}(h_0),\text{ }\partial\Omega)\geq d(\mathbb{R}^N\backslash D,\text{ }\partial\Omega)>0 $$ であるから系33.5より $h_0u\in H^m_0(\Omega)$ であり、命題32.3より $\widetilde{h_0u}\in H^m(\mathbb{R}^N)$ である。これより、 $$ \widetilde{u}=h_0\widetilde{u}+\sum_{k=1}^{\ell}h_k\widetilde{u}\in H^1(\mathbb{R}^N) $$ であるから $(2)\Rightarrow(3)$ が成り立つ。
$(3)\Rightarrow(1)$ を示す。$\widetilde{u}\in H^1(\mathbb{R}^N)$ とする。このとき各 $k\in \{1,\ldots,\ell\}$ に対し、 $$ (h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k^{-1}\in H^1((-1,1)^N),\quad \text{supp}( (h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k^{-1})\subset \Phi_k(\text{supp}(h_k))\subset [-\epsilon,\epsilon]^N $$ であるから系33.5より $(h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k^{-1}\in H^1_0((-1,1)^N)$、したがって命題32.3より $(h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k^{-1}$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張は $H^1(\mathbb{R}^N)$ に属する。$(h_k\widetilde{u})\circ\Phi_k^{-1}$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張は $(*)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張と等しいから $(*)$ の $\mathbb{R}^N$ 上への $0$ 拡張は $H^1(\mathbb{R}^N)$ に属する。よって命題36.3より $(*)$ は $H^1_0(\mathbb{R}^N_+)$ に属するので、$(**)$ と定理33.3より、 $$ (h_ku)\circ\Psi_k^{-1}\in H^1_0( (-1,1)^{N-1}\times (0,1)), $$ したがってSobolev空間の変数変換(命題31.2)より、 $$ (h_ku)|_{U_k\cap \Omega}\in H^1_0(U_k\cap \Omega) $$ である。命題32.3より $(h_ku)|_{U_k\cap \Omega}$ の $\Omega$ 上への $0$ 拡張 $h_ku$ は $H^1_0(\Omega)$ に属し、$h_0u\in H^1_0(\Omega)$ であるから、 $$ u=h_0u+\sum_{k=1}^{\ell}h_ku\in H^1_0(\Omega) $$ である。よって $(3)\Rightarrow(1)$ が成り立つ。

38. Sobolevの埋め込み定理

命題38.1(Fourier変換によるSobolev空間 $H^m(\mathbb{R}^N)$ のノルム)

Hilbert空間 $L^2(\mathbb{R}^N)$ 上のユニタリ作用素としてのFourier変換(Plancherelの定理(定理19.1)を参照)$\mathcal{F}:L^2(\mathbb{R}^N)\rightarrow L^2(\mathbb{R}^N)$ を考える。このとき任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ (1+\lvert\text{id}\rvert^2)^{\frac{m}{2}}\mathcal{F}u\in L^2(\mathbb{R}^N)\quad\quad(*) $$ が成り立つ。そして $H^m(\mathbb{R}^N)$ のノルム $p_m:H^m(\mathbb{R}^N)\rightarrow [0,\infty)$ を、 $$ p_m(u):=\lVert (1+\lvert \text{id}\rvert^2)^{\frac{m}{2}}\mathcal{F}u\rVert_2\quad(\forall u\in H^m(\mathbb{R}^N)) $$ として定義すると、ある定数 $C_m\in (0,\infty)$ が存在し $H^m(\mathbb{R}^N)$ の通常のノルム $\lVert \cdot\rVert_{2,m}$ に対し、 $$ \lVert u\rVert_{2,m}\leq p_m(u)\leq C_m\lVert u\rVert_{2,m}\quad(\forall u\in H^m(\mathbb{R}^N)) $$ が成り立つ。

証明

ある $C_{\alpha}\in \mathbb{N}$ $(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m)$ に対し、 $$ (1+\lvert\text{id}\rvert^2)^{m}=(1+\text{id}_1^2+\ldots +\text{id}_N^2)^m=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}(\text{id}^{\alpha})^2 $$ と表せる。よって命題18.3より任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ (1+\lvert\text{id}\rvert^2)^m\lvert\mathcal{F}u\rvert^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lvert \text{id}^{\alpha}\mathcal{F}u\rvert^2 =\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lvert \mathcal{F}\partial^{\alpha}u\rvert^2 $$ であるから、 $$ \lVert (1+\lvert \text{id}\rvert^2)^{\frac{m}{2}}\mathcal{F}u\rVert_2^2 =\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lVert \mathcal{F}\partial^{\alpha}u\rVert_2^2 =\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2^2<\infty $$ である。ゆえに $(*)$ が成り立ち、$C_{\alpha}\geq1$ $(\forall\alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m)$ より任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ p_m(u)^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2^2 \geq \sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2^2 =\lVert u\rVert_{2,m}^2 $$ である。また、 $$ C:=\sqrt{\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}} $$ とおけば、任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ p_m(u)^2=\sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_2^2 \leq \sum_{\lvert\alpha\rvert\leq m}C_{\alpha}\lVert u\rVert_{2,m}^2 \leq C^2\lVert u\rVert_{2,m}^2 $$ であるから、 $$ \lVert u\rVert_{2,m}\leq p_m(u)\leq C\lVert u\rVert_{2,m}\quad(\forall u\in H^m(\mathbb{R}^N)) $$ である。

命題38.2(Banach空間 $BC^k(\Omega)$)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を開集合、$k\in \mathbb{Z}_+$ とする。$\Omega$ 上の複素数値 $C^k$ 級関数で $k$ 階までの全ての偏導関数が有界であるもの全体のなす線形空間 $BC^k(\Omega)$ に対し、 $$ \lVert f\rVert_{\infty,k}:=\underset{\lvert\alpha\rvert\leq k}{\rm max}\lVert \partial^{\alpha}f\rVert_{\infty}\quad(\forall f\in BC^k(\Omega)) $$ なるノルム $\lVert \cdot\rVert_{\infty,k}:BC^k(\Omega)\rightarrow [0,\infty)$ を定義する。このときノルム $\lVert \cdot\rVert_{\infty,k}$ により $BC^k(\Omega)$ はBanach空間である。

証明

$(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を $(BC^k(\Omega),\lVert \cdot\rVert_{\infty,k})$ のCauchy列とすると、$\lvert\alpha\rvert\leq k$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し、 $$ \lVert \partial^{\alpha}f_i-\partial^{\alpha} f_j\rVert_{\infty}\leq \lVert f_i-f_j\rVert_{\infty,k}\quad(\forall i,j\in \mathbb{N}) $$ であるから $(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in \mathbb{N}}$ は $\sup$ ノルムによるBanach空間 $C_b(\Omega)$($\Omega$ 上の複素数値有界連続関数全体)のCauchy列である。よって $\lvert\alpha\rvert\leq k$ を満たす任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $f^{(\alpha)}\in C_b(\Omega)$ で、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert \partial^{\alpha}f_i-f^{(\alpha)}\rVert_{\infty}=0\quad\quad(*) $$ なるものが定まる。今、$f:=f^{(0)}\in C_b(\Omega)$ とおく。 $$ f\in C^k(\Omega),\quad \partial^{\alpha}f=f^{(\alpha)}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq k)\quad\quad(**) $$ が成り立つことを帰納法によって示す。そこである $m\in \{0,1,\ldots,k-1\}$ に対し、 $$ f\in C^m(\Omega),\quad \partial^{\alpha}f=f^{(\alpha)}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m) $$ が成り立つと仮定する。$\lvert\alpha\rvert=m$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $j\in\{1,\ldots,N\}$ に対し、 $$ \beta:=\alpha+e_j=\alpha+(0,\ldots,0,\overset{j\text{ 番目}}{1},0,\ldots,0)\in \mathbb{Z}_+^N $$ とおく。任意の $x\in \Omega$ と $\{y\in \mathbb{R}^N:\lvert y-x\rvert<\delta\}\subset \Omega$ なる任意の $\delta\in (0,\infty)$ を取る。$0<\lvert h\rvert<\delta$ なる任意の $h\in \mathbb{R}$ に対し微積分学の基本定理より、 $$ \frac{\partial^{\alpha}f_i(x+he_j)-\partial^{\alpha}f_i(x)}{h} =\int_{\Omega}\partial^{\beta}f_i(x+\theta he_j)d\theta \quad(\forall i\in \mathbb{N}) $$ であり、$(\partial^{\alpha}f_i)_{i\in \mathbb{N}}$ は $f^{(\alpha)}=\partial^{\alpha}f$ に一様収束し、$(\partial^{\beta}f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $f^{(\beta)}$ に一様収束するので、$i\rightarrow\infty$ とすれば、 $$ \frac{\partial^{\alpha}f(x+he_j)-\partial^{\alpha}f(x)}{h}=\int_{\Omega}f^{(\beta)}(x+\theta he_j)d\theta $$ を得る。そして $f^{(\beta)}$ は有界連続関数であるので $h\rightarrow0$ とすれば、Lebesgue優収束定理より、 $$ \partial_j\partial^{\alpha}f(x)=f^{(\beta)}(x) $$ となる。よって $\lvert\alpha\rvert=m$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ に対し $\partial^{\alpha}f\in C^1(\Omega)$ であり、 $$ \partial_j\partial^{\alpha}f=f^{(\alpha+e_j)}\quad(j=1,\ldots,N) $$ が成り立つので、 $$ f\in C^{m+1}(\Omega),\quad \partial^{\alpha}f=f^{(\alpha)}\quad(\forall \alpha\in \mathbb{Z}_+^N:\lvert\alpha\rvert\leq m+1) $$ が成り立つ。よって帰納法より $(**)$ が成り立つ。これより $f\in BC^k(\Omega)$ であり、$(*)$ より、 $$ \lVert f-f_i\rVert_{\infty,k}=\underset{\lvert\alpha\rvert\leq k}{\rm max}\lVert \partial^{\alpha}f-\partial^{\alpha}f_i\rVert_{\infty}\rightarrow0\quad(i\rightarrow\infty) $$ であるから $BC^k(\Omega)$ はノルム $\lVert \cdot\rVert_{\infty,k}$ によりBanach空間である。

定理38.3(Sobolevの埋め込み定理1)

$m,k\in \mathbb{Z}_+$ が $m>k+\frac{N}{2}$ を満たすとする。このとき $H^m(\mathbb{R}^N)\subset BC^k(\mathbb{R}^N)$ が成り立つ。そして、 $$ H^m(\mathbb{R}^N)\ni u\mapsto u\in BC^k(\mathbb{R}^N) $$ は有界線形作用素である。ただし $BC^k(\mathbb{R}^N)$ は命題38.2におけるBanach空間である。

証明

命題38.1における $H^m(\mathbb{R}^N)$ のノルム $$ p_m:H^m(\mathbb{R}^N)\ni u\mapsto \lVert (1+\lvert \text{id}\rvert^2)^{\frac{m}{2}}\mathcal{F}u\rVert_2\in [0,\infty) $$ を考える。$\lvert\alpha\rvert\leq k$ なる任意の $\alpha\in \mathbb{Z}_+^N$ と任意の $u\in D(\mathbb{R}^N)$ に対し命題18.3とHölderの不等式より、 $$ \begin{aligned} (2\pi)^{\frac{N}{2}}\lvert\partial^{\alpha}u(x)\rvert&= (2\pi)^{\frac{N}{2}}\lvert \widecheck{\text{id}^{\alpha}\widehat{u}}(x)\rvert \leq\int_{\mathbb{R}^N}\lvert y^{\alpha}\widehat{u}(y)\rvert dy =\int_{\mathbb{R}^N}\frac{\lvert y^{\alpha}\rvert}{(1+\lvert y\rvert^2)^{\frac{m}{2}}}(1+\lvert y\rvert^2)^{\frac{m}{2}}\lvert \widehat{u}(y)\rvert dy\\ &\leq \left(\int_{\mathbb{R}^N}\frac{\lvert y^{\alpha}\rvert^2}{(1+\lvert y\rvert^2)^m}dy\right)^{\frac{1}{2}}\left(\int_{\mathbb{R}^N}(1+\lvert y\rvert^2)^{m}\lvert \widehat{u}(y)\rvert^2dy\right)^{\frac{1}{2}}\\ &\leq \left(\int_{\mathbb{R}^N}\frac{\lvert y\rvert^{2\lvert\alpha\rvert}}{(1+\lvert y\rvert^2)^m}dy\right)^{\frac{1}{2}}p_m(u) \quad(\forall x\in \mathbb{R}^N)\quad\quad(*) \end{aligned} $$ となる。ここで単位球面 $S_{N-1}\subset \mathbb{R}^N$ の面積測度を $\mu(S_{N-1})$ とおくと極座標変換(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理18.4)より、 $$ \begin{aligned} \int_{\mathbb{R}^N}\frac{\lvert y\rvert^{2\lvert\alpha\rvert}}{(1+\lvert y\rvert^2)^m}dy &\leq \mu(S_{N-1})\int_{[0,\infty)}r^{N-1}\frac{r^{2\lvert\alpha\rvert}}{(1+r^2)^m}dr \leq\mu(S_{N-1})\left(1+\int_{[1,\infty)}r^{N-1}\frac{r^{2k}}{(1+r^2)^m}dr\right)\\ &\leq\mu(S_{N-1})\left(1+\int_{[1,\infty)}r^{N+2k-2m-1}dr\right) \leq \mu(S_{N-1})\left(1+\frac{1}{2(m-(k+\frac{N}{2}))}\right)\quad\quad(**) \end{aligned} $$ であるから、 $$ C:=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\left(\mu(S_{N-1})\left(1+\frac{1}{2(m-(k+\frac{N}{2}))}\right)\right)^{\frac{1}{2}} $$ とおけば $(*)$, $(**)$ より、 $$ \lVert\partial^{\alpha}u\rVert_{\infty}\leq Cp_m(u) $$ となる。$C$ は $m,k,N$ のみによる定数であるから、 $$ \lVert u\rVert_{\infty,k}=\underset{\lvert\alpha\rvert\leq k}{\rm max}\lVert \partial^{\alpha}u\rVert_{\infty}\leq Cp_m(u)\quad(\forall u\in D(\mathbb{R}^N))\quad\quad(***) $$ が成り立つ。任意の $u\in H^m(\mathbb{R}^N)$ に対し定理32.2より $D(\mathbb{R}^N)$ の列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ で $\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u_i-u\rVert_{2,m}=0$ を満たすものが取れる。命題38.1より $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ はノルム $p_m$ に関してCauchy列であり、$(***)$ より、 $$ \lVert u_i-u_j\rVert_{\infty,k}\leq Cp_m(u_i-u_j)\quad(\forall i,j\in \mathbb{N}) $$ であるから $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ はBanach空間 $BC^k(\mathbb{R}^N)$ のCauchy列である。よってある $v\in BC^k(\mathbb{R}^N)$ に対し、 $$ \lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u_i-v\rVert_{\infty,k}=0\quad\quad(****) $$ となる。ここで $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $u$ に $L^2$ ノルムで収束するので $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ のある部分列は $u$ のある代表元にa.e. で各点収束し、 $(****)$ より $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $v$ に一様収束する。よって $u=v\in BC^k(\mathbb{R}^N)$ であり、 $$ \lVert u\rVert_{\infty,k}=\lim_{i\rightarrow\infty}\lVert u_i\rVert_{\infty,k} \leq \lim_{i\rightarrow\infty}Cp_m(u_i)=Cp_m(u) $$ である。これより $H^m(\Omega)\subset BC^k(\Omega)$ であり、$H^m(\Omega)\ni u\mapsto u\in BC^k(\Omega)$ は有界線形作用素である。

定理38.4(Sobolevの埋め込み定理2)

$\Omega\subset\mathbb{R}^N$ を滑らかでコンパクトな境界を持つ開集合(ベクトル解析5:多様体の向き定義21.3)とし、$m,k\in\mathbb{Z}_+$ が $m>k+\frac{N}{2}$ を満たすとする。このとき $H^m(\Omega)\subset BC^k(\Omega)$ が成り立つ。そして、 $$ H^m(\Omega)\ni u\mapsto u\in BC^k(\Omega) $$ は有界線形作用素である。ただし$BC^k(\Omega)$ は命題38.2におけるBanach空間である。

証明

定理35.1より有界線形作用素 $$ E:H^m(\Omega)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N) $$ で $Eu|_{\Omega}=u$ $(\forall u\in H^m(\Omega))$ を満たすものが取れる。定理38.3より定数 $C\in [0,\infty)$ が存在し、 $$ Eu\in BC^k(\mathbb{R}^N),\quad \lVert Eu\rVert_{\infty,k}\leq C\lVert Eu\rVert_{2,m}\quad(\forall u\in H^m(\Omega)) $$ が成り立つ。よって任意の $u\in H^m(\Omega)$ に対し $u=Eu|_{\Omega}\in BC^k(\Omega)$ であり、 $$ \lVert u\rVert_{\infty,k}\leq \lVert Eu\rVert_{\infty,k}\leq C\lVert Eu\rVert_{2,m} \leq C\lVert E\rVert\lVert u\rVert_{2,m} $$ であるので $H^m(\Omega)\ni u\mapsto u\in BC^k(\Omega)$ は有界線形作用素である。

39. Rellich-Kondrachovの定理

補題39.1(Ascoli-Arzelàの定理)

コンパクトHausdorff空間 $X$ 上の複素数値連続関数全体に各点ごとの演算と $\sup$ ノルムを入れたBanach空間 $C(X)$ を考える。そして $C(X)$ の部分集合 $\mathcal{F}\subset C(X)$ が次を満たすとする。

  • $(1)$ $\mathcal{F}$ は有界、すなわち $\sup_{f\in \mathcal{F}}\lVert f\rVert<\infty$.
  • $(2)$ 任意の $x\in X$、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $x$ の開近傍 $U_x$ が存在し、 $$ \sup_{f\in \mathcal{F}}\lvert f(y)-f(x)\rvert\leq\epsilon\quad(\forall y\in U_x) $$ が成り立つ。

このとき $\overline{\mathcal{F}}\subset C(X)$ は(点列)コンパクトである。

証明

距離空間の位相の基本的性質定理6.5より $\overline{\mathcal{F}}$ が全有界であることを示せばよく、そのためには $\mathcal{F}$ が全有界であることを示せばよい。任意の $\epsilon\in(0,\infty)$ を取り固定する。このとき $(2)$ より $x$ の開近傍 $U_x$ で、 $$ \sup_{f\in \mathcal{F}}\lvert f(y)-f(x)\rvert\leq\frac{\epsilon}{3}\quad\quad(*) $$ を満たすものが取れる。$X$ のコンパクト性より有限個の $x_1,\ldots,x_n\in X$ で、 $$ X=\bigcup_{j=1}^{n}U_{x_j}\quad\quad(**) $$ なるものが取れる。今、 $$ \Phi:\mathcal{F}\ni f\mapsto (f(x_1),\ldots,f(x_n))\in \mathbb{C}^n $$ とおくと、$(1)$ より $\Phi(\mathcal{F})\subset \mathbb{C}^n$ は有界であり、$\mathbb{C}^n$ の有界閉集合はコンパクトであるから $\Phi(\mathcal{F})$ は全有界である。よって有限個の $f_1,\ldots,f_n\in \mathcal{F}$ が取れて、 $$ \Phi(\mathcal{F})\subset \bigcup_{k=1}^{m}B(\Phi(f_k),\text{ }\frac{\epsilon}{3})\quad\quad(***) $$ が成り立つ。任意の $f\in \mathcal{F}$ に対し $(***)$ より、 $$ \lvert \Phi(f)-\Phi(f_k)\rvert<\frac{\epsilon}{3}\quad\quad(****) $$ を満たす $k\in \{1,\ldots,m\}$ が取れる。そして任意の $x\in X$ に対し $(**)$ より $x\in U_{x_j}$ なる $j\in \{1,\ldots,n\}$ が取れ、$(*)$ より、 $$ \begin{aligned} \lvert f(x)-f_k(x)\rvert&\leq \lvert f(x)-f(x_j)\rvert+\lvert f(x_j)-f_k(x_j)\rvert+\lvert f_k(x_j)-f_k(x)\rvert\leq\frac{2}{3}\epsilon+\lvert \Phi(f)-\Phi(f_k)\rvert \end{aligned} $$ である。よって $(****)$ より、 $$ \lVert f-f_k\rVert=\sup_{x\in X}\lvert f(x)-f_k(x)\rvert\leq\frac{2}{3}\epsilon+\lvert\Phi(f)-\Phi(f_k)\rvert<\epsilon $$ であるので、 $$ \mathcal{F}\subset \bigcup_{k=1}^{m}B(f_k,\epsilon) $$ が成り立つ。よって $\mathcal{F}$ は全有界である。

補題39.2

$\mathbb{R}^N$ 上の複素数値連続関数の列 $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ が次の条件を満たすとする。

  • $(1)$ 任意のコンパクト集合 $K$ に対し $\sup_{n\in\mathbb{N}}\sup_{x\in K}\lvert f_n(x)\rvert<\infty$.
  • $(2)$ 任意の $x\in \mathbb{R}^N$、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ に対し $x$ の開近傍 $U_x$ が存在し、 $$ \sup_{n\in\mathbb{N}}\lvert f_n(y)-f_n(x)\rvert<\epsilon\quad(\forall y\in U_x). $$

このとき $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ のある部分列はコンパクト一様収束(定義3.2)する。

証明

任意の $n\in\mathbb{N}$ に対しコンパクト集合 $K_n:=\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n\}$ を定義する。$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の $K_1$ 上への制限を考えてAscoli-Arzelàの定理(補題39.1)を適用すれば、$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ のある部分列 $(f_{k_1(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ で $K_1$ 上で一様収束するものが取れる。$(f_{k_1(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ の $K_2$ 上への制限を考えてAscoli-Arzelàの定理を適用すれば、$(f_{k_1(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ の部分列 $(f_{k_2(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ で $K_2$ 上で一様収束するものが取れる。以下同様の操作を繰り返し、$(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の部分列の列 $$ (f_{k_m(n)})_{n\in\N}\quad(m=1,2,3\ldots) $$ で次の条件を満たすものができる。

  • $(1)$ 任意の $m\in\mathbb{N}$ に対し $(f_{k_m(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $K_m$ 上で一様収束する。
  • $(2)$ 任意の $m\in\mathbb{N}$ に対し $(f_{k_{m+1}(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $(f_{k_m(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ の部分列である。

$(2)$ より、 $$ k_n(n)<k_{n+1}(n)<k_{n+1}(n+1)\quad(\forall n\in\mathbb{N}) $$ であるから $(f_{k_n(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $(f_n)_{n\in\mathbb{N}}$ の部分列である。任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し $K\subset K_m$ なる $m\in\mathbb{N}$が取れ、$(1)$ より $(f_{k_m(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $K$ 上で一様収束する。$(2)$ より $(f_{k_n(n)})_{n\geq m}$ は $(f_{k_m(n)})_{n\geq m}$ の部分列であるから $(f_{k_n(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $K$ 上で一様収束する。ゆえに $(f_{k_n(n)})_{n\in\mathbb{N}}$ は $\mathbb{R}^N$ 上でコンパクト一様収束する。

定理39.3(Rellich-Kondrachovの定理1)

$n,m\in \mathbb{Z}_+$ を $n<m$ とし、$(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ をSobolev空間 $H^m(\mathbb{R}^N)$ の列とする。そしてある $M\in (0,\infty)$ とコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し次が成り立つと仮定する。

  • $(1)$ $\sup_{i\in\mathbb{N}}\lVert u_i\rVert_{2,m}\leq M$.
  • $(2)$ 任意の $i\in \mathbb{N}$ に対し $\text{supp}(u_i)\subset K$.

このとき $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ のある部分列は $H^n(\mathbb{R}^N)$ において収束する。

証明

Urysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $h\in D(\mathbb{R}^N)$ で $h(x)=1$ $(\forall x\in K)$ を満たすものが取れる。$(2)$ より $u_i=hu_i$ $(\forall i\in \mathbb{N})$ であるから、定理24.3より、 $$ \widehat{u_i}=\widehat{h}*\widehat{u_i}\in C^\infty(\mathbb{R}^N)\quad(\forall i\in \mathbb{N}) $$ であり、 $$ \partial_j\widehat{u_i}=\partial_j(\widehat{h}*\widehat{u_i}) =\widehat{h}*\partial_j\widehat{u_i}\quad(\forall i\in\mathbb{N}, j\in \{1,\ldots,N\}) $$ である。よってHölderの不等式、Plancherelの定理(定理19.1)と $(1)$ より、 $$ \begin{aligned} \lvert \widehat{u_i}(x)\rvert&=\lvert (\widehat{h}*\widehat{u_i})(x)\rvert \leq\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\lvert\widehat{h}(y)\rvert\lvert \widehat{u_i}(x-y)\rvert dy\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert \widehat{h}\rVert_2\lVert \widehat{u_i}\rVert_2\\ &=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert h\rVert_2\lVert u_i\rVert_2 \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert h\rVert_2M\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N,\forall i\in \mathbb{N})\quad\quad(*) \end{aligned} $$ であり、 $$ \begin{aligned} \lvert \partial_j\widehat{u_i}(x)\rvert&=\lvert (\partial_j\widehat{h}*\widehat{u_i})(x)\rvert \leq\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}\lvert \partial_j\widehat{h}(y)\rvert\lvert \widehat{u_i}(x-y)\rvert dy\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert \partial_j\widehat{h}\rVert_2\lVert \widehat{u_i}\rVert_2\\ &\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert \widehat{\text{id}_jh}\rVert_2\lVert u_i\rVert_2 \leq\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert \text{id}_jh\rVert_2M\quad(\forall x\in \mathbb{R}^N,\forall i\in \mathbb{N},\forall j\in \{1,\ldots,N\})\quad\quad(**) \end{aligned} $$ である。$(*)$ より、 $$ \sup_{i\in\mathbb{N}}\sup_{x\in\mathbb{R}^N}\lvert \widehat{u_i}(x)\rvert\leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\lVert h\rVert_2M\quad\quad(***) $$ であり、$(**)$ と微積分学の基本定理より、任意の $i\in\mathbb{N}$ と任意の $x,y\in \mathbb{R}^N$ に対し、 $$ \begin{aligned} \lvert \widehat{u_i}(x)-\widehat{u_i}(y)\rvert &=\left\lvert \sum_{j=1}^{N}\left(\int_{0}^{1}\partial_j\widehat{u_i}(x+\theta(y-x))d\theta\right)(y_j-x_j)\right\rvert\\ &\leq\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\sum_{j=1}^{N}\lVert \text{id}_jh\rVert_2M\lvert y-x\rvert \end{aligned} $$ であるから、 $$ \sup_{i\in\mathbb{N}}\lvert \widehat{u_i}(x)-\widehat{u_i}(y)\rvert \leq \frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\sum_{j=1}^{N}\lVert \text{id}_jh\rVert_2M\lvert y-x\rvert\quad(\forall x,y\in \mathbb{R}^N)\quad\quad(****) $$ である。よって $(***)$, $(****)$ と補題39.2より、$(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ の部分列 $(u_{k(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ で $(\widehat{u_{k(i)}})_{i\in\mathbb{N}}$ がコンパクト一様収束するようなものが取れる。$(u_{k(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ が $H^n(\mathbb{R}^N)$ において収束することを示せばよい。そのためには $H^n(\mathbb{R}^N)$ の完備性と命題38.1より $(u_{k(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ が $H^n(\mathbb{R}^N)$ のノルム $$ p_n:H^n(\mathbb{R}^N)\ni v\mapsto \lVert (1+\lvert \text{id}\rvert^2)^{\frac{n}{2}}\widehat{v}\rVert_2\in [0,\infty) $$ に関してCauchy列であることを示せばよい。任意の $R\in (0,\infty)$ に対し閉球 $\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq R\}$ のLebesgue測度を $L(R)$ とおく。このとき $m>n$ であることから任意の $i,j\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ \begin{aligned} &p_n(u_{k(i)}-u_{k(j)})^2=\int_{\mathbb{R}^N}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert \widehat{u_{k(i)}}(x)-\widehat{u_{k(j)}}(x)\rvert^2dx\\ &=\int_{\lvert x\rvert\leq R}(1+\lvert x\rvert^2)^n\lvert \widehat{u_{k(i)}}(x)-\widehat{u_{k(j)}}(x)\rvert^2dx+\int_{R<\lvert x\rvert}\frac{(1+\lvert x\rvert^2)^m}{(1+\lvert x\rvert^2)^{m-n}}\lvert \widehat{u_{k(i)}}(x)-\widehat{u_{k(j)}}(x)\rvert^2dx\\ &\leq L(R)(1+R^2)^n\sup_{x\in \mathbb{R}^N}\lvert \widehat{u_{k(i)}}(x)-\widehat{u_{k(j)}}(x)\rvert^2+\frac{1}{(1+R^2)^{m-n}}p_m(u_{k(i)}-u_{k(j)})^2\quad\quad(*****) \end{aligned} $$ となる。$(1)$ と命題38.1より $\sup_{i\in\mathbb{N}}p_m(u_i)\leq M'$ なる $M'\in (0,\infty)$ が取れる。よって $(*****)$ より任意の $R\in (0,\infty)$ と任意の $i,j\in \mathbb{N}$ に対し、 $$ p_n(u_{k(i)}-u_{k(j)})^2\leq L(R)(1+R^2)^n\sup_{x\in \mathbb{R}^N}\lvert \widehat{u_{k(i)}}(x)-\widehat{u_{k(j)}}(x)\rvert^2+\frac{4M'^2}{(1+R^2)^{m-n}}\quad\quad(******) $$ となる。今、任意の $\epsilon\in (0,\infty)$ を取る。このとき十分大きい $R_0\in (0,\infty)$ を取れば、 $$ \frac{4M'^2}{(1+R_0^2)^{m-n}}<\frac{\epsilon^2}{2} $$ となる。そして $(\widehat{u_{k(i)}})_{i\in\mathbb{N}}$ はコンパクト集合 $\{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq R_0\}$ 上で一様収束するので、十分大きい $i_0\in\mathbb{N}$ を取れば、 $$ L(R_0)(1+R_0^2)^n\sup_{\lvert x\rvert\leq R_0}\lvert \widehat{u_{k(i)}}(x)-\widehat{u_{k(j)}}(x)\rvert^2<\frac{\epsilon^2}{2}\quad(\forall i,j\geq i_0) $$ となる。よって $(******)$ より、 $$ p_n(u_{k(i)}-u_{k(j)})<\epsilon\quad(\forall i,j\geq i_0) $$ であるから $(u_{k(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ は $H^n(\mathbb{R}^N)$ のCauchy列である。

定理39.4(Rellich-Kondrachovの定理2)

$\Omega\subset \mathbb{R}^N$ を滑らかな境界を持つ有界開集合(ベクトル解析5:多様体の向き定義21.3)とし、$n,m\in\mathbb{Z}_+$ を $n<m$ とする。このときSobolev空間 $H^m(\Omega)$ の任意の有界列 $(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ はSobolev空間 $H^n(\Omega)$ において収束する部分列を持つ。

証明

定理35.1より有界線形作用素 $E:H^m(\Omega)\rightarrow H^m(\mathbb{R}^N)$ で、 $$ Eu|_{\Omega}=u\quad(\forall u\in H^m(\Omega)) $$ を満たすものが取れる。$(u_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $H^m(\Omega)$ の有界列なので $E$ の有界性より $(Eu_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $H^m(\mathbb{R}^N)$ の有界列である。$\overline{\Omega}\subset \mathbb{R}^N$ はコンパクトであるのでUrysohnの補題(ベクトル解析4:Euclid空間内の多様体上の測度と積分定理15.5)より $h\in D(\mathbb{R}^N)$ で $h(x)=1$ $(\forall x\in \overline{\Omega})$ を満たすものが取れる。$h$ の全ての偏導関数は有界なのでLeibnizルール(命題7.2)より $hEu_i\in H^m(\mathbb{R}^N)$ $(\forall i\in \mathbb{N})$ であり、$(hEu_i)_{i\in\mathbb{N}}$ は $H^m(\mathbb{R}^N)$ の有界列である。そして、 $$ \text{supp}(hEu_i)\subset \text{supp}(h)\quad(\forall i\in \mathbb{N}) $$ であり $\text{supp}(h)$ はコンパクトであるので、定理39.3より $(hEu_i)_{i\in\mathbb{N}}$ のある部分列 $(hEu_{k(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ は $H^n(\mathbb{R}^N)$ において収束する。ここで、 $$ (hEu_i)|_{\Omega}=h|_{\Omega}u_i=u_i\quad(\forall i\in \mathbb{N}) $$ であるから $(u_{k(i)})_{i\in\mathbb{N}}$ は $H^n(\Omega)$ において収束する。



*1 $C^n$ 級関数に対する $n$ 階までの偏微分は順序によらないことに注意(Euclid空間における微積分1の5を参照)。
*2 ネットについてはネットによる位相空間論を参照。
*3 実際、任意の $f\in \overline{D_K(\Omega)}\subset \mathcal{E}(\Omega)$ に対し $f_i\rightarrow f$ なる $D_K(\Omega)$ の列 $(f_i)_{i\in\mathbb{N}}$ を取れば、任意の $x\in \Omega\backslash K$ に対し $f(x)=\lim_{i\rightarrow\infty}f_i(x)=0$ であるから $\text{supp}(f)\subset K$ である。よって $f\in D_K(\Omega)$ である。
*4 $f\in C(\Omega)$ に対し $[f]=0$ ならば、$(\lvert f\rvert>0)$ のLebesgue測度は $0$ である。$f$ の連続性より $(\lvert f\rvert>0)$ は開集合であるから $(\lvert f\rvert>0)=\emptyset$ である。
*5 実際、$\{x\in \Omega\backslash S: f(x)\neq0\}$ は $\Omega\backslash S$ の開集合であり $\Omega\backslash S$ の空でない開集合のLebesgue測度は正であるから、$\{x\in \Omega\backslash S: f(x)\neq0\}=\emptyset$ である。
*6 空でない開集合のLebesgue測度は正であるから任意の $f\in C(\mathbb{R}^N)\cap L^{\infty}(\mathbb{R}^N)$ に対し $f$ は有界であり $f$ の $L^{\infty}$ ノルムと $\sup$ ノルムは一致する。
*7 $\mathcal{S}_N\subset L^1(\mathbb{R}^N)$ であることは命題12.2の$(4)$による。
*8 命題12.1の $(2)$ より $\text{id}_jf\in \mathcal{S}_N$である。
*9 $\lim_{\lvert x\rvert\rightarrow\infty}f(x)e_{-k}(x)=0$ より $\int_{\mathbb{R}}\partial_j(fe_{-k})(x)dx_j=\lim_{M\rightarrow\infty}\int_{-M}^{M}\partial_j(fe_{-k})(x)dx_j=0$ であることに注意。
*10 命題12.1の$(2)$と命題10.2の$(1)$による。
*11 $p_n(\varphi)\leq p_{n+1}(\varphi)$ $(\forall \varphi\in D(\mathbb{R}^N) )$ であることに注意。
*12 有界線形作用素の一意拡張(位相線形空間1:ノルムと内積命題3.6)の証明を参照。
*13 $f_{-1}$, $T_xf$ はそれぞれ $f$ の反転と平行移動、すなわち $f_{-1}(x)=f(-x)$, $T_xf(y)=f(y-x)$ $(\forall x,y\in\mathbb{R}^N)$ である。よって $T_xf_{-1}(y)=f_{-1}(y-x)=f(x-y)$ $(\forall x,y\in \mathbb{R}^N)$ である。
*14 $(f*g)_{-1}(x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}(f*g)(-x)=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f(y)g(-x-y)dy=\frac{1}{(2\pi)^{\frac{N}{2}}}\int_{\mathbb{R}^N}f_{-1}(y)g_{-1}(x-y)dy=(f_{-1}*g_{-1})(x)$である。
*15 距離空間のコンパクト集合は全有界ゆえ可分である(距離空間の位相の基本的性質命題4.2)。よって距離空間の $\sigma$ -コンパクト集合は可分である。
*16 $\widetilde{\Omega}\backslash \Omega$ 上で $0$ として $\widetilde{\Omega}$ 上に拡張したもの。
*17 実際、$\text{supp}(\partial^{\alpha}u)$ の $\widetilde{\Omega}$ における閉包の任意の点 $x$ に対し $x$ に収束する $\text{supp}(\partial^{\alpha}u)$ の点列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ を取れば、任意の $y\in \widetilde{\Omega}\backslash \Omega$ に対し $\lvert x-y\rvert=\lim_{n\rightarrow\infty}\lvert x_n-y\rvert\geq d(\text{supp}(\partial^{\alpha}u),\text{ }\widetilde{\Omega}\backslash \Omega)>0$ であるから $x\notin \widetilde{\Omega}\backslash\Omega$、すなわち $x\in \Omega$ である。ゆえに $x\in \text{supp}(\partial^{\alpha}u)$ であるので $\text{supp}(\partial^{\alpha}u)$ は $\widetilde{\Omega}$ において閉である。
*18 任意のコンパクト集合 $K\subset \mathbb{R}^N$ に対し $K\subset \{x\in \mathbb{R}^N:\lvert x\rvert\leq n_0\}$ なる $n_0\in\mathbb{N}$ を取れば任意の $n\geq n_0$、任意の $x\in K$ に対し $\omega_n(x)=1$、$f_n(x)=(\psi_{\frac{1}{n}}*f)(x)$ であることに注意。
*19 測度と積分5:$L^p$ 空間の完備性と双対性定理21.4の証明を参照。

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Last-modified: 2020-11-09 (月) 06:31:49 (25d)